スナップショット
売上高
461.89億円
2025年12月期(前期比-13.0%)
PER(実)
26.25倍
2026年9月時点
ROE(実)
6.12%
2025年12月期
時価総額
約1,435.89億円
2026年9月時点
事業ごとの売上高比率
主要製品別売上高構成(2025年12月期)
SiC(炭化ケイ素)パワー半導体向け黒鉛製品(約299.2億円):EV用パワーデバイス・インバータ向けのSiCチップ製造時に使用される等方性黒鉛るつぼ・サセプタなど。2025年は半導体市場調整の影響で出荷量・販売価格ともに低下。世界シェアは高いもののボリューム減に圧迫。
その他黒鉛・セラミック製品(約115.3億円):LED・パワーデバイス向け、精密機械部品向けなど幅広い用途。安定した需要基盤だが成長性は限定的。
地域別の特徴
国内向けが約40%、海外向けが約60%。SiC製品の主要顧客は台湾・韓国の半導体メーカーおよび日本の自動車・デバイスメーカー。2025年の減収減益は中国EV市場の調整と世界的な半導体ウェーハ需要の低下が直撃した。中期経営計画(2024-2028年)では、SiC生産能力を30%以上増強(2019年比)し、2028年度売上高88億円を目標としている。
出典:東洋炭素 2025年12月期決算短信・製品別開示資料。
創業からの歴史
ミッション・ビジョン・バリュー
現経営者の特徴・過去の実績
直近決算の実績・ガイダンス
決算実績(前期比)
| 指標 | 2024年12月期 | 2025年12月期 | 増減率・評価 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 531.41億円 | 461.89億円 | -13.0% |
| 営業利益 | 121.36億円 | 67.59億円 | -44.8% |
| 営業利益率 | 約22.8% | 約14.6% | 低下 |
| ROE(実) | ― | 6.12% | ― |
売上高・営業利益の推移
売上高・営業利益(直近推移、億円)
売上高の推移
2024年12月期:531.41億円 → 2025年12月期:461.89億円(-13.0%)
2018年時点で約200億円だった売上が、EV・半導体需要の拡大で2023年には530億円超まで急速に成長したが、2025年は市場調整の直撃を受けて下落。中期経営計画(2024-2028年)では2028年度に売上高88億円という目標を掲げており、生産能力増強による成長を見込んでいるが、市場需要の回復ペース次第で達成度は変動する。
営業利益率の推移
2024年12月期:約22.8% → 2025年12月期:約14.6%。SiC製品は高い営業利益率を持つ事業だが、ボリューム減と価格競争により大幅に圧迫された。設備稼働率の低下が利益率低下の直接的な要因。需要回復時には営業利益率の反発が期待できる一方で、固定費が高い構造のため、調整局面では利益が急速に悪化するリスクがある。
※ より長期(10年)の詳細な年間データはIRBANKの業績推移表をご参照ください。
出典:東洋炭素 決算短信・IR資料(IRBANK)。
PER・バリュエーション
PER・PBR(2026年9月時点)
PER(実):26.25倍 PBR(実):1.47倍 配当利回り:約1.5%
電子部品・デバイスセクターの平均PER(概ね12〜18倍)と比較すると高い水準である。これは「SiC半導体向けの戦略的に重要な材料メーカー」「EV・電動化トレンドの受益企業」という認識が市場に定着しており、成長期待が織り込まれている状態と考えられる。
PER観点からの投資判断
直近の減益ペース(営業利益-44.8%)に対してPER26.25倍は、市場がボトムアウトを意識した評価と見られる。中期経営計画通りに売上・利益が回復に向かえば、PER水準の妥当性が出てくる。ただし市場需要の回復が遅延した場合、バリュエーション調整による下方修正リスクがある。
出典:IRBANK、Yahoo!ファイナンス(2026年9月時点データ)。
ROIC・WACC・ROEの動向
ROE(直近実績)
2025年12月期実績:6.12%
業界平均(8〜12%)より低い水準。利益減少の局面であり、資本効率性が低下している。市場需要の回復により営業利益が増加すれば、ROEの反発が期待できる。
中期経営計画の目標水準
2028年度売上高88億円を掲げるが、利益目標の具体値は公開情報では明確でない。SiC需要の世界的な回復が進めば、営業利益率の反発と共にROE改善が期待できる。
PBR
1.47倍
簿価に対して相応のプレミアムがあり、市場は中期的な回復を織り込んでいる状態。
収益性の総合評価
出典:東洋炭素 中期経営計画(2024-2028年)、IRBANK。
キャッシュフロー構造
キャッシュフローの特徴(定性評価)
材料供給型ビジネスモデルと設備投資のバランス
黒鉛・セラミック製品の製造・供給は継続的な出荷が特徴で、受注生産型の重工業メーカーと異なり、相対的に安定したキャッシュフローを生み出す構造にある。一方で、原材料費(黒鉛)と製造設備の更新が大きな支出要因となる。
調整局面でのキャッシュフロー圧迫
2025年度は需要減少に伴う営業キャッシュフローの圧迫が予想される。一方で、中期経営計画の実行に向けた設備投資(76.5億円の3ヵ年計画)は継続予定であり、キャッシュ配分の経営判断が問われる。配当水準の調整可能性も視野に入れるべき。
※ 詳細な年次キャッシュフロー数値はIRBANK・決算短信のキャッシュフロー計算書をご参照ください。
出典:東洋炭素 決算短信・有価証券報告書。
直近の投資・事業再編
主要事業ごとの成長性
セグメント別成長見通し
SiCパワー半導体向け黒鉛製品:中期的に高成長
EV・電動化の加速に伴い、SiCパワーデバイスの需要は世界的に確実に拡大する見込み。現在の調整局面は一時的なものとされており、2026年以降の需要回復に期待が集まっている。同社の生産能力拡張(30%増強)が完成すれば、需要回復時に大きなボリューム獲得が可能になる。
その他黒鉛・セラミック製品:安定成長
LED・パワーデバイス向けなど従来の製品ラインは、特定の成長機会は限定的だが、継続的な需要ベースを提供。新興市場でのデバイス需要拡大に伴う緩やかな成長が見込める。
競争優位性や業界内でのポジション
SCP理論からの分析(市場動向・規制リスク・業界トレンド)
Structure(市場構造)
高い参入障壁を持つ特化型市場
黒鉛・セラミック材料のSiC製造向け供給市場は、技術・品質要件が高く、新規参入が難しい構造。同社の世界的な地位は相応に安定している。
需要サイド:EV化・電動化による構造的成長
世界的なEVシフト、電力需要増加(データセンター・AI対応)により、SiCパワーデバイス需要は確実に拡大。これは同社の顧客ベース(自動車メーカー・半導体メーカー)の成長に直結。
Conduct(企業行動)
同社の戦略:能力拡張による市場機会の獲得
市場調整局面でも設備投資(76.5億円)を継続し、需要回復時の供給能力強化を優先する積極姿勢。短期的な利益よりも、長期的なポジション維持を重視。
競争形態:技術・品質による差別化
価格競争ではなく、製品の純度・信頼性が選定基準となる傾向が強い。ただし、コスト競争力の維持も必要。
Performance(業界トレンド・帰結)
循環サイクルの影響を受けやすい市場環境
半導体ウェーハ需要の好況・調整サイクルに業績が大きく左右される構造。現在(2025年)は調整局面にあるが、2026年以降の回復に市場の期待が集まっている。
規制・地政学リスク
SiCは軍事・防衛用途でも使用される可能性があり、米国等の輸出規制の影響を受ける可能性がある。また、中国との対立関係による追加規制も視野に入れるべき。
結論:「需要回復タイミング」による大きな価値変動
東洋炭素の現在の株価は、SiC需要の回復を相応に織り込んでいる状態。回復のペース・規模が見通しを上回れば上昇、下回れば下落という相場が形成されやすい。
これらの分析結果をもとにした現在の投資妙味
今後の注目ポイントやリスク要因
注目ポイント
1. SiC半導体需要の回復ペース
2026年以降の世界的なSiC需要がどのペースで回復するか。EV・電動化の進展が需要を左右する重要な指標。
2. 設備投資の完成と稼働率向上
中期経営計画の76.5億円設備投資がスケジュール通り進捗し、需要回復時に十分な供給能力を有するか。
3. 営業利益率の反発
現在14.6%の営業利益率が、需要回復時に元の22%水準に復帰するか。設備稼働率と原材料費管理が鍵。
4. 顧客基盤の多様化
主要顧客の集中度を低下させる新規顧客獲得・新用途開発の進捗。
リスク要因
1. 需要回復の遅延・規模不足
世界的なSiC需要の回復がシナリオより遅延した場合、設備投資の収益性が低下し、キャッシュフロー圧迫のリスク。
2. 中国メーカーとの競争激化
中国の黒鉛メーカーの技術向上に伴い、価格競争圧力が増す可能性。シェア低下による営業利益率の悪化。
3. 地政学リスク・輸出規制
米国の対中規制強化、SiC関連技術の規制対象化により、顧客である中国系メーカーへの供給が制約される可能性。
4. バリュエーション調整リスク
PER26.25倍は回復シナリオを織り込んだ水準。回復が遅れた場合、調整による下落リスク。
5. 設備投資の収益性リスク
76.5億円の設備投資が期待する利益を生み出さない場合、ROE・ROICが目標を下回る可能性。