6994 東証プライム 精密モーター

ニデック

永守重信氏が1973年に創業した精密モーター世界最大手。車載・家電・産業用モーターを軸に70社超のM&Aで急成長したが、2025年に発覚した不適切会計問題で創業以来最大の危機に直面。事業構造・沿革・経営者交代・財務10年推移・SCP分析から、現在の投資妙味とリスクをナラティブでまとめました。

01 / OVERVIEW

スナップショット

株価

2,645円

2026/7/13 終値

時価総額

3兆1,102億円

2026/7/14 時点

PER(予想)

14.95倍

2026/7/14 時点

保有株数

100

ポートフォリオ登録数

出典:IRBANK(irbank.net/6594)。株価は日々変動するため、最新値は証券会社アプリ等でご確認ください。なお同社は2025年発覚の不適切会計問題により、2026年6月時点で東証の「特別注意銘柄」に指定されており、2026年3月期有価証券報告書の提出期限も9月30日まで延長申請中です(詳細は06節・16節参照)。

02 / SEGMENT

事業ごと・国/エリアごとの売上高比率

事業セグメント別 売上高構成比(2025年3月期)

23.7%
22.0%
17.7%
15.0%
13.4%
グループ会社事業 23.7%(6,183億円) MOEN(モーション&エナジー)22.0%(5,739億円) ACIM(家電・商業・産業用モータ)17.7%(4,623億円) SPMS(小型精密モータ)15.0%(3,913億円) AMEC(車載モータ・電子制御)13.4%(3,487億円) 機械事業 8.2%(2,134億円)
祖業に近い家電・商業・産業用モータ(ACIM、旧エマソン・エレクトリックのモータ事業を統合)と、産業用大型モータ・発電機(MOEN)が収益の柱。成長期待が最も高いEV駆動モータ「eアクスル」を含むAMEC(車載モータ・電子制御)は売上構成比13.4%にとどまり、2025年3月期の営業利益はわずか-30億円の赤字(利益率-0.9%)と、中国市場での価格競争激化により苦戦が続いている。

国・エリア別 売上高構成比

海外売上高比率はおおむね8割強(日本国内は1〜2割程度)で推移しており、中国・米州・欧州・その他アジアが主要な海外市場。ただし決算短信・有価証券報告書に記載の詳細な国別売上高比率(P.34地域別セグメント情報等)は本ページでは未反映です。次回更新時に反映予定です。

出典:IRBANK(irbank.net/E01975/segment)、ニデック決算短信・有価証券報告書。セグメント名称の略称はSPMS=Small Precision Motor & Solutions、MOEN=Motion and Energy、AMEC=Automotive Motor and Electronic Control、ACIM=Appliance, Commercial and Industrial Motor。

03 / HISTORY

創業からの歴史

1973年7月23日、27歳の永守重信は京都市西京区の自宅を本社に、大学の後輩3人(遠藤峰世・田辺道夫・小部博志、いずれも20代)とともに、資本金2,000万円で精密小型ACモータの製造・販売会社「日本電産株式会社」を設立した。設立当初は国内での営業活動が思うように進まず、永守自身が単身渡米して得意先を開拓、徹夜で作り上げた試作品が評価され1974年に米3M社から初の大口受注を獲得したことが、その後の成長の起点になった。
以後同社は、HDD用スピンドルモータで世界シェアの大半を握るなど「精密小型モータの世界的な独占的地位」を築く一方、1998年以降だけで70社以上の企業買収を重ねる「M&A巧者」として知られるようになる。永守は「赤字は罪悪」という強烈な意識付けのもと、経営不振企業を買収して短期間で黒字転換させる独自の再建手法を確立し、家電・車載・産業機器向けモータへと事業領域を非連続的に拡大してきた。2023年4月には創立50周年を機に社名を「ニデック」に変更し、EV駆動モータ「eアクスル」を新たな成長エンジンと位置づけ、中国を中心に大規模な設備投資を進めた。
しかし2025年に入り、中国子会社ニデックテクノモータ(浙江)での購買一時金を巡る不適切な会計処理の疑いが内部監査で発覚。調査の過程でイタリア子会社の貿易取引問題や、グループ各社での資産評価減時期の恣意的な調整を疑わせる資料が相次いで見つかり、同年9月に独立した第三者委員会が設置された。2025年12月、永守重信は代表取締役グローバルグループ代表を辞任し非常勤名誉会長に退任。2026年2月の中間報告・4月の最終報告書公表を経て、不正会計が2025年度の連結純資産に与える負の影響額は約1,400億円と算定され、東証は同年10月末付でニデックを「特別注意銘柄」に指定した。2026年6月の株主総会では社外取締役9人を含む取締役12人体制が発足し、岸田光哉社長のもとでガバナンス再建に向けた新体制がスタートしている。
04 / MISSION, VISION, VALUE

ミッション・ビジョン・バリュー

ニデックが掲げる使命は「世界一高性能なモーターで地球に貢献する」こと。「全社員の弛まざる努力により、当社が世に送り出すモーターを中心とした製品を通じて、地球環境の保全をはじめとする様々な課題を解決すると共に世界の人々のより良い生活の実現に貢献する」とし、「回るもの、動くもの」を一貫したキーワードに、精密小型モータから車載・産業用大型モータまで駆動技術を軸とした事業ポートフォリオを組み立ててきた。
創業者・永守重信が掲げた精神三ヶ条「情熱、熱意、執念」「知的ハードワーキング」「すぐやる、必ずやる、出来るまでやる」は、買収先企業の再建や高い成長目標の必達文化として、長年ニデックの強さの源泉とされてきた。一方で、2025年に発覚した不適切会計問題は、この「目標必達」を極端に重んじる企業文化と成果主義が行き過ぎ、現場に無理な数字合わせの圧力がかかっていた可能性を指摘する報道(日本経済新聞など)もある。新社長の岸田光哉は「短期の利益追求に弊害」があったとして組織風土改革・人事制度の見直しに着手しており、理念(世界一高性能なモーターで地球に貢献)と現場運用(目標必達至上主義)の間にあった歪みをどう是正するかが、今後の経営理念の再定義における最大の論点になっている。
05 / LEADERSHIP

現経営者の特徴・過去の実績(レジリエンスの観点)

現社長は岸田光哉氏(2023年度〜、代表取締役社長執行役員)。創業者・永守重信氏は2025年12月、不適切会計問題の責任を取る形で代表取締役グローバルグループ代表を辞任し、非常勤名誉会長へ退いた。2026年6月の株主総会では、社外取締役9人を含む取締役12人体制が新たに発足し、企業経営者・監査法人出身者・検察官出身者などガバナンス強化を意識した重厚な布陣に刷新されている。
永守重信氏の過去のレジリエンスという観点では、1973年の創業以来、1998年以降だけで70社超の企業買収を手掛け、「買収した会社は絶対に切り売りしない」「買収後にリストラは一切しない」という独自の方針のもとで、多くの経営不振企業を高収益体質へ転換させてきた実績がある。HDD市場の構造的縮小という逆風に対しても車載・産業用モータへの多角化で乗り越えるなど、複数の事業環境の変化に対応してきた「不屈の経営者」というイメージが長年定着していた。
しかし、永守氏肝煎りで拡大したEV駆動モータ「eアクスル」の中国事業が価格競争激化で採算悪化し、その後を追うように2025年に発覚した不適切会計問題は、Bloombergが「創業以来最大の危機」と報じるほどの事態に発展した。永守氏本人が経営の一線から退く結果となり、レジリエンスの主体は岸田新体制に移っている。2026年6月の株主総会では株主から将来を悲観する質問が相次いだと報じられており、岸田社長が「上場維持」を明言しつつ組織風土改革・内部管理体制の再構築を実行できるかが、ポスト永守時代における最初のレジリエンスの試金石となっている。
06 / LATEST EARNINGS

直近決算の予想・ガイダンスに対する結果

2026年3月期 第2四半期累計(4〜9月)実績(前年同期比)

指標今期(FY26 2Q累計)実績前年同期比評価
売上高1兆3,023億円+0.7%微増収
営業利益211億円-82.5%大幅減益
親会社所有者帰属四半期利益311億円-58.6%大幅減益
売上高はほぼ横ばいで着地した一方、営業利益は前年同期比8割超の減益と市場予想を大きく下回る内容になった。背景には、2025年に発覚した中国・イタリア子会社を中心とする不適切な会計処理の影響額計上(同社発表ベースで数百億円規模の損失計上)に加え、貿易取引・品質関連の問題、EV駆動モータ「eアクスル」の中国事業における採算悪化が重なっている。前期(2025年3月期)の有価証券報告書についても監査法人が「十分かつ適切な監査証拠を入手できなかった」として意見不表明としており、今期の会社側通期ガイダンス(営業利益2,600億円、当期利益2,000億円)についても、不正会計の影響額確定が完了していないため信頼性に大きな留保が付く状況が続いている。東証は2025年10月28日付で同社を「特別注意銘柄」に指定した。
07 / REVENUE & PROFIT

売上高・税引前利益の推移(直近10年間)

売上高・営業利益(10年推移、億円)

FY16 FY17 FY18 FY19 FY20 FY21 FY22 FY23 FY24 FY25 FY26予 売上高 営業利益

親会社所有者帰属当期利益(10年推移、億円)

899億 FY16 1110億 FY17 1308億 FY18 1099億 FY19 584億 FY20 1219億 FY21 1357億 FY22 369億 FY23 1244億 FY24 1641億 FY25 2000億 FY26予

出典:IRBANK(irbank.net/E01975/pl)。FY26は会社側通期予想(営業利益2,600億円、当期利益2,000億円)だが、2Q累計時点の実績(営業利益211億円、当期利益311億円)は予想比で大幅に下回っており、不正会計の影響額確定後に下方修正される可能性がある点に留意。

08 / VALUATION

PERの推移(直近10年間)

PER(期末実績、10年推移)

25.42倍 FY16 28.31倍 FY17 37.09倍 FY18 37.61倍 FY19 56.44倍 FY20 64.53倍 FY21 41.94倍 FY22 106.54倍 FY23 28.3倍 FY24 17.44倍 FY25 14.95倍 FY26予

出典:IRBANK(irbank.net/6594/per)。FY23(2023年3月期末)はコロナ禍後の急回復期待とeアクスル成長期待が重なりPERが106.54倍まで急騰した局面。その後の業績拡大とともにPERは低下し、直近(2026/7/14時点)の予想PERは14.95倍と、過去10年のレンジではむしろ低い水準にある。ただし不正会計問題により業績・純資産の実態が確定していない状況での低PERであり、単純な「割安」評価には注意が必要。

09 / CAPITAL RETURNS

ROIC・WACC・ROEの推移(直近10年間)

ROE(自己資本利益率、10年推移)

11.79% FY16 13.11% FY17 14.03% FY18 11.03% FY19 6.17% FY20 11.13% FY21 10.51% FY22 2.75% FY23 7.63% FY24 9.56% FY25 11.37% FY26予

ROIC(概算試算)

5〜8%程度と推定。税引後営業利益(FY25営業利益2,381億円×実効税率控除後)÷投下資本(有利子負債+株主資本)で試算した概算値。有価証券報告書はROICを開示していないため、当サイト独自の推定である点に留意。FY23(営業利益899億円と急減した年度)はROICが5%を下回っていた可能性がある。

WACC(概算試算)

8〜9%程度と推定。無リスク金利(日本10年債利回り 約2.8%)+株式β(ニデックは景気敏感かつ成長期待の高いモーター株として約1.2〜1.4のやや高いボラティリティ)×エクイティ・リスクプレミアム(5〜6%程度)で概算。

出典:ROEはIRBANK(irbank.net/E01975/pl)実績・予想値。ROIC・WACCは公式開示がないため当サイトによる概算試算で、正式な財務指標ではありません。ROIC推定値(5〜8%)がWACC推定値(8〜9%)を下回る局面が続いているとみられ、特にFY23(コロナ後の需要調整局面)や、不正会計の影響で実態が不透明な直近期は、資本コストを事業利益で十分にカバーできていない可能性が高い点に注意が必要。

10 / CASH FLOW

営業・投資・財務・フリーキャッシュフローの推移(直近10年間)

営業・投資・財務・フリーCF(10年推移、億円)

FY16 FY17 FY18 FY19 FY20 FY21 FY22 FY23 FY24 FY25 営業CF 投資CF 財務CF フリーCF
営業CFはFY22(949億円)を底に、FY24(3,208億円)・FY25(2,844億円)と大きく回復しており、本業からの現金創出力自体は堅調に推移してきた。投資CFは一貫してマイナスで、車載モータ(eアクスル)関連を中心とした積極的な設備投資(FY19以降だけで年間900億〜1,300億円規模)が継続。フリーCFはFY20(-1,435億円)・FY22(-176億円)・FY23(-215億円)とマイナスに沈む年もあったが、FY24(+1,672億円)・FY25(+1,372億円)と直近2期は投資を上回るキャッシュを生み出せる体質に改善していた。財務CFはFY24(-1,816億円)・FY25(-802億円)と有利子負債の圧縮・株主還元が続いており、少なくとも会計上の数値を見る限りは財務規律を意識した運営が続いていたことがうかがえる。ただし不正会計問題により、これらキャッシュフロー計算書自体の正確性にも留保が付いている点には注意が必要。

出典:IRBANK(irbank.net/E01975/cf)。FY26(2026年3月期)通期のCF実績は有価証券報告書提出延期(9月30日予定)のため未確定。

11 / INVESTMENT & M&A

直近の投資・M&A状況

ニデックの成長戦略は伝統的に「自律成長+M&A」の両輪で、1998年以降だけで70社超を買収してきた。永守重信氏は2024年4月に「本格的に大型の買収をやる」と発言するなど、直近まで大型M&Aを継続する姿勢を示していたが、2025年の不適切会計問題の発覚以降は、新規の大型買収よりも既存事業の立て直しとガバナンス再建が最優先課題になっている。
直近の主な投資アクションは、創業者肝煎りで拡大してきたEV駆動モータ「eアクスル」事業の大規模な戦略転換である。中国・広州汽車との合弁解消に向けた協議に入り、新工場建設など積極投資を手控える方針へ転換、注力領域をステランティスや広州汽車向けの既存案件とHV(ハイブリッド車)向けに絞り込んだ。一方で、材料調達までほぼ完全に中国国内で完結させる「中国製」eアクスルでコスト競争力を高め、2026年春にはトヨタ自動車の中国向け戦略車への採用も獲得するなど、縮小均衡から選別的な回復を目指す局面に入っている。資本配分の観点では、当面は新規M&Aよりも、不正会計問題に伴う損失処理・内部管理体制の再構築(監査法人や外部専門家への費用支出を含む)が優先される見通しである。
12 / SEGMENT GROWTH

主要事業ごとの成長性

主要セグメントの売上高伸び率(2025年3月期、前期比)

24.8% MOEN 18.4% SPMS 5.5% グループ会社事業 4.4% 機械事業 3.0% AMEC
セグメント売上高(前期比)営業利益(前期比)
MOEN(モーション&エナジー)+24.8%増益基調(非開示)
SPMS(小型精密モータ)+18.4%+58.4%
グループ会社事業+5.5%+15.9%
機械事業+4.4%▲37.1%
AMEC(車載モータ・電子制御)+3.0%営業赤字30億円(前期▲557億円から縮小)

売上高はMOENが牽引役。営業利益はSPMSが構造改革で大幅改善する一方、AMEC・機械事業は苦戦が続く。

最も持続的な成長を示しているのはMOEN(産業用大型モータ・発電機・圧縮機など)で、脱炭素・省エネ関連の設備更新需要を追い風に売上・利益ともに拡大が続いている。SPMS(小型精密モータ)は祖業に近い成熟事業だが、構造改革により利益率が大きく改善し「量から質へ」の転換に成功しつつある。一方、最大の成長期待を背負っていたAMEC(車載モータ・電子制御、EV駆動用eアクスルを含む)は、中国市場での激しい価格競争により2024年3月期に557億円という大幅な営業赤字を計上し、2025年3月期も赤字圏を脱していない。創業者主導で拡大してきた最重要成長事業が構造的に苦戦している点は、同社の成長ストーリー全体の説得力に影を落としており、HV向けシフトとコスト構造の中国内製化がどこまで採算改善につながるかが今後の焦点になる。
13 / COMPETITIVE POSITION

競争優位性や業界内でのポジション

ニデックの競争優位性の核は、HDD用スピンドルモータで世界シェアの大半を握ったのを起点に、精密小型モータから車載・産業用大型モータまで幅広い「駆動技術」の知見・生産体制を垂直的に蓄積してきた点にある。70社超のM&Aで獲得した技術者・生産拠点をグループ横断で活用できる規模の経済と、「回るもの、動くもの」に特化することで培った専門性は、単一製品メーカーには容易に模倣できない参入障壁になっている。
業界内のポジションとしては、家電・産業用モータでは世界トップクラスのシェアを持つ一方、成長期待の高いEV駆動モータ(eアクスル)では、比亜迪(BYD)など垂直統合型の中国EVメーカーとの価格競争に苦戦し、当初描いていた「モータ単体でのシェア獲得」という戦略が機能しにくいことが明らかになった。加えて2025年の不適切会計問題により、ガバナンス・内部統制面での「品質」に大きな疑念が生じており、技術面の競争優位性とは裏腹に、投資家からの信頼という観点では大手同業他社(日本電産以外のモータメーカーや総合電機各社)に劣後する状況に置かれている。技術的な優位性を維持しつつ、この信頼回復をどう実現するかが当面の最大の経営課題である。
14 / SCP ANALYSIS

SCP理論からの分析(市場動向・規制リスク・業界トレンド)

Structure(市場構造)

精密小型モータ市場(HDD用等)は同社が高シェアを握る寡占的構造だが市場自体が構造的に縮小傾向。一方、EV駆動モータ市場は中国勢を中心に多数のプレイヤーが参入し、価格競争が激しいレッドオーシャン化が進んでいる。産業用大型モータ・省エネモータ市場は脱炭素規制を追い風に緩やかな寡占・成長構造にある。

Conduct(企業行動)

「目標必達」を極端に重視する成果主義文化のもと、M&Aによる非連続成長と高い利益率目標の追求を続けてきたが、この企業行動が2025年の不正会計問題の温床になった可能性が指摘されている。新体制下では社外取締役を大幅に増員し、短期的な利益追求より内部統制・組織風土の是正を優先する行動様式への転換を図っている。

Performance(業界トレンド・帰結・規制リスク)

脱炭素・省エネ関連のモータ需要拡大は構造的な追い風である一方、①EV市場における中国メーカーとの価格競争激化、②東証「特別注意銘柄」指定に伴う投資家の信頼低下と株価変動リスク、③不正会計の最終的な影響額・追加の訂正決算の可能性、④有価証券報告書の適時提出体制の再構築(監査法人からの信頼回復)、⑤ガバナンス改革の実効性、といった複数の規制・市場双方のリスクが、当面の業績・株価のボラティリティを高める構造的な要因になっている。
15 / INVESTMENT THESIS

これらの分析結果をもとにした現在の投資妙味

ニデックへの投資は、精密モータ世界最大手としての技術的な競争優位性と、不正会計問題・ガバナンス危機という「創業以来最大の逆風」が同時に存在する、極めてリスクとリターンの振れ幅が大きい局面にある銘柄と言える。直近の予想PER(14.95倍、2026/7/14時点)は過去10年のレンジの中ではむしろ低めの水準で、危機が織り込まれた「割安さ」に見える面もあるが、これは不正会計の最終的な影響額や、有価証券報告書の適正性そのものが確定していない中での評価であり、通常の「割安株」とは前提が大きく異なる点に注意が必要である。
投資妙味を積極的に評価するとすれば、営業CFが直近2期で明確に回復し本業の現金創出力自体は維持されていること、社外取締役中心の新体制発足により最悪期を脱しつつある可能性があること、脱炭素関連モータ需要という構造的な追い風が消えていないこと、の3点が挙げられる。一方で、不正会計の全容解明・訂正決算・追加の行政処分リスクが残る限り、株価は業績実態よりもガバナンス関連ニュースに敏感に反応しやすい状態が続くとみられ、短期的な値動きを狙うより、有価証券報告書の適正な提出(2026年9月末予定)とその後の監査意見の内容を見極めてから投資判断を行う、慎重なアプローチが妥当と考えられる。
16 / WATCH POINTS & RISKS

今後の注目ポイントやリスク要因

注目ポイント

・2026年3月期有価証券報告書の提出(延長期限2026年9月30日)と監査意見の内容
・東証「特別注意銘柄」指定の解除時期・条件
・岸田光哉社長主導のガバナンス改革・組織風土改革の進捗
・EV駆動モータ「eアクスル」の中国合弁解消協議の帰結とHVシフトの採算改善度合い
・トヨタ自動車向け「中国製」eアクスル採用拡大などAMEC事業の黒字転換時期
・脱炭素・省エネ関連需要を追い風とするMOEN・SPMSの増益トレンド継続可否

リスク要因

・不正会計の最終的な影響額確定・追加の決算訂正リスク
・監査法人による意見不表明の継続、上場廃止基準への抵触リスク
・東証・証券取引等監視委員会等による行政処分の可能性
・EV市場における中国メーカーとの価格競争長期化
・創業者退任後のガバナンス再建の実効性・経営体制の不安定化
・株主からの信頼低下に伴う株価のボラティリティ拡大
・グループ会社を含めた内部統制の再構築コストの増加