NBIS NASDAQ AIインフラ・クラウド

ネビウス・グループ

旧Yandexのロシア事業を分離し、AIインフラ・クラウド専業企業として再出発した急成長企業。爆発的な売上拡大と先行投資の重さが同居する局面を、事業構造・経営者・財務・SCP分析からまとめました。

01 / OVERVIEW

スナップショット

株価

約$220

2026/7/11時点

時価総額

約$545〜553億

情報源により幅あり

PER(実績)

約75倍

非経常的な評価益を含む点に留意

保有株数

20

ポートフォリオ登録数

出典:複数金融情報サイトの集計値(2026/7/11時点)。PERには保有するClickHouse持分の評価益(非現金項目)が含まれ、コア事業の実態を必ずしも反映していない点に注意。

02 / SEGMENT

事業ごと・国/エリアごとの売上高比率

事業セグメント別 売上高構成比(2025年通期、総額5.30億ドル)

91%
Nebius(AIインフラ)約91%(前年比+603%) TripleTen(エドテック)約10%(同+88%) Avride(自動運転)約0.2%(同+393%)

旧データラベリング事業Tolokaは2025年に議決権の過半を喪失し持分法投資へ移行、現在の連結対象から外れている。

国・エリア別展開

オランダ(本社) フィンランド(自社DC) フランス アイスランド 英国 イスラエル 米国(拡大中)

国別の正確な売上構成比は非開示だが、Microsoft向けの米国ニュージャージー州新設データセンターやペンシルベニア州1.2GW計画により、今後は米国比率の上昇が見込まれる。

出典:Nebius Group FY2025年次報告書(20-F)、決算資料。

03 / HISTORY

創業からの歴史

ネビウス・グループの前身は、1997年にアルカディ・ヴォロジュ氏らが共同設立したロシアの検索エンジン企業Yandexである。Googleより1年早く創業されたYandexは2011年にNASDAQへ上場し、ロシア最大級のテック企業へと成長した。しかし2022年のロシアによるウクライナ侵攻を受け、Yandex株はNasdaqで約2年半にわたり取引停止に追い込まれる。同社は2024年7月、ロシア国内事業一式を現地投資家コンソーシアムへ約54億ドルで売却する再編を完了し、ロシア事業を一切持たないオランダ持株会社として、クラウド/AIインフラ事業(Nebius)、自動運転(Avride)、データラベリング(Toloka)、エドテック(TripleTen)というグローバル事業群のみを残した。同年8月に社名を「ネビウス・グループ」に変更し、10月に新ティッカー「NBIS」でNasdaq取引を再開。地政学的な分離という異例の経緯を経て、AIインフラ専業企業として第二の創業を果たした。
04 / MISSION, VISION, VALUE

ミッション・ビジョン・バリュー

同社は「B2B市場向けにクラウド・機械学習ソリューションの世界的エコシステムを構築し、企業のデジタル時代における成長を支える」ことをミッションに掲げ、スタートアップ的な機動力と大規模インフラ構築で培った専門性を融合させることをビジョンとする。企業文化としては官僚主義を嫌う「スタートアップマインド」を重視し、NVIDIAの最新GPU(H100/H200等)への早期アクセスに象徴されるイノベーション志向を前面に打ち出している。ロシア事業からの分離という抜本的な決断も、西側の顧客・投資家から信頼を得るための理念実践の一環と位置付けられる。
05 / LEADERSHIP

現経営者の特徴・過去の実績(レジリエンスの観点)

CEOアルカディ・ヴォロジュ氏はカザフスタン(旧ソ連)出身で、1997年にYandexを共同創業し、2000年から約25年間にわたりCEOを務めた人物である。最大の危機対応実績は、2022年のロシアによるウクライナ侵攻を受けてNasdaq上場が2年半凍結されるという未曾有の事態に対し、2024年にロシア事業を約54億ドルで売却・分離するという複雑な企業再編を自ら主導し、非ロシア資産のみを残したグローバル持株会社として会社を存続させたことにある。この「地政学リスクからの意図的な分離」という決断は、創業者自身が持つ資産・人脈・評判を大きく犠牲にしてでも会社の存続と西側市場での信頼回復を優先した、経営者としてのレジリエンス(回復力)を象徴する事例といえる。2025年1月にロシア本体のYandexから完全に退き、現在はネビウスCEOとしてAIインフラ事業に専念している。
06 / LATEST EARNINGS

直近決算の予想・ガイダンスに対する結果

2026年Q1実績(市場予想対比)

指標市場予想実績評価
売上高$3.71億$3.99億(前年同期比+684%)予想超過
純利益(GAAP)$6.21億(黒字転換)ClickHouse評価益$7.81億が主因
調整後純損益(コア事業)▲$1.03億(赤字継続)コアは依然赤字
調整後EBITDA市場予想比$1.30億予想比+約43%
見出し上の「黒字転換」はClickHouse評価益によるものであり、コア事業(AIインフラ)自体は依然として調整後ベースで赤字が続いている点には注意が必要。ただしAI事業単体の利益率は前四半期の24%から45%へ拡大しており、事業の収益性自体は着実に改善している。会社は2026年通期のガイダンスとしてARR(年換算収益)70〜90億ドル、グループ売上高30〜34億ドル、調整後EBITDAマージン約40%を掲げ、設備投資(capex)計画も160〜200億ドルから200〜250億ドルへ上方修正した。
07 / REVENUE & PROFIT

売上高・税引前利益の推移(直近10年間)

売上高の推移(億ドル)

0.1億 FY2023 0.9億 FY2024 5.3億(+479%) FY2025 3.99億 Q1'26単独

Q1'26は単独四半期実績(前年同期比+684%)。上場が新しく事業再編(ロシア事業分離)を経ているため10年分の連続データは存在しない。

セグメント調整後EBITDA損失の縮小(億ドル、絶対値)

▲2.41億 FY2023 ▲2.26億 FY2024 ▲0.65億 FY2025

赤字幅は3年連続で縮小しており、成長と並行して収益性も改善している。

出典:Nebius Group SEC提出書類(20-F、6-K)。

08 / VALUATION

PERの推移(直近10年間)

PER・PSRの直近の実績値(スケール0〜100倍)

PER(実績)約75倍
PSR(情報源により幅あり)7.7倍〜67倍

実績PERはClickHouse持分の評価益等の非経常項目を含むため実態を歪めている可能性あり。PSRは算定方法(TTMか直近四半期年率換算か)の違いで幅が生じる。いずれも情報技術セクター平均を大幅に上回る成長期待プレミアムが付いた状態。

09 / CAPITAL RETURNS

ROIC・WACC・ROEの推移(直近10年間)

ROE・ROIC

ROE(情報源により幅あり、スケール0〜20%)1.8%〜14.1%
ROIC(概算、スケール▲20%〜+20%)▲9%〜▲15%

ROICはおおむねマイナス圏で推移しており、巨額の設備投資(2025年通期41億ドル、前年比+403.5%)が先行し、投下資本に対するリターンがまだ確立していない段階にある。

収益性の評価軸

コア事業(AIインフラ)は依然として調整後ベースで赤字が続いており、直近の純利益黒字化はClickHouse持分の非経常評価益によるもの。ROE・ROICを黒字企業と同列に比較することは適切でなく、「先行投資フェーズの成長企業」として評価する必要がある。
10 / CASH FLOW

営業・投資・財務・フリーキャッシュフローの推移(直近10年間)

設備投資(capex)の急拡大(10億ドル)

0.01 FY2022 0.08 FY2023 0.81 FY2024 4.07 FY2025 22.50 FY2026E

設備投資は$15M(FY2022)→$83M(FY2023)→$808M(FY2024)→$4.07B(FY2025)と加速度的に拡大し、FY2026は会社ガイダンスで$20〜25B(中央値$22.5B)まで見込まれる。GPU(NVIDIA GB300/Vera Rubin等)調達とギガワット級データセンター建設が主因。2026年Q1営業キャッシュフローは+$2.3B(前年同期-$0.2Bから大幅改善、顧客からの前払金が寄与)。2024年通期フリーキャッシュフローは-$0.56B。財務キャッシュフローは2024年+$0.83B→2025年+$5.13Bへ急拡大し、Microsoft・Meta向け長期契約を背景にした資金調達(転換社債$4.34B規模、NVIDIAからの$2.0B出資等)を積極化している。

11 / INVESTMENT & M&A

直近の投資・M&A状況

2025年9月、Microsoftとニュージャージー州の新データセンターでGPUインフラを提供する5年間・最大194億ドル規模の商業契約を締結。2026年3月にはNVIDIAが20億ドルを出資する戦略的パートナーシップを発表し、2030年末までに5GW超の容量展開を可能にする体制を構築した。Metaとも最大270億ドル規模・5年間の契約を結んでいるとされ、Microsoft・Metaを中心とした契約バックログは総額450億〜500億ドル規模に達する。2026年5月には燃料電池大手Bloom Energyと10年契約×3フェーズ・総額最大26億ドルの電力供給契約を締結し、データセンターの電力調達を多様化。買収面では2026年2月にエージェント型検索企業Tavilyを買収したほか、自動運転子会社Avrideには2025年10月にUberが最大3.75億ドルを追加出資している。旺盛な設備投資(2026年通期ガイダンス200〜250億ドル)を、顧客からの長期契約・前払金を活用した「顧客資金調達型」の資本配分モデルで賄う点が特徴的である。
12 / SEGMENT GROWTH

主要事業ごとの成長性

セグメント別の成長ドライバー

Nebius(コアAIインフラ):Core AI cloud ARRが2026年Q1時点で前四半期比+54%の19.2億ドルに拡大、「容量完売(sold out)」状態が続くほど需要が供給を上回る。TripleTen(エドテック):2025年通期+88%と安定した第二の収益源。Avride(自動運転):絶対額はまだ小さいが+393%と高成長。
成長の中心はAIインフラ需要の爆発的拡大であり、需要が供給能力(GPU確保・データセンター建設)を上回る「容量制約」が成長の律速要因になっている点が特徴的だ。この状況は裏を返せば、データセンター用地・電力確保・NVIDIAからのGPU割当が拡大できれば売上がさらに伸びる余地を意味しており、Bloom Energyとの電力提携やペンシルベニア州の新データセンター計画はこの制約を緩和するための布石と位置付けられる。
13 / COMPETITIVE POSITION

競争優位性や業界内でのポジション

AIインフラ・クラウド市場は、AWS・Google Cloud・Azureといった大手ハイパースケーラーと、CoreWeave・Nebius・Crusoe・Lambda等の「ネオクラウド」専業勢が競合する構造にある。最大の競合であるCoreWeaveと比較すると、GPU保有規模では約10分の1と大きく劣るが、2026年Q1の売上成長率(+684%)はCoreWeave(+112%)を大きく上回る。負債総額もCoreWeaveの約210億ドルに対しネビウスは約40億ドルと相対的に低く、財務健全性の面では優位にある。技術面では複数拠点を統合クラスタとして連結する「グローバルGPUファブリック」と、欧州によりウェイトを置いた展開が独自の強みとされ、調査会社SemiAnalysisの評価ではOracle・Microsoft Azureと並ぶ「Gold」ティアに位置付けられている(最高位「Platinum」はCoreWeaveのみ)。規模では劣るが成長率と財務の健全性で勝るという、明確な差別化ポジションを築いている。
14 / SCP ANALYSIS

SCP理論からの分析(市場動向・規制リスク・業界トレンド)

Structure(市場構造)

大手ハイパースケーラーと専業ネオクラウド勢が競合する構造で、供給側はNVIDIAへの高度な依存という寡占的サプライチェーンのボトルネックを抱える。需要は現状「容量完売」状態が続き、データセンター用地・電力確保が成長の律速要因。

Conduct(企業行動)

顧客(Microsoft・Meta等)からの長期契約・前払金を活用した資金調達モデル、NVIDIAからの直接出資受け入れによる優先GPUアクセス確保、Bloom Energyとの燃料電池提携による電力調達の多様化・自家発電化など、供給制約への対応を先行させる企業行動が特徴的。

Performance(業界トレンド・帰結)

売上高は急拡大する一方でROIC・ROEはマイナス圏にあり、巨額の先行投資が将来の需要を的確に捉えられるかが最大の論点。PSR・PERは業界平均を大幅に上回る高評価を市場から得ているが、その持続性は需要の実需性・NVIDIA供給の安定性に依存する。加えてロシア出自という「レガシー」由来の地政学リスクが20-Fのリスク要因としても明記されており、業界構造とは別軸の固有リスクとして意識する必要がある。
15 / INVESTMENT THESIS

これらの分析結果をもとにした現在の投資妙味

ネビウス・グループは「AIインフラ需要の爆発的拡大」という構造的追い風を最も純粋な形で受ける銘柄のひとつである。Microsoft・Meta・NVIDIAという最上位クラスの顧客・パートナーとの契約、CoreWeaveを上回る成長率、相対的に健全な財務基盤は、同カテゴリーの中でも際立った特徴だ。一方で、コア事業は依然として調整後ベースで赤字であり、直近の「黒字転換」報道はClickHouse持分の非経常評価益によるものである点は必ず認識しておく必要がある。PSR・PERの評価倍率は業界平均を大幅に上回っており、「需要の実需性が続く」という前提が崩れた場合の株価調整余地は大きい。ロシア出自という地政学的背景も、他のAIインフラ企業にはない固有のレピュテーションリスクとして残る。「AIインフラ投資テーマへの高ベータな参加」として位置付けられる銘柄であり、業績のコア収益性(調整後EBITDAマージンの改善ペース)を継続的に確認しながら投資判断を行う必要がある。
16 / WATCH POINTS & RISKS

今後の注目ポイントやリスク要因

注目ポイント

2026年通期ガイダンス(ARR70〜90億ドル、グループ売上高30〜34億ドル)の達成状況/契約容量4GWへの到達スケジュール(ペンシルベニア州1.2GW新拠点等)/Bloom Energy提携による電力調達進捗/調整後EBITDAマージンの改善ペース(コア事業の黒字化時期)/Avrideの外部資金調達進展。

リスク要因

コア事業が依然として調整後ベースで赤字である点/巨額の設備投資(2026年200〜250億ドル)を賄う追加増資・社債発行による既存株主の希薄化リスク/NVIDIAへの供給依存によるGPU調達遅延・価格上昇リスク/AI関連投資が一時的な期待先行である可能性(供給過剰化リスク)/ロシア出自というレガシーに由来する地政学リスク、イスラエル関連事業を巡る中東情勢の緊張/内部統制の重要な不備(TripleTen事業の収益認識等、2026年末までの是正目標)。