6480 東証プライム 機械・軸受/直動案内機器

日本トムソン(IKO)

売上630億円、時価総額1,275億円。ロボットの関節を支えるクロスローラベアリングと、半導体装置を動かす直動案内機器を作る「フィジカルAIの裏方」。受注は1Qで前年比2.1倍、通期営業利益予想は82億円→115億円へ上方修正されたが、ヒューマノイド関連銘柄リストには載っていない。10年で3度の赤字を経験したこの会社が、今回のサイクルで何を変えたのかを検証する。

01 / OVERVIEW

スナップショット

株価

1,735円

2026/9/18 終値

時価総額

約1,275億円

2026/9/18(発行済7,350万株)

PER(予想)

12.8倍

予想EPS135.93円

PBR(実績)

1.39倍

BPS 1,247.43円(2026/6末)

配当利回り(予想)

1.84%

年間32円予想(前期29.5円)

年初来レンジ

822〜2,580円

安値1/5・高値6/22

自己資本比率

68.3%

2026/6末(現金230億円)

保有株数

未確認

出典:Yahoo!ファイナンス(finance.yahoo.co.jp/quote/6480.T、2026/9/18終値ベース)、2027年3月期第1四半期決算短信(ikont.co.jp)。株価は年初822円から6月22日に2,580円まで3.1倍に上昇したのち、9月18日時点で1,735円と高値から33%調整している。8月7日の上方修正(営業利益82億円→115億円)後も株価は戻り切っておらず、予想PER12.8倍は上方修正後のEPSで見た数字である点に注意。9月1日には自己株式取得の完了が公表された。

02 / SEGMENT

事業ごと・国/エリアごとの売上高比率

品目別 売上高(2026年3月期、前期比)

直動案内機器(直動シリーズ) 349億円 / 55.4%(+24.2%) 針状ころ軸受(ニードルベアリング) 216億円 / 34.3%(+8.9%) 諸機械部品(メカトロ・精密位置決めテーブル等) 65億円 / 10.3%(+1.2%)

国・エリア別 売上高(2026年3月期、前期比)

日本 285億円 / 45.3%(+6.0%) 米州 112億円 / 17.7%(+13.3%) 中国 101億円 / 16.1%(+56.4%) 欧州 67億円 / 10.6%(+10.2%) その他(アジア等) 65億円 / 10.3%(+22.6%)

業種別 売上高(2026年3月期、複数分類の重複計上あり)

エレクトロニクス(半導体製造装置・実装機等) 315億円 / 50.0%(+18.4%) 工作機械 151億円 / 23.9%(+9.2%) 市販・海外代理店 114億円 / 18.0%(+22.1%) その他一般機械(ロボット・医療等) 96億円 / 15.2%(+7.2%) 輸送機器 24億円 / 3.8%(▲2.5%)

出典:2026年3月期決算説明会資料(ikont.co.jp/ir/finance/pdf/2026034q_rb2.pdf)、2026年3月期決算短信()。会計上の報告セグメントは「軸受等」(565億円)と「諸機械部品」(65億円)の2区分で、品目別の内訳は説明会資料による。
この3枚が示すのは「直動が伸び、ニードルが土台を支え、成長は中国とエレクトロニクスから来ている」という構図である。直動案内機器(リニアウェイ等)が売上の55%を占め+24.2%と伸びた一方、祖業の針状ころ軸受は34%で+8.9%。ロボット関節に使われるクロスローラベアリングは会計上「針状ころ軸受」に含まれ、単独の売上は開示されていない(未取得)。地域別では日本45%に対し海外55%で、とりわけ中国が+56.4%と突出して伸びた。業種別ではエレクトロニクス(半導体製造装置・実装機)が50%を占め、同社の業績は実質的に半導体設備投資サイクルの関数である。ロボット・医療機器は「その他一般機械」(15%)に含まれ、ヒューマノイド向けの売上は現時点で計数開示がない(未取得)。

03 / HISTORY

創業からの歴史

年月出来事
1950年2月軸受販売を目的に名古屋市で大一工業株式会社を設立
1956年7月ニードルベアリング(針状ころ軸受)の販売を開始
1963年8月商号を日本トムソン株式会社に変更。同年10月、東証二部上場
1968年6月東京・大阪証券取引所市場第一部に指定
1969年5月岐阜製作所(美濃市)を新設。現在も主力工場(土地48万㎡、従業員649名)
1978年5月リニアウェイ(直動シリーズ)を開発・販売開始。第2の柱が誕生
2006年3月ベトナムに IKO THOMPSON VIETNAM を設立、海外生産へ
2017年1月中国の優必勝グループを子会社化(中国販売網の内製化)
2022年4月東証プライム市場へ移行
2024年5月「IKO中期経営計画2026 Connect for Growth」公表(3年平均営業利益90億円以上、ROE8%以上)
2025年4月細野幹人氏が社長就任、宮地茂樹氏は会長へ。同年6月、監査等委員会設置会社へ移行
2026年4月CxO制を導入。細野氏が社長CEO、西村修氏がCFOに
同社の歴史は、地味な部品で2度「第2の柱」を立てた歴史である。1950年に名古屋の軸受商社として出発し、1956年に扱い始めたニードルベアリング(針状ころ軸受)が最初の柱になった。針状ころ軸受は、玉軸受より断面が薄く、同じ外径で高い負荷容量が取れるため、自動車のトランスミッションや工作機械の主軸に不可欠だった。1969年に岐阜製作所を建てて自社生産へ踏み込み、1978年にリニアウェイ(直動案内機器)を投入したことで、工作機械のテーブルを「ころがり」で動かす直動市場に参入した。現在売上の55%を占めるのはこの直動事業であり、創業から28年後に始めた事業が本業を追い越した格好になる。
2000年代以降は海外化の時代である。2006年のベトナム工場、2017年の中国販売子会社化(優必勝グループ)で海外売上比率は55%まで上がった。ただし後述のとおり、この会社は2017年3月期・2020年3月期に最終赤字、2021年3月期に営業赤字を出しており、直近10年の歴史は「柱を増やした歴史」であると同時に「需要循環に振り回された歴史」でもある。

出典:2026年3月期有価証券報告書【沿革】【主要な設備の状況】(ikont.co.jp/ir/finance/pdf/202603_all.pdf)、電波新聞デジタル(2025/3/28)、2026年3月24日付CxO制導入リリース(同社)。

04 / MISSION, VISION, VALUE

ミッション・ビジョン・バリュー

経営理念は「社会に貢献する『技術開発型企業』」。営業会社から出発した会社が、自らを技術開発型と定義し直したところに、岐阜製作所以降の70年の自己認識がある。ブランド名「IKO」は製品カタログ・中計のタイトル(「I・K・Oでつなぐ、革新の未来」)に一貫して使われ、同社が社名よりブランドで認知されていることを示す。
長期ビジョン「IKO VISION 2030」の数値目標は、売上高1,000億円以上・営業利益150億円以上・ROE10%以上・時価総額1,000億円以上。中期経営計画2026(2024年4月〜2027年3月)はその中間点として「3カ年平均営業利益90億円以上、ROE8%以上」を掲げ、基本方針を「『強い領域』の集中強化」と「『グローバル体制』の再構築」の2本に絞った。注力産業は半導体製造装置・産業用ロボット・医療機器。資本配分は3年で営業CF330億円を原資に、成長投資150億円・研究開発50億円・維持更新70億円・株主還元100億円(総還元性向50%以上、DOE2.5%を配当下限の目安)と明示している。
この数字が意味すること。中計の3年平均営業利益90億円に対し、初年度FY25は11.7億円、2年目FY26は41億円。最終年度FY27予想が115億円でも3年平均は56億円と、中計目標は未達がほぼ確定している。一方、時価総額1,000億円という2030年目標は2026年に前倒しで達成した(1,275億円)。「株価は先に走り、利益はこれから追いつく」局面にあることが、ビジョンと現実の対比から読み取れる。

出典:IKO中期経営計画2026(ikont.co.jp/ir/finance/pdf/202403_rb.pdf)、電波新聞デジタル(2024/5/24)、2026年3月期決算説明会資料。

05 / LEADERSHIP

現経営者の特徴・過去の実績(レジリエンスの観点)

代表取締役社長CEOは細野幹人(ほその・みきひと)氏。南山大学経営学部を卒業し1990年に入社した生え抜きで、岐阜製作所の経営管理部門長などを歴任し、2025年4月に社長へ就任、2026年4月のCxO制導入で社長CEOとなった。前任の宮地茂樹氏は会長に退き、財務は新設のCFO西村修氏が担う。就任時の日刊工業新聞インタビューでは中国・米国でのR&D拠点設置を検討すると語っており、生産管理畑の出身者が海外開発体制を志向している点が特徴である(インタビュー本文は有料のため未取得)。
レジリエンスの実績は「合格点だが、赤字を避けられる体質ではない」。この10年で同社は2017年3月期(最終赤字▲2.9億円、円高と人員増強費用)、2020年3月期(最終赤字▲1.9億円)、2021年3月期(営業赤字▲5.6億円、コロナ)と3度の赤字を出した。ミネベアミツミのように「一度も営業赤字なし」とは言えない。ただし評価すべき点が3つある。第1に、赤字期でも配当を維持した(2021年3月期8円、2025年3月期はEPS8.11円に対し19円と利益を超えて配当)。第2に、2025年3月期の急減益(営業利益94.6億円→11.7億円)に対し、棚卸資産を30億円圧縮し、ベトナム新工場の投資時期を後ろ倒しにするなど、需要低迷期に固定費を積まなかった。第3に、その翌年に受注+29.8%・営業利益3.5倍という回復を実現し、さらに翌1Qで通期予想を4割上方修正した。落ち込み方は大きいが、立ち上がりも速い——受注に対して生産を柔軟に絞り、また開けるのがこの経営陣の型である。
一方で懸念は、細野体制はまだ1年半で、今回の受注急増局面が「経営の実力」なのか「サイクルの追い風」なのかを判別できる材料が少ないことだ。中計目標の未達がほぼ確定しているにもかかわらず目標の修正が公表されていない点も、開示姿勢として物足りない。

出典:電波新聞デジタル(2025/3/28)、日刊工業新聞(新社長登場/日本トムソン・細野幹人氏)、2025年3月期決算説明会資料(ikont.co.jp)、各期決算短信。

06 / LATEST EARNINGS

直近決算の予想・ガイダンスに対する結果

2026年3月期:期初予想 vs 実績

指標期初予想(2025/5)実績差異前期比
売上高585億円630.3億円+7.7%+15.9%
営業利益16億円41.0億円+156%+249.6%
経常利益―(未取得)51.6億円+262.9%
純利益―(未取得)40.7億円+626.8%
受注高725.0億円+29.8%(B/B 1.15)
年間配当26円29.5円+3.5円前期19円

2027年3月期:期初予想 → 1Q時点の修正予想 → 1Q実績

指標期初予想(5/11)修正予想(8/7)修正幅1Q実績(4-6月)1Q前年比修正通期に対する進捗
売上高750億円800億円+6.7%198.5億円+32.9%24.8%
営業利益82億円115億円+40.2%27.9億円+281.9%24.3%
経常利益81億円117億円+44.4%31.6億円+311.8%27.0%
純利益68億円95億円+39.7%24.4億円+243.7%25.7%
営業利益率10.9%14.4%+3.5pt14.1%前年4.9%
受注高322.8億円+112.3%(B/B 1.63)
EPS / 配当98.66円 / 32円136.92円 / 32円配当据え置き34.93円配当性向23.4%

四半期 受注高の推移(億円、FY27 1Qのみ緑)

139 FY25Q1 130 Q2 137 Q3 153 Q4 152 FY26Q1 153 Q2 176 Q3 243 Q4 323 FY27Q1
ガイダンスとの関係で見るべき点は2つある。第1に、会社予想が2期連続で大幅に保守的だったこと。2026年3月期は期初営業利益16億円に対し実績41億円、2027年3月期は期初82億円に対し1Q終了時点で115億円へ修正した。修正後の上期予想(売上398億円・営業利益56億円)に対しても1Qで既に半分(49.9%)を消化しており、2Q(11月上旬)での再修正余地が残る。第2に、受注の質である。四半期受注は2025年3月期の130〜150億円台から、2026年3月期4Qに243億円、2027年3月期1Qに323億円と2四半期で2倍以上に跳ねた。会社は修正理由として「中国市場を中心とした受注好調」を挙げている。
この数字が意味すること。B/Bレシオ1.63は、いま売上の1.6倍の注文を抱えているということで、今後2〜3四半期の売上はほぼ受注残で埋まっている。ただしこの急増は半導体関連の大口案件の性格が強く、また前倒し発注(供給逼迫を見越した二重発注)が含まれる可能性を否定できない。受注残高そのものは開示されておらず(未取得)、次の2Q決算で受注が「前年比+112%」の後にどこまで落ち着くかが、この銘柄の短期的な評価を決める。

出典:2027年3月期第1四半期決算短信(ikont.co.jp)、同決算補足資料()、2026年3月期決算短信・決算説明会資料、2025年3月期決算説明会資料(期初予想)。

07 / REVENUE & PROFIT

売上高・利益の推移(直近10年間)

売上高(FY2017〜FY2026、3月期、億円・日本基準)

441 FY17 552 FY18 576 FY19 475 FY20 443 FY21 623 FY22 683 FY23 550 FY24 544 FY25 630 FY26

営業利益(億円、赤字は赤)

11 FY17 26 FY18 49 FY19 13 FY20 ▲6 FY21 59 FY22 95 FY23 32 FY24 12 FY25 41 FY26

親会社株主に帰属する当期純利益(億円)

▲3 FY17 17 FY18 37 FY19 ▲2 FY20 2 FY21 41 FY22 75 FY23 27 FY24 6 FY25 41 FY26

営業利益率(%)

2.6% FY17 4.8% FY18 8.5% FY19 2.8% FY20 ▲1.3% FY21 9.5% FY22 13.9% FY23 5.7% FY24 2.2% FY25 6.5% FY26

10年財務データ(百万円→億円換算)

年度(3月期)売上高営業利益営業利益率経常利益税引前利益純利益EPS
FY17441億円11.4億円2.6%9.1億円未取得▲2.9億円▲4.04円
FY18552億円26.5億円4.8%24.0億円未取得16.8億円23.35円
FY19576億円48.8億円8.5%53.2億円未取得37.2億円51.95円
FY20475億円13.4億円2.8%12.7億円未取得▲1.9億円▲2.59円
FY21443億円▲5.6億円▲1.3%2.2億円未取得2.1億円3.02円
FY22623億円59.0億円9.5%74.9億円未取得41.3億円58.27円
FY23683億円94.6億円13.9%104.8億円未取得74.7億円104.92円
FY24550億円31.6億円5.7%45.2億円未取得26.7億円37.82円
FY25544億円11.7億円2.2%14.2億円未取得5.6億円8.11円
FY26630億円41.0億円6.5%51.6億円未取得40.7億円58.51円
FY27予(会社、8/7修正)800億円115億円14.4%117億円95億円136.92円

出典:各期決算短信(ikont.co.jp/ir/finance/fn04_kako.html:2017年3月期・2019年3月期・2021年3月期・2023年3月期・2026年3月期)、2026年3月期有価証券報告書、松井証券(finance.matsui.co.jp)。税引前利益は短信の要約表に記載がなく未取得のため、経常利益を掲載した(同社は特別損益が小さく、経常利益≒税引前利益とみてよい年が多い)。
この4枚が語るのは「振幅の大きさ」である。売上は10年で441億円→630億円(CAGR+4.0%)と緩やかにしか伸びていないのに、営業利益は▲5.6億円から94.6億円まで振れ、営業利益率は▲1.3%〜13.9%のレンジを往復した。売上が1割動くと利益が数倍動く、典型的な高固定費・高オペレーティングレバレッジの事業構造である。前回のピークFY23(営業利益率13.9%)は半導体・工作機械の同時好況で作られ、その2年後のFY25には2.2%まで落ちた。会社予想のFY27営業利益率14.4%はこのピークを上回る水準で、今回のサイクルが「前回と同じ山」なのか「一段高い台地」なのかが投資判断の分かれ目になる。

08 / VALUATION

PERの推移(直近10年間)

期末PER(有価証券報告書記載=期末株価÷当期EPS、倍)

FY17 FY18 FY19 FY20 FY21 FY22 FY23 FY24 FY25 FY26 36.4 9.8 80.0 8.3 5.4 14.9 59.9 14.6 PER(倍、FY21の219倍は80で表示上限)

PERと期末株価の10年

年度末EPSPER(有報記載)逆算した期末株価備考
FY17(2017/3)▲4.04円最終赤字のため算出不能
FY18(2018/3)23.35円36.40倍約850円
FY19(2019/3)51.95円9.80倍約509円
FY20(2020/3)▲2.59円最終赤字のため算出不能
FY21(2021/3)3.02円219.21倍約662円EPS3円台のため倍率が発散
FY22(2022/3)58.27円8.31倍約484円
FY23(2023/3)104.92円5.41倍約568円
FY24(2024/3)37.82円14.89倍約563円
FY25(2025/3)8.11円59.93倍約486円EPS8円台のため倍率が発散
FY26(2026/3)58.51円14.58倍約853円
2026/9/18135.93円(予想)12.76倍(予想)1,735円(実株価)Yahoo!ファイナンス
算出方法:各期の有価証券報告書「主要な経営指標等の推移」に記載された株価収益率(期末株価÷当期EPS)をそのまま用い、期末株価は PER×EPS で逆算した参考値。最終赤字のFY17・FY20は算出不能、EPSが数円まで落ちたFY21(219倍)・FY25(60倍)は倍率が発散している。
この数字が意味すること。この銘柄のPERは「利益が出ている年は5〜15倍、出ていない年は意味を成さない」という二相分布をしている。利益ボトムのFY25にPER60倍(株価486円)で買った投資家は、利益が正常化したFY26末にPER14.6倍(株価853円)、そして現在1,735円と、EPSの回復と倍率の維持の両方で報われた。逆にいえば、現在の予想PER12.8倍は「利益がピーク近くにある年のPER」であり、FY23のピーク(PER5.4倍)と比べれば決して安くない。景気敏感株の常として、ピーク利益に低いPERを掛ける市場の習性を織り込むと、ここから倍率拡大で株価が上がる余地は限られ、上がるとすればEPSの上振れ(再上方修正)が源泉になる。

出典:2026年3月期有価証券報告書、2021年3月期有価証券報告書(ikont.co.jp/ir/finance/pdf/202103_all.pdf)、Yahoo!ファイナンス(現在値)。

09 / CAPITAL RETURNS

ROIC・WACC・ROEの推移

ROE(10年)・ROIC(有利子負債が確認できた年)・WACC概算(%)

FY17 FY18 FY19 FY20 FY21 FY22 FY23 FY24 FY25 FY26 -0.5% 2.9% 6.2% -0.3% 0.4% 6.7% 11.0% 3.6% 0.7% 5.1% 4.2% -0.4% 7.2% 2.6% 7.9% 7.9% 7.9% 7.9% 7.9% 7.9% 7.9% 7.9% 7.9% 7.9% ROE ROIC(算出可能年のみ) WACC概算7.9%

ROIC・ROE・WACCの試算表

年度営業利益NOPAT(税率30%)有利子負債投下資本(純資産+有利子負債)ROICROEWACC(概算)スプレッド
FY1711.4億円8.0億円未取得未取得未算出▲0.5%約7.9%
FY1826.5億円18.5億円未取得未取得未算出2.9%約7.9%
FY1948.8億円34.2億円215億円817億円4.2%6.2%約7.9%▲3.7pt
FY2013.4億円9.4億円未取得未取得未算出▲0.3%約7.9%
FY21▲5.6億円▲3.9億円280億円875億円▲0.4%0.4%約7.9%▲8.3pt
FY2259.0億円41.3億円未取得未取得未算出6.7%約7.9%
FY2394.6億円66.2億円205億円922億円7.2%11.0%約7.9%▲0.7pt
FY2431.6億円22.1億円未取得未取得未算出3.6%約7.9%
FY2511.7億円8.2億円未取得未取得未算出0.7%約7.9%
FY2641.0億円28.7億円290億円1,121億円2.6%5.1%約7.9%▲5.3pt
FY27予115億円80.5億円約290億円(1Q末水準と仮定)約1,162億円約6.9%約11%(純利益95億円÷1Q末純資産)約7.9%▲1.0pt

試算方法:ROIC=NOPAT÷投下資本。NOPAT=営業利益×(1−実効税率30%)、投下資本=純資産+有利子負債(社債・長短借入金)。有利子負債は決算短信の貸借対照表から確認できたFY19(215億円)・FY21(281億円)・FY23(205億円)・FY26(290億円)のみ算出し、他年度は未取得。ROEは純利益÷期首期末平均純資産(中計レビュー記載値と一致)。WACCはCAPMで、リスクフリーレート2.9%(日本10年国債、2026年8月末)、株式リスクプレミアム5.5%、β1.2(機械セクターの景気敏感性を考慮した想定値)、株主資本コスト9.5%、負債コスト税引前1.0%(社債・銀行借入、税引後0.7%)、時価ベース資本構成(株式1,275億円:負債290億円=81:19)で約7.9%。
結論:ROICはWACCを恒常的に下回っており、利益ピークの年だけ辛うじて並ぶ。FY23(営業利益94.6億円)ですらROIC7.2%と概算WACC7.9%に届かず、FY26は2.6%。会社予想のFY27(営業利益115億円)でようやく6.9%、現金230億円を投下資本から控除したネットベースなら8.7%とWACCを上回る計算になる。同社は自己資本比率68%・現金230億円と財務が厚すぎるがゆえに、資本効率で見ると「平時は資本コストを稼げない事業」に見えてしまう。中計が総還元性向50%と自社株買い(FY26に142万株取得)を打ち出したのは、この過剰資本を圧縮する意図と読める。ROE目標8%(中計)・10%(VISION2030)は、FY27予想の純利益95億円が実現すれば約11%で達成するが、それは利益ピークの年の数字である点は割り引く必要がある。

10 / CASH FLOW

営業・投資・財務・フリーキャッシュフローの推移(直近10年間)

キャッシュフロー4種(FY2017〜FY2026、億円)

FY17 FY18 FY19 FY20 FY21 FY22 FY23 FY24 FY25 FY26 営業CF 投資CF 財務CF FCF

キャッシュフロー10年表

年度営業CF投資CF財務CFFCF(営業+投資)期末現金
FY1749.8億円▲53.8億円71.3億円▲4.0億円200億円
FY1860.4億円▲13.8億円▲67.0億円46.6億円未取得
FY1951.6億円▲50.6億円▲10.5億円1.0億円未取得
FY20▲25.0億円▲61.9億円46.2億円▲86.8億円128億円
FY2156.6億円▲30.1億円▲4.1億円26.5億円153億円
FY22102.7億円▲21.0億円▲64.4億円81.7億円178億円
FY2364.0億円▲27.0億円▲33.5億円37.0億円186億円
FY24▲24.9億円▲53.0億円75.7億円▲77.9億円190億円
FY2564.5億円▲34.4億円9.1億円30.1億円227億円
FY2694.8億円▲37.2億円▲62.0億円57.5億円230億円

出典:各期決算短信、2026年3月期・2021年3月期有価証券報告書。FY18・FY19の期末現金は要約表に記載がなく未取得。
営業CFは10年のうち2年(FY20・FY24)でマイナスに落ちている。いずれも需要急減期に在庫が積み上がった年で、利益以上に運転資本の振れが大きい事業であることを示す。FCFは10年通算で概算+129億円と黒字だが、FY20(▲87億円)とFY24(▲78億円)の2度の大穴を、FY22(+82億円)・FY26(+58億円)の好況年で埋めてきた形だ。投資CFは毎年▲14〜▲62億円と、売上比で5〜10%の設備投資を継続しており、減価償却(FY26で32億円)とほぼ同水準。大型の能力増強はまだ始まっていない(FY27の設備新設計画は岐阜製作所ほか24.5億円、ベトナム新工場は後ろ倒し中)。受注が2倍になっているのに投資が平時並みという状態は、短期的にはFCFにプラスだが、供給制約で受注を取りこぼすリスクと表裏一体である。1QのFCFは営業CF33億円−設備投資8.6億円で概ね+24億円と、四半期としては過去最高水準にある。

11 / INVESTMENT & M&A

直近の投資・M&A状況

M&Aはほぼ行わない会社である。直近10年で確認できる企業買収は2017年1月の中国・優必勝グループ(販売代理店)の子会社化のみで、ミネベアミツミ型の連続買収とは対極にある。成長投資は自社工場の能力増強と製品開発に集中しており、中計2026では3年間で成長投資150億円・研究開発50億円・維持更新投資70億円を計画している。
設備投資の実績と計画。2026年3月期の設備投資は31.2億円(減価償却32.2億円)、研究開発費18.2億円(売上比2.9%)。2027年3月期の設備新設計画は岐阜製作所ほかで24.5億円(自己資金、2027年3月完了予定、目的は「設備の更新・生産合理化」)。ベトナム新工場は2025年3月期の減益局面で「投資時期を後ろ倒し」と説明され、その後の再開時期は公表されていない(未取得)。1Q時点の設備投資は8.6億円で通期計画32億円に対し27%と、平時のペースを保っている。
営業・開発拠点。2026年に米国ボストンへ営業所を新設し、開発研究所を横浜へ移転してオープンイノベーションを掲げた。細野社長は中国・米国でのR&D拠点設置を検討している。製品面では高推力・高速のリニアモータテーブル(メカトロ)の品揃えを拡充した。
株主還元。2026年3月期に自己株式142.5万株を取得し、2027年3月期も取得枠を設定、9月1日に取得完了を公表。配当は19円→29.5円→32円(予想)と2年で1.7倍。総還元性向50%以上、DOE2.5%以上を方針とする。
この数字が意味すること。受注が前年比2倍なのに設備投資が減価償却並みという組み合わせは、「今回の需要増は既存設備の稼働率で吸収できる」と会社が見ていることを意味する。前回サイクル(FY20・FY24)で在庫と設備が重荷になった経験が投資に慎重にさせている面もある。これは資本規律としては正しいが、ヒューマノイド・半導体の需要が本当に構造的なら、能力増強の遅れが競合(THK・シェフラー)にシェアを譲る要因になりうる。次の中計(2027年5月頃に公表見込み)でベトナム工場と国内増産にいくら投じるかが、成長ストーリーの真贋を測る指標になる。

出典:2026年3月期有価証券報告書【設備の新設】【研究開発活動】、2026年3月期決算説明会資料、2027年3月期第1四半期決算短信、中期経営計画2026、Yahoo!ファイナンス AIトピックス(9/1自己株式取得完了)。

12 / SEGMENT GROWTH

主要事業ごとの成長性

品目別・地域別 成長率(FY2025 → FY2026、および1Q FY2027)

区分FY26売上構成比前期比1Q FY27主な需要先
直動案内機器(直動シリーズ)349億円55.4%+24.2%軸受等セグメント+33.2%半導体製造装置・実装機・工作機械・ロボット
針状ころ軸受(クロスローラ含む)216億円34.3%+8.9%同上ロボット関節・工作機械主軸・自動車・建機
諸機械部品(メカトロ:位置決めテーブル等)65億円10.3%+1.2%+30.1%半導体・液晶・検査装置
中国101億円16.1%+56.4%受注好調(会社コメント)半導体関連、大口設備投資案件
米州112億円17.7%+13.3%ロボット・医療機器増ロボット、精密機械、半導体装置
日本285億円45.3%+6.0%エレクトロニクス・市販増半導体装置・実装機・工作機械
直動案内機器:主戦場であり、最大の成長エンジン。リニアウェイ・リニアローラウェイ等のLMガイドは、半導体製造装置のステージ、実装機のヘッド、工作機械のテーブルに使われる。FY26は+24.2%、1Qは軸受等セグメント全体で+33.2%。エレクトロニクス向けが売上の半分を占めるため、生成AI向け半導体設備投資がそのまま同社の直動需要になる。THKが首位のこの市場で、同社は小型・高精度品(C-Lube潤滑部品内蔵など)に強みを持つ。
針状ころ軸受:ロボット関節への入口。成長率は+8.9%と直動に劣るが、ここにクロスローラベアリングが含まれる。クロスローラは円筒ころを90度交互に配置し、1個でラジアル・アキシアル・モーメント荷重を同時に受けられるため、ロボットの旋回関節や減速機の出力軸に使われる。ヒューマノイドの関節(1体あたり数十軸)が増えれば、減速機と同数のクロスローラ需要が生まれる。同社は2025年3月期の説明会で「ヒューマノイドロボット向けへ注力」「米国での成長案件に注力」と明言したが、ロボット向け売上の計数は未開示である。北米の「ロボットや精密機械等の一般産業機械向け需要増」(1Q短信)が、その手掛かりになる。
メカトロ(諸機械部品):小さいが1Qで+30%。精密位置決めテーブル・アライメントステージ・リニアモータテーブルなど、直動とモータを組み合わせたユニット製品。FY26は+1.2%と横ばいだったが、1Qは+30.1%と急伸した。単価が高く、装置メーカーの設計に組み込まれると継続受注になりやすい。中計が掲げる「メカユニットソリューション」の中核で、部品売りからユニット売りへ収益性を上げる方向の事業である。
この数字が意味すること。成長の主語は「直動×半導体×中国」であって、「クロスローラ×ヒューマノイド」ではない——少なくとも現時点の数字では。ヒューマノイドは同社にとって「まだ売上に乗っていない、しかし製品はすでにある」オプションであり、市場がこの銘柄をヒューマノイド関連として値付けしていない(関連銘柄48社リストに未掲載)のは、この開示状況を考えれば合理的でもある。

出典:2026年3月期決算説明会資料、2027年3月期第1四半期決算短信、2025年3月期決算説明会資料、IKO製品情報「産業用ロボット」(ikont.co.jp/product/industry/robot)、ヒューマノイドプレス関連銘柄リスト(humanoidpress.jp)。

13 / COMPETITIVE POSITION

競争優位性や業界内でのポジション

主要競合との比較(2026年9月時点、各社直近開示)

企業時価総額予想PER営業利益率(直近→予想)主力領域日本トムソンとの関係
日本トムソン(6480)1,275億円12.8倍6.5%→14.4%針状ころ・クロスローラ・直動・メカトロ
THK(6481)7,470億円12.8倍6.0%(25/12)→10.0%予LMガイド世界首位、ボールねじ、クロスローラリング直動で最大の競合。規模は約6倍
日本精工(6471)5,410億円18.3倍1Q 5.9%、通期予4.8%玉軸受・ボールねじ・直動、ロボ用アクチュエータ2028年投入直動・ニードルで競合、ロボットでは将来競合
NTN(6472)2,299億円15.3倍1Q約3.9%玉・ころ軸受、ニードルベアリング針状ころ軸受で国内競合
シェフラー(独、INA)未取得未取得未取得ニードルベアリング世界最大手、直動針状ころ軸受・直動の世界的競合
ハーモニック・ドライブ(6324)5,972億円97.8倍0.0%→4.3%(FY27予11.4%)波動歯車減速機(クロスローラ内蔵)顧客にも競合にもなりうる
堀の第1層:多品種・小径・高精度の「隙間」を取る製品設計。THKは大型・標準品の量産で世界首位、シェフラーはニードルベアリングの規模で世界最大。日本トムソンはその両者の間、つまり小型・薄型・高剛性で、標準品では満たせない仕様を狙う。超薄形クロスローラ(CRBT)、高剛性クロスローラV、C-Lube(潤滑部品内蔵で長期メンテナンスフリー)といった製品群は、装置メーカーが一度設計に組み込むと変更コストが高く、ここにスイッチングコストが生じる。針状ころ軸受とクロスローラは「国内首位級」とされるが、市場シェアの公式数値は未取得で、同社自身も開示していない。
堀の第2層:直動とニードルの両方を持つ唯一性。THKは直動が中心、NTN・シェフラーは軸受が中心だが、同社はロボットの関節(クロスローラ)と直動軸(リニアウェイ)とユニット(メカトロ)を1社で揃えられる。ヒューマノイドの脚は直動アクチュエータ、腕・手首は回転関節で構成されるため、両方を供給できることは設計段階の提案力になる。
堀の弱点:規模と価格支配力。売上630億円はTHKの6分の1で、量産投資の体力で劣る。営業利益率がFY23の13.9%からFY25の2.2%まで落ちたことは、需要減退局面で値決めの主導権を持てていないことを示す。また中国では現地のLMガイド・クロスローラメーカーが台頭しており、round1-2で確認したとおり波動歯車では中国勢が価格を半分にした。クロスローラも同じ道をたどるリスクがある。
業界内ポジション。「直動の2番手、ニードルの国内首位級、クロスローラの有力供給者」。どの軸でも世界首位ではないが、半導体装置とロボットに必要な回転・直動・ユニットの3点セットを持つ、小さくて厚みのある専業メーカー——これが同社の立ち位置である。

出典:Round1-2テーマ分析「フィジカルAI・ロボット産業本格化」(当サイト、Yahoo!ファイナンス各銘柄2026/9/18前後)、THK決算資料(thk.com)、NSK(ロボット用アクチュエータ)、IKO製品情報(超薄形クロスローラベアリング)。シェフラーは今回未取得。

14 / SCP ANALYSIS

SCP理論からの分析(市場構造・企業行動・業界トレンド)

Structure(市場構造)

同社が戦う市場は3層構造である。①直動案内機器はTHK・日本トムソン・NSK・シェフラー・ボッシュレックスロス、そして中国勢(HIWIN=台湾、上銀)が競う寡占的競争市場。標準品は価格競争が激しいが、半導体装置向けの高精度・小型品は供給者が限られ、需要急増期には納期が価格決定力に変わる。②針状ころ軸受・クロスローラはシェフラー(INA)・NTN・NSK・日本トムソンの寡占で、参入障壁は精度と実績(装置メーカーの認定)。ただし波動歯車メーカーが減速機にクロスローラを内蔵して供給するため、減速機メーカーが「顧客であり競合」になる特殊な構造を持つ。③メカトロ(位置決めテーブル)は装置メーカーとの共同設計に近く、買い手の交渉力が強い一方、採用後の継続性が高い。
需要側の構造は、エレクトロニクス50%・工作機械24%という設備投資サイクルへの二重依存で、この構造が10年の営業利益率▲1.3〜13.9%という振幅を生んでいる。

Conduct(企業行動・規制リスク)

企業行動の特徴は3つ。①非M&A・自前主義。買収で規模を追わず、製品設計の隙間(薄形・小型・高剛性・メンテナンスフリー)で差別化する。②需要に応じて生産と在庫を大きく絞る。FY25の在庫30億円圧縮とベトナム投資延期がその典型で、赤字を避ける代わりに需要回復時の供給余力が細る。③保守的ガイダンスと期中上方修正。2期連続で期初予想を大幅に上回っており、会社予想を額面どおりに受け取ると割高に見え、実際には割安になりやすい。
規制・外部リスクは、第1に米国関税(米州売上17.7%、ボストン営業所新設で対米強化中)、第2に中国向け半導体装置の輸出規制(中国売上16.1%で+56%の急成長がここに依存)、第3に為替(海外55%、1Q想定レートUSD159円で、円高10円は年間営業利益で数億円規模の下押しと推定される。感応度の開示値は未取得)。

Performance(業界トレンド・収益性への帰結)

業界の中期トレンドは、round1-2で整理したとおり「デモから量産へ」(ヒューマノイド世界出荷2025年1.8万台→2030年89万台)と生成AI向け半導体設備投資の継続である。両者は同社の直動・クロスローラ・メカトロのすべてに追い風で、1Q受注+112%はその初期症状と読める。SCPの帰結として、この構造で同社が持続的に高収益を出すには「稼働率を高く保ち続けること」しかない。固定費型の事業では利益率は稼働率の関数であり、FY23の13.9%もFY27予想の14.4%も高稼働の産物である。逆に需要が10〜15%落ちれば利益率は一桁前半に戻る。したがってこの銘柄の収益性は「技術の堀」より「需要サイクルの位置」で決まり、投資判断は業界分析(S)よりサイクルの認識(P)に重心を置くべきである。
15 / INVESTMENT THESIS

これらの分析結果をもとにした現在の投資妙味

結論。日本トムソンは「ヒューマノイド銘柄」としてではなく「受注が2倍になった半導体・ロボット向け精密部品の景気敏感株」として、短期〜中期で妙味がある。ただしそれは、ピーク利益に対する低PERという景気敏感株特有の罠を理解したうえでの話である。round1-2の「採用(短期〜中期)最有力」という結論は、1Qの上方修正(営業利益82→115億円)とB/B1.63で強化された。一方で当初想定した営業利益率10.9%は14.4%へ切り上がり、株価はその間に高値2,580円から1,735円へ調整した。
強気に見るなら。①予想PER12.8倍は上方修正後EPS136.92円ベースで、1Qの進捗(上期予想の49.9%)から見て2Qでの再修正余地がある。②B/B1.63、四半期受注323億円は過去最高で、今後2〜3四半期の売上は受注残で埋まっている。③ネットキャッシュ(現金230億円、有利子負債290億円、自己資本比率68%)と総還元性向50%・自社株買いにより下値が支えられる。④ヒューマノイド関連リストに未掲載=テーマとして値付けされていない。クロスローラ・直動・メカトロの3点セットは、ヒューマノイド量産期に「後から気づかれる」余地がある。⑤高値から33%調整しており、テーマ株の熱狂は一巡した後の水準にある。
弱気に見るなら。①10年の営業利益率レンジ▲1.3〜13.9%が示すとおり、FY27予想14.4%はサイクルのピーク圏であり、市場はピーク利益に低PERを付ける。②ROICは利益ピーク年でもWACC(概算7.9%)を下回り、平時は2〜4%。資本効率で見れば「良い事業」ではない。③受注+112%には半導体の大口案件と前倒し発注が含まれる可能性があり、受注残高が非開示のため質を検証できない。④中国依存(売上16%・成長の主因)は輸出規制と現地メーカーの価格競争に晒される。⑤設備投資が減価償却並みで、需要が構造的ならシェアを取りこぼす。⑥中計未達がほぼ確定しているのに目標の見直しがない。
投資妙味の判定。ミネベアミツミ(PER16倍、ROIC5.7%、営業赤字なし)が「壊れにくさに払う銘柄」なら、日本トムソンは「サイクルの上りに乗る銘柄」である。バリュエーションの根拠は、上方修正後EPS136.92円×PER12.8倍=1,735円が現在地で、2Qで通期営業利益が130億円台へ再修正されればEPS約155円×同PERで約2,000円が視野に入る一方、受注が前年比プラス幅を急速に縮めれば市場はピークアウトを織り込みPER10倍・1,400円前後まで調整しうる。期待値としては上振れ余地が下振れ幅をやや上回るが、確認すべきは2Q決算(11月上旬)での受注高と再修正の有無の1点に絞られる。ここで受注が前年比2桁増を維持しB/Bが1.2以上なら中期保有に格上げ、受注が前年割れに転じれば短期で撤退する——round1-2で設定した売買条件をそのまま維持する。
※本セクションは公開情報に基づく分析であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。
16 / WATCH POINTS & RISKS

今後の注目ポイントやリスク要因

注目ポイント(カタリスト・日程)

2027年3月期第2四半期決算:2026年11月上旬(前年は11月13日)。受注高が前年比2桁増を維持しB/Bが1.2以上か、通期営業利益115億円の再修正があるか。上期予想56億円に対し1Qで28億円を消化済み。
第3四半期決算:2027年2月上旬。中国向け・北米ロボット向けの受注が継続しているか。
通期決算・次期中期経営計画:2027年5月中旬。中計2026が最終年度を迎え、次期中計でベトナム新工場・国内増産にいくら投じるか、ROE・ROIC目標をどう置くか。
④ ヒューマノイド向けクロスローラ・直動の量産採用の公表。同社は「米国での成長案件」に言及済みだが、顧客名・数量は未開示。
⑤ 自己株式取得の追加設定(9/1に前回分完了)。総還元性向50%方針のもとで、FY27純利益95億円なら還元原資は約47億円。
⑥ 株価の年初来高値2,580円(6/22)を、2Q決算後に更新できるか。

リスク要因

サイクルのピークアウト。営業利益率は10年で▲1.3〜13.9%を往復。前回ピークFY23の2年後に2.2%へ落ちた前例がある。
受注の質。受注残高が非開示で、+112%に含まれる前倒し・二重発注の比率が検証できない。キャンセル条項の有無も未取得。
中国リスク。売上16%・成長の主因が中国の半導体関連。対中輸出規制の強化、現地メーカーの価格競争(波動歯車で先例)、景気減速。
米国関税。米州売上17.7%。日本・ベトナムからの輸出品に対する関税率変更が採算を直撃する。
為替。海外売上55%、1Q実績レートUSD159円。円高転換時は円換算利益が圧縮される(感応度の開示値は未取得)。
供給制約による機会損失。設備投資が減価償却並みで、需要が構造的に伸びた場合に納期でTHK・シェフラーにシェアを奪われる。
営業CFの振れ。10年で2度の営業CF赤字。需要急減期に在庫が積み上がる体質は変わっていない。
経営体制の若さ。細野体制1年半・CxO制導入半年で、今回の好況が実力かサイクルかを判別する材料がまだ乏しい。
SOURCES

出典一覧(分析日 2026-09-20)

https://finance.yahoo.co.jp/quote/6480.T
https://finance.yahoo.co.jp/quote/6480.T/financials
https://finance.yahoo.co.jp/quote/6480.T/ai-topics
https://www.ikont.co.jp/ir/finance/pdf/20271qkessan_r.pdf
https://www.ikont.co.jp/ir/finance/pdf/2027031q_rb.pdf
https://www.ikont.co.jp/ir/finance/pdf/20264qkessan_r-2.pdf
https://www.ikont.co.jp/ir/finance/pdf/2026034q_rb2.pdf
https://www.ikont.co.jp/ir/finance/pdf/2025034q_rb2.pdf
https://www.ikont.co.jp/ir/finance/pdf/202603_all.pdf
https://www.ikont.co.jp/ir/finance/pdf/202103_all.pdf
https://www.ikont.co.jp/ir/finance/pdf/20234qkessan_r.pdf
https://www.ikont.co.jp/ir/finance/pdf/20214qkessan_r.pdf
https://www.ikont.co.jp/ir/finance/pdf/20194qkessan_r.pdf
https://www.ikont.co.jp/ir/finance/pdf/2017kessan_r2.pdf
https://www.ikont.co.jp/ir/finance/pdf/202403_rb.pdf
https://www.ikont.co.jp/ir/finance/pdf/20260324-1.pdf
https://www.ikont.co.jp/ir/finance/fn04.html
https://www.ikont.co.jp/ir/finance/fn04_kako.html
https://www.ikont.co.jp/ir/finance/fn04_kako3.html
https://www.ikont.co.jp/product/industry/robot/index.html
https://www.ikont.co.jp/product/needle/ndl0805.html
https://finance.matsui.co.jp/stock/6480/settlement/index
https://dempa-digital.com/article/559208
https://dempa-digital.com/article/647454
https://www.nikkan.co.jp/articles/view/00750098
https://humanoidpress.jp/humanoid-robot-companies-stocks/
https://www.thk.com/jp/wordpress/wp-content/uploads/2026/02/260212_presentation_ja.pdf
https://www.nsk.com/jp-ja/company/news/2025/robotics-actuators/
https://finance.yahoo.co.jp/quote/6481.T / 6471.T / 6472.T / 6324.T(競合バリュエーション)
※The社史(the-shashi.com/tse/6480/)は本銘柄のページが存在せず(404)、kabutan・IRBANK・minkabu・バフェットコードは取得環境の制限により未取得。10年財務は同社決算短信・有価証券報告書から直接取得した。