MU NASDAQ 半導体メモリ

マイクロン・テクノロジー

DRAM・NANDを手掛ける米国唯一の総合メモリ半導体メーカー。HBM(広帯域メモリ)需要の爆発的拡大と歴史的な半導体市況の逼迫を追い風に、2026年5月には時価総額1兆ドルを突破。景気循環(シリコンサイクル)の荒波を何度も乗り越えてきたレジリエンスと、直近のAIメモリ供給不足という追い風を軸に、事業構造・沿革・経営者からSCP分析までをナラティブでまとめました。

01 / OVERVIEW

スナップショット

株価

861.00ドル

2026/8/10終値

時価総額

約9,911億ドル

2026/8時点、2026年5月に初の1兆ドル突破

PER(実績TTM/予想)

19.8倍/6.1倍

2026/8時点

保有株数

未確認

出典:StockAnalysis.com(stockanalysis.com/stocks/mu)。株価・PERは日次変動のため証券会社アプリ等で最新値をご確認ください。予想PER6倍台は、直近四半期の急激な増益(メモリ市況逼迫)を反映した市場予想に基づく。

02 / SEGMENT

事業ごと・国/エリアごとの売上高比率

事業セグメント別 売上高構成比(FY2025、2025年8月期)

4事業単位制:①CMBU(クラウドメモリ事業=HBM含むデータセンター向けDRAM)135.2億ドル(構成比36.2%)/②MCBU(モバイル・クライアント事業=スマホ・PC向け)118.6億ドル(同31.7%)/③CDBU(コアデータセンター事業=サーバー向け標準DRAM)72.3億ドル(同19.3%)/④AEBU(自動車・組み込み事業)47.5億ドル(同12.7%)。直近(2026年5月期LTM)はHBMの急拡大でCMBUの構成比が34.7%まで上昇、CDBUも23.4%に拡大。

地域別売上・地政学構造

製造拠点はアイダホ州ボイシ(本社)を中心に、ユタ州、バージニア州、および買収で獲得した日本(旧エルピーダメモリ=マイクロンメモリジャパン)・台湾(旧Inotera=マイクロンメモリ台湾)・シンガポールに展開。販売面では中国が主要市場のひとつだったが、2023年5月の中国サイバースペース管理局(CAC)によるセキュリティ審査で「重大なセキュリティ問題」を認定され、中国の重要情報インフラ事業者向け販売が事実上禁止に。データセンター向け中国売上は消失した一方、モバイル・車載向けの中国販売は継続中。

出典:StockAnalysis.com KPIページ(stockanalysis.com/stocks/mu/financials/metrics)、CSIS分析(csis.org/analysis/micron-aggression-right-response-beijings-ban-us-chipmaker)、Micron IR資料。

03 / HISTORY

創業からの歴史

1978年、アイダホ州ボイシでウォード・パーキンソン、ジョー・パーキンソン兄弟、デニス・ウィルソン、ダグ・ピットマンの4名が半導体設計コンサルティング会社として創業。地元アイダホの投資家から出資を受け、1981年に自社初の半導体製造工場(ファブ)を完成させ設計会社から製造業へ転換した。1984年にナスダック上場。以降、DRAM専業メーカーとして日米半導体摩擦・度重なる価格暴落を伴う「シリコンサイクル」を幾度もくぐり抜けながら生き残った数少ない米国メモリメーカーとなった。1998年にはテキサス・インスツルメンツのメモリ事業を買収し規模を拡大。
2000年代後半のリーマンショックに伴うDRAM価格暴落による業界再編を経て、2013年に経営破綻していた日本のエルピーダメモリを949百万ドルで買収(現マイクロンメモリジャパン、広島工場を含む)、同時に台湾の関連会社Rexchipの89%持分も取得。2016年には台湾のDRAM合弁会社Inoteraの残り67%持分も完全子会社化し、日本・台湾の製造拠点を統合した。2017年5月にサンジェイ・メロートラ氏がCEOに就任すると、HBM(広帯域メモリ)をはじめとするAI・データセンター向け高付加価値メモリへの選択と集中を加速。2023年5月には中国当局から安全保障上の懸念を理由に事実上の販売禁止措置を受けるという大きな逆風に直面したが、その後のAIブームによるHBM需要爆発を追い風に業績は急回復し、2026年5月には米国企業として時価総額1兆ドルの大台に到達した。
04 / MISSION, VISION, VALUE

ミッション・ビジョン・バリュー

マイクロンのミッションは「メモリ・ストレージ・ソリューションのグローバルリーダーであること」、ビジョンは「世界が情報を活用する方法を変革し、すべての人の生活を豊かにする(Transforming how the world uses information to enrich life for all)」。ビジョンにあえて「for all(すべての人のために)」という言葉を加えている点が特徴で、AIや5Gが実現する恩恵を一部の人だけでなく広く社会全体に届けるという包摂性を強調している。
コアバリューとして「People(人)」「Innovation(革新)」「Tenacity(粘り強さ)」「Collaboration(協働)」「Customer Focus(顧客志向)」の5つを掲げる。とりわけ「Tenacity(粘り強さ)」は、価格が数倍〜数分の1に振れる過酷なメモリ市況の中で数十年にわたり生き残ってきた同社の実態を色濃く反映した価値観であり、単なるスローガンではなく、シリコンサイクルを前提とした長期の設備投資判断・財務規律に実際に落とし込まれている点が同社らしさと言える。
05 / LEADERSHIP

現経営者の特徴・過去の実績(レジリエンスの観点)

CEOのサンジェイ・メロートラ氏は、フラッシュメモリ大手サンディスクの共同創業者であり、1988年の創業から2011〜2016年のCEO時代を経て、2016年にウエスタン・デジタルへ160億ドルで売却するまで同社を率いた実績を持つ。2017年5月にマイクロンのCEOに就任して以降、NAND中心だった同社のポートフォリオをDRAM・HBM(広帯域メモリ)へとシフトさせ、特にAIサーバー向け高付加価値メモリへの集中投資を主導してきた。2022年には全米工学アカデミー(NAE)に選出されている。
レジリエンスという観点で最も象徴的なのは、2023年5月に中国当局から安全保障上の懸念を理由に主要顧客(重要情報インフラ事業者)向け販売を事実上禁止されるという、外交・地政学リスクが直接業績を直撃する異例の逆風への対応である。メロートラ体制はこの局面でデータセンター向け中国売上を実質的に失いながらも、他地域(米国・韓国・台湾の顧客)向けHBM供給や自動車・モバイル向け中国販売の維持で補い、その後のAI投資ブームによるHBM争奪戦の中でSK hynix・サムスンに次ぐ有力な第3极として存在感を回復させた。またFY2023には半導体市況の急落で58億ドルの最終赤字を計上したが、その後わずか2年でFY2025に85億ドルの黒字、そして2026年度にはさらに歴史的な増益局面へと転換させており、シリコンサイクルの底で耐え、山で刈り取るというメモリ経営の要諦を体現する実績を積み上げている。
06 / LATEST EARNINGS

直近決算の予想・ガイダンスに対する結果

2026年度第3四半期(2026年5月28日期末)実績

指標実績市場予想・前年比評価
売上高414.6億ドル市場予想358.4億ドル(LSEGコンセンサス)/前年比+346%、前四半期比+74%大幅な予想超過・四半期過去最高
Non-GAAP粗利率84.9%ガイダンスを大幅に上回る歴史的高水準
Non-GAAP EPS25.11ドルガイダンス上限を大幅超過予想超過
GAAP純利益282.4億ドル(単四半期)前年から急拡大四半期として過去最高
HBM4関連累計売上高10億ドル超NVIDIA「Vera Rubin」向け出荷を2026年3月開始、HBM3E比で約2倍のペースで量産立ち上げ計画超過ペース
HBM・DRAMの需給逼迫は2027年以降も継続する見通しで、会社側は2027年のHBM市場規模(TAM)が1,000億ドルを超えると予想。主要顧客との間で今後の売上の最大半分をカバーするとされる16件の戦略的顧客契約(SCA)を締結しており、take-or-pay(購入義務付き)条件を含む22億ドル超の現金・コミットメントを確保するなど、従来のメモリ業界特有の乱高下(コモディティ化による価格暴落)を一定程度抑制する仕組みづくりを進めている点が今回の決算で特に注目された。
07 / REVENUE & PROFIT

売上高・純利益の推移(直近10年間)

売上高の推移(FY2016〜FY2025、8月期、単位:億ドル)

124 FY16 203 FY17 304 FY18 234 FY19 214 FY20 277 FY21 308 FY22 155 FY23 251 FY24 374 FY25

純利益の推移(FY2016〜FY2025、単位:億ドル)

-3 FY16 51 FY17 141 FY18 63 FY19 27 FY20 59 FY21 87 FY22 -58 FY23 8 FY24 85 FY25

出典:MacroTrends(macrotrends.net/stocks/charts/MU/micron-technology/revenue、/net-income)、StockAnalysis.com。メモリ半導体特有の「シリコンサイクル」により売上高・純利益とも数年単位で大きく上下動する点が特徴。FY2018はDRAM価格高騰で過去最高益(純利益141億ドル)を記録した一方、FY2023は半導体市況の急落と在庫調整、中国での販売制限が重なり58億ドルの最終赤字に転落。FY2025・FY2026はAIサーバー向けHBM需要の急拡大により過去最高水準の業績が続いている。なお2026年度(TTM、2026年5月期)の売上高は902.7億ドルまで急拡大しており、通期では上記グラフを大幅に上回る見通し。

08 / VALUATION

PERの推移(直近5年間の実績+直近値)

PER(実績)の推移(FY2021〜FY2025期末)

年度FY21FY22FY23FY24FY25現在(2026/8)
PER(実績)14.4倍7.4倍赤字のため算出不可136.5倍16.1倍19.8倍
予想PER7.1倍11.9倍203.0倍12.8倍10.2倍6.1倍

出典:StockAnalysis.com(stockanalysis.com/stocks/mu/financials/ratios)。メモリ株特有の「業績のボラティリティがPERのボラティリティに直結する」典型例。FY2023は最終赤字のためPER算出不可、FY2024は業績底打ち直後で分母の利益が小さくPERが136倍と跳ね上がった。直近の予想PER6倍台は、2026年度の急激な増益(HBM需要爆発)を織り込んだ市場予想に基づくもので、メモリ市況の反転リスクを常に念頭に置く必要がある。FY2016〜FY2020分は次回更新時に反映予定。

09 / CAPITAL RETURNS

ROIC・WACC・ROEの推移(直近実績+概算試算)

収益性指標の推移(FY2021〜FY2025、粗利率・営業利益率・純利益率)

年度FY21FY22FY23FY24FY25TTM(2026/5期)
粗利率37.6%45.2%-9.1%22.4%39.8%72.6%
営業利益率22.7%31.5%-37.0%5.2%26.1%65.6%
純利益率21.0%28.2%-37.6%3.1%22.8%55.9%

出典:StockAnalysis.com(stockanalysis.com/stocks/mu/financials/income-statement)。TTM(2026年5月期)は歴史的なメモリ需給逼迫を反映し、粗利率72.6%・純利益率55.9%という過去に例のない水準まで急上昇。ROE・ROIC単独の10年連続系列は未取得のため次回更新時に反映予定だが、上記の利益率推移からも「業績のシリコンサイクル」が資本収益性にも直結していることが読み取れる。

財務健全性指標(2026年5月期末)

現金及び投資
260億ドル
総負債
64億ドル

純現金ポジションは196億ドルとネットキャッシュ。半導体設備投資(TTMで253億ドル)が大きい業界だが、直近の記録的な利益・キャッシュフローにより財務基盤は大幅に強化されている。

ROIC・WACC(概算試算)

ROIC(概算)
25〜35%
WACC(概算)
10〜11%
0%40%

無リスク金利4%前後+半導体設備集約型ビジネスに伴う高めのβ(1.3〜1.5程度)×ERP5〜6%で概算。直近のROIC概算値は現在の記録的な利益水準を反映した「サイクル最高値」に近く、シリコンサイクルが反転すればROICは大きく低下する点に留意。正式な開示はなく当サイトの概算試算です。

10 / CASH FLOW

営業・投資・財務・フリーキャッシュフローの推移(直近5年間)

年度(単位:億ドル)FY21FY22FY23FY24FY25
営業CF124.7151.815.685.1175.3
設備投資(CapEx)-100.3-120.7-76.8-83.9-158.6
フリーCF24.431.1-61.21.216.7

出典:StockAnalysis.com(stockanalysis.com/stocks/mu/financials/cash-flow-statement)。半導体製造は装置投資負担が極めて重い業界で、FY2023は市況急落の中でも高水準の設備投資を継続した結果フリーCFが61億ドルの赤字に転落。FY2025以降はHBM生産能力増強のため設備投資をさらに積み増しており(TTMで253億ドル)、営業CFの急拡大がこれを吸収する形でフリーCFはプラスを維持。アイダホ・ニューヨーク新工場(CHIPS法補助金最大64億ドルを活用)への大型投資も進行中で、当面は営業CFの相当部分が設備投資に再投下される見通し。FY16〜FY20分は次回更新時に反映予定。

11 / INVESTMENT & M&A

直近の投資・M&A状況

マイクロンの直近の資本配分は、M&Aよりも大規模な自社製造能力への設備投資(オーガニック投資)が中心である。2026年5月、トランプ政権との間で米国内投資を総額約2,000億ドルへ拡大すると発表。アイダホ州ボイシの最先端DRAM新工場(2027年に生産開始予定)を加速させる一方、ニューヨーク州クレイの新工場群は着工を2026年後半に据え置くなど、需要動向に応じて投資ペースを機動的に配分している。CHIPS法に基づく直接補助金は最大64億ドルを確保しており、アイダホ向けの配分を増やす形で一部を再配分した。
戦略面での最大の変化は、主要顧客との長期供給契約の拡大である。HBM4のNVIDIA「Vera Rubin」プラットフォーム向け出荷を2026年3月に開始したほか、今後の売上の最大半分をカバーするとされる16件の戦略的顧客契約(SCA)を締結し、take-or-pay(購入義務付き)条件を含む22億ドル超の現金・コミットメントを確保。従来のメモリ業界に特有だった「増産→価格暴落」のサイクルを、長期契約による需給の可視化である程度緩和しようとする試みが進行中である。大型M&Aとしては2013年のエルピーダメモリ買収・2016年のInotera完全子会社化以降、目立った買収は行っておらず、自社工場への再投資と株主還元(自社株買い・配当)が資本配分の中心になっている。
12 / SEGMENT GROWTH

主要事業ごとの成長性

成長ドライバー(FY2025〜2026年時点)

CMBU(クラウドメモリ/HBM):FY2025売上高135.2億ドル(前年比+257%)で最大の成長エンジン。TTMではさらに313.5億ドルまで拡大/CDBU(コアデータセンター):FY2025売上高72.3億ドルで前年比+45.1%、TTMは211.7億ドルまで急拡大/MCBU(モバイル・クライアント):FY2025売上高118.6億ドルで前年比+1.6%とほぼ横ばい、スマホ・PC市場の成熟を反映/AEBU(自動車・組み込み):FY2025売上高47.5億ドルで前年比+2.6%と底堅いが緩やかな成長。
成長の中心は明確にAIサーバー向けHBM(CMBU)とサーバー向け標準DRAM(CDBU)である。TTM(2026年5月期)ベースでは両セグメント合計で売上高の6割弱を占めるまでに拡大しており、AIデータセンター投資の拡大がそのままマイクロンの成長ドライバーになっている構図が鮮明である。一方、モバイル・クライアント(MCBU)と自動車・組み込み(AEBU)はそれぞれ市場の成熟・循環性の影響で成長率が低く、全社の増収の大部分をデータセンター関連の2セグメントが牽引している。HBM市場ではSK hynixが5〜6割、サムスンが2〜3割台のシェアを持つとされる中、マイクロンはHBM4世代でシェアを急速に伸ばしており(2024年第4四半期の9%から2025年第4四半期には21%まで拡大したとの調査もある)、「第3极」としての存在感が急速に高まっている。
13 / COMPETITIVE POSITION

競争優位性や業界内でのポジション

マイクロンの競争優位性は、①DRAM・NANDの両方を自社製造できる米国唯一の総合メモリメーカーという希少性、②長年の技術蓄積に基づく先端DRAMプロセス(1βナノ世代等)の量産能力、③HBM4世代における急速なシェア拡大という3点に集約される。世界のDRAM市場はサムスン・SK hynix・マイクロンの3社による寡占構造(合計シェア9割超)であり、新規参入が事実上不可能な資本集約型産業のため、既存3社は構造的に高い参入障壁に守られている。
その中でマイクロンは、HBM市場では後発ながらHBM4世代でSK hynix・サムスンを急速に追い上げており、NVIDIA「Vera Rubin」プラットフォームへの採用という重要な実績を獲得した。また米国内に製造拠点を持つ唯一の主要メモリメーカーという地政学的な位置付けは、米国政府のCHIPS法補助金活用や「フレンドショアリング」の潮流の中で、地政学リスクを気にする顧客(特に米系ハイパースケーラー・防衛関連)にとって代替の効きにくい調達先としての価値を生んでいる。一方で中国当局による事実上の販売禁止(2023年)は、この地政学的ポジショニングが諸刃の剣であることも同時に示している。
14 / SCP ANALYSIS

SCP理論からの分析(市場動向・規制リスク・業界トレンド)

Structure(市場構造)

DRAM市場はサムスン・SK hynix・マイクロンの3社寡占(合計シェア9割超)。NAND市場はこれにキオクシア・SKハイニックス系ソリダイム・ウエスタンデジタル系サンディスクを加えた5〜6社体制で、DRAMよりやや競争的。HBM市場は現状SK hynixが優位だが、マイクロンが急速にシェアを伸ばす3社競争構造になりつつある。

Conduct(企業行動)

従来は「増産による規模の経済追求→供給過剰→価格暴落」というシリコンサイクルを繰り返してきたが、直近はHBMを中心に主要顧客との長期契約(take-or-pay条件を含むSCA)を積み上げることで、需給を計画的にコントロールしようとする行動変化が見られる。設備投資は好況期に一段と積み増す傾向があり、CHIPS法補助金も活用しながら米国内生産能力の拡大を進めている。

Performance(業界トレンド・帰結・規制リスク)

AIサーバー投資の拡大によるHBM・DRAM需給逼迫という強い追い風が2027年以降も続くとの見方が業界で共有されている一方、①メモリ業界特有の需給反転リスク(増産投資が数年後の供給過剰・価格暴落につながる歴史的パターン)、②米中対立による地政学リスク(2023年の中国での事実上の販売禁止が象徴)、③AI投資サイクルが減速した場合のHBM需要の急速な鈍化リスク、④SK hynix・サムスンとの技術開発競争激化によるシェア変動リスクが、業績への主な下押し要因として挙げられる。
15 / INVESTMENT THESIS

これらの分析結果をもとにした現在の投資妙味

マイクロンへの投資妙味は、①AIサーバー向けHBM・高帯域DRAM需要の構造的拡大という強い追い風、②米国唯一の総合メモリメーカーという地政学的な希少性、③2026年度に入ってからの歴史的な業績拡大(TTM売上高902.7億ドル、粗利率72.6%)という3点の組み合わせにある。2026年5月には時価総額1兆ドルを突破し、予想PERは6倍台まで低下しており、直近の急激な増益を織り込んでもなお相対的に割安との見方が市場の一部にある。
一方で、メモリ半導体は歴史的に「好況期の高収益→過剰投資→供給過剰→価格暴落」というシリコンサイクルを繰り返してきた業界であり、FY2023には58億ドルの最終赤字を計上した実績もある。現在の記録的な利益率・株価評価は、AI投資ブームという特殊要因に強く依存しており、この需給逼迫がいつまで続くかの見極めが投資判断の核心になる。長期契約(SCA)の拡大によりサイクルの振幅がある程度平準化される可能性はあるが、業界構造そのものがコモディティ色を完全に脱したとまでは言えない点には注意が必要である。
16 / WATCH POINTS & RISKS

今後の注目ポイントやリスク要因

注目ポイント

・HBM4量産の立ち上がりペースとNVIDIA「Vera Rubin」向け出荷拡大の進捗
・16件の戦略的顧客契約(SCA)の履行状況と、2027年のHBM市場規模1,000億ドル予想の実現度
・アイダホ新工場(2027年生産開始予定)・ニューヨーク新工場の建設進捗
・HBM市場でのSK hynix・サムスンとのシェア争いの帰趨(2024年9%→2025年21%への急拡大の持続性)
・記録的な利益率(TTM粗利率72.6%)がいつまで維持されるか

リスク要因

・メモリ業界特有の需給反転リスク(各社の増産投資が数年後の供給過剰・価格暴落を招く歴史的パターン)
・中国当局による事実上の販売禁止が既に発生している地政学リスク(対中データセンター向け売上は消失済み)
・AI投資サイクルが減速・調整局面に入った場合のHBM需要急減リスク
・巨額の設備投資負担(TTMで253億ドル)による財務レバレッジ上昇リスク
・現在の急激な業績拡大を前提とした株価評価(予想PER6倍台)が、増益ペース鈍化時に大きく調整するリスク