LRCX NASDAQ 半導体製造装置

ラムリサーチ

エッチング・成膜装置でAMAT・TELと並ぶ寡占を形成する半導体製造装置大手。NAND市況回復とAI関連投資の両輪を、事業構造・経営者・財務・SCP分析からまとめました。

01 / OVERVIEW

スナップショット

株価

$350.33

2026/7/10時点

時価総額

約$438.1B

2026/7/10時点

PER(実績/予想)

66.2倍/46.3倍

過去10年平均は約19.7倍

保有株数

30

ポートフォリオ登録数

出典:StockAnalysis.com(2026/7/10時点)。同社は2024年10月に10対1の株式分割を実施済み。

02 / SEGMENT

事業ごと・国/エリアごとの売上高比率

収益区分・エンドマーケット別構成比(FY2025・直近四半期)

収益区分(FY2025通期、売上高184.4億ドル)

62.3%
37.7%
システム売上高(114.9億ドル) CSBG・顧客サポート(69.4億ドル)

エンドマーケット別(Q3 FY2026のシステム売上)

54%
27%
12%
ファウンドリ 54% DRAM 27% NAND 12% ロジック・その他 7%

CSBG(経常収益)は四半期として初めて20億ドルを突破するなど、景気循環に左右されにくい収益基盤が拡大している。

国・エリア別 売上高構成比(FY2025)

34%
22%
19%
10%
7%
中国 34%(62.1億ドル) 韓国 22%(41.3億ドル) 台湾 19%(34.5億ドル) 日本 10% 米国 7% 東南アジア 5% 欧州 3%

会社は対中輸出規制強化を受け、2026年通期の中国売上比率が30%を下回る見通しを示している。

出典:Lam Research 10-K(FY2025)、決算資料。

03 / HISTORY

創業からの歴史

ラムリサーチは1980年、ゼロックス・HP・TI出身のエンジニアであるデビッド・K・ラム氏によって創業された(インテル創業者ロバート・ノイス氏も事業計画の助言に関与)。1984年に新規株式公開を果たし、自動化プラズマエッチャー「AutoEtch 480」のヒットで日本・欧州にも拠点を拡大、NEC・東芝等との取引を築いた。2000年代にはデュアルダマシン銅配線プロセスへの多角化を進め、サービス・スペアパーツ事業を経常収益源として育成。転機となったのは2011〜2012年、堆積(デポジション)・銅バリア技術に強みを持つNovellus Systemsを約33億ドルで買収した案件で、これによりエッチング・デポジション・洗浄をカバーする総合ポートフォリオを構築した。2018年12月、Novellus出身のティモシー・アーチャー氏が社長兼CEOに就任し、以後3D NAND・FinFETに続くAI時代の需要拡大を捉えて成長を続けている。
04 / MISSION, VISION, VALUE

ミッション・ビジョン・バリュー

同社は「次世代を定義する半導体のブレークスルーを推進する」ことをミッションに掲げる。行動指針として、顧客・会社・個人という3つの視点で考えること、顧客からの信頼でナンバーワンを目指すことを掲げ、達成・俊敏性・誠実性・多様性と包摂・革新と継続的改善・相互信頼と尊重・オープンなコミュニケーション・当事者意識と説明責任・チームワークという9つのコアバリューを企業文化の基盤とする。エッチング・成膜という要素技術を軸にしながら、顧客企業の次世代プロセスノード開発に伴走する姿勢は、創業以来の技術志向の理念を反映したものといえる。
05 / LEADERSHIP

現経営者の特徴・過去の実績(レジリエンスの観点)

CEOティモシー・アーチャー氏はカリフォルニア工科大学で応用物理学を学び、ハーバード・ビジネス・スクールでマネジメント開発プログラムを修了。Tektronixでキャリアを開始した後、Novellus Systemsに18年間在籍しCOO等の要職を歴任し、2012年のラムによるNovellus買収に伴い入社、2018年12月に社長兼CEOに就任した。技術的な議論にも深く関与するエンジニア出身のリーダーとして知られ、半導体サイクルへのレジリエンス確保のため、地理的・エンドマーケット的に分散した顧客基盤の構築と、既存装置ベースからの経常収益であるCSBG(顧客サポート)事業の拡大を通じてダウンサイクル時の収益平準化を図る戦略を推進してきた。CSBG売上高がQ3 FY2026に四半期として初めて20億ドルを突破したことは、この戦略の成果を示す具体的な実績である。
06 / LATEST EARNINGS

直近決算の予想・ガイダンスに対する結果

Q3 FY2026実績とQ4ガイダンス

指標市場予想実績・ガイダンス評価
売上高(Q3 FY2026実績)約$57.3億$58.41億(前年比+23.8%)市場予想超過
非GAAP EPS(Q3 FY2026実績)$1.35〜$1.36$1.47(過去最高)+8.1% 上振れ
2026年通期WFE市場見通し$1,400億上方修正
売上高(Q4 FY2026ガイダンス)$66億 ± $4億次回決算(7/29)で検証
非GAAP EPS(Q4 FY2026ガイダンス)$1.65 ± $0.15(達成すれば過去最高)次回決算(7/29)で検証
直近四半期は市場予想を大きく上回る「ビート」決算となり、CSBG(顧客サポート)事業が四半期として初めて20億ドルを突破するなど、経常収益基盤の拡大が業績の安定性を高めている。次回のQ4決算(2026年7月29日発表予定)でガイダンス通り過去最高のEPSを達成できるかが、AI・NAND両面の需要の強さを測る試金石となる。
07 / REVENUE & PROFIT

売上高・税引前利益の推移(直近10年間)

売上高・営業利益の推移(FY2016〜FY2025、6月期、単位:10億ドル)

FY16 FY17 FY18 FY19 FY20 FY21 FY22 FY23 FY24 FY25 売上高 営業利益

純利益の推移(FY2016〜FY2025、単位:10億ドル)

0.9 FY16 1.7 FY17 2.4 FY18 2.2 FY19 2.2 FY20 3.9 FY21 4.6 FY22 4.5 FY23 3.8 FY24 5.4 FY25
年度FY16FY17FY18FY19FY20FY21FY22FY23FY24FY25
売上高($B)5.898.0111.089.6510.0514.6317.2317.4314.9118.44
営業利益($B)1.071.903.212.472.674.485.385.184.265.90
純利益($B)0.911.702.382.192.253.914.614.513.835.36

出典:MacroTrends集計、Lam Research決算資料(FY2016〜FY2025、6月期)。NAND市況の波を受けながらも長期的な拡大トレンドは明確。FY2026通期は市場コンセンサスで売上高約232.0億ドル・営業利益約81.8億ドル・純利益約71.0億ドルが見込まれている(予想値)。

08 / VALUATION

PERの推移(直近10年間)

PERの推移(各期末、分割後ベース)

14 FY16 14 FY17 12 FY18 13 FY19 20 FY20 23 FY21 12 FY22 19 FY23 36 FY24 23 FY25

現在(2026年7月)のPERは66.2倍で、過去10年平均(約19.7倍)を大幅に上回るAI関連プレミアムが付いた水準。2018年12月には約7.0倍まで下落した局面もあり、半導体サイクルに応じた振れ幅の大きさも特徴。

09 / CAPITAL RETURNS

ROIC・WACC・ROEの推移(直近10年間)

年度FY16FY17FY18FY19FY20FY21FY22FY23FY24FY25
ROE15.7%25.3%35.1%41.2%47.1%70.0%74.9%55.8%46.6%58.5%
ROICデータ不足・算出方法が不統一のため省略83.6%73.8%58.9%48.1%67.9%
WACC(推定)情報源間で7〜16%と幅が大きく単一の時系列は特定困難(直近の一例:stockanalysis 14.1%、GuruFocus 16.0%、ValueInvesting.io 10.3%、AlphaSpread 9.4%)

ROICはNOPAT・投下資本ベースの算出がFY2021以降しか確認できないため、それ以前は空欄としている。旺盛な自社株買いによる自己資本圧縮がROEの高水準の一因。いずれの年度もWACC推定レンジを大幅に上回るROICを維持しており、寡占的な市場構造による高い価格支配力を裏付ける。

10 / CASH FLOW

営業・投資・財務・フリーキャッシュフローの推移(直近10年間)

年度(単位:$M)FY16FY17FY18FY19FY20FY21FY22FY23FY24FY25
営業CF1,3502,0292,6563,1762,1263,5883,1005,1794,6526,173
投資CF592-2,0532,749-1,637-24473612-535-371-708
財務CF1,596-2,632-3,272-2,390-624-4,167-4,579-2,831-3,996-4,937
フリーCF1,2551,8732,3822,8731,9233,2392,5544,6774,2565,414
FY2025のフリーCFは54.1億ドル(FCFマージン約29.4%)と過去最高水準。自社株買いは年間20〜49億ドル規模で継続し、配当も毎年増額(FY2021年7.3億ドル→FY2025年11.5億ドル)。株主還元と設備投資(研究開発)を両立させる資本配分が続く。
11 / INVESTMENT & M&A

直近の投資・M&A状況

2012年のNovellus買収(約33億ドル)以降、大型M&Aは行わず、技術協業・自社株買い・研究開発投資を中心とした資本配分を継続している。2025年9月にはJSR Corporation・Inpria Corporationとクロスライセンス・協業契約を締結し、EUVリソグラフィ向けドライレジスト技術や次世代の原子層エッチング・堆積プロセス材料の開発を加速させる体制を構築した。社内ベンチャー投資部門「Lam Capital」を通じて、半導体製造周辺技術を持つスタートアップ(Zettabyte、Membrion等)への出資も行っており、大型買収に頼らず技術エコシステム全体への関与を広げる手法が特徴的だ。2024年10月には10対1の株式分割を実施し、個人投資家を含めた株式の流動性向上を図っている。
12 / SEGMENT GROWTH

主要事業ごとの成長性

エンドマーケット別の成長ドライバー

ファウンドリ(構成比54%):GAA(ゲートオールアラウンド)アーキテクチャ移行・先端パッケージング需要が牽引。DRAM(27%):AIサーバー向けHBM容量拡大とDRAM需給逼迫が追い風。NAND(12%):市況が底打ちし回復局面入りとされ、Morgan Stanleyは2027年にNANDシステム売上が59%成長し最も成長率の高いエンドマーケットになると予想。
成長ドライバーは大きく2つに分かれる。ひとつはファウンドリ・DRAMにおけるAI関連の構造的需要拡大で、これは業界共通のテーマとして継続する見通し。もうひとつはNAND市況のシクリカルな回復であり、会社側は2026年通期のWFE市場見通しを1,400億ドルへ引き上げ、Citiは2028年に2,500億ドルまでの拡大を予想するなど、AI需要とメモリサイクル回復が同時に効いてくる局面にある。
13 / COMPETITIVE POSITION

競争優位性や業界内でのポジション

半導体エッチング市場ではラムリサーチが50%超のシェアを持つ業界最大手とされ、特に3D NAND・先端ロジック向けドライエッチングで優位性を持つ。デポジション(薄膜堆積)ではApplied Materialsに次ぐ2位(シェア約17%)。Applied Materials・ラムリサーチ・東京エレクトロン(TEL)の上位3社でデポジション・エッチング・洗浄装置市場の合計約7割を占める寡占構造にあり、AMATがCVD(化学気相成長)で優位、ラムは3D NAND・先端ロジック向けドライエッチングで優位という補完的なポジショニングにある。2025年の市場シェア変動では、ラム・KLA・ASMLがシェアを拡大した一方でAMATとTELがシェアを失ったとの分析もあり、直近は相対的な競争力を高めている局面にある。
14 / SCP ANALYSIS

SCP理論からの分析(市場動向・規制リスク・業界トレンド)

Structure(市場構造)

エッチング・成膜・洗浄装置市場はAMAT・ラム・TELの上位3社で約7割を占める寡占構造。研究開発費の巨大さ、顧客との長期的な技術認定プロセスが高い参入障壁を形成する。

Conduct(企業行動)

対中輸出規制強化(「50%関連会社ルール」等)により2026年通期で約6億ドルの減収影響、中国売上比率は2026年に30%を下回る見通し。中国は国産装置メーカーの育成を進めており、規制が長期的な競争構造を変化させる可能性もある。

Performance(業界トレンド・帰結)

寡占構造による高い価格支配力を背景に、ROE45〜75%・ROIC48〜84%という極めて高い資本収益性を実現している。ただし現在のPER(66倍)は過去平均(約20倍)を大きく上回っており、AI関連期待の織り込みが相当程度進んでいる。対中輸出規制という逆風はあるが、NAND市況回復とAI関連需要の両方がこれを上回るペースで業績を押し上げている。
15 / INVESTMENT THESIS

これらの分析結果をもとにした現在の投資妙味

ラムリサーチは、AI関連の構造的需要拡大とNAND市況のシクリカルな回復という2つの追い風を同時に受けている局面にある。CSBG(経常収益)事業の拡大による収益平準化戦略は、過去の半導体不況(FY2024の減収減益)を教訓とした経営の成熟を示しており、ROIC70%超という高い資本効率も業界内での競争優位性を裏付ける。一方でPERは66倍と過去10年平均(約20倍)の3倍超まで拡大しており、AI・NAND双方の好材料がすでに株価に織り込まれた「期待先行」の状態にあることは意識する必要がある。対中輸出規制による年間約6億ドルの減収影響は無視できないが、それを上回るペースでAI・メモリ需要が拡大している間は業績の勢いが続く可能性が高い。半導体サイクルの反動リスクとバリュエーションの高さを踏まえた上での投資判断が求められる。
16 / WATCH POINTS & RISKS

今後の注目ポイントやリスク要因

注目ポイント

2026年7月29日発表予定のQ4 FY2026決算(ガイダンス売上高66億ドル±4億ドル、EPS 1.65ドル±0.15ドル)/NAND市況回復の持続性/CSBG事業のさらなる拡大ペース/WFE市場1,400億ドル超という見通しの妥当性/JSR・Inpriaとの技術協業の成果。

リスク要因

対中輸出規制のさらなる強化による中国売上の一段の制約(現状で年間約6億ドルの減収要因)/半導体設備投資サイクルの反動リスク(FY2024に前年比▲14.5%の減収実績あり)/PERが過去平均の3倍超まで拡大していることによるバリュエーション調整リスク/NAND市況回復ペースの不確実性/中国国産装置メーカー台頭による長期的な競争構造の変化。