スナップショット
売上高
5,390億円
2025年3月期(過去最高)
PER(実績)
20.9倍
2026年3月期実績
ROE
10.9%
2026年3月期
保有株数
―
未確認
事業ごと・国/エリアごとの売上高比率
事業セグメント別 売上高構成比(2025年3月期)
計測機器(3,479億円):液体クロマトグラフ、質量分析計などの分析計測機器で世界有数のシェア。医薬品・食品・化学等の研究開発で利用される。
医用機器(726億円):X線検査装置、内視鏡等を手掛ける。医療機関への継続需要が見込める分野。
産業・航空機器(計1,110億円):精密測定機や航空機部品等。
国・エリア別 売上高構成比
海外売上比率:68%
日本国内のみならず、北米・欧州・中国・アジア各国に広く販売拠点を持つ。計測機器事業はグローバルな医薬品・食品企業の研究施設が顧客であり、地域分散により地政学的リスクに強い構造。
出典:島津製作所 2025年3月期決算説明会資料。
創業からの歴史
ミッション・ビジョン・バリュー
現経営者の特徴・過去の実績(レジリエンスの観点)
直近決算の予想・ガイダンスに対する結果
2025年3月期決算 実績(前期比)
| 指標 | 2024年3月期 | 2025年3月期 | 増減率・評価 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 5,122億円 | 5,390億円 | +5.3%(過去最高) |
| 営業利益 | 729億円 | 717億円 | −1.4% |
| 経常利益 | 763億円 | 720億円 | −6.3% |
| 当期純利益 | 570億円 | 538億円 | −5.7% |
売上高・税引前利益の推移(直近10年間)
売上高・営業利益(10年推移、億円)
売上高の推移(2015年3月期~2025年3月期)
2015年:3,147億円 → 2020年:4,481億円 → 2025年:5,390億円
年平均成長率(CAGR):約5.5%。リーマンショック後の景気回復から北米・欧州への販売網拡張を経て、2010年代後半からアジア太平洋地域への進出加速により段階的に成長。2020年のコロナ禍でも医薬品開発需要の堅調性が支えとなり、その後の6期連続過去最高更新につながった。
営業利益率の推移
2015年:11.2% → 2020年:13.0% → 2025年:13.3%。グローバルな計測機器需要の基礎的な強さと、リカーリング比率42%による安定収益化により、景気変動の中でも利益率を維持。
※ 次回更新時に完全な10年グラフ(棒グラフ形式)を反映予定。詳細な年間データはIRBANKの業績推移表をご参照ください。
出典:島津製作所 有価証券報告書・決算説明会資料(IRBANK)。
PERの推移(直近10年間)
PER(2026年実績)
直近PER:20.9倍(2026年3月期実績)
同業界(精密機器・計測機器大手)の平均PER 18~22倍の中位~やや高めの水準。安定成長・高い自己資本比率(76.2%)・リカーリング収益構造による「守りの強さ」が評価され、景気変動型銘柄よりも割高感が付きやすい傾向。
PER観点からの投資判断
売上成長率5~6%程度の成熟企業としてはPER 20.9倍は決して割安ではなく、市場も同社の「安定性」を適正に評価している状況と言える。今後の業績加速(セグメント別成長率の上昇、新規市場開拓)なしには、現在のPER水準を維持することは難しく、投資妙味は「成長加速の兆し」が出てくるポイントに集約される。
※ 次回更新時に完全な10年PER推移グラフを反映予定。
出典:IRBANK(irbank.net/7701/valuation)。
ROIC・WACC・ROEの推移(直近10年間)
ROE(直近実績)
2026年3月期実績:10.9%
同業界平均の8~10%を若干上回る。自己資本比率が高い(76.2%)ため、借入資本の活用による ROEの押し上げ余地がある。
ROIC・WACC
島津製作所はIR資料で「ROICを指標とした資本効率の向上を図ります」と明記し、ROIC経営を掲げている。試算値ベースで過去10年のROICは8~12%程度で推移し、WACCを上回る水準を維持しており、価値創出状態にあると考えられる。
自己資本比率
76.2%
業界平均50~60%と比べて高い。経営の保守性・安定性を示す指標として高く評価される一方、レバレッジを活用した収益性向上の余地を示唆。
収益性指標の総合評価
安定性と収益性のバランスが取れた企業体質。高自己資本による「守りの強さ」が、景気変動期の競争力維持につながっている。ROI系指標が業界平均を上回る水準で推移していることから、資本効率面でも評価値のある構造。
※ ROIC・WACCの詳細な10年推移グラフは次回更新時に反映予定。出典:島津製作所 有価証券報告書・決算説明会資料。
営業・投資・財務・フリーキャッシュフローの推移(直近10年間)
キャッシュフロー構造(直近実績)
営業キャッシュフロー(OCF):年500~700億円程度
売上高5,390億円に対するOCF比率は約10~13%。安定した利益とワーキングキャピタル管理により、堅調なキャッシュ創出能力を持つ。
投資キャッシュフロー(ICF):年200~300億円程度
設備投資・研究開発投資を中心。OCFをカバーする範囲内での投資規模で、過度な外部融資に依存しない自律的な経営を実践。
フリーキャッシュフロー(FCF):年200~400億円
OCF−ICFの差分で、配当・自社株買い・負債返済等の資本配分に充当される。配当性向は30~40%程度で、保守的かつ株主還元バランスを取った方針。
財務キャッシュフロー(FCF):年△100~△200億円程度
配当金支払い・自社株買いによる株主還元が主。借入金返済による積極的な減債は限定的で、現金・現金同等物残高は年1,000~1,500億円程度を維持。
※ 詳細な10年CF推移グラフは次回更新時に反映予定。
出典:島津製作所 有価証券報告書・キャッシュフロー計算書。
直近の投資・M&A状況
主要事業ごとの成長性
セグメント別成長見通し
計測機器(全体の65%):中程度の安定成長
医薬品開発・食品安全・化学研究の継続的需要により、年4~5%の基礎成長が見込める。グローバル医薬企業の研究施設増設・ジェネリック医薬品企業の台頭に伴う検査需要拡大が長期的なドライバー。新興国での医療発展に伴う需要拡大も期待される。
医用機器(全体の14%):低成長から中程度成長への転換期
国内医療費抑制圧力の中、海外(特に新興国)での医療機器需要拡大に注力中。X線装置・内視鏡などの主力製品の高齢化社会での継続需要は堅調だが、大型成長率は期待しにくい。デジタル化対応による利益率改善が収益成長をけん引する可能性あり。
産業・航空機器(全体の21%):業界景気に依存
産業機器は製造業景気、航空機器は航空業界の回復度に左右される。ポストコロナの航空業界回復により、中期的には6~8%程度の成長が期待される。ただし地政学的リスク(サプライチェーン混乱等)の影響を受けやすい。
競争優位性や業界内でのポジション
SCP理論からの分析(市場動向・規制リスク・業界トレンド)
Structure(市場構造)
高参入障壁・寡占的構造
計測機器市場(特に医薬品用分析機器)は、技術開発の高度性・長期の信用構築・規制対応コストが高く、新規参入が極めて困難な寡占市場。島津の他、欧米大手2~3社が支配的地位を占める。新興国メーカーの参入も限定的。
需要サイド:医薬品・食品安全需要の構造的成長
医薬品開発の高度化(特にバイオ医薬品)、食品安全検査の強化(規制強化)、生命科学研究の拡大により、長期的な需要成長が見込める。景気変動に強い防御的な市場。
Conduct(企業行動)
島津の戦略:安定性重視・段階的拡張
大型M&A・激進的な新規事業開発よりも、既存事業の磨き込み・地道な海外進出を優先。利益率(営業利益率13.3%)を守りながら、リカーリング比率の向上で安定化を図る。経営の保守性が特徴。
競争形態:価格競争より品質・技術競争
顧客(大手製薬企業など)は価格よりも「精度・信頼性・規制対応」を重視するため、価格競争は限定的。技術開発投資を通じた差別化が競争の主軸。
Performance(業界トレンド・帰結)
長期的な利益率維持・キャッシュ創出体質
寡占市場で技術的優位性を有する企業は、利益率20%以上の超優良企業も存在する中で、島津のような「13%程度の利益率を安定維持」という戦略は、持続的な価値創出を狙ったアプローチ。リカーリング比率の向上がその象徴。
規制・地政学的リスク
医薬品規制の強化は需要増を意味し、むしろ好環境。ただし中国・米国間の対立激化に伴うサプライチェーン混乱は潜在リスク。また、グローバル分散型ユーザー基盤により、単一国家の政策変化による影響は限定的。
結論:「成熟・安定・高キャッシュ創出」市場での確実な利益獲得体質
島津製作所はこのような市場環境の中で、「持続的・安定的・低リスク」な経営モデルを実践する企業として、ポートフォリオ上は「防御的な堅実銘柄」のポジションにある。
これらの分析結果をもとにした現在の投資妙味
今後の注目ポイントやリスク要因
注目ポイント
1. 医用機器事業の成長加速
海外(特に新興国)での医療機器需要拡大が見込まれる中、医用機器セグメント(現在全体の14%)がどこまで成長加速するかが短・中期利益成長の鍵。
2. リカーリング比率の推移
現在42%のリカーリング比率が、今後50%超へ向上すれば、売上高成長率以上の営業利益成長が期待でき、PERの正当化根拠となる。
3. DX・AI対応の進捗
次世代計測機器(AI活用による自動分析等)の市場化が現実化すれば、新規顧客層への拡大可能性がある。
4. 決算説明会・中期経営計画の発表
成長戦略・中長期ガイダンスの更新が発表されれば、市場の期待値の再評価につながる可能性。
リスク要因
1. 成長率の低迷・頭打ち
医薬品開発の飽和、食品安全検査需要の頭打ち等により、現在の年5%程度の成長が減速すれば、PER低下圧力が高まる。
2. 新興国競合の台頭
中国・インドの計測機器メーカーが技術キャッチアップを加速させた場合、コスト競争での劣位に陥る可能性。
3. 為替変動・地政学リスク
海外売上比率68%であり、円高・ドル弱の進行は利益圧迫要因。また米中対立激化によるサプライチェーン混乱も潜在的なリスク。
4. 顧客集中リスク
大手製薬企業が顧客の中核を占めるため、特定顧客の研究計画縮小が売上に大きな影響を及ぼす可能性。
5. 技術陳腐化リスク
次世代分析技術(例:超高速質量分析等)の登場により、既存製品の市場優位性が揺らぐ可能性は低いが、完全には排除できない。