9984 東証プライム 通信・投資持株会社

ソフトバンクグループ

Arm・OpenAI等への集中投資で知られる投資持株会社。事業構造・沿革・経営者の実績・財務10年推移・SCP分析から、現在の投資妙味とリスクをナラティブでまとめました。

01 / OVERVIEW

スナップショット

株価

6,597円

2026/6/24 終値

時価総額

37.68兆円

2026/6/24 時点

PER(実績)

7.52倍

2026/6/24 時点

保有株数

100

ポートフォリオ登録数

出典:IRBANK(irbank.net/9984)。株価は日々変動するため、最新値は証券会社アプリ等でご確認ください。

02 / SEGMENT

事業ごと・国/エリアごとの売上高比率

事業セグメント別 売上収益構成比(2026年3月期)

90.3%
8.2%
SoftBank事業 90.3%(7兆408億円) AIコンピューティング事業 8.2%(6,403億円) Arm事業・その他 1.5%
売上収益7兆7,986億円のうち、SoftBank事業(国内通信・法人・流通、子会社SoftBank Corp(9434)の連結分)が約7兆408億円と全体の9割強を占める。ソフトバンク・ビジョン・ファンド事業は売上高としては小さいが、投資評価益・評価損が「セグメント利益」を通じて純利益を大きく左右する(2026年3月期はOpenAI関連評価益が押し上げ要因)。

国・エリア別の収益構造

売上収益ベースでは日本国内(SoftBank事業)が中心。一方でビジョン・ファンドの投資先やArmの顧客基盤はグローバル(特に米国のAI関連企業)に広がっており、「収益は日本中心、資産・投資エクスポージャーは世界(特に米国AI)中心」という非対称な構造が特徴。詳細な国別内訳は有価証券報告書のセグメント情報に開示されていないため、正確な比率は今後IR資料で確認予定。

出典:ソフトバンクグループ 2026年3月期決算説明会資料・決算短信(softbank.jp)。

03 / HISTORY

創業からの歴史

1981年9月、24歳の孫正義が福岡市でパソコン用ソフトウェアの流通会社「日本ソフトバンク」を設立したところから物語は始まる。創業初期は雑誌出版とソフト流通という、今日の巨大投資会社の姿からは想像しづらい「地味な」事業だったが、ここで培った「新しい技術の流通網を押さえる」という発想は、後年の投資哲学の原型になっている。
1994年の株式公開を経て、1996年を「インターネット元年」と位置づけ米Yahoo!への出資を決断。ここから同社は単なる国内IT企業から、インターネットの潮流そのものに賭けるグローバル投資会社へと軸足を移し始める。2004年の日本テレコム買収、2006年のボーダフォン日本法人買収(Yahoo!BBと合わせ通信事業へ本格参入)を経て、2013年には米スプリントを子会社化し日米最大級の通信顧客基盤を獲得した。
転機は2016年の英Arm買収(約3.3兆円)である。「あらゆる産業がAIとIoTでつながる」という孫正義の未来予想図の中核に、半導体設計IPという「土台」を据えた一手だった。2017年には世界最大級のテクノロジー投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド」を組成し、同社は通信キャリアから、AI関連企業への大型投資を主軸とする「投資持株会社」へと明確に姿を変えていく。2020年のスプリント/T-Mobile合併・株式売却、2022年の完全子会社化していたArmの再上場(2023年9月、Nasdaq)を経て、直近ではOpenAIへの大型出資、Ampere Computing・ABBロボティクス事業の買収など、「AI×半導体×ロボティクス」を軸にした次の30年の布石を打っている段階にある。
04 / MISSION, VISION, VALUE

ミッション・ビジョン・バリュー

ソフトバンクグループが一貫して掲げるのは「情報革命で人々を幸せに」という理念である。個別事業の寄せ集めではなく、「情報革命の担い手となる企業群を、資本と経営の両面から支援する」という一段抽象度の高いミッションを掲げている点が、他の事業会社と一線を画す。
この理念を組織原理に落とし込んだのが孫正義が提唱する「群戦略」である。単一企業がすべての機能を自前で持つのではなく、各分野で圧倒的なNo.1を目指す企業群が、資本関係で緩やかに結びつきながら自律的に成長する――というコンセプトで、ビジョン・ファンドによる分散投資や、Arm・PayPayなど傘下企業の独立運営にその思想が表れている。事業戦略との整合性という観点では、「情報革命の資本の出し手になる」というミッションが、通信事業者から投資持株会社への大胆な業態転換を正当化する一貫した軸になっている。
05 / LEADERSHIP

現経営者の特徴・過去の実績(レジリエンスの観点)

創業者・孫正義(1957年生)は「300年後も情報革命の中心にいる」という時間軸で経営を語る、極端に長期志向の経営者として知られる。意思決定の特徴は、確信を持った領域には資産規模を問わず集中投資する大胆さと、既存事業への執着の薄さ(不採算・非中核事業は迅速に売却する)の組み合わせにある。
レジリエンスという観点で最も象徴的なのは2000年前後のITバブル崩壊だ。当時保有株式の時価総額が数日で数兆円単位で吹き飛び、個人資産も大きく毀損したが、その渦中で継続保有していたアリババ株式が後年数兆円規模のリターンを生み、同社の屋台骨を支えることになった。2019〜2020年のWeWork向け投資の巨額損失(ビジョン・ファンド1号の実質的な失敗の象徴)でも、同社は投資先の経営陣刷新・追加出資による立て直しと同時に、他の投資先(アリババ株の一部売却など)を取り崩して財務健全性を確保し、次のファンド戦略の見直しにつなげた。「派手に負けて、負けを認めて資産を組み替え、次の大勝負に賭け直す」という一連の行動パターンが、同社の意思決定における一貫したレジリエンスの型と言える。
06 / LATEST EARNINGS

直近決算の予想・ガイダンスに対する結果

2026年3月期 通期実績(前期比)

指標前期(FY25)実績今期(FY26)実績前期比・評価
売上収益7兆7,986億円+7.7%
営業利益+7,298億円-48億円黒字→営業赤字に転落
親会社所有者帰属当期利益5兆22億円+333.7%(国内企業として過去最高益)
投資損益7兆2,865億円前期比約2倍(うちOpenAI関連 6兆7,304億円)
同社は「ビジョン・ファンド事業の損益がOpenAIの評価額に大きく左右され予測が困難」との理由で、通期の業績ガイダンスを開示していない。その言葉通り、2026年3月期は本業に近い「営業利益」がわずかながら赤字転落した一方、非上場のOpenAIに対する出資評価益(3.5兆円規模の追加出資を含む)が純利益を過去最高水準まで押し上げるという、対照的な結果になった。株式市場は総じてこの内容を好感し、決算発表後に株価は大きく上昇している。会社側ガイダンスがない以上、投資家は「営業利益ベースの実力」と「ビジョン・ファンドの含み損益」を分けて評価する必要がある。
07 / REVENUE & PROFIT

売上高・税引前利益の推移(直近10年間)

売上収益・営業利益(10年推移、兆円)

FY17 FY18 FY19 FY20 FY21 FY22 FY23 FY24 FY25 FY26 売上収益 営業利益

親会社所有者帰属当期利益(10年推移、兆円)

1.43兆円 FY17 1.04兆円 FY18 1.41兆円 FY19 -0.96兆円 FY20 4.99兆円 FY21 -1.71兆円 FY22 -0.97兆円 FY23 -0.23兆円 FY24 1.15兆円 FY25 5.00兆円 FY26

出典:IRBANK(irbank.net/E02778/pl)。FY19以降は事業再編(スプリント連結除外等)に伴う組み替え後の数値。FY26は営業利益がわずかに赤字化する一方、OpenAI関連の投資評価益により純利益は過去最高。

08 / VALUATION

PERの推移(直近10年間)

PER(期末実績、10年推移)

6.1倍 FY17 8.3倍 FY18 8.3倍 FY19 赤字 FY20 3.5倍 FY21 赤字 FY22 赤字 FY23 赤字 FY24 9.4倍 FY25 4.0倍 FY26

出典:IRBANK(irbank.net/9984/per)。「赤字」の年度は純損失によりPER算出不可。直近(2026/6/24時点)の実績PERは7.52倍。ビジョン・ファンドの評価損益で純利益が大きく振れるため、PERの単純な期間比較には注意が必要。

09 / CAPITAL RETURNS

ROIC・WACC・ROEの推移(直近10年間)

ROE(自己資本利益率、10年推移)

39.8% FY17 20.0% FY18 18.5% FY19 赤字 FY20 48.8% FY21 赤字 FY22 赤字 FY23 赤字 FY24 10.0% FY25 28.4% FY26
指標(概算試算)推定レンジ算出方法
ROIC6〜9%程度税引後営業利益÷投下資本(有利子負債+株主資本)。ビジョン・ファンドの評価損益を含む「純利益」ではなく、通信・Arm等の「営業利益」を分子にした保守的な推定値
WACC8〜10%程度無リスク金利(日本10年債利回り 約2.8%)+株式β(同社は約1.3〜1.5の高ボラティリティ銘柄)×エクイティ・リスクプレミアム(5〜6%程度)に、社債コスト・自己資本比率(約28%)を加重

出典:ROEはIRBANK(irbank.net/E02778/pl)実績値。ROIC・WACCは公式開示がないため当サイトによる概算試算(自己資本比率・株価変動等を基にした推定)で、正式な財務指標ではありません。投資判断の参考程度にとどめてください。ROIC推定値がWACC推定値を下回る局面(特に営業利益が伸び悩んだFY23〜24)は、事業単体では資本コストを十分に上回れていなかった可能性を示唆する。

10 / CASH FLOW

営業・投資・財務・フリーキャッシュフローの推移(直近10年間)

営業・投資・財務・フリーCF(10年推移、兆円)

FY17 FY18 FY19 FY20 FY21 FY22 FY23 FY24 FY25 FY26 営業CF 投資CF 財務CF フリーCF
投資会社らしく、投資CFは一貫して大幅なマイナス(資金流出)が続いている。特筆すべきはFY23(2023年3月期)で、アリババ株の先渡売買契約(プリペイド・フォワードセール)等による資金回収でフリーCFが珍しくプラス(+1.29兆円)に転じた点。逆にFY26は、OpenAIへの追加出資(3.5兆円規模)とAmpere・ABBロボティクス買収が重なり、投資CFが4.5兆円規模の流出となり、財務CF(社債発行等による調達)で穴埋めする構図になっている。営業CFは本業の通信・Arm事業からの安定的なキャッシュ創出力を示す指標だが、規模的には投資活動の資金需要をまったく賄いきれておらず、同社の資金繰りは実質的に「資産売却」と「社債・借入」に依存している。
11 / INVESTMENT & M&A

直近の投資・M&A状況

2025年3月、AI推論・ロボティクス向けArmベースCPUを手掛ける米Ampere Computingを約65億ドル(約1兆円)で買収完了。Armの設計IPと組み合わせ、「AIの頭脳(チップ)から身体(ロボット)まで」を垂直統合する布石とされる。同年10月には、スイスABBのロボティクス事業を企業価値ベース約54億ドルで取得することに合意(2026年半ば〜後半に完了見込み)。両案件はいずれも「Physical AI(現実世界で動くAI)」戦略の一環と位置づけられている。
最大の投資アクションは、対話AI開発のOpenAIへの大型出資である。2026年4月には追加出資の第一トランシェを実行、2026年3月期を通じて総額3.5兆円規模の追加出資を完了したと見られる。この評価益(同期の投資利益7兆2,865億円のうち6兆7,304億円)が、同期の純利益を国内企業として過去最高の5兆円規模に押し上げた最大の要因であり、良くも悪くも同社の業績はOpenAIの企業価値評価に強く連動する状態になっている。資本配分の方向性としては、「半導体(Arm・Ampere)×AIモデル(OpenAI)×ロボット(ABB)」という一気通貫のAI関連投資に資源を集中させる一方、既存の非中核資産(保有株式の一部売却等)を継続的に取り崩し、レバレッジと資金調達(社債発行)を積極活用する姿勢が続いている。
12 / SEGMENT GROWTH

主要事業ごとの成長性

主要セグメントの伸び(2026年3月期、前期比)

22.7% Armロイヤリティ 25.3% Arm売上高 8.5% AIコンピューティング 7.6% SoftBank事業

上記はいずれも前期比の伸び率。このほかビジョン・ファンド事業はセグメント利益6兆4,446億円で黒字転換(前期は損益変動が大きく単純な伸び率での比較になじまないため%表示から除外)。

最も持続的な成長を示しているのはArm事業である。スマートフォン向けが主力だったArmv8から、AI・データセンター・車載向けにロイヤリティ単価が高いArmv9への置き換えが進んでおり、出荷台数の伸び以上にロイヤリティ収入が伸びる「単価上昇型」の成長パターンに入っている。半導体設計IPというビジネスモデル上、限界利益率が非常に高く、AI半導体需要の拡大がそのまま収益性向上に直結しやすい構造は強みだ。一方、ビジョン・ファンド事業の「成長」は本質的に投資先の評価額変動であり、事業の実力というより市場のセンチメント(特にAI関連の期待値)に左右される点には注意が必要。SoftBank事業(通信)は成熟市場のため一桁台前半の緩やかな成長にとどまり、グループ全体の成長ドライバーとしての比重は相対的に低下している。
13 / COMPETITIVE POSITION

競争優位性や業界内でのポジション

同社最大の競争優位性は、Armという「代替不能なインフラ資産」を実質的に支配している点にある。世界のスマートフォンの大半、そして急速に拡大するAIサーバー・データセンター向けチップの多くがArm設計を基盤としており、特定の半導体メーカーの浮沈に左右されにくい「業界横断的なロイヤリティ収入」を持つのは同業他社にない強みだ。加えて、OpenAI・Ampere・ABBロボティクスといった投資先を通じて、AIの「モデル」「チップ」「ロボット」という川上から川下までの主要プレイヤーに同時にエクスポージャーを持つ点も、単一事業会社にはない分散されたポジショニングと言える。
一方で、業界内でのポジションは「事業会社」というより「AI関連の総合ポートフォリオを運用する投資ビークル」に近く、株価は個々の事業の業績よりも保有資産(特にOpenAI・Arm株式)の評価額に強く連動する。これは上振れ時のレバレッジが効く反面、AIバブルへの警戒が強まる局面では評価額の急落リスクをそのまま体現しやすいという、諸刃の剣でもある。
14 / SCP ANALYSIS

SCP理論からの分析(市場動向・規制リスク・業界トレンド)

Structure(市場構造)

半導体設計IP市場(Arm)は事実上の寡占構造で参入障壁が極めて高い一方、AI投資市場(ビジョン・ファンド等)は巨大テック企業(Microsoft、Google、Amazon等の自己資金投資)や政府系ファンドとの資金力競争が激化しており、「有望なAI企業への出資枠を確保できるか」自体が競争優位の源泉になりつつある。

Conduct(企業行動)

大型出資と大型買収を矢継ぎ早に実行する積極果敢な行動様式が一貫している。負債による資金調達(社債発行)を厭わないレバレッジ経営、非中核資産の機動的な売却によるポートフォリオ入れ替えも特徴的で、業界内では「規律ある分散投資家」というより「集中したベット(賭け)を繰り返すハイリスク・ハイリターン投資家」として認識されている。

Performance(業界トレンド・帰結・規制リスク)

生成AIブームが継続する限り、Arm・OpenAI関連資産の評価は追い風を受けやすい構造にある。一方で、①AI関連銘柄のバリュエーション調整(AIバブル懸念)、②半導体の地政学リスク・輸出規制(特に対中国の半導体規制強化)、③非上場のOpenAIの企業価値評価が外部から検証しづらいこと、④巨額買収に伴う競争当局の審査(ABBロボティクス買収など)といった規制・市場双方のリスクが、業績のボラティリティをさらに高める構造的な要因になっている。
15 / INVESTMENT THESIS

これらの分析結果をもとにした現在の投資妙味

ソフトバンクグループへの投資は、実質的に「孫正義という長期集中投資家が選んだAI関連ポートフォリオへの間接的なアクセス」を、直近実績PER7〜9倍程度という、同社の保有資産価値(NAV)対比では割安に見える水準で買えることに妙味がある。特にArmという代替の効きにくい高収益資産を、通信・投資部門込みの時価総額で実質的に安く取得できる「サム・オブ・ザ・パーツ(SOTP)」的な割安感が、伝統的にこの銘柄の投資家に指摘されてきたポイントだ。
加えて、経営者自身がITバブル崩壊やWeWorkの失敗を経て「一度沈んでも立て直す」レジリエンスを実証済みである点は、単なる高ボラティリティ株ではなく「長期で賭けるに値する経営者が率いる高ボラティリティ株」という位置づけを与える。ただし妙味を享受するには、四半期ごとの評価損益の振れに動じない長期保有スタンスと、OpenAIをはじめとする非上場資産の評価額という「ブラックボックス」を受け入れるリスク許容度が前提になる。
16 / WATCH POINTS & RISKS

今後の注目ポイントやリスク要因

注目ポイント

・OpenAIの株式売却・追加増資・IPO動向(評価額の外部検証機会)
・Armv9移行率の上昇とAI/データセンター向けロイヤリティ単価の推移
・ABBロボティクス買収の完了時期(2026年半ば〜後半予定)と統合効果
・「Physical AI」戦略(チップ×モデル×ロボット)の具体的な収益化ロードマップ
・社債発行を通じた資金調達コストの動向(金利環境の影響)

リスク要因

・AI関連銘柄全般のバリュエーション調整(AIバブル論)が現実化した場合の評価損リスク
・OpenAIなど非上場資産の評価額の信頼性・透明性
・有利子負債膨張によるレバレッジリスク(社債発行による資金調達への依存度上昇)
・半導体の地政学リスク・輸出規制強化(対中国等)
・大型M&A(ABBロボティクス等)の競争当局審査・統合遅延リスク
・孫正義氏への意思決定の集中(後継者体制の不透明さ)