5714 東証プライム 非鉄・リサイクル

DOWAホールディングス

高純度ガリウム・20種超の金属回収。PER9.4倍だが今期増益の約9割は金属相場。メキシコ鉱山持分は重要鉱物政策と間接的な接点。

01 / OVERVIEW

スナップショット

株価

9,095円

2026/9/18 終値(前日比+1.89%)

時価総額

約5,638億円

563,792百万円(発行済61,989,206株)

PER(会社予想)

9.44倍

予想EPS 963.68円(2027/3期)

PBR(実績)

1.17倍

BPS 7,785.57円

配当利回り

3.72%

2027/3期予想 年338円

信用倍率

45.47倍

買い残が売り残を大きく上回る

出典:Yahoo!ファイナンス(finance.yahoo.co.jp/quote/5714.T、2026/9/18終値ベースで取得)。年初来高値12,380円(2026/5/15)、年初来安値7,456円(2026/1/5)。現値は高値から26.5%下にある。予想PER9.4倍・配当利回り3.7%という「安さ」は、金属価格が高い今の水準が1年続く前提の数字である。2027年3月期の経常利益計画800億円は、前期比増益分256億円のうち「金属価格+為替+海外鉱山の持分法利益」だけで約269億円を占める(第17節)。第1四半期の純利益234.5億円は通期予想570億円の41.1%に達したが、その中身も貴金属・ベースメタル価格とヘッジ評価益が中心で、会社は通期予想を据え置いた。

02 / SEGMENT

事業ごと・国/エリアごとの売上高比率

事業セグメント別 外部顧客への売上高(2026年3月期、連結売上高7,454.1億円)

製錬 3,521.7億円 / 47.2% 金属加工 1,472.6億円 / 19.8% 環境・リサイクル 1,111.1億円 / 14.9% 電子材料 961.4億円 / 12.9% 熱処理 340.0億円 / 4.6% その他・調整(差額) 47.4億円 / 0.6%

事業セグメント別 セグメント利益(経常利益ベース、2026年3月期)

製錬 196.8億円(外部売上比5.6%) 環境・リサイクル 165.1億円(同14.9%) 金属加工 97.9億円(同6.6%) 熱処理 27.1億円(同8.0%) 電子材料 11.4億円(同1.2%) その他・調整(差額) 45.0億円

2027年3月期 会社計画のセグメント経常利益(合計800億円)

製錬 530億円(前期196.8億円) 環境・リサイクル 145億円(同165.1億円) 金属加工 71億円(同97.9億円) 電子材料 25億円(同11.4億円) 熱処理 23億円(同27.1億円) その他 6億円

国・エリア別売上高 — 未確認(代替として海外の主要拠点を掲載)

地域主な拠点(会社サイト掲載)位置づけ
メキシコMinera Tizapa(亜鉛鉱山、39%出資)、Minera Plata Real(Los Gatos鉱山の運営会社、30%出資)、DOWA METALTECH MEXICO(めっき)、DOWA THERMOTECH MEXICO(熱処理)鉱山は持分法適用。亜鉛精鉱を秋田製錬に供給
米国NPGM USA(貴金属リサイクル、ペンシルベニア州)、DOWA METALS & MINING AMERICA、DOWA THT AMERICA(熱処理、オハイオ州)、DOWA INTERNATIONAL貴金属・PGMリサイクル原料の集荷など
アジアタイ・インドネシア・中国などで廃棄物処理、インドで熱処理の設備投資環境・リサイクルと熱処理の海外展開
国・エリア別売上金額未確認有報の「地域ごとの情報」を今回の取得範囲で読み取れなかった

出典:2026年3月期決算短信 セグメント情報(DOWA IR PDF)、2025年度決算説明資料(presentation_fy2025_fullyear.pdf)、会社サイト「北米・中米グループ会社」(hd.dowa.co.jp)。「その他・調整」は連結値からの差額で当サイトが計算した。利益率は「セグメント利益÷外部顧客売上高」で当サイトが計算(セグメント間売上を含めていないので参考値)。
国・エリア別売上高は未確認。有価証券報告書(第123期)の該当箇所を今回の取得範囲では読めなかったため、金額・比率は載せていない。
売上の半分が製錬だが、利益の稼ぎ方はそれほど偏っていない。2026年3月期は、売上47%の製錬が利益の36%、売上15%の環境・リサイクルが利益の30%を稼いだ。環境・リサイクル(廃棄物処理・リサイクル原料の集荷)は外部売上に対する利益率が約15%と高く、しかもセグメント間売上が1,160.7億円ある。集めた原料を自社の製錬所に回しているということで、これがDOWAの「循環型ビジネスモデル」の中身である。
ところが2027年3月期の会社計画では、製錬の経常利益が196.8億円から530億円へ2.7倍になり、全体の66%を占める。残りの環境・金属加工・熱処理・その他はいずれも減益の計画だ。今期の増益は、ほぼ製錬(金属価格と海外鉱山)ひとつで作る計画になっている。

03 / HISTORY

創業からの歴史(藤田組〜)

始まりは明治の政商・藤田伝三郎です。1869年に大阪で藤田伝三郎商社を興し、1881年に「藤田組」と改称しました。1884年9月18日、明治政府から秋田県の小坂鉱山の払い下げを受け、この日を創業日としています。銀鉱石が尽きたあとは、銅・鉛・亜鉛・金・銀が混じり合った難処理の「黒鉱(くろこう)」を製錬する技術を20世紀初頭に確立しました。多くの金属が混じった原料から複数の金属を取り分ける技術は、いまのリサイクル製錬にそのままつながっています。1915〜16年には花岡鉱山と柵原鉱山を取得しました。
1937年3月11日に現在の法人(株式会社藤田組)を設立し、1945年に「同和鉱業」へ改称、1949年10月に上場しました。1955年にはホテル事業を藤田観光として分離しています(現在も持分法適用会社)。転機は1985年のプラザ合意です。急な円高で国内の鉱山・製錬は採算がとれなくなり、1990年から多角化を始めました。2000年には「事業構造改革」で5事業に絞り込みます。2006年に持株会社体制へ移り、商号をDOWAホールディングスに改め、本社を秋葉原に移しました。
持株会社化のあと、「鉱山会社」から「都市鉱山の製錬会社」へ姿を変えていきます。2007年に小坂製錬へリサイクル専用炉を建て、2008年にTSL炉を本格稼働させて、電子部品くずなどから約20種類の金属を回収・製品化する「複合リサイクル製錬所」にしました。2009年には東南アジアで廃棄物処理を始め、その後リチウムイオン電池のリサイクルにも参入しています。一方で海外鉱山の権益は残しました。1994年に生産を始めたメキシコのTizapa(ティサパ)亜鉛鉱山に39%、2014年に参画し2019年7月に生産を始めた同じくメキシコのLos Gatos(ロス・ガトス)鉱山に30%を出資しています。2017年10月に5株を1株にする株式併合を行い、2025年5月に「中期計画2027」を発表、2026年6月には関口明氏が会長CEO、福田健作氏が社長COOとなる体制に移りました。

出典:会社サイト「沿革」(hd.dowa.co.jp/ja/company/history.html)、「会社概要」(hd.dowa.co.jp)、Wikipedia「DOWAホールディングス」(ja.wikipedia.org、1869年・1881年・1915〜16年・1945年・1949年・1955年の記述)、有価証券報告書 第118期(S100LNJD、株式併合)、DOWAメタルマイン「Tizapa Mine」(dowa.co.jp)・「Los Gatos Mine」(dowa.co.jp)、日刊鉄鋼新聞 2014年12月26日(japanmetaldaily.com)、2026年2月10日 役員異動の開示(PDF)。

04 / MISSION, VISION, VALUE

ミッション・ビジョン・バリュー

企業理念(ミッション)は「地球を舞台とした事業活動を通じて、豊かな社会の創造と資源循環型社会の構築に貢献する」です。ビジョンは「本業とする資源循環と優れた素材・技術の提供を進化させ、安心な未来づくりに貢献し続ける」。価値観(バリュー)は5項目で、「社会の課題と正しく向き合う」「誠実で責任ある行動をとる」「公正な競争を行う」「変化を受け入れて、挑戦の機会とする」「多様性を認め、個人を尊重する」です。このほか12項目の行動規範を定めています。
これを数値目標にしたのが中期計画2027(2025〜2027年度、2025年5月発表)です。最終年度(2028年3月期)の目標は営業利益470億円、経常利益600億円、ROA9%以上、ROE10%以上。基本戦略は「価値創造」と「ボラティリティの抑制と信頼の構築」の2本柱です。ボラティリティの抑制をわざわざ戦略に掲げているのは、会社自身が「金属価格で利益が大きく振れること」を最大の経営課題と見ているからだと当サイトは読んでいます。株主還元は「配当性向35%/1株当たり150円」と説明資料に書かれています(150円を下限とする意味と推察しますが、文言の正確な定義は未確認)。
注意点として、2027年3月期の会社計画(経常利益800億円)は、中計最終年度の目標600億円を1年前倒しで大きく上回っています。ただしその上振れ分は金属価格によるもので、会社は中計目標を見直していません(2026年9月時点の確認範囲)。

出典:会社サイト「企業理念」(hd.dowa.co.jp/ja/company/philosophy.html)、「中期計画」(hd.dowa.co.jp/ja/ir/strategy/plan.html)、2025年度決算説明資料(PDF)。

05 / LEADERSHIP

現経営者の特徴・過去の実績(レジリエンスの観点)

最高経営責任者は関口明(せきぐち・あきら)氏で、1960年10月18日生まれです。1983年に入社し、2006年にDOWAメタルマイン取締役、2011年に小坂製錬の社長、2013年に執行役員兼DOWAメタルマイン社長を務めました。2018年に代表取締役社長となり、2025年に社長執行役員CEO、2026年6月24日から代表取締役会長CEOです。日本鉱業協会の会長も2回(2018〜19年、2024〜25年)務めています。製錬・資源の現場を一貫して歩いてきた人で、特に小坂のリサイクル製錬を率いた経歴は、今の「循環型」戦略と直接つながっています。所有株式は10,444株です。
2026年6月24日付で福田健作氏が代表取締役社長COOに就きました。1992年入社で、亜鉛事業部門での経験が長い人です。会社は交代の理由を「経営体制の一層の強化を図り、今次中期計画をさらに強力に推進するため」としています。関口氏がCEOとして残るので、実質的には段階的な引き継ぎです。福田氏の生年と詳しい経歴は未確認です。
レジリエンス(回復力)の観点から、関口氏の社長在任中(2018年〜)を数字で振り返ります。①就任1年目の2019年3月期は営業利益186.7億円と、この10年で最も低い水準でした。②2021年3月期は営業CFが▲30.9億円のマイナスでしたが、翌2022年3月期に営業利益638.2億円・ROE17.6%とこの10年の最高を記録しました。③2023年3月期以降は3期続けて営業利益300〜450億円に戻り、ROEは7%台でした。この間、2023〜24年にTizapa鉱山で労働組合をめぐる紛争が起き、米国がUSMCAの迅速対応メカニズム(RRM)の審査を要請しました(2024年4月3日)。Peñolesの開示では、2024年のTizapaの鉱石処理量は前年比34.6%減っています。④2026年3月期は、投資有価証券売却益249.6億円を計上して純利益624.6億円(過去最高)とし、特別配当100円と約100億円の自社株買いを実施しました。
評価:利益の上下は、経営の巧拙より金属価格の波で説明できる部分が大きいです。それでも、この間に自己資本比率を44.4%(2021年3月期)から57.3%(2026年3月期)へ上げ、有利子負債(借入地金を除く)を約1,540億円から906.9億円へ減らしました。守りの財務を固め直したことは確かな実績で、Tizapaの停滞をはさみながら還元を増やせたのはそのおかげです。

出典:会社サイト「略歴:関口 明」(hd.dowa.co.jp/ja/company/officer/02.html)、2026年2月10日「代表取締役の異動および役員の人事異動」(PDF)、米国労働省 2024年4月3日(dol.gov)、Peñoles「Tizapa」(penoles.com.mx)、2021年3月期・2026年3月期決算短信(2021/3、2026/3)。有利子負債は短期借入金・CP・社債・長期借入金の合計で当サイトが計算した(2021年3月末は約1,540億円、2026年3月末は906.9億円。借入地金は2021年3月末381.8億円、2026年3月末540.5億円で別に存在する)。

06 / LATEST EARNINGS

直近決算の予想・ガイダンスに対する結果

2026年3月期:会社予想の推移と実績

指標期初予想(2025/5)3Q時修正(2026/2)実績(2026/5/14)期初比修正後比
売上高6,920億円7,100億円7,454.1億円+7.7%+5.0%
営業利益240億円270億円341.9億円+42.5%+26.6%
経常利益340億円450億円543.3億円+59.8%+20.7%
親会社株主帰属純利益270億円540億円624.6億円+131%+15.7%
年間配当159円318円(うち特別100円)368円(普通268円+特別100円)+209円+50円

2027年3月期 第1四半期 実績 vs 通期会社予想

指標1Q実績(2026年4〜6月)前年同期比通期予想(据え置き)進捗率
売上高2,533.9億円+58.2%9,410億円(+26.2%)26.9%
営業利益247.5億円+281.0%530億円(+55.0%)46.7%
経常利益325.3億円+277.5%800億円(+47.3%)40.7%
親会社株主帰属純利益234.5億円+266.4%570億円(▲8.7%)41.1%
持分法による投資利益62.7億円+287%――
製錬 売上/経常利益1,257億円/228億円+515億円/+192億円経常530億円43%
環境・リサイクル 売上/経常利益652億円/40億円+162億円/+4億円経常145億円28%
電子材料 売上/経常利益520億円/20億円+294億円/+26億円経常25億円80%
金属加工 売上/経常利益465億円/27億円+134億円/+19億円経常71億円38%
熱処理 売上/経常利益84億円/2億円+10億円/▲0億円経常23億円9%

1Qの経常利益 増減要因(前年同期比、主なもの、億円)

製錬:金属価格差 +78億円 製錬:持分法(海外鉱山) +61億円(Tizapa 35・Los Gatos 34) 製錬:在庫評価(ヘッジ評価益) +43億円 製錬:為替(円安) +20億円 金属加工:銅価格(一過性) +15億円 電子材料:在庫評価改善 +5億円 電子材料:太陽電池用銀粉など増販 +17億円 金属加工:自動車向け増販 +9億円 製錬:原料条件悪化 ▲10億円
2026年3月期は、期初予想を大きく上回って着地しました。ただし中身は均一ではありません。第3四半期累計(4〜12月)の営業利益は127.1億円(前年同期比▲50.4%)と弱く、第4四半期(1〜3月)だけで営業利益214.8億円、経常利益323.8億円を稼いでいます(通期−9カ月累計で当サイトが計算)。純利益624.6億円のうち、税引前で249.6億円は投資有価証券売却益で、本業の利益ではありません。
2027年3月期第1四半期は、会社の説明を見るかぎり「相場で稼いだ四半期」です。経常利益は前年同期の約86億円から325.3億円へ約239億円増えました。このうち金属価格・為替・在庫評価・海外鉱山の持分法・銅価格の一過性要因を足すと約222億円で、増益分の約9割が相場連動になります(補足資料の要因分解から当サイトが集計)。会社は「当第1四半期末にかけて銀価格が下落したことに伴ってヘッジ取引評価益を計上」したと説明しており、銀価格の下落が逆に評価益を生むという、ヘッジ会計の効き方にも注意が必要です。進捗率41%でも通期予想を据え置いたのは、補足資料が下期に向けて逆風を見込んでいるためです。第1四半期の実績は銅13,324ドル/t・亜鉛3,463ドル/t・1ドル159.5円で、いずれも通期前提(銅12,000ドル・亜鉛3,100ドル・155円)より有利でした。

出典:2027年3月期第1四半期決算短信 2026年8月7日(DOWA IR PDF)、同 決算補足資料(PDF)、2026年3月期決算短信(PDF)、2026年3月期第3四半期決算短信(PDF)、2025年3月期決算短信(PDF、期初予想)。1Qのセグメント数値は補足資料の億円表示(端数処理あり)。要因分解の数値は補足資料の図表から読み取ったもので、合計は増益額と完全には一致しない。

07 / REVENUE & PROFIT

売上高・税引前利益の推移(直近10年間)

売上高(FY2017〜FY2026、3月期、億円・日本基準)+2027年3月期会社計画

4,105 FY17 4,548 FY18 4,529 FY19 4,851 FY20 5,880 FY21 8,318 FY22 7,801 FY23 7,172 FY24 6,787 FY25 7,454 FY26 9,410 FY27計画

税金等調整前当期純利益(億円)

367.4 FY17 349.7 FY18 235.0 FY19 287.6 FY20 388.6 FY21 770.9 FY22 459.3 FY23 437.7 FY24 386.0 FY25 781.0 FY26

年度別 損益(億円)

年度(3月期)売上高営業利益経常利益税引前利益純利益営業利益率持分法投資利益
FY174,105.0339.9365.0367.4261.78.3%―
FY184,547.5309.5363.6349.7246.96.8%―
FY194,529.3186.7243.1235.0149.94.1%―
FY204,851.3259.6290.0287.6173.95.4%―
FY215,880.0374.5372.0388.6218.26.4%―
FY228,317.9638.2760.7770.9510.17.7%―
FY237,800.6446.1555.0459.3250.45.7%52.1
FY247,171.9300.0447.5437.7278.54.2%97.7
FY256,786.7322.3436.0386.0271.34.7%90.3
FY267,454.1341.9543.3781.0624.64.6%152.9
FY27計画9,410530800未開示5705.6%―

出典:有価証券報告書 第118期(S100LNJD、FY17〜FY21の売上高・経常利益・純利益)、第123期(S100YGIN、FY22〜FY26)、会社サイト業績ハイライト(hd.dowa.co.jp)、松井証券(finance.matsui.co.jp)。営業利益・税引前利益は各年の決算短信(2017/3、2019/3、2021/3、2022/3、2024/3、2026/3)。FY25の営業利益は松井証券・会社サイトの322.26億円。持分法投資利益はFY23〜FY26のみ取得(FY17〜FY22は未確認)。
売上は10年で1.8倍になったが、営業利益はほぼ横ばい。売上は4,105億円から7,454億円へ伸びた。一方で営業利益は340億円前後で上下し、営業利益率は8.3%(FY17)から4.6%(FY26)へ下がった。製錬の売上は金属価格そのもの(地金の売値)で膨らむので、売上の伸びは会社の実力とほとんど関係がない。
利益のピークはFY22(営業638億円・税前771億円)で、金属高と円安が重なった年だった。FY26の税前781億円は、投資有価証券売却益249.6億円を除けば約531億円。経常利益と営業利益の差(FY26で約201億円)の大半は、海外鉱山などの持分法投資利益(152.9億円)で、この部分も金属価格とTizapa・Los Gatosの操業で決まる。

08 / VALUATION

PERの推移(直近10年間)

期末PER(有価証券報告書の株価収益率、倍)

FY17 FY18 FY19 FY20 FY21 FY22 FY23 FY24 FY25 FY26 9.1 9.1 14.4 9.6 12.6 6.5 10.1 11.4 10.2 8.3 期末PER(倍)

年度別 EPS・PER・逆算期末株価

年度(3月期)EPS(実績)期末PER逆算期末株価(EPS×PER)
FY17442.16円9.07倍4,010円
FY18417.21円9.13倍3,809円
FY19253.22円14.37倍3,639円
FY20293.92円9.63倍2,830円
FY21368.45円12.56倍4,628円
FY22857.32円6.54倍5,607円
FY23420.76円10.09倍4,245円
FY24467.90円11.39倍5,329円
FY25455.60円10.16倍4,629円
FY261,049.83円8.32倍8,735円
2026/9/18 時点963.68円(会社予想)9.44倍9,095円(実勢)
同・有価証券売却益などを除いた参考値――FY27予想には大きな一過性益の開示なし(未確認)
算出方法:FY17〜FY26は有価証券報告書の「株価収益率」をそのまま使った。逆算期末株価はEPS×PERで当サイトが計算した参考値。FY17のEPSは2017年10月の株式併合(5株→1株)を期首に行ったものとして遡って修正された値。
DOWAのPERは10年間ほぼ一桁台から12倍の範囲に収まっている。FY19の14.4倍は利益が落ち込んだ年(分母が小さい)で、FY22の6.5倍は利益がピークだった年(分母が大きい)。利益の山でPERが下がり、谷でPERが上がるという、景気敏感株(シクリカル株)の典型的な形である。市場はDOWAの利益をもともと「相場次第で上下するもの」と見て、ピーク利益に高い倍率をつけてこなかった。
現在の予想PER9.4倍は、この10年の中央値(約9.9倍)とほぼ同じ。FY27の予想EPS963.68円は金属高の前提に立っているので、低PERは「割安」の証拠というより、市場が今期の利益を一時的な高水準とみなしているサインと読むのが自然である(推察)。

出典:有価証券報告書 第118期・第123期「株価収益率」「1株当たり当期純利益」(S100LNJD、S100YGIN)、Yahoo!ファイナンス(2026/9/18)。同業(三井金属・三菱マテリアル・住友金属鉱山)との比較PERは未確認。

09 / CAPITAL RETURNS

ROIC・WACC・ROEの推移(直近10年間)

ROIC(営業利益ベース概算)・ROE・WACC(概算)(%)

FY17 FY18 FY19 FY20 FY21 FY22 FY23 FY24 FY25 FY26 10.8 9.1 5.5 7.3 9.9 14.3 9.1 5.6 5.7 5.3 ROIC概算 12.6 10.8 6.3 7.2 8.5 17.6 7.6 7.8 7.0 14.6 ROE 8.3 8.3 8.3 8.3 8.3 8.3 8.3 8.3 8.3 8.3 WACC概算

年度別 NOPAT・投下資本・ROIC・ROE・WACC

年度(3月期)NOPAT(億円)投下資本≒自己資本(億円)ROIC(営業)ROIC(持分法込み)ROE(実績)WACC(概算)スプレッド(営業ROIC−WACC)
FY17237.92,193.010.8%―12.64%約8.3%+2.5pt
FY18216.62,388.19.1%―10.78%約8.3%+0.8pt
FY19130.72,372.05.5%―6.30%約8.3%▲2.8pt
FY20181.72,480.57.3%―7.17%約8.3%▲1.0pt
FY21262.12,657.29.9%―8.50%約8.3%+1.6pt
FY22446.73,134.614.3%―17.62%約8.3%+6.0pt
FY23312.33,448.79.1%10.6%7.61%約8.3%+0.8pt
FY24210.03,730.25.6%8.2%7.76%約8.3%▲2.7pt
FY25225.63,984.05.7%7.9%7.03%約8.3%▲2.6pt
FY26239.34,555.55.3%8.6%14.63%約8.3%▲3.0pt

ROICの計算方法:NOPAT=営業利益×(1−実効税率30%)。投下資本は本来「自己資本+有利子負債」だが、有利子負債の10年分の系列は未確認のため、自己資本(総資産×自己資本比率、有報の値)で代用した。有利子負債を確認できた2年で補正すると、FY21は(262.1÷(2,657.2+約1,540))=約6.2%、FY26は(239.3÷(4,555.5+906.9))=約4.4%で、表の値より低くなる。借入地金(FY26末540.5億円)まで入れるとさらに下がる。「持分法込み」はNOPATに持分法投資利益を足したもの(海外鉱山の利益を事業の成果に含める考え方)。
WACCの前提(10年一律):リスクフリーレート2.9%(2026年8月末の日本10年国債利回り。当サイトの6617・6479分析と同じ前提で、今回あらためて確認はしていない)、マーケットリスクプレミアム5.5%、β1.2(非鉄・景気敏感株として市場より高めに仮定。実測βは未確認)、株主資本コスト=2.9%+1.2×5.5%=9.5%。負債コスト1.5%(税引後1.05%、仮定)。資本構成は時価ベースで株式5,638億円:有利子負債906.9億円(借入地金を除く)=86:14。WACC=9.5%×0.86+1.05%×0.14≒8.3%。過去の金利は今より低かったので、FY17〜FY23の実際のWACCは6〜7%台だった可能性が高い(推察)。
結論:営業利益ベースのROICは、FY22(14.3%)を除いてWACCと同じか下回っている。FY24〜FY26は5%台で、自己資本だけで割ってもWACCに届かない。持分法利益(海外鉱山)を足すと8〜9%台となり、ほぼWACC並みになる。つまりDOWAは、国内事業だけでは資本コストを稼げておらず、メキシコの鉱山権益の配当・持分利益で帳尻を合わせている構造である。ROEが14.6%(FY26)に跳ねたのは、有価証券売却益と金属高によるもので、中計目標の「ROE10%以上」を安定して超えられるかは今期以降の数字で確かめる必要がある。

10 / CASH FLOW

営業・投資・財務・フリーキャッシュフローの推移(直近10年間)

キャッシュフロー4種(FY2017〜FY2026、億円)

FY17 FY18 FY19 FY20 FY21 FY22 FY23 FY24 FY25 FY26 営業CF 投資CF 財務CF FCF

年度別 キャッシュフロー(億円)

年度(3月期)営業CF投資CF財務CFFCF(営業+投資)
FY17293.9-259.5-71.634.4
FY18111.3-340.1240.9-228.8
FY19375.6-510.3159.4-134.7
FY20551.1-378.1-65.7173.0
FY21-30.9-229.4115.9-260.3
FY22599.1-113.4-311.9485.7
FY23507.3-303.4-197.6203.9
FY241,186.3-262.6-592.0923.7
FY25128.3-414.2-41.2-285.9
FY2652.4121.3-100.2173.7
参考:棚卸資産の増減(営業CF内)FY24 +619.0/FY25 ▲526.6/FY26 ▲814.4設備投資(有形固定資産取得)FY25 ▲458.6/FY26 ▲346.0自社株買い FY26 ▲99.9/配当 FY26 ▲90.2―

出典:有価証券報告書 第118期(S100LNJD、FY17〜FY21)、第123期(S100YGIN、FY22〜FY26)。符号は取得した表で落ちていたものがあるため、各年の現金及び現金同等物の期末残高の増減と照らして確かめた(FY17は2017年3月期決算短信で財務CF▲71.6億円を確認)。FY22〜FY26の符号はUllet(ullet.com)とも一致する。棚卸資産・設備投資・自社株買い・配当は2024年3月期・2026年3月期決算短信。
10年通算のFCFは約+1,085億円だが、その85%はFY24の1年(+923.7億円)である。営業CFは▲30.9億円(FY21)から1,186.3億円(FY24)まで大きく振れる。原因は利益ではなく在庫で、金属価格が上がると同じ量の原料・仕掛品を持つだけで運転資金が膨らむ。FY24は在庫が619億円減って現金が入り、FY25〜FY26は合計1,341億円在庫が積み上がって現金が出た。FY26の営業CFは52.4億円しかなく、経常利益543.3億円のわずか1割である。
FY26のFCFがプラス(173.7億円)だったのは、投資CFが+121.3億円と「回収」側に回ったためで、投資有価証券の売却(売却益249.6億円)が効いている。本業の現金創出力は、今の金属高の局面ではむしろ細っている点は、利益の数字と分けて見る必要がある。在庫は価格が下がれば現金として戻るので、金属価格が下がる局面では逆に営業CFが膨らむ可能性がある(推察)。

11 / INVESTMENT & M&A

直近の投資・M&A状況

大型M&Aは確認できず、投資は「集荷・処理の拠点」と「提携」が中心です。設備投資(有形固定資産の取得)はFY25が458.6億円、FY26が346.0億円で、減価償却費(FY26で309.7億円)と同じ程度の水準です。2025年度(2026年3月期)の研究開発費は84億円(会社サイト)。会社は決算説明資料で「M&Aは検討継続、新規領域への展開を検討」としていますが、具体的な案件は開示されていません。
環境・リサイクルの拠点拡大。熊本県宇城市のリサイクル拠点(2025年1月に開業の発表、2025年8月竣工と説明資料に記載)、栃木県での環境・リサイクル施設用地の取得(2025年4月)、中国・タイ拠点の増強を進めています。廃棄物処理は地域ごとの許認可ビジネスなので、拠点を増やすことがそのまま集荷力になります。
提携と技術開発(2026年)。2026年3月30日、クラレとDOWAエコシステムが活性炭の再生による資源循環事業の共同検討を始めました。2026年4月23日には金属リサイクル分野での戦略的提携を発表しています(説明資料によれば相手先は日本軽金属。提携内容の詳細は未確認)。2026年6月には使用済みリチウムイオン電池からニッケル・コバルトの硫酸塩を回収するプロセスを開発し、2026年9月10日には電動車のモーター由来のレアアース磁石リサイクル技術の実証事業が環境省の公募に採択されました。
資本政策。2026年2月に約100億円の自社株買いを実施し(CF計算書で99.9億円の支出を確認)、2026年3月期は特別配当100円を含む年368円を配当しました。原資の一部は投資有価証券の売却(売却益249.6億円)です。何を売ったのか(政策保有株の銘柄名)は未確認です。

出典:2026年3月期決算短信(PDF)、2025年度決算説明資料(PDF)、2025年度中間期 経営戦略説明会資料(PDF)、会社ニュース一覧(hd.dowa.co.jp/ja/news.html)、クラレとの共同検討の発表(hd.dowa.co.jp)、会社サイト「よくわかるDOWA」(研究開発費)。

12 / SEGMENT GROWTH

主要事業ごとの成長性

セグメント別の成長性(2026年3月期実績→2027年3月期計画、1Q実績)

セグメントFY26 外部売上(前期比)FY26 経常利益FY27計画 経常利益(前期比)FY27 1Q 経常利益(前年同期差)成長ドライバーと制約
環境・リサイクル1,111.1億円(+26.1%※)165.1億円145億円(▲12%)40億円(+4億円)廃棄物処理の受注は堅調。一方でPCB処理の減少、タイ最終処分場の維持費増。拠点投資で集荷を増やす段階
製錬3,521.7億円(+37.0%※)196.8億円530億円(+169%)228億円(+192億円)金・銀・PGM・銅・亜鉛の価格とTizapa・Los Gatosの持分利益で決まる。量の成長より価格の影響が圧倒的に大きい
電子材料961.4億円(▲36.6%※)11.4億円25億円(+119%)20億円(+26億円)太陽電池用銀粉、GaAs基板・高純度金属・LED。1Qは新製品と銀粉が好調。増産投資を検討中
金属加工1,472.6億円(+14.4%※)97.9億円71億円(▲27%)27億円(+19億円)自動車向け伸銅品・めっき。原料・為替差で今期は減益計画
熱処理340.0億円(+0.7%※)27.1億円23億円(▲15%)2億円(▲0億円)工業炉・受託熱処理。インドで積極投資。中計では40億円目標

中期計画2027 最終年度(2028年3月期)のセグメント経常利益目標(合計600億円)

製錬 中計FY28目標 235億円(FY27計画530億円) 環境・リサイクル 160億円(同145億円) 金属加工 85億円(同71億円) 電子材料 60億円(同25億円) 熱処理 40億円(同23億円) その他 20億円(同6億円)
成長性の読み方:中計の最終年度目標(600億円)と今期計画(800億円)を並べると、方向が逆になっています。製錬は今期530億円に対して中計目標235億円で、会社自身が「今期の製錬利益は相場による上振れ」と見ていることがわかります。その一方で、環境・リサイクル(145→160億円)、電子材料(25→60億円)、熱処理(23→40億円)、金属加工(71→85億円)は、中計目標のほうが今期計画より高くなっています。相場以外の成長エンジンは電子材料と環境・リサイクルで、特に電子材料は60億円目標に対してFY26実績が11.4億円と距離があり、達成できるかどうかが「相場に頼らない利益」を測る物差しになります(推察)。

出典:2026年3月期決算短信(PDF、※前期比はセグメント間を含む売上高の増減率として短信に記載された値)、2025年度決算説明資料(PDF、FY27計画・中計目標のセグメント内訳)、2027年3月期1Q決算補足資料(PDF)。中計目標の各セグメント値は説明資料の表から読み取った値で、合計600億円と一致する。

13 / COMPETITIVE POSITION

競争優位性や業界内でのポジション

①「集める力」と「分ける力」がそろっていること。環境・リサイクル部門が廃棄物・スクラップを集め、小坂製錬(秋田県)の複合リサイクル製錬で約20種類の金属を回収・製品化します。会社は「20種類以上の金属」を回収していると説明しています。黒鉱の製錬で培った「混ざった原料から複数の金属を取り出す」技術が土台で、銅と鉛の両方を1か所で処理できる国内では珍しい製錬所です(日刊鉄鋼新聞)。FY26の環境・リサイクルのセグメント間売上1,160.7億円は、この「集めて自社で製錬する」流れが実際に大きいことを示しています。
②亜鉛で国内最大の製錬所を持つこと。秋田製錬は日本最大の亜鉛製錬所で、年約20万トンの電気亜鉛を生産しています。副産物としてインジウムや硫酸も生み出します。原料の一部はメキシコのTizapa・Los Gatosの亜鉛精鉱で、鉱山の権益と製錬所を縦につないでいることが、鉱石の調達を安定させる強みです。
③電子材料のニッチ製品。会社は「化合物半導体のトップサプライヤー」と称し、GaAs基板、赤外・深紫外LED、高純度金属材料(GaAs基板や窒化物系エピ基板、LEDの原料)、太陽電池用の銀粉などを手がけています。ただし高純度ガリウムの生産量・世界シェアは会社資料で確認できず、未確認です。
業界内のポジション(事実と推察):非鉄製錬では、DOWAは三菱マテリアル・住友金属鉱山・三井金属などと並ぶ国内大手の一角です(各社との規模比較の数値は未確認)。金属の売値はロンドン金属取引所(LME)などの国際相場で決まるため、製錬会社は価格を決められる側ではなく、受け入れる側(プライステイカー)です。競争優位は「売値」ではなく「原料をどれだけ安く、どれだけ多様に集め、何種類の金属を取り出せるか」にあります。その意味で、リサイクル原料と鉱山権益の両方を持つDOWAの形は、鉱石だけに頼る製錬所より景気の変動に強い設計だと考えられます(推察)。

出典:会社サイト「製錬 DOWAメタルマイン」(hd.dowa.co.jp/ja/product/metalmine.html)、「電子材料」(hd.dowa.co.jp)、DOWAエレクトロニクス「高純度金属材料」(dowa-electronics.co.jp)、日刊鉄鋼新聞(japanmetaldaily.com)、2026年3月期決算短信 セグメント情報。国内・世界シェアの具体値は未確認。

14 / SCP ANALYSIS

SCP理論からの分析(市場構造・企業行動・成果)

Structure(市場構造)

DOWAは性格の違う3つの市場にまたがっています。
①製錬(売上の47%):売値は国際相場で決まり、個々の製錬所は価格に影響を与えられません。利益を左右するのは金属価格・為替・鉱石の買鉱条件(TC/RC)で、市場構造上、超過利潤は「相場が上がった時だけ」発生します。
②環境・リサイクル(15%):廃棄物処理は都道府県ごとの許認可と最終処分場の保有が必要で、新規参入が難しい地域寡占型の市場です。価格は相対交渉で決まり、利益率は比較的安定しています(FY26は外部売上比約15%)。
③電子材料(13%):化合物半導体材料・銀粉などのニッチ市場で、技術と顧客認定が参入障壁です。
2025〜26年に変わった構造:中国がガリウムなどの輸出管理を強め(ガリウムの一次生産の98%を中国が握る、2024年、CSIS)、2026年5月からは硫酸の輸出制限も強めました(S&P Global)。米国はFORGE(2026年2月4日発足)で重要鉱物に参照価格(プライスフロア)を設け、関税で下支えする構想を打ち出しました。重要鉱物について「中国以外の供給」に政策的な価値がつき始めたことが、市場構造の変化です。

Conduct(企業行動・規制リスク)

企業行動は4つにまとめられます。①循環型ビジネスモデルの拡大:熊本・栃木・タイ・中国で集荷拠点を増やし、電池(Ni・Co)やレアアース磁石のリサイクル技術に投資しています。②鉱山権益の保持:Tizapa(39%)・Los Gatos(30%)の少数持分を持ち続け、持分法利益と原料調達の両方を得ています。③ヘッジと在庫管理:製錬在庫の価格変動をヘッジ取引で抑えていますが、会計上は評価損益が四半期ごとに出るため、見かけの利益が振れます(FY26は低価法▲40億円・ヘッジ▲9億円、FY27 1Qはヘッジ評価益+43億円)。④株主還元の強化:配当性向35%、特別配当100円、約100億円の自社株買い。
規制リスク:(a)メキシコの労働・鉱業規制。Tizapaでは2024年に米国がUSMCAの迅速対応メカニズムで労働権侵害の審査を求め、同年の生産は約35%減りました。(b)米墨の通商関係。USMCAの共同見直しと、米墨の重要鉱物行動計画(2026年2月4日)は、メキシコ産鉱物に有利にも不利にも働きえます。(c)国内の環境規制。廃棄物処理・最終処分場(タイを含む)の維持管理費用が増えています。(d)経済安全保障。中国の輸出管理は電子材料の原料調達(低純度ガリウムなど)を難しくする可能性があります。CSISによれば、日本の高純度ガリウムの精製は原料の約60%を中国産の低純度ガリウムに頼っています。

Performance(成果=市場動向・業界トレンド)

成果は「売上は伸びたが、資本効率は相場頼み」です。売上は10年で1.8倍になった一方、営業利益率は8.3%から4.6%へ下がり、営業ROICはWACC(約8.3%)を下回る年が大半でした。ROEはFY22に17.6%、FY26に14.6%と跳ねましたが、いずれも金属高と一過性益の年です。
業界トレンド:①金・銀・PGMの高値(1Qは金4,516ドル/oz、銀73.4ドル/oz)と銅高(13,324ドル/t)。②中国の輸出管理(ガリウム・硫酸など)と、米国主導のプライスフロア・備蓄(Project Vault、120億ドル)。③電池・レアアース磁石のリサイクル需要。④中東情勢(会社はFY27計画で「中東影響」▲50億円を織り込んでいる。具体的な中身は未確認)。
SCPから言えること:DOWAの超過利潤の大部分は、製錬という「構造上は価格受け入れ型」の市場で、相場が上がったときに生まれています。企業行動(リサイクル・鉱山権益)はその振れ幅を少し抑えるように設計されていますが、ROICが示すとおり、相場を除いた実力はWACC並みかそれ以下です。重要鉱物政策が構造を変えるなら、恩恵は「相場の底上げ」と「中国以外の供給者としての価値」の2つのルートで来ます。ただしDOWAの場合、どちらも今のところ間接的です(第18節)。

出典:CSIS 2025年7月17日(csis.org)、S&P Global 2026年4月15日(spglobal.com)、Bipartisan Policy Center(bipartisanpolicy.org)、USTR 2026年2月4日(ustr.gov)、米国労働省(dol.gov)、Peñoles(penoles.com.mx)、DOWA決算説明資料・1Q補足資料。

15 / INVESTMENT THESIS

これらの分析結果をもとにした現在の投資妙味

結論:DOWAは「金属相場に賭ける株」と「循環型の素材インフラ株」の2つの顔を持っています。今の株価(予想PER9.4倍、PBR1.17倍、利回り3.7%)は、前者の今期のピーク利益で見れば安く見えますが、後者の実力(営業ROIC5%台)で見ればほぼ適正な水準です。投資妙味が生まれるのは、「相場が高いまま続く」か「相場以外の利益(環境・電子材料)が中計どおり伸びる」のどちらかが確認できた場合です。
強気のシナリオ(前提つき)。①金・銀・PGM・銅・亜鉛が1Qの水準近くで推移すれば、通期経常800億円は上振れる余地があります(1Q進捗40.7%)。②Tizapaの生産回復とLos Gatosの持分利益(1Qで合計約69億円)が続けば、持分法利益は前期の152.9億円を大きく超えます。③重要鉱物で「中国以外の供給」にプレミアムがつく流れが強まれば、メキシコの鉱山権益、リサイクルで回収する多種の金属、高純度材料に、市場が景気循環株とは違う評価をつける可能性があります(推察)。④PBR1.17倍・自己資本比率57.3%・配当性向35%で、下値の目安は比較的はっきりしています。
弱気のシナリオ。①1Qの増益の約9割は相場連動で、銀価格の下落が「ヘッジ評価益」として利益を押し上げるなど、四半期の利益は読みにくいです。②営業CFはFY26で52.4億円にとどまり、利益に対して現金が伴っていません(在庫の積み上がり)。③営業ROICはWACCを下回り、PBRが1倍を少し上回るのはほぼ妥当です。④信用倍率45倍と買い残が大きく、相場が崩れたときに需給面の売りが出やすい状態です。⑤年初来高値12,380円(5/15)から26%下落しており、金属価格のピークアウトはすでに一部織り込まれ始めているとも読めます。⑥重要鉱物政策との関係は間接的で、テーマとして評価される根拠は今のところ弱いです。
投資妙味の判定(条件つき)。当サイトの見立てでは、現状は「相場のピーク利益を割り引いた、ほぼ適正な価格」です。妙味が高まる条件は、①2Q決算(2026年11月予定)で通期予想の上方修正があり、かつ営業CFがプラスに戻っていること(在庫の積み上がりが止まること)、②電子材料・環境リサイクルの経常利益が前年を上回り続けること(相場以外の成長の確認)、③米墨のプライスフロアやFORGEの具体策で、亜鉛・銀・インジウムなどDOWAの取扱金属が対象に入ること、の3つです。逆に、銀・金の急落で四半期の経常利益が前年同期を下回った場合や、Tizapaの操業が再び止まった場合は、前提が崩れたと判断すべきサインです。
※本セクションは公開情報に基づく分析であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。
16 / WATCH POINTS & RISKS

今後の注目ポイントやリスク要因

注目ポイント(カタリスト・日付)

① 2027年3月期第2四半期決算(2026年11月予定。前年の中間決算は11月12日)。通期予想(経常800億円・純利益570億円)の修正の有無と、中東影響▲50億円の中身。
② 金・銀・銅・亜鉛の価格と為替。会社の感応度は、1円の円安で営業利益+6.3億円/年、亜鉛100ドル/tで+4.6億円/年、銅100ドル/tで+0.3億円/年、インジウム10ドル/kgで+0.7億円/年(説明資料)。貴金属の感応度は未確認。
③ 営業CFと在庫。FY26に814億円積み上がった在庫が減りはじめるかどうか。
④ Tizapa・Los Gatosの操業と、Peñoles・First Majesticの四半期生産報告。
⑤ 米国の重要鉱物政策:FORGEの参照価格の対象鉱物、米墨行動計画のプライスフロアの具体化(USMCA共同見直しと並行)、Project Vaultの調達品目。
⑥ 電子材料の増産投資の決定と、中計目標60億円への進み具合。
⑦ 株主還元:追加の自社株買いと、投資単位の引き下げ(2026年5月20日に方針を開示)。

リスク要因

① 金属価格の下落。今期の増益はほぼ相場(金属価格+為替+持分法)で説明できるため、相場が戻れば利益も戻ります。
② 在庫評価・ヘッジの会計上の振れ。FY26は低価法▲40億円・ヘッジ▲9億円、FY27 1Qはヘッジ評価益+43億円と、四半期ごとに見かけの利益が大きく動きます。
③ メキシコのカントリーリスク。労働紛争(Tizapaは2024年にUSMCA-RRMの対象)、鉱業法・税制の変更、治安。
④ 通商政策の逆風。米墨のプライスフロアや関税の設計しだいでは、メキシコ産精鉱の日本向け出荷の条件が変わる可能性(推察)。
⑤ 中国の輸出管理。低純度ガリウムなどの原料調達難は、電子材料にとってはコスト増のリスクにもなります。
⑥ 環境規制・処分場コスト。タイの最終処分場の維持管理費用の増加はすでに起きています。
⑦ 需給。信用倍率45.47倍(2026/9/18)。
⑧ 一過性益の反動。FY26の純利益624.6億円は有価証券売却益249.6億円を含むため、FY27は増益でも純利益は▲8.7%の計画です。

出典:2025年度決算説明資料(感応度)、2027年3月期1Q決算短信・補足資料、IRニュース(hd.dowa.co.jp/ja/ir/news.html)、Yahoo!ファイナンス、USTR、Bipartisan Policy Center、米国労働省。

17 / PROFIT QUALITY

利益のうち金属価格・在庫評価に左右される部分

2027年3月期 経常利益の増減要因(会社計画、億円)

543 FY26実績 +163 金属価格 +11 為替 +56 増販 ▲14 一過性 ▲5 償却費 ▲26 その他 +95 持分法 ▲50 中東影響 +26 原料条件 800 FY27計画

利益のうち「金属価格・在庫評価」に左右される部分(当サイト集計)

項目金額比率・意味
FY27計画の増益256億円のうち「金属価格+為替+持分法」+269億円増益額の105%(その他の要因は差し引きでマイナス)
FY27 1Qの増益約239億円のうち相場連動(価格・為替・在庫評価・持分法・銅の一過性)約+222億円約93%
FY26 経常利益に占める持分法投資利益152.9億円28.1%
FY26 純利益に含まれる投資有価証券売却益(税引前)249.6億円純利益624.6億円に対して税引前で40%相当
FY26 在庫評価(低価法・ヘッジ)▲49億円FY27計画ではゼロに戻る前提(=その分が増益要因)

出典:2025年度決算説明資料 p.3(PDF、ウォーターフォール図の読み取り値。合計は799億円で計画800億円と1億円の端数差)、2027年3月期1Q決算補足資料(PDF)、2026年3月期決算短信。
この表が言っていることは単純で、「DOWAの今期の増益は、ほぼすべて相場の結果」ということです。会社は同じ資料で「一過性要因」を▲14億円と別に示しており、在庫評価の戻り(低価法+40億円・ヘッジ+9億円)が要因のどこに含まれているかは資料から正確には切り分けられませんでした(未確認)。いずれにしても、金属価格・為替・海外鉱山の3つを除くと、今期の経常利益は前期並みかそれ以下になる計算です。

18 / CRITICAL MINERALS

ルビオ外交・重要鉱物テーマとの接点(事実と推察を分けて)

事実

【事実(確認済み)】
・FORGE(Forum on Resource Geostrategic Engagement):2026年2月4日の重要鉱物閣僚会合(54か国参加)で発足。ヴァンス副大統領は参照価格を「プライスフロア」として機能させ、調整可能な関税で担保する「重要鉱物の優遇貿易圏」と説明した(Bipartisan Policy Center)。
・Project Vault:米輸出入銀行の融資100億ドルと民間資金約20億ドルの計120億ドルで、民生用の重要鉱物の物理的な備蓄をつくる官民の枠組み。
・米墨重要鉱物行動計画(USTR、2026年2月4日):重要鉱物の輸入に対する「国境調整型のプライスフロア(border-adjusted price floors)」の検討と、それを拘束力のある複数国間協定に組み込む協議を盛り込む。USMCA共同見直しに向けた取り組みと位置づけられている。対象鉱物はプレスリリースには列挙されていない。
・ルビオ国務長官の中南米歴訪(2026年9月):コロンビア・エクアドル・ペルーを訪問。コロンビアとは金・ニッケル・コルタン・白金・タングステン・レアアースを対象に「6カ月以内に採掘・加工案件を共同で特定し資金を付ける」重要鉱物協定に署名した(Responsible Statecraft)。この歴訪にメキシコは含まれていない。
・ガリウム:一次生産の98%が中国(2024年)。ロッテルダムの価格は2025年5月に687ドル/kgで、輸出管理前より150%超高い(CSIS)。中国国内価格は1,750元/kg(2026年9月23日、Trading Economics)。
・硫酸:中国は2026年5月から輸出制限を強化。チリ向けスポットは2026年4月8日に300ドル/t(2月25日比+57.9%)(S&P Global)。
・DOWA側:Tizapa鉱山に39%(Peñoles 51%、住友商事10%)、Los Gatos鉱山に30%(First Majestic 70%)を出資。どちらもメキシコにあり、主な産物は亜鉛・鉛・銅の精鉱と銀(Tizapaは金・銀も副産)。1Qの持分利益はTizapa約35億円、Los Gatos約34億円。秋田製錬は硫酸を副産し、DOWAエレクトロニクスは高純度金属材料(GaAs・LED向け)を手がける。

推察

【推察(当サイトの見方)】
・政策との接点は間接的です。DOWAのメキシコ権益は「亜鉛・銀の鉱山の少数持分」で、FORGEや米墨計画の中心にあるガリウム・レアアース・グラファイトなどの鉱山ではありません。プライスフロアの対象に亜鉛・銀・インジウムが入るかは不明です。
・ガリウムの恩恵は、決算資料からは測れません。2025〜26年度の決算説明資料・経営戦略説明会資料にガリウムの記載は見当たらず、電子材料のFY26経常利益は11.4億円にすぎません。ガリウム価格が中国外で高止まりしても、DOWAの利益への寄与は「未確認・おそらく限定的」と見るのが妥当です。むしろ原料を中国に頼る場合はコスト増のリスクにもなります。
・硫酸は副産物です。価格上昇は製錬の副産物収入を押し上げうるものの、DOWAの硫酸の販売量・価格・利益影響は開示されておらず未確認です。
・意味があるとすれば「中国以外の多金属回収者」という立ち位置です。20種類以上の金属をリサイクルで回収でき、米国(NPGM USA)とメキシコに拠点を持つことは、西側の重要鉱物サプライチェーンで評価される素地になりえます。ただし、それが売上・利益に表れた証拠は2026年9月時点でありません。
・逆風にもなりえます。米墨のプライスフロアが「北米域内で製錬・加工する」ことを優遇する設計になれば、メキシコ産の精鉱を日本(秋田)へ運ぶDOWAのモデルには中立か不利に働く可能性があります。

出典:Bipartisan Policy Center(bipartisanpolicy.org)、USTR 2026年2月4日(ustr.gov)、Responsible Statecraft(responsiblestatecraft.org)、CSIS(csis.org)、Trading Economics(tradingeconomics.com)、S&P Global(spglobal.com)、Peñoles(penoles.com.mx)、DOWAメタルマイン(Tizapa、Los Gatos)、DOWA 1Q補足資料。
選定時の前提との照合:「ガリウム約685ドル/kg」は2025年5月のロッテルダム価格(687ドル/kg、CSIS)としては確認できたが、2026年9月時点の中国外の価格は未確認。「輸出管理前の約3倍」はCSISの「150%超の上昇」(約2.5倍)と食い違うため未確認とした。FORGE(2026年2月)、米墨行動計画の国境調整型プライスフロア、Project Vault、ルビオ氏の中南米歴訪、Tizapa 39%は確認できた。

SOURCES

出典一覧

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https://bipartisanpolicy.org/article/project-vault-and-forge-the-administrations-latest-moves-to-secure-critical-minerals/
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https://responsiblestatecraft.org/rubio-latin-america-trip/
https://www.spglobal.com/energy/en/news-research/latest-news/metals/041526-chinas-sulfuric-acid-restrictions-set-to-squeeze-miners
分析日:2026-09-23(株価・時価総額は2026/9/18終値ベース)