スナップショット
株価
4,830円
2026/8/28 終値
時価総額
約1.95兆円
2026/8/28 時点
PBR(実績)
2.40倍
2026/8/28 時点
保有株数
―
未確認
事業ごと・国/エリアごとの売上高比率
事業セグメント別 売上高(2026年3月期・報告セグメント3区分)
国・エリア別 売上高(2026年3月期)
日本・中国向け売上高の10年推移(億円)
出典:The社史(the-shashi.com/tse/6963/current、有価証券報告書XBRLベース)、ローム決算資料。
アナログ/ロジックを含むLSIと、ダイオード・トランジスタ・SiCを含む半導体素子がほぼ拮抗する二本柱で、モジュールが7%弱を補う構成。地域別では日本30%・中国31%・その他39%と、中国向けが国内向けを上回る。中国の売上高は10年前(FY17 1,156億円)から1,466億円へ緩やかに増えており、EV・産業機器向けの比重が高いことが、後述する米中摩擦と中国パワー半導体の内製化を最大の構造リスクにしている。※構成比は報告セグメント3区分の合計(4,553億円)に対する比率で、全社売上高4,811億円との差額はその他・調整額。
創業からの歴史
出典:ローム「沿革」(rohm.co.jp)、The社史(the-shashi.com/tse/6963)、日本経済新聞。
ミッション・ビジョン・バリュー
出典:ローム「経営理念/企業目的」(rohm.co.jp)、ローム統合報告書2025。
現経営者の特徴・過去の実績(レジリエンスの観点)
出典:ローム役員情報、MONOist(monoist.itmedia.co.jp)、EE Times Japan(eetimes.itmedia.co.jp)、ニュースイッチ。
直近決算の予想・ガイダンスに対する結果
2026年3月期 通期実績 vs 会社修正予想(2026年2月4日公表)
| 指標 | 会社修正予想 | 実績 | 前期比 | 評価 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 4,800億円 | 4,811億円 | +7.3% | ほぼ計画線 |
| 営業利益 | 60億円 | 109億円 | 黒字転換 | 上振れ |
| 経常利益 | 110億円 | 192億円 | 黒字転換 | 上振れ |
| 親会社株主帰属当期純利益 | 100億円 | ▲1,584億円 | 赤字拡大 | 大幅下振れ |
| 減損損失 | ― | 1,936億円 | ― | SiC関連が中心 |
| 自己資本比率 | ― | 59.1% | ▲2.7pt | なお高水準だが低下継続 |
出典:IRBANK(irbank.net/E01953/pl)、ローム2026年3月期決算短信、日本経済新聞、EE Times Japan。
売上高・利益の推移(直近10年間)
売上高(FY2017〜FY2026、3月期、億円)
営業利益(億円)
経常利益(税引前利益に相当、億円)
親会社株主に帰属する当期純利益(億円)
出典:IRBANK(irbank.net/E01953/pl)、The社史(有価証券報告書XBRL)。
売上高はFY2017の3,520億円からFY2026の4,811億円へ、10年CAGRで+3.5%。伸びは緩やかだが、注目すべきは利益の振れ幅である。営業利益率はFY2023の18.2%からFY2025の▲8.9%へ27ポイント動いた。半導体サイクルに加え、SiC増強に伴う固定費が一気に立ち上がったことが振幅を増幅している。経常利益が営業利益を上回る年が多いのは、受取利息・配当と為替差益など営業外収益の寄与による。FY2026の当期純利益▲1,584億円は減損1,936億円が主因で、事業キャッシュフローの毀損とは区別して読む必要がある。
PERの推移(直近10年間)
各期末実績PER(FY2017〜FY2024。FY2025・FY2026は最終赤字のため算出不能)
出典:IRBANK(irbank.net/6963/per)。
10年間の期末PERは13.4倍(2023年3月末)〜29.6倍(2017年3月末)のレンジで、日本の半導体・電子部品セクターとしては標準的な水準にあった。2025年3月末・2026年3月末は2期連続の最終赤字でPERが成立せず、2026年8月28日時点の予想PERは約64倍(株式益回り1.55%の逆数)。PBRは2.40倍で、2010年以降のレンジ0.4〜1.86倍を大きく上回る。つまり現在の株価は、過去10年のどの局面よりも「これから利益が戻る」という前提に強く依存している。統合協議や生成AI・データセンター関連の思惑が株価を押し上げた側面が大きく、利益実績で正当化されている水準ではない。
ROIC・WACC・ROEの推移
ROE(FY2017〜FY2024。FY2025・FY2026は赤字のため算出不能)
ROIC・WACC概算とスプレッド
| 年度 | NOPAT(概算) | 投下資本(概算) | ROIC(概算) | WACC(概算) | スプレッド |
|---|---|---|---|---|---|
| FY2022(2022/3) | 501億円 | 8,793億円 | 5.7% | 約9.3% | ▲3.6pt |
| FY2023(2023/3) | 646億円 | 9,562億円 | 6.8% | 約9.3% | ▲2.5pt |
| FY2024(2024/3) | 303億円 | 12,685億円 | 2.4% | 約9.3% | ▲6.9pt |
| FY2025(2025/3) | 営業赤字 | ― | マイナス | 約9.3% | 大幅マイナス |
| FY2026(2026/3) | 76億円 | 9,577億円 | 0.8% | 約9.3% | ▲8.5pt |
試算方法:NOPAT=営業利益×(1−実効税率30%)。投下資本=自己資本+有利子負債で、自己資本は当期純利益÷ROE、総資産は有利子負債÷有利子負債比率から逆算した概算値(自己資本比率・有利子負債比率はThe社史の有報XBRL集計を使用)。WACCは、リスクフリーレート2.9%(2026年8月28日の日本10年国債利回り)、マーケットリスクプレミアム5.5%、β1.3、負債コスト2.0%(税引後1.4%)、時価ベースの資本構成(株式1.95兆円/有利子負債2,000億円)で試算した。
結論として、ロームは直近10年で最も好調だったFY2023(営業利益率18.2%)ですらROICがWACCに届いていない。つまり同社は、この10年間ほぼ一貫して資本コストを上回るリターンを生めていない。自己資本比率80%超という「安全な」バランスシートは、裏を返せば低収益資産を大量に抱えたまま資本効率を犠牲にしてきた構造でもある。減損によって投下資本が圧縮されたことで分母は小さくなったが、スプレッドをプラスに転じさせるには営業利益で概算900億円規模(=ROIC9.3%相当)が必要で、これは2023年3月期の過去最高水準に近い。なお国債利回りの上昇局面ではWACCも上がるため、ハードルは年々切り上がっている点に注意。
営業・投資・財務・フリーキャッシュフローの推移(直近10年間)
キャッシュフロー4種(FY2017〜FY2026、億円)
出典:The社史(the-shashi.com/tse/6963/current、有報XBRLベース)。
営業CFは最終赤字だったFY2025・FY2026でも840億円・894億円を確保しており、赤字の主因が非資金項目である減損だったことがCFで裏づけられる。異常値はFY2024(2024年3月期)で、東芝の非公開化連合への出資などにより投資CFが▲4,320億円、これを財務CF+2,651億円(借入・社債)で賄った。この1年でフリーCFは▲3,491億円となり、無借金体質は事実上終わった。FY2026の投資CF+1,086億円は有価証券の売却・償還等によるもので、設備投資が止まったことを意味しない。10年通算のフリーCFは概算▲2億円とほぼゼロで、この10年でロームは営業で稼いだキャッシュをすべて投資に回し、株主に残せた分がほぼなかったことになる。
直近の投資・M&A状況
出典:東芝ニュースリリース(global.toshiba)、EE Times Japan、日経クロステック、経済産業省資料。
主要事業ごとの成長性
出典:ローム決算資料、The社史セグメント集計。セグメント売上高は2026年3月期実績。
競争優位性や業界内でのポジション
SCP理論からの分析(市場構造・企業行動・業界トレンド)
Structure(市場構造)
Conduct(企業行動・規制リスク)
Performance(業界トレンド・収益性への帰結)
これらの分析結果をもとにした現在の投資妙味
※本セクションは公開情報に基づく分析であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。
今後の注目ポイントやリスク要因
注目ポイント(カタリスト)
② 宮崎第二工場のSiCパワー半導体量産(2026年4月開始計画)の立ち上がりと稼働率。
③ 四半期営業利益率の回復ペース。減損後の償却負担減がどの程度効くかが第1四半期以降の実績で見える。
④ 生成AI・データセンター向け高効率電源でのSiC/GaN採用拡大。
⑤ 構造改革(工場再編)による固定費削減の具体的な金額開示。
リスク要因
② 中国リスク。売上の30.5%を占める中国市場で、国策支援を受けた現地SiCメーカーの台頭と、輸出管理・関税の政策変更が同時に効く可能性。
③ EV政策の後退。欧米のEV規制緩和が進めば、減損の前提となった「中期的な成長鈍化」がさらに悪化する。
④ 追加減損。経営陣は「膿は出し切った」としているが、需要前提がさらに下振れれば残存する設備・のれんに再度の見直し余地がある。
⑤ バリュエーションリスク。PBR2.40倍は2010年以降のレンジ上限(1.86倍)を超えており、期待が剥落した場合の調整幅は大きい。
⑥ 金利上昇。日本の10年国債利回りが2.9%台まで上昇したことでWACCも切り上がり、ROICがハードルを超えるための必要利益水準が上がっている。