スナップショット
株価
14,010円
2026/8/26時点
時価総額
2兆453億円
同日時点
PER(実績/予想)
20.9倍 / 18.3倍
純利益980億円/会社予想1,115億円ベース
保有株数
―
未確認
売上高(2026年3月期)
1兆2,276億円
前期比+9.3%・過去最高
営業利益(同)
1,366億円
利益率11.1%・10年前の3.1倍
自己資本比率(同)
56.9%
10年で32.8%→56.9%へ改善
有利子負債(同)
891億円
前期比▲158億円・実質無借金に接近
事業ごと・国/エリアごとの売上高比率
セグメント別 売上高構成比(2026年3月期)
インダストリー(制御機器・FAコンポーネント・受変電設備・ITソリューション)とエネルギー(送変電・データセンタ電源・UPS・発電プラント)の2つで全社売上の70%を占める。半導体(IGBT・SiCパワーモジュール)は19.3%にすぎない。市場が「パワー半導体株」として評価している比率と、実際の事業構成にはかなりの開きがある点は押さえておきたい。出典:富士電機 2026年3月期決算短信(fujielectric.co.jp)、The社史 富士電機(the-shashi.com/tse/6504)。
国内・海外の売上構成
海外売上高比率は2023年度実績で35%、2026年度中期経営計画の計画値でも33%。「海外事業の拡大」を成長施策に掲げながら、計画上の海外比率はむしろ横ばい〜微減という、やや読みにくい状態にある。国内のGX投資・データセンター建設需要が想定以上に強く、結果として国内比率が下がらないという解釈が自然だろう。国・地域別の詳細内訳は有価証券報告書ベースで次回更新時に反映予定。出典:富士電機 2026年度中期経営計画・統合報告書。
創業からの歴史
出典:The社史 富士電機(the-shashi.com/tse/6504)、富士電機 公式サイト 沿革、有価証券報告書。
ミッション・ビジョン・バリュー
2026年度中期経営計画の数値目標 vs 2026年3月期実績
| 指標 | 中計目標 | 2026年3月期実績 | 判定 |
|---|---|---|---|
| 営業利益率 | 11%超 | 11.1% | 達成(最終年度を待たず) |
| 純利益率 | 7%超 | 8.0% | 達成 |
| ROE | 12%以上 | 12.3% | 達成 |
| ROIC | 10%以上を堅持 | 約11.1%(当サイト概算) | 達成 |
出典:富士電機「2026年度中期経営計画」(fujielectric.co.jp)、統合報告書2025、2026年3月期決算短信。ROICは当サイトによる概算(算式は09セクション参照)。
現経営者の特徴・過去の実績(レジリエンスの観点)
出典:富士電機「役員紹介」「会長CEOメッセージ」(fujielectric.co.jp)、The社史 富士電機 歴代社長(the-shashi.com)、電波新聞デジタル、2026年3月期決算短信。
直近決算の予想・ガイダンスに対する結果
2027年3月期 第1四半期(2026年4〜6月)実績
| 指標 | 実績 | 前年同期比 | コメント |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 2,733億円 | +10.2% | 第1四半期として過去最高 |
| 営業利益 | 250億円 | +38.3% | 同上 |
| 経常利益 | ― | +47.8% | 為替差益も寄与 |
| インダストリー | 1,039億円 / 利益85億円 | +19.0% / +194.4% | FAコンポーネント・器具分野の需要増 |
| エネルギー | 825億円 / 利益121億円 | +11.2% / +43.4% | 発電プラント工事進捗・蓄電システム |
脱炭素(GX)投資とデータセンター建設に伴う設備投資需要が背景。インダストリーの営業利益が前年同期比+194.4%と約3倍になった点が最も目を引く。
2027年3月期 通期予想(2026年7月30日 上方修正)
| 指標 | 前期実績 | 当初予想(4/28) | 修正後予想(7/30) | 前期比 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1兆2,276億円 | 1兆2,750億円 | 1兆3,000億円 | +5.9% |
| 営業利益 | 1,366億円 | 1,425億円 | 1,565億円 | +14.6% |
| 当期純利益 | 980億円 | ― | 1,115億円 | +13.7% |
| 営業利益率(想定) | 11.1% | 11.2% | 12.0% | +0.9pt |
| 配当 | 年200円(中間91/期末109) | ― | 中間107円(期末未定) | 増配基調 |
売上高・利益の推移(直近10年間)
売上高(白)・営業利益(グレー)の推移(2017年3月期〜2026年3月期、単位:億円)
売上高 営業利益
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 営業利益率 | 経常利益 | 当期純利益 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2017年3月期 | 8,378 | 447 | 5.3% | 463 | 410 |
| 2018年3月期 | 8,935 | 560 | 6.3% | 560 | 378 |
| 2019年3月期 | 9,149 | 600 | 6.6% | 635 | 403 |
| 2020年3月期 | 9,006 | 425 | 4.7% | 445 | 288 |
| 2021年3月期 | 8,759 | 486 | 5.5% | 504 | 419 |
| 2022年3月期 | 9,102 | 748 | 8.2% | 793 | 587 |
| 2023年3月期 | 10,094 | 889 | 8.8% | 878 | 613 |
| 2024年3月期 | 11,032 | 1,061 | 9.6% | 1,078 | 754 |
| 2025年3月期 | 11,234 | 1,176 | 10.5% | 1,188 | 922 |
| 2026年3月期 | 12,276 | 1,366 | 11.1% | 1,393 | 980 |
売上CAGR +4.4%に対し、営業利益CAGRは+13.2%。10年で売上は1.47倍にしかなっていないが、営業利益は3.06倍になった。つまりこの会社の成長はほぼ全てマージン改善から来ている。
もう一つ重要なのは2020年3月期以降、一度も減益していないことである(2020年3月期のみ前期比減益、以降6期連続増益)。米中摩擦・コロナ・半導体不足・EV減速と外部環境は荒れ続けたが、営業利益は425億円→1,366億円へ一本調子で伸びた。同じ期間に赤字を出した重工・電機は少なくない。出典:The社史 富士電機(the-shashi.com)、富士電機 各期決算短信。
営業利益率の推移(単位:%)
5.3%(2017年3月期)→11.1%(2026年3月期)。10年で+5.8ポイント、ほぼ倍増している。2027年3月期の会社計画は12.0%。日立製作所・三菱電機と比べても遜色ない水準に到達しつつある。
バリュエーション
現在の主要指標(2026年8月26日時点)
| 指標 | 数値 | 算出根拠・コメント |
|---|---|---|
| 株価 | 14,010円 | 2026年8月26日時点 |
| 時価総額 | 2兆453億円 | 同上 |
| PER(実績) | 20.9倍 | 2026年3月期 純利益980億円ベース |
| PER(会社予想) | 18.3倍 | 2027年3月期 純利益1,115億円ベース |
| PBR(実績) | 約2.6倍 | 自己資本 約8,004億円(総資産1兆4,067億円×56.9%) |
| ROE(実績) | 12.3% | 中計目標「12%以上」を達成 |
| 配当利回り | 約1.4% | 2026年3月期 年間200円ベース |
| 配当性向 | 約29% | EPS約681円に対し200円 |
PBR2.6倍・PER18〜21倍という水準は、「利益率11%・ROE12%・実質無借金」という財務品質に対する評価としては妥当だが、割安ではない。理論的にはPBR=ROE÷株主資本コストで、ROE12.3%/株主資本コスト7.5%前提ならPBRの理論値は約1.6倍。現状の2.6倍は、市場が将来のROE上昇(あるいは半導体事業の再加速)を織り込んでいることを示唆する。10年分のPER連続系列は、無料で取得できる開示範囲では分割調整済み株価の連続データが揃わないため、本ページでは掲載していません(次回更新時に一次資料ベースで反映予定)。出典:Japan IR(japanir.jp)、富士電機 2026年3月期決算短信、当サイト試算。
ROIC・WACC・ROEの推移
ROE(白)と自己資本比率(グレー)の推移(2017年3月期〜2026年3月期、単位:%)
ROE 自己資本比率
この10年でROEは11〜14%のレンジをほぼ維持しながら、自己資本比率が32.8%→56.9%へ24ポイント改善している。財務レバレッジを外しながら同じROEを維持したということは、事業そのものの収益性が実質的に大幅に上がったことを意味する。この点で、レバレッジ由来のROEに依存する多くの重電・重工とは性格が違う。
ただし2026年3月期のROEは12.3%と前期13.3%から低下している。利益は増えたが、自己資本の増加ペースがそれを上回った——資本が余り始めているサインである。出典:The社史 富士電機。
ROIC・WACC(概算)の関係
| 指標 | 2025年3月期 | 2026年3月期 | 算出根拠 |
|---|---|---|---|
| NOPAT(営業利益×0.72) | 847億円 | 983億円 | 実効税率28%想定 |
| 投下資本(自己資本+有利子負債) | 約7,981億円 | 約8,895億円 | 自己資本8,004億円+有利子負債891億円 |
| ROIC(概算) | 約10.6% | 約11.1% | 中計目標「10%以上を堅持」を達成 |
| 株主資本コスト | ― | 約7.8% | rf 1.7%+β1.1×ERP5.5% |
| WACC(概算) | ― | 約7.5% | 時価E:D=約96:4、負債コスト税引後0.9% |
| ROIC − WACC | ― | +3.6pt | 明確な価値創出 |
WACC・ROICはいずれも当サイトによる概算試算です。前提:リスクフリーレート1.7%(10年国債)、株式リスクプレミアム5.5%、β約1.1、実効税率28%。
ROIC約11.1%に対しWACC約7.5%で、スプレッドは+3.6ポイント。これは川崎重工(7012)のROIC6.2%対WACC6.2%=±0とは対照的で、富士電機は投下資本1円あたりで見ても明確に価値を生んでいる企業である。
ただし裏側の論点もある。有利子負債891億円・自己資本比率56.9%という構造はWACCを株主資本コストにほぼ等しくしており、安すぎる負債という資本を使っていない状態でもある。財務レバレッジを適度に効かせればROEはもう一段上がる余地がある。2026年5月の210億円の自己株取得は、その方向への第一歩と読める。2025年3月期以前のROIC連続系列は、有利子負債の年次データが無料開示範囲で揃わないため掲載していません。出典:富士電機 2026年3月期決算短信、The社史、当サイト試算。
営業・投資・財務・フリーキャッシュフローの推移(直近10年間)
キャッシュフロー4種(2017年3月期〜2026年3月期、単位:億円)
営業CF 投資CF 財務CF FCF(営業+投資)
| 決算期 | 営業CF | 投資CF | 財務CF | FCF | 現預金残高 |
|---|---|---|---|---|---|
| 2017年3月期 | 582 | 97 | ▲561 | 679 | 419 |
| 2018年3月期 | 531 | ▲145 | ▲469 | 386 | 333 |
| 2019年3月期 | 549 | ▲214 | ▲382 | 335 | 291 |
| 2020年3月期 | 461 | ▲276 | 169 | 185 | 638 |
| 2021年3月期 | 269 | 235 | ▲395 | 504 | 753 |
| 2022年3月期 | 768 | ▲223 | ▲429 | 545 | 914 |
| 2023年3月期 | 1,162 | ▲495 | ▲772 | 667 | 842 |
| 2024年3月期 | 849 | ▲624 | ▲459 | 225 | 655 |
| 2025年3月期 | 1,449 | ▲634 | ▲862 | 815 | 627 |
| 2026年3月期 | 1,236 | ▲726 | ▲482 | 510 | 699 |
10年間、FCFが一度もマイナスになっていない。累計FCFは約4,851億円で、同期間の純利益累計5,754億円に対して84%——利益がほぼそのままキャッシュとして残っている。
この数字は同業比較で際立つ。同じ期間の川崎重工(7012)はFCF累計486億円・対純利益13%であり、「利益は出るがキャッシュが残らない重工」と「利益がそのままキャッシュになる電機」の差が10倍近く開いている。
財務CFが恒常的にマイナス(10年で計▲4,642億円)なのは、有利子負債の返済と配当・自己株取得に充てられているためである。稼いだキャッシュで借金を返し、株主に返している——教科書的に健全な資金循環と言える。
投資CFは▲726億円(2026年3月期)まで拡大しており、パワー半導体(SiC)の生産能力増強と国内工場投資が中心。投資を増やしてなおFCFがプラスを保っている点が重要である。出典:The社史 富士電機、各期決算短信。※FCFは「営業CF+投資CF」で算出。
直近の投資・M&A状況
直近の主な資本配分(2026年)
| 時期 | 内容 | 規模 | 意味 |
|---|---|---|---|
| 継続 | パワー半導体(SiC)の生産能力増強 | 投資CF ▲726億円(2026年3月期) | 成長投資の主軸。ただし足元は車載需要減で稼働率が課題 |
| 継続 | データセンター向け電源・UPSの供給能力拡大 | ― | エネルギーセグメント好調(利益+63.9%)の源泉 |
| 2026年5月 | 自己株式取得 | 250万株・210億円 | 資本効率向上。発行済株式の約1.7%に相当 |
| 2026年3月期 | 年間配当 | 200円(中間91/期末109) | 配当性向約29% |
| 2026年6月 | 投資単位引下げに関する考え方の開示 | ― | 株価14,000円台=最低投資金額140万円超。株式分割の可能性を示唆 |
| 2027年3月期 | 中間配当予定 | 107円(期末未定) | 増配基調を継続 |
出典:富士電機 IR開示(自己株式の取得/投資単位の引下げに関する考え方、2026年5〜6月)、2026年3月期決算短信、The社史 富士電機。
主要事業ごとの成長性
セグメント別 営業利益(2026年3月期、単位:億円)
| セグメント | 売上高 | 前期比 | 営業利益 | 前期比 | 利益率 |
|---|---|---|---|---|---|
| エネルギー | 3,942 | +11.3% | 595 | +63.9% | 15.1% |
| インダストリー | 4,672 | +16.8% | 444 | +30.6% | 9.5% |
| 半導体 | 2,374 | +0.3% | 235 | ▲36.7% | 9.9% |
| 食品流通 | 1,080 | ▲3.1% | 131 | ▲5.8% | 12.1% |
出典:富士電機 2026年3月期決算短信・2027年3月期第1四半期決算短信、オートメーション新聞WEB(2026年8月)、The社史 富士電機。
競争優位性や業界内でのポジション
出典:富士電機 統合報告書2025・2026年度中期経営計画、各社決算資料、The社史 富士電機。
SCP理論からの分析(市場動向・規制リスク・業界トレンド)
Structure(市場構造)
要するに、富士電機が最も強いのは①と④、つまり「参入者が増えない市場」である。
Conduct(企業行動・規制リスク)
規制・外部リスクは3方向。第一に各国の環境規制とEV政策。EU・米国のEV補助政策の後退がそのまま半導体セグメントの需要減に直結しており、2026年3月期の利益▲36.7%はまさにこれである。第二に電力・データセンター関連の規制。データセンターの電力消費に対する規制強化や、系統接続ルールの変更は需要のタイミングを左右する。第三に経済安全保障・輸出管理。パワー半導体は軍民両用性が意識される領域で、対中輸出管理が強化されれば影響を受けうる。一方で、国内の半導体・GX補助金は追い風として働く。
Performance(業界トレンド・帰結)
出典:富士電機 2026年度中期経営計画・各期決算資料、日経ヴェリタス「いまや電力銘柄の富士電機、パワー半導体頼み脱却でV字回復」(2025年8月)。SCPの枠組み適用は当サイトによる解釈です。
これらの分析結果をもとにした現在の投資妙味
※本記述は公開情報の整理と当サイトの解釈であり、投資勧誘・投資助言ではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
今後の注目ポイントやリスク要因
注目ポイント(カタリスト)
現行「熱く、高く、そして優しく2026」は2027年3月期が最終年度。4つの数値目標を前倒し達成済みで、次期計画でどこまで引き上げるかが最大の再評価材料。
2026年6月に「投資単位の引下げに関する考え方と方針」を開示済み。株価14,010円=最低投資金額約140万円は東証推奨(50万円以下)を大きく超える。分割は個人資金の流入につながる。
エネルギーセグメントの営業利益は前期比+63.9%、2027年3月期第1四半期も+43.4%。生成AI投資が続く限り、この事業の可視性は高い。
2027年3月期も減収減益見通し。逆に言えばここが回復に転じれば全社の利益率は一段上がる。EV需要と車載在庫調整の進捗が指標。
自己資本比率56.9%・有利子負債891億円と資本余力は大きい。自己株取得210億円は時価総額の約1%にすぎず、増額余地がある。
リスク要因
PBR2.6倍はROE12.3%から導かれる理論値(約1.6倍)を大きく上回る。将来のROE上昇が実現しなければ調整余地がある。
半導体セグメントの営業利益は既に▲36.7%。SiC設備投資は継続しており、需要回復が遅れるほど減価償却負担が利益を圧迫する。
現在の成長は生成AI投資に強く依存する。AI設備投資が減速すれば、エネルギーセグメントの高い利益率(15.1%)は維持しにくくなる。
海外売上高比率は35%前後で、中計でも33%と横ばい見通し。国内のGX・データセンター投資サイクルが一巡したときの次の成長源が明確でない。
ROEは13.3%(2025年3月期)→12.3%(2026年3月期)へ低下。利益は増えたが自己資本の増加がそれを上回った。資本が滞留するとROEはさらに下がる。
パワー半導体ではインフィニオン・オンセミ・STマイクロ、電力機器ではABB・シュナイダー・シーメンスと、いずれも研究開発費の絶対額で差がある。次世代デバイス(GaN等)の開発競争では体力差が効きうる。
最終更新:2026年8月27日。出典:富士電機 2026年3月期決算短信・2027年3月期第1四半期決算短信・2026年度中期経営計画・各種適時開示、The社史 富士電機、Japan IR、オートメーション新聞WEB、日経ヴェリタス。