6269 東証プライム FPSO

三井海洋開発

上期営業利益+70%でもPER10.9倍。ガイアナFPSO(Errea Wittu・Hammerhead)の建造元。受注残250億ドル、EPCI損失再発と受注の途切れが割安の理由。

01 / OVERVIEW

スナップショット

株価

9,255円

2026/9/18 終値(前日比+50円)

時価総額

約6,325億円

2026/9/18(発行済68,345,300株)

PER(会社予想)

10.92倍

予想EPS 847.45円(=5.41ドルの円換算)

PBR(実績)

2.37倍

BPS 3,913.12円

配当利回り

2.16%

2026/12期予想 年200円(前期140円)

信用倍率

63.48倍

買い残が売り残を大きく上回る

出典:Yahoo!ファイナンス 6269.T(2026/9/18取得)。年初来高値16,615円(2026/2/12)、年初来安値8,695円(2026/9/14)。株価は高値から約44%下げ、年初来安値の近くにある。一方、事業のほうは2026年上期に売上収益24.47億ドル(+18.0%)、営業利益2.93億ドル(+70.2%)と大きく伸びている。【通貨の注意】同社の財務諸表はIFRS・米ドル建て(2021年12月期から。2020年以前は日本基準・円建て)。本ページでは会社開示どおり米ドル(百万ドル/億ドル)で示し、円での値は Yahoo!ファイナンス等の円換算値を使う場合にその旨を書く。機能通貨が米ドルである理由は「販売先・仕入先との取引の大半が米ドルだから」と会社は説明している(IR FAQ)。

02 / SEGMENT

事業ごと・国/エリアごとの売上高比率

事業別 売上収益(2025年12月期、合計4,581百万ドル)

EPCI(FPSO建造) 2,892百万ドル / 63.1% O&M(操業・保守) 1,605百万ドル / 35.0% チャーター(サービスフィー) 51百万ドル / 1.1% その他 31百万ドル / 0.7%

事業別 売上収益(2026年上期、合計2,447百万ドル)

EPCI(FPSO建造) 1,616百万ドル / 66.0% O&M(操業・保守) 797百万ドル / 32.6% チャーター(サービスフィー) 25百万ドル / 1.0% その他 7百万ドル / 0.3%

国別 売上収益(2025年12月期、顧客所在地別、百万ドル)

ブラジル 2,537.8百万ドル / 55.4% ガイアナ 1,188.0百万ドル / 25.9% コートジボワール 355.7百万ドル / 7.8% セネガル 186.7百万ドル / 4.1% その他 313.1百万ドル / 6.8%

国別 売上収益の推移(百万ドル)

国2023年2024年2025年2025年構成比
ブラジル1,896.02,195.42,537.855.4%
ガイアナ823.71,385.21,188.025.9%
コートジボワール97.6118.0355.77.8%
セネガル450.2228.7186.74.1%
ガーナ/メキシコ97.7/84.3その他に含むその他に含む―
その他125.3259.1313.16.8%
合計3,574.94,186.54,581.2100%

主要顧客別 売上収益(百万ドル)

主要顧客(売上10%以上)2024年2025年2025年構成比
ExxonMobil Guyana1,379.01,188.025.9%
Equinor Energy do Brasil1,101.5849.018.5%
Shell Brasil Petróleo―688.115.0%

出典:2025 Investor Presentation(2026/2/16)、1H 2026 Investor Presentation(2026/8/7)(事業別)、2025年12月期 決算短信(2026/2/13)・2023年12月期 決算短信(地域別・主要顧客)。
会計上の区分について:同社は「浮体式石油生産設備の建造と関連サービス」の単一セグメントで、有報・短信にセグメント別の売上・利益はない。上の事業別の数字は、会社が説明資料で示している「EPCI/O&M/チャーター」の売上内訳である。
チャーター事業は売上の1%しかないが、小さい事業ではない。FPSOを持って貸す(チャーター)事業は、多くを持分法適用会社(案件ごとの特別目的会社)で行っているため、利益は売上ではなく「持分法投資利益」として入る。2026年上期の持分法投資利益は86.1百万ドルで、営業利益293.0百万ドルの約3割にあたる。
この構成から読み取れること:売上の約3分の2はEPCI(建造)で、案件の進み具合に応じて売上を計上するため年ごとの振れが大きい。O&Mは2024年の1,177百万ドルから2025年に1,605百万ドル(+36%)へ伸びた。地域はブラジルとガイアナの2カ国で8割を超え、顧客はExxonMobil・Equinor・Shellの3社で約6割を占める。売上の相手はほぼすべて海外で、2020年の有報でも「ほぼ100%が海外」とされている。

03 / HISTORY

創業からの歴史

主な沿革

年月出来事
1968年12月三井物産と三井造船の出資で(旧)三井海洋開発を設立
1986年4月最初のFPSO「Kakap Natuna」をインドネシアに投入(水深88m)
1987年6月モデック・テクニカル・サービスとして現法人を設立(1988年12月に「モデック」へ商号変更し事業を承継、1989年1月に旧社解散)
1991年3月三井造船の子会社となる
2001年米メキシコ湾に初のTLP(テンションレグ・プラットフォーム)を納入
2003年1月/7月「三井海洋開発」へ商号変更/東証2部に上場
2004年6月東証1部に指定
2006年係留システムの米SOFECを買収(51%)
2019〜2021年メキシコ向けFPSOの費用増、ブラジル沖チャーターFPSOの修繕(特別修繕費166.9億円)、コロナ禍での建造遅延が重なり3期連続の最終赤字。2021年は3.64億ドルの赤字
2021年三井E&S(旧三井造船)が保有株の一部を売却
2023年6月商船三井・三井物産を割当先とする第三者割当増資(1株1,264円、約150.9億円)
2024年3月三井物産出身の宮田裕彦氏が社長に就任
2024年8月商船三井が追加取得で15.00%の筆頭株主となり、持分法適用会社に
2025年3月/9月Shell「Gato do Mato」、ExxonMobil「Hammerhead」のEPCIを受注
2026年8月24日ガイアナ向け初のFPSO「Errea Wittu」(Uaru)が現地に到着
同社の出発点は、1968年に三井物産と三井造船が共同で作った海洋開発会社である。1970年代はジャッキアップ式掘削リグを作っていたが、1986年にインドネシアで最初のFPSO(浮体式海洋石油・ガス生産貯蔵積出設備)を投入し、ここから「海に浮かぶ油田プラント」の会社になった。1987年に現在の法人を設立し、1991年に三井造船の子会社、2003年に東証2部、2004年に東証1部へ上場した。
2000年代はブラジルの深海油田(プレソルト)とともに伸びた。国営ペトロブラスや欧州メジャーからFPSOを受注し、建造して、自社で持って貸し、操業も担うという「作る・貸す・動かす」を一社で行う形を作った。2006年には係留システムの米SOFECを買収している。
転機は2019〜2021年の3期連続赤字である。メキシコ向けFPSOの費用増、ブラジル沖のFPSO修繕、コロナ禍での工事遅延が重なり、2021年12月期は税引前で3.44億ドルの損失、親会社帰属で3.64億ドルの赤字、ROEは▲52.7%まで落ち込んだ。自己資本比率は15.5%まで下がった。ここから、親会社だった三井E&Sが持株を手放し、2023年に商船三井と三井物産が第三者割当増資を引き受け、現在は商船三井(15.00%)と三井物産(14.86%)が並ぶ株主構成になっている。

出典:Wikipedia(三井海洋開発)、Wikipedia(MODEC)、IR FAQ、有価証券報告書 第34期(2019年)(2019年の損失要因)、2021年12月期 決算短信(2021年の損失要因)、第三者割当増資(2023/4/28)、商船三井 2024/8/20、MODEC「Hammerhead EPCI受注」2025/9/30、MODEC「Errea Wittu到着」2026/8/24。1970年代のリグ建造・2001年TLP・2006年SOFEC買収はWikipedia(英語版)記載で、会社資料では確認できていない(参考扱い)。

04 / MISSION, VISION, VALUE

ミッション・ビジョン・バリュー

ビジョン:「海洋と人が調和しながら共生共栄できる世界を切り拓きます」
ミッション:「持続可能な未来の実現に向けて、独創的なフローティング・ソリューションを通じ、海洋が持つその可能性を解き放ちます」
コア・バリュー「OCEAN」:One team(多様性と開かれた対話)/Care(安全最優先、人・資産・環境を大切にする)/Empowered(先駆精神と相互信頼)/Agile(素早い変化対応と継続的改善)/iNtegrity(人権尊重とコンプライアンス)
理念そのものは「海洋」「浮体技術」が軸で、石油という言葉は入っていない。これは、FPSOで稼いだお金を浮体式洋上風力(i-TLP²)、FPSOのCO2回収(CycloneCC)、固体酸化物形燃料電池(SOFC、2027年までに試験予定)へ振り向ける方針と対応している。

中期経営計画2024-2026の財務目標と達成状況

指標2023年度実績2026年度目標(2025/2再設定)2025年度実績
親会社帰属当期利益96百万ドル300百万ドル360.7百万ドル(+20%超過)
ROE10.7%20.0%27.4%
PBR1.1倍1.0倍超2.37倍(2026/9/18)
理念を数字にしたのが中期経営計画2024-2026である。2026年度の目標(純利益3億ドル、ROE20%)は、2025年度実績(3.61億ドル、27.4%)の時点で1年前倒しで超えた。2026年度は現中計の最終年で、次の中計(2027年〜)で何を目標にするかが次の焦点になる。

出典:ビジョン、ミッション、コア・バリュー、中期経営計画2024-2026(2025/2/13更新)、2025 Investor Presentation(2026/2/16)(技術開発の取組み)、有価証券報告書 第40期(2025年)。

05 / LEADERSHIP

現経営者の特徴・過去の実績(レジリエンスの観点)

代表取締役社長は宮田裕彦(みやた・ひろひこ)氏、1962年11月17日生まれ。東京大学大学院工学系研究科工業化学専攻を修了し、1987年に三井物産に入社した。三井物産では電力事業開発部長、インフラ事業部長、2017年に執行役員事業統括部長、2020年に常務執行役員欧州・中東・アフリカ本部長、2022年に専務執行役員欧州総代表を務めた。2023年6月に三井海洋開発の取締役副社長執行役員に移り、2024年3月に社長に就任した。前任の金森健氏は会長に就いた。

宮田体制下の業績(百万ドル)

年度売上収益営業利益親会社帰属利益ROE年間配当
2023年(就任前年)3,574.9192.996.510.7%―
2024年(就任1年目)4,186.5322.9220.420.3%80円
2025年4,581.2437.6360.727.4%140円
2026年(会社予想)4,600460370―200円(予想)
【事実】就任後の2024・2025年は2期連続で増収増益、純利益は2023年の96.5百万ドルから2025年の360.7百万ドルへ3.7倍になり、年間配当は80円→140円→200円(予想)と上がった。中計目標の上方修正(2025年2月)と、1年前倒しの達成もこの期間である。2025年には、ExxonMobil(Hammerhead)とShell(Gato do Mato)という大手2社からEPCIを受注している。
【推察】レジリエンスの観点から見ると、宮田氏自身は「危機を乗り越えた経営者」というより「危機のあとを引き継いで利益を伸ばした経営者」である。最悪期の2021年赤字と、2023年の資本増強・株主再編は前任の金森体制で行われた。宮田氏の実績は、赤字の原因だった「固定価格で建造を請けてコスト超過を抱え込む」リスクを抑え、工事管理を徹底して利益率を上げたことにある(営業利益率は2023年5.4%→2025年9.6%)。三井物産で電力インフラと欧州・中東・アフリカを見てきた経歴は、長期契約の案件管理や、西アフリカ・ブラジルの顧客との関係づくりに合っている。一方で、宮田氏の在任中に大きな工事トラブルはまだ起きておらず、「問題が起きたときにどう動くか」はまだ試されていない。

出典:The社史、海事プレス 2024/2、2025年12月期 決算短信(2026/2/13)、2023年12月期 決算短信、中期経営計画2024-2026(2025/2/13更新)。

06 / LATEST EARNINGS

直近決算の予想・ガイダンスに対する結果

2025年12月期:会社予想と実績(百万ドル)

指標直前予想(2025/11/12修正前)修正後予想(2025/11/12)実績修正後予想比
売上収益3,7004,4004,581.2+4.1%
営業利益410440437.6-0.5%
税引前利益420500508.3+1.7%
親会社帰属利益270350360.7+3.1%
年間配当120円140円140円―

2026年12月期 上期(1〜6月)実績と通期予想(百万ドル)

指標2025年上期2026年上期前年同期比通期予想(据え置き)進捗率(参考)2025年の上期進捗
売上収益2,074.32,447.1+18.0%4,60053.2%45.3%
営業利益172.2293.0+70.2%46063.7%39.4%
税引前利益196.5307.9+56.7%50061.6%38.7%
親会社帰属利益145.1224.0+54.4%37060.6%40.2%
営業CF336.8645.2――――
中間配当60円100円+40円年200円――

参考:円換算値

(円換算、Yahoo!ファイナンス表示)2026年上期通期予想
売上収益3,974億円7,200億円
営業利益475億円720億円
親会社帰属利益363億円579億円
2025年12月期は、11月に大きく上方修正した予想をさらに少し上回って着地した。売上は修正後予想比+4.1%、純利益は+3.1%。営業利益だけは437.6百万ドルと修正後予想440百万ドルをわずかに下回った。短信によれば、増益の理由は①FPSO建造工事の順調な進捗、②前受金にかかる利息収入の増加、③持分法適用会社向け貸付金の引当金戻入益であり、②③は本業の建造利益とは別の要因である。
2026年12月期の会社予想は「ほぼ横ばい」(売上+0.4%、営業利益+5.1%、純利益+2.6%)で始まり、日経は2026年2月13日に「予想平均下回る」と報じた。株価の高値(2月12日、16,615円)は決算発表の前日である。【推察】市場が期待していた増益ペースと会社予想のギャップが、その後の株価調整のきっかけの一つになった可能性がある。
上期は予想を大きく上回るペースである。営業利益の進捗率は63.7%で、前年同期(39.4%)より24ポイント高い。それでも会社は8月7日に通期予想を据え置いた。【推察】同社はEPCIの進捗によって四半期ごとの利益が振れやすく、下期に大きな費用が出る可能性を見込んで慎重にしているとも読めるし、下期(11月中旬の第3四半期決算、2月の本決算)に上方修正の余地があるとも読める。どちらになるかは、下期のEPCI案件の進み方しだいである。

出典:2025年12月期 決算短信(2026/2/13)、業績予想修正(2025/11/12)、2026年12月期 中間決算短信、1H 2026 Investor Presentation(2026/8/7)、Yahoo!ファイナンス 決算情報、MarketScreener、日本経済新聞 2026/2/13。2025年上期進捗率は2025年上期実績÷2025年通期実績で当サイトが計算。「直前予想」は2025/11/12の修正開示に記載された前回予想値で、期初予想そのものかどうかは未確認。

07 / REVENUE & PROFIT

売上高・税引前利益の推移(直近10年間)

売上収益(IFRS・百万ドル、FY2020〜FY2026会社予想)

2,737 FY20 3,900 FY21 2,740 FY22 3,575 FY23 4,186 FY24 4,581 FY25 4,600 FY26予

税引前利益(IFRS・百万ドル)

-115.8 FY20 -344.3 FY21 54.8 FY22 214.7 FY23 308.0 FY24 508.3 FY25 500.0 FY26予

営業利益(IFRS・百万ドル)

-138.3 FY20 -317.6 FY21 75.3 FY22 192.9 FY23 322.9 FY24 437.6 FY25 460.0 FY26予

売上高(日本基準・億円、FY2016〜FY2020)

2,300 FY16 1,912 FY17 2,219 FY18 3,326 FY19 3,099 FY20

税金等調整前当期純利益(日本基準・億円)※FY20は未確認

288.0 FY16 237.8 FY17 293.5 FY18 -241.3 FY19 未確認 FY20

10年データ表

年度(12月期)基準・通貨売上営業利益税引前利益親会社帰属利益営業利益率
FY16日本基準・億円2,299.9180.7288.0210.17.9%
FY17日本基準・億円1,911.8114.5237.8194.56.0%
FY18日本基準・億円2,219.1149.3293.5218.96.7%
FY19日本基準・億円3,326.4▲48.4▲241.3▲182.3▲1.5%
FY20日本基準・億円3,099.3▲216.1未確認(経常▲128.5)▲130.8▲7.0%
FY20IFRS・百万ドル2,736.6▲138.3▲115.8▲131.9▲5.1%
FY21IFRS・百万ドル3,899.7▲317.6▲344.3▲364.0▲8.1%
FY22IFRS・百万ドル2,739.875.354.837.42.7%
FY23IFRS・百万ドル3,574.9192.9214.796.55.4%
FY24IFRS・百万ドル4,186.5322.9308.0220.47.7%
FY25IFRS・百万ドル4,581.2437.6508.3360.79.6%
FY26(会社予想)IFRS・百万ドル4,60046050037010.0%
FY26 上期実績IFRS・百万ドル2,447.1293.0307.9224.012.0%
【通貨と会計基準の切れ目】同社は2021年12月期からIFRS・米ドル表示に変わった。2016〜2020年は日本基準・円建てであり、2020年はIFRSで組み替えた比較値(ドル)もあるため両方を載せた。日本基準では持分法投資利益(チャーター事業の利益の多く)が営業利益の下の「営業外」に入るため、経常利益・税前利益が営業利益を大きく上回る(例:2016年 営業利益180.7億円に対し持分法投資利益68.9億円)。参考として、会社の説明資料ではドル換算の売上・純利益が2018年1,998百万ドル/197百万ドル、2019年3,036百万ドル/▲166百万ドルと示されている。
10年の流れは「安定期→3期連続赤字→V字回復→過去最高益」である。2016〜2018年は利益率6〜8%の安定期、2019〜2021年はメキシコ案件・ブラジルFPSOの修繕・コロナ禍で赤字が続いた。2022年に黒字へ戻り、2025年は税引前5.08億ドル・純利益3.61億ドルでいずれも過去最高、営業利益率は9.6%まで上がった。2026年上期は営業利益率12.0%で、さらに上がっている。

出典:有価証券報告書 第35期(2020年)、有価証券報告書 第34期(2019年)、有価証券報告書 第33期(2018年)、有価証券報告書 第32期(2017年)(日本基準)、有価証券報告書 第36期(2021年)・2021年12月期 決算短信(FY20 IFRS比較値・FY21)、2023年12月期 決算短信(FY22・FY23)、2025年12月期 決算短信(2026/2/13)(FY24・FY25・FY26予想)、2026年12月期 中間決算短信、2025 Investor Presentation(2026/2/16)(ドル換算参考値)。FY17営業利益は第32期有報の値(114.48億円)。第33期有報の比較欄では114.36億円と表示されており、わずかな差がある。

08 / PER

PER(直近10年間)

期末PER(倍、有価証券報告書記載値)※赤字期はPER算出不能

FY16 FY17 FY18 FY19 FY20 FY21 FY22 FY23 FY24 FY25 現在 5.0 8.4 5.9 15.5 10.5 6.5 14.4 10.9 期末PER(倍)

年度別 EPS・PER

年度(12月期)EPS期末PER備考
FY16372.52円5.0倍日本基準
FY17344.89円8.4倍
FY18388.23円5.9倍
FY19▲323.47円▲8.2倍(赤字)算出不能
FY20▲232.05円▲8.1倍(赤字)算出不能
FY21▲6.46ドル▲1.9倍(赤字)IFRS
FY220.66ドル15.5倍
FY231.55ドル10.5倍
FY243.23ドル6.5倍
FY255.28ドル14.4倍
現在(2026/9/18)847.45円(予想、5.41ドル)10.92倍会社予想ベース
PERの10年は「5〜8倍の割安放置 → 赤字で算出不能 → 回復期の上昇 → 現在11倍へ低下」である。2016〜2018年は純利益200億円前後でもPERは5〜8倍と低かった。建造の固定価格契約でいつ損失が出るかわからない会社として、市場が大きく割り引いていたと考えられる。実際に2019〜2021年は赤字になった。2025年末は業績回復と株価上昇でPER14.4倍まで上がったが、2026年は株価が高値から4割以上下げたことで、予想PER10.9倍まで戻っている。
【推察】現在の10.9倍は、過去の平常時(5〜8倍)より高く、2025年末(14.4倍)より低い。「長期のO&M・チャーター収入が増え、利益が安定してきた」と見るなら、昔の5〜8倍に戻る理由は薄い。逆に「EPCIの利益はまた崩れうる」と見るなら、まだ下がる余地がある。どちらに寄るかは、この先のEPCI案件で損失が出ないかどうかで決まる。

出典:有価証券報告書 第35期(2020年)(FY16〜FY20)、有価証券報告書 第40期(2025年)(FY21〜FY25)、Yahoo!ファイナンス 6269.T(現在)。赤字期のPERは有報記載どおり負の値で、グラフには描いていない。

09 / CAPITAL RETURNS

ROIC・WACC・ROEの推移(直近10年間)

ROE(実績)・ROIC(概算)・WACC(概算)(%)※下限▲20%で打ち切り、*印は枠外

0 FY16 FY17 FY18 FY19 FY20 FY21 FY22 FY23 FY24 FY25 18.7 15.0 15.1 -13.3 -12.3 -52.7* 5.6 10.7 20.3 27.4 10.3 5.9 6.8 -2.8 -14.4 -41.7* 6.5 8.6 13.3 16.4 7.6 7.7 7.8 6.9 6.3 6.9 8.6 9.1 9.6 9.2 ROE ROIC WACC

年度別 ROIC・ROE・WACC(ROIC・WACCは当サイト試算)

年度営業利益NOPAT(×0.7)投下資本(持分+有利子負債)ROICROE(実績)米10年債WACCROIC−WACC
FY16180.7億円126.5億円1,229.7億円(持分のみ)※10.3%18.7%2.43%7.6%+2.7
FY17114.5億円80.1億円1,365.0億円(持分のみ)※5.9%15.0%2.58%7.7%-1.8
FY18149.3億円104.5億円1,527.4億円(持分のみ)※6.8%15.1%2.71%7.8%-1.0
FY19▲48.4億円▲33.9億円1,218.5億円(持分のみ)※▲2.8%▲13.3%1.76%6.9%-9.7
FY20▲216.1億円▲151.3億円1,050.2億円▲14.4%▲12.3%1.08%6.3%-20.7
FY21▲317.6百万ドル▲222.3百万ドル532.5百万ドル(持分のみ)※▲41.7%▲52.7%1.76%6.9%-48.6
FY2275.3百万ドル52.7百万ドル811.6百万ドル(持分のみ)※6.5%5.6%3.53%8.6%-2.1
FY23192.9百万ドル135.1百万ドル1,562.8百万ドル8.6%10.7%4.06%9.1%-0.5
FY24322.9百万ドル226.0百万ドル1,694.4百万ドル13.3%20.3%4.63%9.6%+3.7
FY25437.6百万ドル306.3百万ドル約1,868百万ドル16.4%27.4%4.21%9.2%+7.2
WACCの算出前提(すべて当サイトの仮定。会社開示ではない):
①リスクフリーレート=米10年債利回り(同社は米ドルで事業をしているため)。各年度末の値の代わりに、翌年1月の月平均値(multpl.com)を使った。
②株主資本コスト=リスクフリーレート+β1.2×株式リスクプレミアム5.5%。β1.2は「受注産業で業績の振れが大きい」ことを踏まえた仮定値で、実測値は未確認。
③負債コスト=リスクフリーレート+2.0%(BBB格相当を想定した仮定。Fitchは2025年4月に同社をBBB/安定的へ格上げ)、実効税率30%。
④資本構成=負債25%:株主資本75%で固定。実績のDebt/Capitalizationは2023年37%、2024年30%、2025年22%、2026年6月末20%で、その中間をとった。
式:WACC=0.75×(Rf+6.6%)+0.25×(Rf+2.0%)×0.7=0.925×Rf+5.3%。現在(米10年債4.96%、2026/9/22)で計算すると約9.9%。
ROICの算出前提:NOPAT=営業利益×(1−30%)。投下資本=親会社所有者帰属持分(日本基準は総資産×自己資本比率)+有利子負債。有利子負債は、確認できた年(FY20:134.96億円、FY23:570百万ドル、FY24:514百万ドル、FY25:Debt/Equity 29%・Debt/Capitalization 22%からの逆算で約410〜420百万ドル)だけ足した。※印の年は有利子負債が未確認のため持分だけで割っており、ROICは実際より高めに出ている。また日本基準の年は持分法投資利益が営業利益に入らないため、ROICは実態より低めに出ている。
読み取れること:ROICがWACCを安定して上回ったのは2024年以降である。2016年を除くと、2017〜2023年はROICがWACCを下回るか赤字で、株主から見て「資本コストを稼げていない」状態が7年続いた。2025年はROIC16.4%対WACC9.2%で差は+7ポイント、ROEは27.4%と10年で最も高い。【推察】この差が続くかどうかが株価の評価を決める。ROEが高いのは利益が増えたことに加え、自己資本比率が30%台と低めであることも効いている。

出典:ROE・自己資本比率・EPSは有価証券報告書 第35期(2020年)・有価証券報告書 第40期(2025年)、営業利益は各期決算短信・有報、有利子負債は有価証券報告書 第35期(2020年)(FY20)・2024 Investor Presentation(FY23・FY24)・2025 Investor Presentation(2026/2/16)(FY25比率、Fitch格上げ)・1H 2026 Investor Presentation(2026/8/7)(2026年6月末:有利子負債421百万ドル、現預金1,914百万ドル)、米10年債はmultpl.com 米10年債利回り。

10 / CASH FLOW

営業・投資・財務・フリーキャッシュフローの推移(直近10年間)

キャッシュフロー(IFRS・百万ドル、FY2020〜2026年上期)

FY20 FY21 FY22 FY23 FY24 FY25 26上期 営業CF 投資CF 財務CF FCF

年度別 キャッシュフロー

年度基準・単位営業CF投資CF財務CFFCF(営業+投資)期末現金
FY16日本基準・億円303.5▲383.7▲68.5-80.2421.9
FY17日本基準・億円▲33.2▲35.9▲57.0-69.0283.3
FY18日本基準・億円451.9▲41.8▲170.4+410.2507.7
FY19日本基準・億円▲32.5262.6▲207.5+230.1521.4
FY20日本基準・億円310.0▲7.4▲138.9+302.6647.5
FY20IFRS・百万ドル302.2▲6.2▲130.1+296.0―
FY21IFRS・百万ドル152.2▲220.5266.0-68.3810.1
FY22IFRS・百万ドル▲208.9▲56.8▲49.0-265.7492.6
FY23IFRS・百万ドル485.9▲210.5241.1+275.31,013.9
FY24IFRS・百万ドル560.9▲122.6▲186.3+438.31,253.3
FY25IFRS・百万ドル244.05.5▲194.2+249.61,327.0
2026上期IFRS・百万ドル645.23.9▲58.9+649.1現預金1,914
同社のキャッシュフローは「前受金」で大きく動く。EPCI契約では発注者から工事の前にお金を受け取るため、受注が増えた年や工事の初期は営業CFが膨らみ、工事が進むと減る。2026年上期の営業CF645百万ドルと現預金1,914百万ドルも、会社は大型EPCI案件の前受金によるものと説明している。つまり手元の現金のうちかなりの部分は、これから建造費として出ていくお金であり、「有利子負債421百万ドルを差し引いた約15億ドルが自由に使えるネットキャッシュ」と見るのは正しくない。
投資CFのマイナスは主にチャーター用FPSOを持つ持分法適用会社への出資・貸付である。2023年の第三者割当増資(約150.9億円)は資金使途が「チャーター事業の特別目的会社への投融資」とされており、2023年の財務CF+241.1百万ドル・投資CF▲210.5百万ドルはこれと対応している。2024年以降は財務CFがマイナス(借入返済・配当)で、借金を減らしながら配当を増やす段階に入っている。

出典:有価証券報告書 第35期(2020年)(FY16〜FY20日本基準)、有価証券報告書 第36期(2021年)(FY20 IFRS比較値)、有価証券報告書 第40期(2025年)(FY21〜FY25)、2026年12月期 中間決算短信、1H 2026 Investor Presentation(2026/8/7)。FCFは営業CF+投資CFで当サイトが計算。

11 / INVESTMENT & M&A

直近の投資・M&A状況

直近のM&Aは確認できない。中期経営計画は「戦略的資源配分」の中でR&D・M&A・人的資本への投資を挙げているが、2024〜2026年に同社が企業買収を行ったという開示は、今回調べた範囲の短信・説明資料にはなかった。代わりに、お金と人は「受注したFPSOの建造」と「新技術」に向けられている。

主な投資・資本取引・受注

時期案件・投資内容
2023年6月第三者割当増資(資本の受け入れ)商船三井10,162,300株・三井物産1,775,000株、1株1,264円、総額約150.9億円。使途はチャーター事業の特別目的会社への投融資
2024年8月商船三井が持分法適用会社化商船三井が市場で89,500株を買い増し、持株比率15.00%の筆頭株主に。FPSOの操業・資金調達・人材で協業
2025年3月Gato do Mato(Shell、ブラジル)EPCI+O&M20年日量12万バレル、生産開始2028年予定
2025年9月Hammerhead(ExxonMobil、ガイアナ)EPCI+O&M10年日量約15万バレル、生産開始2029年予定(政府承認が条件)
2026年1月SOFC(固体酸化物形燃料電池)の開発で意向表明Eld Energy・Deltaと、FPSO向け船舶用SOFC発電システムを開発
継続脱炭素・新事業FPSO向けCO2回収(CycloneCC)、浮体式洋上風力向けi-TLP²
2026年上期受注高481.2百万ドル(大型EPCIの新規受注はなし)
【推察】2026年上期は大型の新規受注がなかった。受注残(会社説明資料ベース)は2025年末の269億ドルから2026年6月末の250億ドルへ19億ドル減った。建造が進んで売上になった分だけ受注残が減っている状態で、次の大型受注が取れるかどうかが2027年以降の売上を左右する。

出典:第三者割当増資(2023/4/28)、商船三井 2024/8/20、2025 Investor Presentation(2026/2/16)、MODEC「Hammerhead EPCI受注」2025/9/30、MODEC SOFC 2026/1/30、2026年12月期 中間決算短信、1H 2026 Investor Presentation(2026/8/7)、中期経営計画2024-2026(2025/2/13更新)。

12 / SEGMENT GROWTH

主要事業ごとの成長性

受注残(会社説明資料ベース、十億ドル)

FYE2024 FYE2025 1Q2026 1H2026 受注残合計(十億ドル)

受注残の内訳(十億ドル)

時点合計EPCIO&Mチャーター
2024年末22.02.99.3未確認(差引で約9.8)
2025年末26.95.7(過去最高)12.2(過去最高)8.8
2026年3月末25.9未確認未確認未確認
2026年6月末25.0未確認(差引で約4.7)11.88.5(残り平均11.4年)

主要事業ごとの成長性(百万ドル)

事業FY24売上FY25売上前年比26年上期売上成長の見通し(事実/推察)
EPCI(建造)2,9102,892-0.6%1,616【事実】Uaru・Raia・Gato do Mato・Hammerheadの4件が建造中。【推察】Uaruは2026年に完工するため、次の大型受注がなければ2027年以降に減る可能性
O&M(操業・保守)1,1771,605+36.4%797【事実】受注残118億ドル。建造したFPSOごとに長期O&M契約(Gato do Mato20年、Hammerhead10年)が付く。【推察】最も安定して伸びる柱
チャーター4851+6.3%25【事実】チャーター船団15基、受注残85億ドル・平均残存11.4年。利益の多くは持分法投資利益(上期86.1百万ドル)。MV18の撤去完了(2026年5月)など、古い船は契約終了に向かう
EPCI(建造):売上の6割超を占めるが、4案件の進み具合しだいで大きく振れる。2025年は売上横ばいだったが、新しく始まったGato do MatoとHammerheadが、終わりに近い案件の減少を補った。EPCIの受注残は2024年末29億ドルから、2件の大型受注で2025年末57億ドル(過去最高)へ増えたが、2026年6月末は差し引きで約47億ドルと、建造が進んだ分だけ減っている。会社は「世界のFPSO案件のパイプラインは堅調」とし、ブラジルで入札・FEED段階の案件が16件、ガイアナで評価段階5件・入札/FEED段階3件あると示している(2025年末時点)。
O&M(操業・保守):いちばん確実に伸びている。受注残は2018年の68億ドルから2025年末の122億ドルへ増えた。FPSOを1基作ると、その後10〜20年のO&M契約が付く仕組みで、建造の実績がそのまま将来の安定収入になる。2025年10月にはEquinorのBacalhauでO&Mが始まった。
チャーター(保有・賃貸):量は減りつつ質で稼ぐ。受注残は2025年末88億ドルから2026年6月末85億ドルへ減り、残りの契約年数の合計も146年から138年に減った。最近の受注はチャーターではなくEPCI+O&M型が中心で、【推察】会社は資金負担の大きいチャーター(船を自分で持つ)を増やすより、建造と操業で稼ぐ方向へ寄せている。

出典:2024 Investor Presentation、2025 Investor Presentation(2026/2/16)、1Q 2026 Investor Presentation(2026/5/13)、1H 2026 Investor Presentation(2026/8/7)。受注残は持分法適用会社分を含む会社説明資料ベース。決算短信ベースの連結受注残高は2026年6月末で17,021百万ドル(2026年12月期 中間決算短信)で、定義が異なる。

13 / COMPETITIVE POSITION

競争優位性・業界内でのポジション

同業比較:MODEC vs SBM Offshore(2026年上期)

項目三井海洋開発(MODEC)SBM Offshore(オランダ)
2026年上期 売上(IFRS)2,447百万ドル(+18.0%)2,785百万ドル(▲2%)
2026年上期 純利益(IFRS)224百万ドル(親会社帰属)325百万ドル
受注残250億ドル(2026年6月末)356億ドル(プロフォーマ・Directional、過去最高)
船団チャーター15基+O&Mのみ4件16基(2026年6月の平均生産200万boe/日超)
ガイアナでの実績Errea Wittu(5基目、2026年8月到着)、Hammerhead(7基目、2029年予定)Liza Destiny、Liza Unity、Prosperity、ONE GUYANA(2026年2月に売却、操業は継続)
2026年通期見通し売上4,600百万ドル、営業利益460百万ドル(据え置き)Directional売上約76億ドル、EBITDA約19億ドル(上方修正)
株主還元年200円予想(配当性向23.6%)、自社株買いの開示なし上期配当1億ドル、自社株買い2.7億ドル(8/5時点で約44%実施)
【事実】FPSOの大手はSBM Offshore、MODEC、Yinsonで、Bumi Armada、BW Offshoreなどが続く(業界紙の整理)。SBMとMODECはどちらも「建造(EPCI)+保有・賃貸(リース)+操業(O&M)」を一社で持つ。SBMは売上の定義(Directional)が違うため単純比較はできないが、受注残・船団・株主還元のいずれもSBMのほうが一回り大きい。
MODECの堀は3つある。①ブラジル深海での長い実績:売上の55%がブラジル。ペトロブラス向けチャーター船(MV32は2044年まで、MV33は2048年まで)など、20年を超える長期契約を持つ。②建造から操業まで一貫して担う力:O&M受注残118億ドルは建造実績の裏返しで、新しく参入する会社がすぐには真似できない。③三井グループの後ろ盾:商船三井(15.00%)と三井物産(14.86%)が株主で、2023年には増資を引き受けた。資金面の信用は2025年4月のFitch格上げ(BBB)にも表れている。
ガイアナでの意味:ガイアナで今動いている4基のFPSOはすべてSBM製である。【推察】MODECはErrea Wittu(5基目)とHammerhead(7基目)で、SBMがほぼ独占していたExxonMobilのガイアナ案件に入り込んだことになる。ExxonMobilが発注先を2社に分けたのは、1社に頼るリスクを避けるためとも考えられる。
弱点:①過去(2019〜2021年)に建造の費用増で大きな赤字を出しており、固定価格の建造契約には常に損失リスクがある。②顧客・地域が集中している(上位3社で約6割、ブラジル+ガイアナで8割超)。③船体は中国、上部設備はシンガポールなど外部の造船所に頼っており、造船所の混雑やコスト上昇の影響を受ける。

出典:SBM Offshore Half Year 2026 Earnings、1H 2026 Investor Presentation(2026/8/7)、2025 Investor Presentation(2026/2/16)、2025年12月期 決算短信(2026/2/13)、株主構成、offshoreindustry.co.uk(業界構造。業界紙のため参考扱い)、MODEC「Errea Wittu到着」2026/8/24。世界シェアの具体的な数値は未確認。

14 / SCP ANALYSIS

SCP理論からの分析(市場構造・企業行動・成果)

Structure(市場構造)

売り手は少数の寡占、買い手も少数の大手。FPSOを建造から操業まで一括で請けられるのはSBM・MODEC・Yinsonなど数社にとどまる。買い手はExxonMobil、ペトロブラス、Equinor、Shellといった大手石油会社で、1件あたり数十億ドル規模(Hammerheadは開発全体で68億ドル)の案件を、数年に一度、限られた数だけ発注する。
参入障壁は高い。深海のFPSOは1基あたり数年の建造期間と巨額の運転資金、20年以上の操業実績が求められる。加えて船体(中国)と上部設備の組立(シンガポール)を担う造船所の空き枠が限られ、業界紙は「2027年までの船体の引き渡し枠はほぼ埋まっている」と報じている。

Conduct(企業行動・規制リスク)

企業行動:①リスクの小さい契約形態への移行。最近の受注はチャーター(自社で船を持つ)ではなく、EPCI+O&M(建造して引き渡し、操業を請ける)が中心。②工事管理の強化で利益率を上げる(営業利益率2023年5.4%→2025年9.6%→2026年上期12.0%)。③株主還元の強化(配当80円→140円→200円予想)。④脱炭素技術(CO2回収、SOFC)と浮体式洋上風力への投資。
規制・政治リスク:①産油国の政府承認(Hammerheadの生産開始2029年は「政府承認が条件」)。②ガイアナとベネズエラの国境紛争(エセキボ地域)。2025年3月に米国務長官ルビオ氏がガイアナを訪問し、ベネズエラがガイアナやExxonMobilを攻撃すれば「ベネズエラ政権にとって非常に悪い日になる」と述べた。2026年1月3日には米軍がベネズエラを攻撃してマドゥロ大統領を拘束しており、地域の安全保障環境は大きく変わっている。③脱炭素政策による、長期的な石油開発投資の減少。

Performance(成果=市場動向・業界トレンド)

市場動向・業界トレンド:①深海油田の開発は続いている。会社資料では、中南米・西アフリカの深海案件は損益分岐点が1バレル40ドル未満と低いとされる。②ガイアナのStabroek鉱区の生産量は2025年11月に日量90万バレルに達し、2026年6月は日量86.9万バレル。Uaru(Errea Wittu、日量25万バレル)が加わると日量100万バレルを超える見通しで、ExxonMobilは2027年に日量約130万バレル、設備能力は日量150万バレルを目標にしている。③造船所の枠が足りないため、FPSO会社の価格交渉力が強まっている(業界紙)。
成果(Performance):MODECの2025年の営業利益率9.6%、ROE27.4%は10年で最も高い。SBMも2026年の見通しを上方修正しており、業界全体で「売り手に有利な時期」が続いている。【推察】ただし成果の源泉は「造船所の枠不足」と「深海油田の開発ブーム」という業界構造であり、構造が変わる(原油安で発注が減る、造船所が増える)と利益率は元に戻りうる。

出典:offshoreindustry.co.uk(業界紙・参考扱い)、ExxonMobil 2025/9/22、ExxonMobil Guyana 2025/11/12、Rio Times、Oil & Gas Journal、AS/COA、Wikipedia「2026 United States intervention in Venezuela」、米議会調査局 IN12618、2025 Investor Presentation(2026/2/16)、SBM Offshore Half Year 2026 Earnings。

15 / THEME LINK

ルビオ外交テーマとの接点(事実と推察を分けて)

事実の整理

区分内容
事実2025年3月27日、ルビオ国務長官がガイアナを訪問。ベネズエラがガイアナやExxonMobilを攻撃すれば「ベネズエラ政権にとって非常に悪い日になる」と発言(AS/COA)
事実2026年1月3日、米国がベネズエラを攻撃しマドゥロ大統領を拘束。その後、ルビオ氏の国務省がベネズエラの暫定政権と調整し、石油収入の管理に関与。ベネズエラは1月29日に外資を認める炭化水素法改正(Wikipedia・米議会調査局)
事実ガイアナStabroek鉱区の生産量は日量約87〜90万バレル(2025年11月に90万、2026年6月は86.9万)
事実MODEC建造のErrea Wittu(Uaru、日量25万バレル、原油貯蔵約200万バレル)は2026年8月24日にガイアナに到着。ExxonMobilは生産開始を2026年第4四半期としている
事実MODECはHammerhead(日量約15万バレル、2029年予定)のEPCIとO&M10年も受注
事実2025年のガイアナ向け売上は1,188.0百万ドル(全体の25.9%)、顧客はExxonMobil Guyana
未確認MODECとベネズエラの取引・受注・交渉。会社資料(2026年上期の説明資料)にベネズエラへの言及はない
【推察】接点はあるが、間接的である。ルビオ外交の「米州の資源を米国の影響下で開発する」という方針は、ガイアナの油田開発(米ExxonMobilが主導)の安全を高める方向に働く。ガイアナはMODECの売上の4分の1を占める国で、ここで米国が安全を保証することは、ExxonMobilの追加開発(Hammerheadに続く案件)を後押しし、MODECの受注機会を増やしうる。
【推察】ただし、効果を大きく見積もるのは危険である。①MODECの受注はExxonMobilの開発判断で決まり、外交で直接決まるわけではない。②ベネズエラの石油開発が米国の関与で再開した場合、ベネズエラの油田は陸上・浅海が中心とされ、深海向けのFPSO需要につながるかは不明(MODECとの関係は未確認)。③逆に、ベネズエラ産原油が市場に戻れば原油価格を下げる要因となり、深海開発全体の投資判断を慎重にさせる可能性もある。

出典:AS/COA、Wikipedia「2026 United States intervention in Venezuela」、米議会調査局 IN12618、ExxonMobil Guyana 2025/11/12、Rio Times、MODEC「Errea Wittu到着」2026/8/24、Oil & Gas Journal、MODEC「Hammerhead EPCI受注」2025/9/30、2025年12月期 決算短信(2026/2/13)、1H 2026 Investor Presentation(2026/8/7)。

16 / INVESTMENT THESIS

これらの分析結果をもとにした現在の投資妙味

結論。MODECは「利益は過去最高を更新中、株価は高値から4割下げ」という、業績と株価の向きが逆になった銘柄である。予想PER10.9倍、ROE27.4%、配当利回り2.2%という数字だけを見れば割安に見える。ただし、その割安さは「EPCIでまた大きな損失が出るかもしれない」「大型受注が途切れて2027年以降に売上が減るかもしれない」という2つの不安の裏返しでもある。投資妙味があるかどうかは、この2つの不安が当たらないかどうかにかかっている。
ストーリー:50年前に三井物産と三井造船が作った海洋開発会社は、ブラジルの深海油田とともに世界有数のFPSO会社になった。2019〜2021年には建造の損失で3期連続赤字に陥り、自己資本比率は15%まで下がったが、商船三井と三井物産の資本を受け入れ、工事管理を立て直して、2025年に過去最高益を出した。その間に、SBMがほぼ独占していたガイアナで2基の受注を取り、その1基目が2026年8月に現地に着いた。米国がベネズエラに介入し、ガイアナの安全を後押しするなかで、同社はその「米州の資源開発」の現場で船を作っている。
強気に見る条件:①下期も上期のペースが続き、通期予想(営業利益460百万ドル)の上方修正がある(上期の進捗率63.7%)。②2026年後半〜2027年に新たな大型EPCI(ブラジル、ガイアナ、西アフリカ)を受注し、受注残が再び増える。③Errea Wittuが予定どおり2026年第4四半期に生産を始め、O&M収入へ切り替わる。④次の中計(2027年〜)で、ROE目標の引き上げや自社株買いなど株主還元の強化が示される。これらがそろえば、PER10.9倍は2025年末の14.4倍へ戻る余地がある。
弱気に見る条件:①大型受注が取れず、Uaru完工後にEPCI売上が減る(2026年上期の受注高は481百万ドルにとどまった)。②建造中4案件のいずれかでコスト超過が出る。③原油価格の下落で深海開発の投資判断が遅れる。④信用倍率63.48倍と買い残が多く、株価が戻る局面では信用買いの売りが上値を抑える。
投資妙味の整理:【推察】現在の株価は「業績の中身」より「需給(信用買い残)」と「次の受注が見えないこと」を強く反映している。次に注目するのは、①11月中旬の第3四半期決算での通期予想の扱い、②新しいEPCI受注の発表、の2点である。この2つのどちらかで良い材料が出れば、業績と株価のずれが縮む可能性がある。逆にどちらも出ないまま2027年の会社予想が減益になれば、PERはさらに下がりうる。本ページは売買を勧めるものではなく、判断の材料を整理したものである。
17 / WATCH POINTS & RISKS

今後の注目ポイント・リスク要因

注目ポイント(カタリスト)

① 2026年12月期 第3四半期決算(例年11月中旬、2025年は11月12日):通期予想の上方修正があるか。営業利益の上期進捗率63.7%が下期にどう動くか。
② Errea Wittu(Uaru)の生産開始(ExxonMobilは2026年第4四半期と説明):予定どおり始まれば建造リスクが1件消え、O&M収入へ移る。
③ 新規EPCI受注:ブラジル(入札・FEED段階16件)、ガイアナ(評価段階5件、入札・FEED段階3件)、西アフリカ。受注残250億ドルが増えに転じるか。
④ 次の中期経営計画(2027年〜、2026年度決算の2027年2月ごろの発表が想定される):ROE・株主還元の目標。
⑤ 信用買い残の整理:信用倍率63.48倍がどこまで下がるか。
⑥ ガイアナ・ベネズエラ情勢と米国の対米州政策。

リスク要因

① 建造(EPCI)の損失リスク:2019〜2021年の赤字はこれが原因。建造中は4案件(Uaru、Raia、Gato do Mato、Hammerhead)。
② 受注の空白:2026年上期の受注高は481百万ドルで、受注残は半年で19億ドル減った。
③ 顧客・地域の集中:上位3社(ExxonMobil Guyana 25.9%、Equinor 18.5%、Shell 15.0%)、ブラジル+ガイアナで8割超。
④ 原油価格:深海案件の損益分岐点は40ドル未満とされるが、原油安が続けば発注のタイミングが遅れる。ベネズエラ産原油の市場復帰は下げ要因になりうる。
⑤ 為替:業績はドル建て。円高ドル安になると、円で見た利益・株価評価が下がる。配当は円で決めている。
⑥ 造船所への依存:船体・上部設備を外部の造船所(中国・シンガポールなど)に頼っており、遅れやコスト上昇の影響を受ける。
⑦ 地政学:ガイアナ・ベネズエラの国境紛争、ブラジル・西アフリカの政策変更。
⑧ 脱炭素政策:長期的な石油開発投資の減少。

出典:2026年12月期 中間決算短信、1H 2026 Investor Presentation(2026/8/7)、2025 Investor Presentation(2026/2/16)、2025年12月期 決算短信(2026/2/13)、Yahoo!ファイナンス 6269.T、Rio Times、MODEC「Hammerhead EPCI受注」2025/9/30。

SOURCES

出典一覧

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https://www.ullet.com/6269.html
https://offshoreindustry.co.uk/fpso-contractor-market-2026-modec-sbm-and-bumi-armada-order-book-squeeze/
分析日:2026-09-23(株価・時価総額は2026/9/18終値)。未確認:FY2020日本基準の税金等調整前当期純利益、FY16〜FY19・FY21〜FY22の有利子負債、2026年6月末のEPCI受注残、βの実測値、世界シェアの数値、MODECとベネズエラの関係。