本パートは、SECIモデルの話からマイキー氏が「話をずらして」持ち込んだ時事テーマである。マイキー氏によれば、方向性を決めて共通認識を作り、外交に出ていく過程で、必ず場をこじらせる人物がいる。それがトランプ大統領であり、その強い言葉を翻訳して相手に受け入れさせているのがマルコ・ルビオ国務長官だという。参加者はベッセント財務長官やバンス副大統領の名を挙げたが、マイキー氏の答えはルビオだった。
マイキー氏は、ポスト・トランプの有力候補として、国内を担うJ.D.バンス副大統領と外交を担うルビオ国務長官の二人を対置した。ルビオは国務長官と国家安全保障会議のトップを兼ね、議論の手続きを飛ばしてトランプ氏と二人で意思決定できる位置にいる。トランプ氏がエッジの効いた発言で相手を怒らせ、ルビオが言い換えて納得させる。要求の中身は変えずに通すのが、マイキー氏の言う「翻訳者」の仕事である。
そのうえでマイキー氏は、ルビオは「いい人」に見えて実は最も冷徹な人物だと評した。ベネズエラの石油利権確保、キューバへの燃料封鎖、USAIDの解体、グリーンランドをめぐる裏の電話外交、パキスタンでの対イラン交渉をあえてバンスに任せた判断などを挙げ、上院議員時代の信条と真逆の政策でも平然と実行する「カメレオン」だとした。
最後にマイキー氏は、この話を株式市場につなげた。後継がバンスなら米国は内向きになり中国の伸長を許しやすく、ルビオなら対中関係の均衡を保ちながら国内開発に集中できる。中間選挙後の11〜12月以降、次期大統領をめぐる話題に注目するよう求めた。
トランプ外交は「壊す人」と「翻訳する人」の分業で成り立っている。表の言葉より、誰が言い換え、誰が交渉の場から降りたかを見ると、政権の本当の意思決定とポスト・トランプの力関係が見えてくる。
マイキー氏は、SECIの循環で共通認識を作って次の段階に進むところで、毎回こじらせる有名な人物がいると切り出した。トランプ大統領である。そしてそれを翻訳する人物がいる。参加者に誰かと問うと、「ベッセントではないか」「バンスではないか」という声が上がったが、マイキー氏はバンスはトランプ氏と同じ側にいると否定し、答えをマルコ・ルビオだとした。
組織論の文脈に置けば、トランプ氏がアンチテーゼをぶつけて場を揺さぶり、ルビオがそれを相手の受け入れられる言葉に変えて合意(ジンテーゼ)にまとめる構図である。マイキー氏は、中間選挙が近いのでルビオとバンスの動きを見ておいてほしいと述べ、本題に入った。
マイキー氏によれば、トランプ政権の後に向けて二人のライバルがいる。J.D.バンス副大統領とマルコ・ルビオ国務長官である。二人は役割が圧倒的に違い、バンスはアメリカ国内、ルビオは国外、つまり外交を代表している。参加者の一人も、以前のマイキー氏の動画で「内向きと外向き」と説明されていたと応じた。
AP通信は2026年7月、対イラン政策をめぐりバンス氏とルビオ氏のアプローチが異なり、それが2028年大統領選の見通しに影響しうると報じた。同報道では、ルビオ氏はレーガン時代の「自由世界」を掲げる伝統的な外交観、バンス氏は対外介入に否定的な立場と整理されている。両氏は対立を公には否定しているが、トランプ氏自身が支持者にどちらを好むか尋ねるなど、後継論をあおる場面もあった。
2026年の米中間選挙の投票日は11月3日である。
マイキー氏が注目したのは、ルビオが国務長官と国家安全保障会議(NSC)のトップを兼ねている点である。過去にこの二つを同時に務めたのはヘンリー・キッシンジャーだけだという。本来なら国務省と安全保障部門の間で議論や手続きを経て意思決定するところを、両方を一人が持つことで話し合いが省かれる。トランプ氏はこの体制によって意思決定を速め、好きに動けるようにしたというのがマイキー氏の見方である。
マイキー氏によれば、ルビオは午前中に国務省へ指示を出し、午後はトランプ氏の隣の部屋に控えている。その部屋には大型モニターがあり、トランプ氏のトゥルース・ソーシャルのアカウントが常に映し出されている。トランプ氏がいつ何を言い出すか分からないため、発言が出たら相手国の反発を予期して即座に火消しに動く。緊急会見で「実はこういうことだ」と言い直すのがルビオの仕事だという。
ルビオ氏は2025年1月に国務長官に就任し、同年5月1日、マイク・ウォルツ氏の国連大使への転出に伴って国家安全保障担当大統領補佐官を暫定的に兼任した。2026年9月22日、トランプ大統領はこの兼任を正式な任命に切り替える辞令に署名したと報じられている。国務長官と国家安全保障担当補佐官を同時に務めたのは、1973〜75年のキッシンジャー氏に続き史上2人目であり、マイキー氏の説明と一致する。
要確認ルビオ氏の執務室にトゥルース・ソーシャルを常時表示するモニターがあるという点は、公開情報で確認できなかった。関連する報道として、ルビオ氏がトランプ氏にトゥルース・ソーシャルへの投稿内容を助言していた様子が報じられたことはある。
マイキー氏は、以前の講義で示したデータとして、トランプ氏が市場にとってネガティブな情報をほぼ金曜日に出し、月曜日に補正を入れているパターンを改めて紹介した。土日は市場が閉まっているため、その間に問題を調整し、どう伝え直すかを整える。月曜にポジティブな情報を流して株価を戻す。イラン戦争の開始前後の「攻撃する、やっぱりやめる」という発言の繰り返しでも同じ型が見られ、この週末の調整にルビオが同時に登場するという。マイキー氏は、これは歴代大統領も行ってきたメディア対応の手法だとも述べている。
要確認「ネガティブ発言は金曜、補正は月曜」という曜日パターンは、マイキー氏自身の過去の分析に基づく主張であり、今回の調査では第三者の統計的検証を確認していない。市場への影響を見るなら、自分でも発言日と翌営業日の指数変化を記録して確かめるのが確実である。
参加者の多くが「いい人そう」という印象を持つなか、マイキー氏は「こいつが一番狂っている」と断じた。根拠の一つは、ルビオの立場の変わり方である。上院議員時代のルビオはネオコンと呼ばれ、レーガン大統領の考え方を強く支持していた。アメリカは最強であり、民主主義を守り、同盟国とともに独裁国家と戦うべきだ、という立場である。
| 論点 | 上院議員時代(マイキー氏の説明) | 現在の政権方針(マイキー氏の説明) |
|---|---|---|
| 中国 | 全体主義の残忍な国家と批判 | トランプ氏と習近平氏の直接交渉を擁護 |
| ロシア | プーチン大統領を戦争犯罪人と非難 | 和平案を進める |
| NATO | アメリカ最大の戦略的資産 | 防衛費を払わない国は同盟国ではないという姿勢 |
| トランプ氏との関係 | 第一次政権の頃は嫌われていた | 「史上最高の国務長官」と評される側近 |
マイキー氏は、自分の意見を持っていないのではないかと思えるほどのカメレオン体質こそがルビオの特徴であり、アメリカと今の政権にとって合理的なら、敵役にも回るし嘘もつく、言葉でごまかすことも平気でやる、と評した。参加者からは「違った意味で能力が高すぎる」「化け物だ」という反応が出た。
ルビオ氏は2011年から上院議員(フロリダ州)を務め、対中・対ロで強硬派として知られた。2023年には、大統領が上院の同意なしにNATOから脱退することを禁じる条項を、民主党のティム・ケイン議員とともに国防権限法に盛り込んでいる。トランプ氏との関係は2016年大統領予備選で激しく対立したことが起点で、第一次政権期にはベネズエラ政策などで協力した面もある。「第一次政権の時に大嫌いだった」という表現は、2016年予備選時の対立を強調したものと見られる。
また講義中に「両親がキューバ移民なので中東への思い入れが強い」と聞こえる箇所があるが、文脈から「中南米」の言い間違いと考えられる。ルビオ氏はキューバ移民の両親のもとマイアミで生まれている。
トランプ氏がガザを占領して中東のリビエラに作り替え、アメリカの領土にすると発言したとき、そのままでは侵略になる。マイキー氏によれば、ルビオはこれを「紛争地域の復興の責任を引き受ける」と言い換えた。グリーンランドについても、トランプ氏が軍事攻撃も辞さない姿勢を見せる一方、ルビオは関係者一人ひとりに電話を入れ、「大統領は攻撃しないから安心してほしい」と伝えていたという。ただし考え方自体はトランプ氏と同じで、マイキー氏はこれを「はったりの嘘つき」と表現した。日本の外交もこうした言い換えにうまく乗せられている、というのがマイキー氏の見方である。
2025年2月、トランプ氏が米国によるガザの「所有」と再開発に言及した直後、ルビオ氏は「敵対的な動きではなく、復興の責任を担う申し出だ」という趣旨の説明をしており、マイキー氏の説明と整合する。グリーンランドについては2026年1月、ホワイトハウスが軍事的選択肢を排除しない姿勢を示す一方、ルビオ氏は議会側に「目的は購入であり侵攻ではない」と説明したとABCニュースなどが報じている。
マイキー氏は、マドゥロ大統領の拘束計画の中心にいたのがルビオであり、その後デルシー・ロドリゲス暫定大統領の体制を監督しているのもルビオだと説明した。そのうえで、8月に話題になったベネズエラの石油協定を挙げ、埋蔵量の20%、650億バレルの利権をアメリカに100年間付与させたと述べた。ベネズエラの石油に最も頼っていたのはキューバであり、キューバが代わりの供給元としてメキシコに頼ると、ルビオはメキシコに対し、キューバに石油を回すなら関税をかけると迫った。トランプ氏がきつく言い、メキシコが反発すると、ルビオが翻訳して収めた。さらに工業・建設・金属産業への制裁も強化され、キューバでは停電が続き、病院や衛生施設が機能不全に陥っている。国連からの中止要請も、国連に代わる平和評議会を作った以上無視している、とマイキー氏は述べた。
ホワイトハウスが2026年8月31日に発表したファクトシートによると、協定は米国側の企業体North American Blue Energy Partners(NABEP)を通じて17の油田を対象とし、確認埋蔵量は約65億バレル、採掘権の期間は100年である。米国は親会社の35%の持分を持ち、生産量の20%を原価で購入する権利と、残り80%の優先購入権を得るとされる。
講義では「埋蔵量の20%、650億バレル」とされたが、公式発表では対象埋蔵量は約65億バレル(桁が一つ異なる)で、20%は「埋蔵量の比率」ではなく「生産量のうち原価で購入できる比率」である。「100年」は一致する。数字を引用する際は公式発表を確認したい。
キューバをめぐる時系列にも注意が要る。講義では8月の石油協定の後にキューバがメキシコに頼り、ルビオが関税で迫ったという流れで語られたが、実際には米国は2026年1月3日のマドゥロ拘束直後からキューバ向け石油に制裁を課し、メキシコは1月27日に供給を停止、1月29日にはトランプ氏がキューバに石油を輸出する国に関税を課す大統領令を出している。メキシコへの圧力は協定より約7カ月前に始まっていた。3月16日には電力網が崩壊して全島停電となり、6月には国営石油会社CUPETが制裁対象となった。9月にはカストロ家の親族や燃料関連企業への追加制裁も報じられている。
平和評議会(Board of Peace)は、2026年1月22日のダボス会議でトランプ氏が発足させたことが確認できる。要確認ルビオ氏がその設計者だったという点、国連の中止要請を無視したという点は、今回の調査では一次情報を確認できなかった。
マイキー氏は、ベネズエラ攻撃の後に「年末に向けてキューバが話題になる」と以前の動画で予測していたことに触れ、米国メディアでキューバの話が増え始めており、10〜11月にかけてさらに増えるだろうと述べた。キューバ系移民の子として中南米を救いたいと言いながら、キューバの行き場をなくす設計をしたのはルビオだ、というのがマイキー氏の指摘である。
マイキー氏がさらに踏み込んだのが、イーロン・マスク氏率いる政府効率化省(DOGE)が最初に標的にした米国際開発庁(USAID)である。通常、議会が設置した政府機関を止めるには、連邦議会での法改正と審議が必要で、野党の民主党も黙っていない。マイキー氏によれば、実際には次の手順で解体が進んだ。
本来なら組織のトップは「こういう大義がある」と止める側に立つはずだが、ルビオをトップに据えたことで内部からの抵抗がなくなった。マイキー氏はこれを「出来レース」と呼び、それを平気な顔でやり切れる人物だと評した。
ルビオ氏は2025年2月3日、自身がUSAIDの長官代行に就いたと表明した。その後、職員の大半が休職・自宅待機扱いとなり、3月28日には残る職員のほぼ全員に解雇通知が出されたとNPRなどが報じている。残存事業は国務省に吸収され、USAIDは独立機関としての役割を2025年7月1日に終えた。手続きの合法性については訴訟が相次いだ。マイキー氏の説明した流れは、公開された報道とおおむね整合する。
マイキー氏が「ポジショニングが神がかっている」と評したのが、パキスタンでの対イラン交渉である。本来、中東の外交はクシュナー氏やウィトコフ氏、そして国務長官であるルビオが担う領域であり、副大統領のバンスが出ていく理由はない。しかしルビオはこの交渉がうまくいかないと分かっていたので行かず、バンスに行かせた。その間、自分はトランプ氏の隣でUFCを観戦していた、とマイキー氏は述べた。
2026年4月にパキスタンのイスラマバードで行われた対イラン停戦協議について、AP通信は、政権関係者の話として「ルビオ氏は受け入れ可能な合意が得られるか懐疑的で、代表団を率いることを辞退した」と報じ、バンス氏は2度トランプ氏に要請して代表団長になったとしている。協議が不調に終わった4月11日、トランプ氏とルビオ氏がマイアミでUFC 327を観戦していたことも複数メディアが伝えた。マイキー氏の説明は報道と一致する。一方、協議中にルビオ氏が合意を妨げたとする報道も一部にあるが、ロシア系メディアを出典とするもので、裏付けは確認していない。
マイキー氏は、この話をする理由は株式市場につながるからだと明言した。米国が国内優先の動きを強めるバンス路線になれば、中国の発展が一気に進む。一方、外交に天才的な手腕を持つルビオであれば、中国との関係の均衡を保ちながら、国内の開発に集中できる。どちらが次期大統領になるかで、アメリカの外交も株価の動きも大きく変わるというのがマイキー氏の見立てである。
「バンスなら中国が伸び、ルビオなら均衡」という対応関係は、マイキー氏の仮説である。投資判断に使う場合は、後継候補の支持率、共和党予備選の日程、対中関税や輸出規制に関する各候補の発言を、中間選挙後に時系列で記録して検証するのが現実的である。予測市場でも両氏の2028年指名確率は取引されており、ベネズエラ協定などの出来事で変動したと報じられている。