STUDY REPORT / 2026年5月度 勉強会

原子力回帰と直接接続 ――2026年のエネルギー業界を動かす三つの流れと、その懸念点

データセンター需要に引きずられて再編が進む米国の電源企業についての講義

EXECUTIVE SUMMARY

エグゼクティブサマリー

3つ講師が挙げた2026年のトレンド
9社名前を挙げて論じられた電源・原子炉企業
5〜10年既存の原子力発電開発に要するとされる期間
20年ハイパースケーラーが結ぶ電力購入契約の典型的な年限
2027年複数企業が稼働・商用化の目標に置いた年
NRCこの分野の鍵になると名指しされた規制当局

反省会の最後、講師が体調を崩しながら三十分ほどで駆け抜けたのがこの講義である。テーマは2026年のエネルギー業界で、講師は流れを三つに整理した。第一に原子力への回帰、第二にデータセンターと発電設備を直接つなぐ「直接接続」、第三にビッグテック自身が電源を垂直統合していく動きである。

この三つは独立した現象ではなく、一つの制約から派生している。既存の原子力発電の開発には五年から十年かかるとされ、AI向けデータセンターの建設速度とまったく釣り合わない。加えて、発電できても送電網につなぐまでに時間がかかる。この時間差をどう埋めるかという問題に対して、既存炉を再稼働させる、送電網を経由せず直結する、そもそも電力会社を買いにいく、という三つの解が出てきている、という整理になる。

講義の構造は一貫していた。各社について、技術方式・提携先・目標時期を示したうえで、必ず懸念点を一つ以上挙げる。送電網への接続遅延、冷却材の長期運用実績の不在、政府補助金依存のキャッシュアウト、税額控除の縮小、炭素回収のコスト──講師が最後に「必ず懸念点は常に押さえておいてください」と念を押したのは、この分野が期待先行で価格がつきやすい領域だという認識の表れだろう。

セッションを貫く1本の線 ここで語られているのは電源の話ではなく、時間の話である。電気そのものは足りるかもしれないが、必要な時点までに届くかどうかが分からない。規制当局の審査期間、送電網への接続待ち、未実証技術の検証期間──すべてがリードタイムの問題に還元される。だから規制当局との距離が近い企業と、送電網を迂回できる企業に価値が集中している。
本レポートの位置づけ 以下に挙げる企業名は、講師が「チェックしてほしい」と述べたものであり、推奨を意図したものではない。講師自身も会の中で、名前を聞いた参加者が即座に購入したことに対して「リサーチしてから買ってください」と制止している。本レポートは勉強会の記録と事実確認を目的とするものであり、投資助言ではない。
PART 1

2026年の三つの流れ

講師が「メモしてください」と前置きして挙げたのが次の三つである。

トレンド内容解こうとしている問題
原子力の回帰停止していた既存炉の再稼働と、次世代炉の商用化安定電源の絶対量の不足
直接接続データセンターの敷地内・隣接地に電源を置き、送電網を経由しない送電網への接続待ちという時間の壁
ビッグテックの垂直統合ハイパースケーラー自身が電源企業に出資・買収し、電力を100%自社で使う調達の不確実性そのもの

三つ目については、投資して買収していく流れのなかで、自分たちが完全にその電源を使いますという形になっていく、という説明がなされた。電力が商品として市場で調達されるものから、垂直統合された資産へと性格を変えつつある、という見立てである。

📌 Claude補足:この三分類の背景にある制度事情 米国では発電設備を送電網に接続するための待ち行列(interconnection queue)が慢性的に滞留しており、申請から運転開始まで数年単位を要する状態が続いている。「直接接続」はこの待ち行列を回避する手段として注目されているが、既存の送電網利用者との費用負担の公平性をめぐって連邦エネルギー規制委員会(FERC)での係争対象にもなってきた。講師が送電網の制約を繰り返し懸念点として挙げているのは、この構造を踏まえたものと読める。
PART 2

既存炉の再稼働――規制当局との距離が資産になる

最初に挙げられたのがコンステレーション・エナジーである。この会社が保有する原子炉のうち、マイクロソフトが二十年の電力購入契約を結んだことで有名になったのがスリーマイル島の一号機だ。

講師がこの会社のポイントとして強調したのは、原子力規制委員会(NRC)との関係が築けていることだった。上場企業でありながら規制当局との関係値が高く、そのことが再稼働のスケジュールを前倒しできる根拠になっている。再稼働目標はもともと2028年とされていたが、2027年後半まで前倒しされたという。

📌 Claude補足:スリーマイル島一号機の事実関係 コンステレーション・エナジーは2024年9月、スリーマイル島一号機(出力837MW)の再稼働と、マイクロソフトとの20年間の電力購入契約を発表した。同炉はクレーン・クリーン・エナジー・センターに改称されている。再稼働時期は当初の2028年から2027年へ前倒しされたと報じられており、講師の説明と整合する。NRCの審査完了も2027年が見込まれ、系統運用者PJMによる審査も必要とされる。2025年には米エネルギー省から10億ドルの融資を確保している。

懸念点として講師が挙げたのは送電網である。コンステレーション・エナジーは現在、三つのライセンス変更をNRCに申請しており、加えて連邦エネルギー規制委員会(FERC)に対して、閉鎖予定の火力発電所が保有する接続容量の権利を移転するよう求めているという。これが通れば開発は速くなるが、通らなければ稼働が大幅に遅れ、2027年が2031年になる可能性もある、という見立てだった。

この部分は裏取りできていない 「三つのライセンス変更」「閉鎖予定の火力発電所の容量権をFERCに移転申請している」という具体的な手続きの内容については、公開情報から確認できなかった。方向性として送電網接続が最大のボトルネックであることは各種報道と整合するが、個別の申請内容は検証できていない。要確認
PART 3

直接接続――「誰が先に電気を受け取るか」

直接接続モデルの先行者として名指しされたのがビストラである。アマゾンとの契約で知られるが、講師が現時点で注目していたのは別の点だった。アマゾンよりもメタのほうが動きが速そうだ、というのである。

📌 Claude補足:ビストラの二つの契約と、その時期 ビストラはアマゾン・ウェブ・サービスと、コマンチピーク原子力発電所から最大1,200MWを供給する20年契約を締結しており、供給開始は2027年後半、フル稼働は2032年とされている。一方メタとは2026年1月に、PJM域内(オハイオ州・ペンシルベニア州)の原子力発電所から計2,609MWを供給する20年契約を締結し、こちらは一部の供給開始が2026年後半、フル供給が2027年末と見込まれている。供給開始時期で見ればメタのほうが約1年早く、講師の「メタのほうが速そう」という観察は公開情報と整合する。

講師はまた、ビストラがガス火力の企業を買収することでさらに電力網が強くなる、とも述べている。ただしこの買収対象の企業名は聞き取りが不確かで、特定できなかった。要確認

垂直統合が抱える政治的リスク

ここで講師が挙げた懸念点が、この講義のなかで最も社会的な論点だった。発電した電力をデータセンターに独占させる統合型のモデルになると、一般の需要家から見れば「自分たちの電気が持っていかれている」という構図になる。国民から激しい批判が来る可能性がある、という指摘である。

そのため、ビストラの課題はデータセンター向けの電力を確保することではなく、一般向けの配給をきちんと確保し続けることだ、というのが講師の整理だった。技術的な制約ではなく、社会的な許容度が上限を決める、という論点である。

この論点には対立する見方がある データセンター向けの長期契約が既存炉の運転継続や出力増強(アップレート)の原資になり、結果として地域全体の供給力を増やすという立場もある。一方で、卸電力市場の価格上昇を通じて一般需要家の負担が増えるという批判も現実に存在する。どちらの効果が上回るかは系統ごとの条件に依存し、一般論としては決着していない。
PART 4

次世代炉の四つの路線

講義の中心は、既存炉ではない新しい原子炉の技術路線と、それぞれに紐づいたハイパースケーラーの整理だった。

企業技術方式主なパートナー講師が挙げた懸念点
カイロス・パワー溶融塩炉。水の代わりに液体の塩で熱を取り出す第四世代炉グーグル冷却材の商業規模での長期運用実績がなく、検証に時間がかかる
X-エナジーウラン粒子をセラミックで包む被覆粒子燃料。溶融しにくく、データセンターの近くに設置できるアマゾン政府補助金への依存が大きく、商業運転開始までキャッシュアウトが続く
オクロ小型炉。送電網に依存しない独立電源を直接販売するモデルデータセンター事業者と直接契約(講師は規制突破力を長所として強調。懸念点への言及は限定的)
テラパワーナトリウム冷却の小型モジュール炉メタ、ビル・ゲイツが開発主体ナトリウムは空気・水に触れると発火するため、監視システムの強化が必須

カイロス・パワー――反復型開発という発想

講師が面白いと評したのは、開発の進め方がスペースXに似ている点だった。全体を一度に作るのではなく、熱が想定どおり出るか、塩がうまく流れるかといった個別の部分だけを検証する小さな装置を作り、そこでバグを潰すサイクルを回していく。最後に統合する。ロケット開発と同じ反復型(イテレーティブ)のアプローチを原子炉に持ち込んでいる、という説明である。

📌 Claude補足:冷却材について、発言と事実の食い違い 講師は冷却材の懸念点を説明する際に「ヨウ素」と受け取れる語を用いていたが、カイロス・パワーが用いるのはフッ化物系の溶融塩「Flibe」(フッ化リチウムとフッ化ベリリウムの混合物、リチウム7を濃縮したもの)である。同社はアルバカーキの施設でこの塩の製造設備を稼働させている。したがって長期運用実績が乏しいという懸念そのものは妥当だが、対象となる物質はヨウ素ではなくフッ化物塩であり、実務上の論点はベリリウムの毒性とリチウム7の調達である。発言の趣旨は正しいが、物質名は公開情報と食い違う。

なおグーグルとは、2035年までに500MW規模の炉群を展開するマスタープラント開発契約が結ばれており、初号機の運転開始は2030年が見込まれている。実証炉ヘルメス(熱出力35MW、テネシー州オークリッジ)は2027年の運転開始が予定されている。燃料はセラミック被覆のペブル型で、X-エナジーと同系統の被覆粒子燃料を用いる。

X-エナジー――上場は「これから」ではなく「済んでいた」

講師は、アマゾンがシリーズCで株式の20%を確保し、ナスダックに上場して10億ドルほど調達している、と説明した。そのうえで懸念点として、収益が9,000万ドル規模なのに対して損失計上が大きく、商業運転開始までキャッシュアウトし続ける企業である、と指摘している。

📌 Claude補足:上場のタイミングと出資比率 X-エナジーは2026年4月23日にIPOを実施し、想定レンジ(16〜19ドル)を21%上回る1株23ドルで価格決定、10億2,000万ドルを調達した。翌24日からナスダック・グローバル・セレクト市場にティッカー「XE」で取引が開始されている。先進原子力企業としては過去最大の上場となった。講師の「ナスダック上場もして10億ドルぐらい調達している」という説明は、この4月の事実と一致する。

一方、アマゾンについては5億ドルのシリーズC-1をリードし、2039年までに最大5GWの電力購入を約束していることは確認できたが、「株式20%」という出資比率は公開情報から確認できなかった。要確認 初号機Xe-100の初期配備は2030年代前半が目標とされている。

オクロ――会長は誰か

講師はオクロについて「会長はサム・アルトマン」と述べ、規制突破能力が非常に高い企業だと評価した。NRCの認可には通常二〜三か月、場合によっては半年かかるところ、最短15日で取得したという説明である。2027年の商用化を目指し、送電網に依存しない独立電源をデータセンターや産業用施設に直接入れ込むモデルを取っている。

📌 Claude補足:会長職について、発言と事実の食い違い サム・アルトマン氏は2015年からオクロの取締役会会長を務めていたが、2025年4月に会長職を退任し、共同創業者でCEOのジェイク・デウィット氏が後任となっている。退任の理由として、オクロがOpenAIを含む他のハイパースケーラーと自由に提携できるようにするため、と報じられた。したがって本セッション時点(2026年5月)で「会長はサム・アルトマン」という説明は事実と食い違う。ただし、アルトマン氏が同社に関わってきたこと自体は事実であり、投資家がオクロを「アルトマン銘柄」として認識している状況も継続している。

「NRCの認可を最短15日で取得した」という点については、該当する認可の種類が特定できず裏取りできなかった。要確認 なお同社は2022年に一度、設計に関する情報が不十分であるとして統合ライセンス申請を却下された経緯がある。

テラパワー――建設が始まった最初の第四世代炉

講師はテラパワーについて、NRCがすでに建設許可を出しており、今年の4月23日から公式に建設が開始されている、と述べた。最大の契約先はメタで、ナトリウム冷却炉を導入する契約があるという。懸念点はナトリウムそのもので、空気や水に触れた瞬間に発火する性質があるため、漏洩時のリスクが大きく、監視システムをどこまで強化できるかが焦点になる、という説明だった。

📌 Claude補足:建設許可と着工の時期 NRCは2026年3月4日、テラパワーの子会社に対しワイオミング州ケマラーのナトリウム炉プロジェクトの建設許可を発行した。既存の枠組みのもとで商用の第四世代炉が認可された初の事例であり、非軽水炉としては40年以上ぶり、商用炉の建設認可としては約10年ぶりとなる。着工は2026年4月と報じられており、講師の「4月23日から建設開始」という説明は時期として整合する。炉の出力は電気出力345MWで、溶融塩による蓄熱設備と組み合わせることで一時的に500MWまで出力を引き上げられる設計とされる。メタとの契約については公開情報から確認できなかった。要確認

図1:主要案件の供給開始・稼働目標時期(公開情報および会での発言をもとにClaude作図。目標であり確定した日程ではない)

PART 5

原子力以外の二本――地熱と燃料電池

ファーボ・エナジー――シェール技術で地熱を掘る

講師が「発想としてむちゃくちゃ面白い」と評価したのがファーボ・エナジーである。地熱発電はもともと温泉のような地理条件に強く制約される技術だったが、この会社はシェールガス採掘で使われる水圧破砕の技術を地下に持ち込み、地熱を取り出そうとしている。グーグルが提携している。

議論の的になるのは環境問題で、地下を破壊する以上、規制当局との戦いが続くだろう、というのが講師の見立てだった。そして講師は、アメリカ側から聞いている感触では今年中にIPOする可能性がある、と述べている。

ここが本セッション最大の食い違い ファーボ・エナジーは、本セッションの5日前にあたる2026年5月13日、すでにナスダックに上場している。ティッカーはFRVO、1株27ドルで7,000万株を売り出し、18億9,000万ドルを調達した。初値は約35ドルとIPO価格を約30%上回り、その年最大のクライメートテック分野の上場、地熱企業としては10年以上ぶりの上場となった。完全希薄化ベースの評価額は約76億5,000万ドルとされる。

講師は「まだスタートアップ」「今年中にIPOする可能性がある」と説明しており、この点は公開情報と明確に食い違う。ただし講師はこの日、体調不良のなかで30分ほどで一気に話しており、情報の更新が追いついていなかった可能性が高い。発言を書き換えず、食い違いとして記録する。

なおグーグルとの関係については講師の説明どおりで、2021年のネバダ州でのパイロット案件への出資に始まり、翌年には115MWの電力購入契約、2025年12月には4億6,200万ドルの資金調達ラウンドにも参加している。

ブルーム・エナジー――燃やさずに電気を作る

講師が挙げたもう一社が、燃料電池のブルーム・エナジーである。天然ガス・水素・バイオガスを燃やすのではなく、電気化学的に電力に変える方式で、効率がよいとされる。講義では酸化物系の燃料電池が強いと説明された。

最大の利点として挙げられたのが設置期間である。通常なら数年かかる電源確保が、このシステムを使えば数か月で設置可能になる。AI開発の資金がハイパースケーラーに集中している現状では、需要はかなりあるだろう、という見立てだった。

懸念点は二つ示された。一つは送電網の問題が解決できていないこと。もう一つは、結局のところ天然ガスなどを使うため炭素排出ゼロとは言えず、長期的には嫌われる可能性があること。同社は水素への切り替えを戦略として掲げているが、実際の動きを見るとそこには何もしていない、というのが講師の評価だった。

📌 Claude補足:技術方式と上場の状況 ブルーム・エナジーの技術は固体酸化物形燃料電池(SOFC)であり、講義中の「酸化物系」という表現と一致する。天然ガス・バイオガス・水素を、燃焼も可動部もなしに電気に変換する方式である。

ただし、講師は「上場した後に突っ込まれるポイントになる」と述べているが、同社はすでにニューヨーク証券取引所に上場している既上場企業(ティッカーBE)であり、新規上場を控えた会社ではない。この点は事実と食い違う。

2026年の同社は、データセンター向けで大型契約が相次いでいる。オラクル向けの2.8GW規模の供給契約、アメリカン・エレクトリック・パワーとの最大1GW・26億5,000万ドル規模の20年オフテイク契約、ブルックフィールドによる最大50億ドルのグローバル展開への投資などが報じられており、2026年前半の90日間だけでデータセンター関連の契約が76億5,000万ドルに達したとされる。生産能力も年間1GWから2GWへの倍増が目指されている。

水素への切り替えについては、2026年に実際に採用されているのはほぼ天然ガス方式であり、水素対応は将来の備えという位置づけにとどまるという整理が報じられている。講師の「水素に切り替えると言っているが実際は何もしていない」という指摘は、この状況と方向としては一致する。
PART 6

再エネ最大手が抱える制度リスク――ネクステラ・エナジー

最後に挙げられたのが、再生可能エネルギーの最大手とされるネクステラ・エナジーである。太陽光・風力に蓄電を組み合わせ、さらにガス発電まで統合できる能力を持ち、供給網の面でも石油メジャーと提携してパイプラインを使うなど、実践的な戦略を取っている。講師は「かなり面白い企業ではある」と評価した。

そのうえで懸念点が二つ示された。一つは、再生可能エネルギーに依存していることが短期的には不利に働く可能性である。「ワン・ビッグ・ビューティフル・アクト」によって税額控除が段階的に排除されていくため、収益性が悪化しうる。もう一つは炭素回収(CCS)のコストである。ハイパースケーラーがコスト削減に入っている局面で、CCSのコストをどれだけ下げられるかが焦点になる、という整理だった。

📌 Claude補足:OBBBAが何を削り、何を残したか 2025年7月4日に成立した「One Big Beautiful Bill Act」(OBBBA)は、インフレ抑制法(IRA)が創設・拡充したエネルギー税額控除の大半を前倒しで縮小・廃止した。風力・太陽光については、法成立から12か月後にあたる2026年7月5日以降に着工する案件から控除の段階的廃止が加速し、控除を受けるには2027年末までに稼働している必要がある。講師の「再エネの税額控除が段階的に排除される」という説明はこの内容と整合する。

一方で炭素回収については、OBBBAはむしろ優遇を拡大している。用途を問わず最大85ドル/トン(直接空気回収は180ドル/トン)の控除が認められ、2027年からはインフレ連動となる。したがって「CCSのコストが高い」という講師の指摘は物理的な事実として妥当だが、制度面ではCCSは追い風を受けている側であり、再エネとは逆方向の扱いを受けている。この非対称性は会の中では触れられていない。

OBBBAで不利になった側

風力・太陽光。着工期限と稼働期限の二重の締切が設けられ、期限を外した案件は控除を失う。再エネ比率の高い事業者ほど影響が大きい。

OBBBAで有利になった側

炭素回収。用途を問わない控除額の引き上げと、2027年からのインフレ連動。ガス火力+CCSという組み合わせの経済性が制度面から支えられている。

講義はここで終わり、講師は「必ず、今言った懸念点は記事でも何でもいいので常に押さえておいてください」と締めている。企業名ではなく懸念点のほうを覚えて帰れ、という指示である。

Q & A

質疑応答(このテーマに属するもの・全件)

(講義の直後に)挙げられたエネルギー企業を全部買いました。

講師は「駄目です」と即座に制止し、リサーチしてから買うように、責任は取れないと述べた。参加者が「まず買って、その後で追加している」と応じると、講師は自分と同じスタンスだとしたうえで、いずれにせよ懸念点は常に押さえておくようにと重ねて念を押している。

今回の展示会でもこれらの企業の話をしたのか。

コンステレーション・エナジーとビストラについては展示会でも触れたが、それくらいしか話していないとのこと。今回の講義はその続きにあたる位置づけだった。

台湾のスタートアップについては、どのような印象だったか。

技術的に優れたものを作っている会社が複数あり、経歴も突出したメンバーが揃っていた一方で、スタートアップゆえに詰めの甘い部分もあり、リサーチが足りないと相当指摘したという回答だった。(この話題の詳細は別レポート「資料なしのグラデーション」で扱っている)

HOMEWORK

宿題・アクションアイテム

  1. 講義で挙がった各社について、企業名ではなく懸念点のほうを継続的に追う。送電網の接続状況、規制当局の判断、資金繰りの三点を定点観測する。
  2. コンステレーション・エナジーについて、送電容量権の移転に関する申請がどう扱われるかを確認する。稼働時期が2027年のままか後ろ倒しになるかの分岐点にあたる。
  3. データセンター向けの電力独占に対する一般需要家側の反発が、どの州でどのような形で表面化しているかを調べる。技術ではなく社会的許容度が上限を決めるという論点の検証。
  4. ファーボ・エナジーとX-エナジーはいずれも2026年に上場済みであり、上場後の開示資料(四半期報告)で、講義で挙がった懸念点が数字としてどう表れているかを確認する。
  5. OBBBAの下で、ガス火力+炭素回収と再エネ+蓄電のどちらが経済性で優位になるかを、自分で条件を置いて試算してみる。
  6. 次世代炉の冷却材(溶融塩・ナトリウム・ヘリウム)それぞれの長期運用実績の有無を整理し、検証期間の見積もりを自分で持つ。
GLOSSARY

この回に出た概念

直接接続発電設備をデータセンターの敷地内または隣接地に置き、送電網を経由せずに電力を供給する方式。接続待ちの時間を回避できる。
NRC(原子力規制委員会)米国の原子力施設を規制する連邦機関。設計認可・建設許可・運転認可を所管し、審査期間が事業スケジュールを直接左右する。
FERC(連邦エネルギー規制委員会)州をまたぐ電力・ガスの取引と送電を規制する連邦機関。系統接続と料金の公平性をめぐる争点を扱う。
SMR(小型モジュール炉)工場で製造した小型の原子炉モジュールを現地で組み上げる方式。従来の大型炉より建設期間が短いとされる。
溶融塩炉水の代わりに高温で液体になる塩を冷却材に使う炉型。低圧で運転でき、放射性物質の閉じ込めにも寄与するとされる。
被覆粒子燃料(TRISO)ウラン粒子をセラミック層で多重に包んだ燃料。溶融しにくく、需要地の近くに設置しやすいとされる根拠になっている。
SOFC(固体酸化物形燃料電池)高温で作動する燃料電池。燃焼も可動部もなく、天然ガス・バイオガス・水素を直接電気に変換する。
CCS(炭素回収・貯留)排出された二酸化炭素を回収して地下に貯留する技術。OBBBAでは控除が拡充された一方、運用コストの高さが課題。
OBBBA2025年7月成立の米国法。再エネ税額控除を前倒しで縮小する一方、炭素回収の控除は拡大した。
反復型開発全体を一度に作らず、部分の検証装置を作って不具合を潰すサイクルを回す開発手法。ロケット開発から原子炉開発へ持ち込まれた。