スナップショット
株価
5,767円
2026/8/14 終値
時価総額
約26.2兆円
国内上場企業の最上位グループ
PER(会社予想ベース概算)
約30倍
27/3期予想EPS 188.78円で試算。実績EPS176.76円なら約32.6倍
保有株数
―
未確認
売上収益(26/3期)
10兆5,868億円
前期比 +8.2%
Adjusted EBITA
1兆3,114億円
率12.4%(+1.3pt)/前期比 +21.0%
親会社株主帰属当期利益
8,024億円
前期比 +30.3%・過去最高
ROE
12.9%
前期10.7%から+2.2pt
事業ごと・国/エリアごとの売上高比率
事業セグメント別 外部売上構成比(26/3期)
セグメント外部売上合計10兆5,540億円に対する構成比(当サイト算出)。26/3期からセグメント区分が「エナジー/モビリティ/デジタルシステム&サービス/コネクティブインダストリーズ/その他」の5区分に変更され、従来の「グリーンエナジー&モビリティ」がエナジーとモビリティに分割された。
国・エリア別 売上構成比(26/3期)
海外売上比率は61%→63%へ上昇。欧州が前期比+20%と突出しており、パワーグリッド(Hitachi Energy)と鉄道(Hitachi Rail)の欧州集中が数字にはっきり出ている。北米+8%、日本+4%、アジア+4%、その他+14%。
セグメント損益(Adjusted EBITA)と利益率
| セグメント | 合計売上(億円) | セグメント損益(億円) | 利益率 | 売上YoY | 損益YoY |
|---|---|---|---|---|---|
| デジタルシステム&サービス | 29,401 | 4,501 | 15.3% | +3.8% | +14.2% |
| エナジー | 32,200 | 4,160 | 12.9% | +22.6% | +65.1% |
| コネクティブインダストリーズ | 32,628 | 3,674 | 11.3% | △0.5% | +6.4% |
| モビリティ | 13,216 | 1,081 | 8.2% | +12.8% | +13.9% |
| その他 | 5,311 | 230 | 4.3% | +6.7% | +93.0% |
| 全社及び消去 | △6,887 | △531 | ― | ― | 悪化(前期△148) |
| 連結合計 | 105,868 | 13,114 | 12.4% | +8.2% | +21.0% |
出典:2026年3月期 決算短信 p.10-11。セグメント損益はAdjusted EBITAベース。26/3期からAdjusted EBITAの算出式が変更(持分法投資損益を除外)されており、過去資料の同名指標とは連続性がない点に注意。
創業からの歴史
出典:The社史(日立製作所 業績推移・歴史概要)、日立製作所ニュースリリース、日本経済新聞、2026年3月期決算短信(後発事象)。
ミッション・ビジョン・バリュー
出典:日立製作所 公式サイト(企業理念・ビジョン)、中期経営計画「Inspire 2027」説明資料および関連報道(クラウドWatch、MONOist、電波新聞デジタル)。
現経営者の特徴・過去の実績(レジリエンスの観点)
出典:德永俊昭氏 経歴(日立製作所 人事リリース、日経クロステック、マイナビニュース、Wikipedia)、中期経営計画関連インタビュー。
直近決算の予想・ガイダンスに対する結果
2026年3月期 通期実績(2026/4/27発表)
| 指標 | 26/3期実績 | 25/3期 | YoY | 評価 |
|---|---|---|---|---|
| 売上収益 | 10兆5,868億円 | 9兆7,834億円 | +8.2% | 初の10兆円台回復 |
| 売上総利益率 | 30.0% | 28.8% | +1.2pt | 原価率71.2%→70.0% |
| 調整後営業利益 | 1兆1,993億円 | 9,716億円 | +23.4% | 利益率9.9%→11.3% |
| Adjusted EBITA | 1兆3,114億円 | 1兆835億円 | +21.0% | 率11.1%→12.4% |
| 税引前当期利益 | 1兆2,731億円 | 9,627億円 | +32.2% | 本業以外の押上げも寄与 |
| 親会社株主帰属当期利益 | 8,024億円 | 6,157億円 | +30.3% | 過去最高 |
| 基本EPS | 176.76円 | 133.85円 | +32.1% | 自社株買いも寄与 |
| ROE | 12.9% | 10.7% | +2.2pt | ― |
| フリーCF(会社開示) | 1兆3,265億円 | 5,986億円 | +121.7% | 前受金増の一過性寄与大 |
2027年3月期 会社ガイダンス vs 26/3期実績
| 指標 | 27/3期予想 | 26/3期実績 | YoY |
|---|---|---|---|
| 売上収益 | 11兆1,000億円 | 10兆5,868億円 | +4.8% |
| 調整後営業利益 | 1兆3,150億円 | 1兆1,993億円 | +9.6%(率11.8%) |
| Adjusted EBITA | 1兆4,200億円 | 1兆3,114億円 | +8.3%(率12.8%) |
| 税引前当期利益 | 1兆2,570億円 | 1兆2,731億円 | △1.3% |
| 親会社株主帰属当期利益 | 8,500億円 | 8,024億円 | +5.9% |
| 基本EPS | 188.78円 | 176.76円 | +6.8% |
為替前提150円/ドル、175円/ユーロ。「本業(調整後営業利益)は+9.6%増だが、税引前利益は△1.3%減」というガイダンスは、今期にあった一時的な収益(持分法投資売却益・金融収益等)を来期は一切見込まない保守的な置き方と読める。
出典:2026年3月期 決算短信〔IFRS〕(2026/4/27)、2027年3月期第1四半期決算、IRBANK、note「noriちん」による決算短信の要約分析。
売上高・税引前利益の推移(直近10年間)
売上収益(白)と税引前当期利益(青)/単位:億円
2020年3月期(コロナ直前の減損計上期)に税引前利益1,803億円まで落ち込んだのが谷。2021年3月期に日立化成売却益等で8,444億円へ急回復し、以降は8,000億円台のプラトーが4年続いた後、26/3期に1兆2,731億円へ一段跳ね上がった。売上は22/3期→23/3期の10.9兆円をピークにいったん9.7兆円まで縮小しているが、これは業績悪化ではなく日立金属・日立物流・日立建機・日立Astemoの連結除外という意図的な縮小である。
親会社株主帰属当期利益(10年推移、億円)
10年で2,313億円→8,024億円と3.5倍。売上がほぼ横ばい(9.2兆→10.6兆、CAGR約1.5%)である一方、当期利益はCAGR約14.8%で伸びている。この会社の10年は「売上を伸ばした10年」ではなく「同じ売上で3倍以上稼げる体質に組み替えた10年」だったことが、この2枚のグラフの対比に集約されている。
出典:The社史(有価証券報告書XBRL集計、6501)、2026年3月期決算短信。売上高・利益は決算期(3月期)ベース。2012年3月期以降IFRS。
PERの推移(直近10年間)
実績PER(各決算期ベース、倍)
2017〜2023年3月期は、20/3期(利益が876億円まで落ちた年)を除けばおおむね10〜15倍のレンジで放置されていた。日本の総合電機に対する市場評価は長らく「安いが伸びない」というものだった。それが2024年3月期に21.9倍へ切り上がり、現在は会社予想EPS188.78円ベースで約30倍(実績EPSベースなら約32.6倍)と、10年レンジの上限をはるかに超えるゾーンにいる。
バリュエーションの現在地
| 指標 | 現在 | 参考 |
|---|---|---|
| PER(会社予想EPSベース概算) | 約30倍 | 10年レンジ 9.6〜34.7倍/中央値10倍台 |
| PBR | 約3.7〜3.9倍 | 2010年以降レンジ 0.65〜4.13倍。ほぼ史上最高圏 |
| 配当利回り | 1%前後 | 26/3期年間配当50円、配当性向28.1% |
| アナリストコンセンサス目標株価 | 5,807円 | 14人中12人が買い推奨(株価5,767円に対し上値余地は限定的) |
出典:IRBANK(6501 PER・PBR推移)、株探、Nippon Newsdesk(アナリストコンセンサス)。25/3期・26/3期の期末実績PERは今回のリサーチで一貫した数値を確認できなかったため空欄とし、次回更新時に反映予定(推測での穴埋めは行っていません)。
ROIC・WACC・ROEの推移(直近10年間)
ROE(自己資本利益率、10年推移)
20/3期の4.3%を底に、21/3期19.3%(日立化成売却益)→22/3期17.5%と一時的に跳ね、その後は事業売却の一巡で10%台前半に落ち着き、26/3期に12.6〜12.9%へ再上昇。単年の高ROEは売却益によるもので、「本業だけで12〜13%」に到達したのは実は直近が初めてという点が重要である。
ROIC・WACC・スプレッド(概算)
| 指標 | 水準 | 根拠・算出方法 |
|---|---|---|
| ROIC(26/3期) | 約9〜12% | 会社・第三者分析で9.1%〜11.8%と幅がある(NOPAT・投下資本の定義差による)。当サイトはレンジで提示。 |
| ROIC目標(2027年度) | 12〜13% | 中期経営計画「Inspire 2027」の明示目標 |
| WACC(当サイト概算試算) | 約6〜7% | 株主資本コスト=リスクフリーレート(日本10年国債・1%台後半)+β約1.0〜1.2×ERP約5.5%で7〜8%程度。有利子負債1兆90億円/親会社株主持分6兆5,684億円(D/Eレシオ0.15倍)で加重し、税効果を勘案。公式開示はなく当サイトによる試算。 |
| ROIC − WACC スプレッド | 概ね +3〜5pt | 資本コストを明確に上回っており、事業を回すこと自体が価値を創出している状態。中計目標達成なら+5〜7ptまで拡大する計算。 |
| ROA(26/3期) | 6.0% | 前期5.2%から+0.8pt |
財務体質の変化(26/3期末)
| 項目 | 26/3期末 | 25/3期末 |
|---|---|---|
| 総資産 | 15兆412億円 | 13兆2,848億円 |
| 有利子負債 | 1兆90億円 | 1兆2,060億円 |
| D/Eレシオ | 0.15倍 | 0.20倍 |
| 親会社株主持分比率 | 43.7% | 44.0% |
| 運転資金手持日数(CCC) | 36.6日 | 48.3日 |
| のれん残高 | 2兆6,475億円 | 2兆4,868億円 |
自己資本比率は2009年3月期の11.2%から43.7%へ。危機時に債務超過寸前まで行った会社が、いまやD/E 0.15倍という無借金に近い財務体質になっている。一方でのれんは総資産の17.6%を占め、GlobalLogic・Hitachi Energy・タレスGTSの買収が生んだ「将来利益の先払い」が積み上がっている点は継続監視が必要。
出典:The社史(ROE推移)、2026年3月期決算短信、中期経営計画「Inspire 2027」、note各種決算分析。WACCは公式開示がないため当サイトの概算試算であり、前提の置き方で±1〜2pt程度は容易に動きます。
営業・投資・財務・フリーキャッシュフローの推移(直近10年間)
営業キャッシュフロー(億円)
投資キャッシュフロー(億円)
22/3期の△1兆489億円がGlobalLogic買収(約1兆368億円)。23/3期がプラス+1,511億円になっているのは日立金属・日立物流・日立建機の売却代金流入によるもので、「買う年」と「売る年」がキャッシュフローの形でくっきり分かれている。
財務キャッシュフロー(億円)
23/3期△1兆1,430億円、24/3期△1兆249億円、26/3期△9,710億円と、直近は大型の債務返済と株主還元でキャッシュを外に出し続けている。26/3期は自己株式取得3,523億円+配当2,259億円=総還元5,781億円(総還元率72.1%)を実施。
フリーキャッシュフロー=営業CF+投資CF(億円)
22/3期のみGlobalLogic買収でマイナス(△3,190億円)。以降は8,000〜1兆3,000億円台の水準に定着している。26/3期の1兆3,265億円は過去最高だが、前述のとおり契約負債(前受金)+7,169億円の一過性寄与が大きく、維持投資控除後の「実力FCF」は約1兆1,702億円と当サイトは見ている。
4種CFの数値一覧(億円)
| 決算期 | 17/3 | 18/3 | 19/3 | 20/3 | 21/3 | 22/3 | 23/3 | 24/3 | 25/3 | 26/3 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 営業CF | 6,296 | 7,272 | 6,100 | 5,609 | 7,931 | 7,299 | 8,270 | 9,566 | 11,722 | 16,681 |
| 投資CF | △3,380 | △4,743 | △1,629 | △5,258 | △4,588 | △10,489 | +1,511 | △1,315 | △5,736 | △3,416 |
| 財務CF | △2,095 | △3,215 | △3,204 | +28 | △1,848 | +2,027 | △11,430 | △10,249 | △4,241 | △9,710 |
| FCF(営業+投資) | 2,916 | 2,529 | 4,471 | 351 | 3,343 | △3,190 | 9,781 | 8,251 | 5,986 | 13,265 |
| 現預金残高 | 7,652 | 6,980 | 8,076 | 8,123 | 10,159 | 9,688 | 8,333 | 7,054 | 8,662 | 13,235 |
出典:The社史(有価証券報告書ベースのCF集計、6501)、2026年3月期決算短信。FCFは営業CF+投資CFで当サイトが算出(26/3期は会社開示のFCF 1兆3,265億円と一致)。
直近の投資・M&A状況
資本配分の軌跡:何を売り、何を買ったか
| 年 | 取引 | 金額 | 方向 |
|---|---|---|---|
| 2012 | HDD事業をウエスタンデジタルへ売却 | 約48億ドル | 売却 |
| 2020 | 日立化成を昭和電工(現レゾナック)へ売却 | 約9,600億円(TOB総額) | 売却 |
| 2020 | ABBパワーグリッド事業を取得(現Hitachi Energy) | 約7,200億円 | 取得 |
| 2021 | 米GlobalLogicを買収 | 約1兆368億円 | 取得 |
| 2021 | 日立Astemo発足(ホンダ系3社と統合) | ― | 再編 |
| 2022 | 日立金属をベインキャピタル連合へ売却 | 約8,200億円 | 売却 |
| 2022 | 日立物流をKKRへ売却 | 約6,700億円 | 売却 |
| 2022 | 日立建機 持分一部売却(持分法適用化) | 約1,800億円 | 売却 |
| 2024/5 | タレス社 鉄道信号事業(GTS)買収完了 | 16億6,000万ユーロ(約2,822億円) | 取得 |
| 2026 | 家電事業(日立GLS新会社)80.1%をノジマSPCへ譲渡 | 約1,100億円 | 売却 |
出典:日立製作所ニュースリリース、日本経済新聞、The社史、日本M&Aセンターニュース、2026年3月期決算短信(後発事象)。金額は公表時点の報道ベース。
主要事業ごとの成長性
セグメント損益(Adjusted EBITA)成長率/26/3期・前期比
競争優位性や業界内でのポジション
SCP理論からの分析(市場動向・規制リスク・業界トレンド)
Structure(市場構造)
Conduct(企業行動)
Performance(業界トレンド・帰結・規制リスク)
規制・地政学リスクの側は非対称に効く。日立の場合、規制はむしろ需要創出側に働くことが多い(脱炭素規制→系統投資、安全規制→高い参入障壁)が、一方で①各国の産業保護政策により海外案件でローカル調達比率を求められるリスク、②原子力事業(日立GEニュークリア・エナジー)に関する政策変動リスク、③為替(150円/ドル・175円/ユーロ前提、海外売上比率63%)の逆風、④米中対立や貿易障壁の高まりによるサプライチェーンコスト上昇、が挙げられる。加えて、電力インフラ投資は本質的にサイクル産業であり、いまの需給逼迫がいずれ供給能力の増強で解消されれば、価格決定力は現在ほど強くなくなる。これがこの物語の最大の構造的な弱点である。
これらの分析結果をもとにした現在の投資妙味
※本セクションは公開情報にもとづく当サイトの考察であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。
今後の注目ポイントやリスク要因
注目ポイント
・契約負債(前受金)の動き。26/3期の+7,169億円という受注先行指標が来期も維持されるか
・Lumada売上比率が2027年度50%・EBITA率18%の中計目標に対しどこまで進捗するか
・27/3期の上方修正。Q1は売上+20.0%・調整後営業利益+39.5%と通期計画(+4.8%)を大幅に上回っている
・上限5,000億円の自社株買い枠(2026/4/28〜2027/3/31)の執行ペースとEPS押し上げ効果
・家電事業(日立GLS)譲渡完了後、コネクティブインダストリーズの利益率がどこまで上がるか
・AIデータセンター向け電力需要が、送配電機器の受注にどこまで直結し続けるか
リスク要因
・のれん減損:残高2兆6,475億円(総資産の17.6%)。GlobalLogic・Hitachi Energy・タレスGTSの統合が想定を下回れば減損リスク
・キャッシュフローの反動:26/3期FCF +121.7%には契約負債+7,169億円の一過性寄与が大きく、来期の伸びは鈍化必至
・電力投資サイクルの一巡:現在の需給逼迫は永続しない。供給能力増強が進めば価格決定力は低下
・為替:海外売上比率63%。円高に振れれば売上・利益とも下押し(在外営業活動体換算差額は26/3期に+3,853億円寄与)
・全社費用の膨張:全社及び消去の損益が△148億円→△531億円へ悪化
・指標の連続性:Adjusted EBITAの算出方法が26/3期から変更されており、過去資料との単純比較ができない
・KPIの検証可能性:Lumada売上比率は日立自身の定義に依存し、外部からの検証が難しい
出典:2026年3月期決算短信〔IFRS〕(2026/4/27)、2027年3月期第1四半期決算、中期経営計画「Inspire 2027」、The社史、IRBANK、Yahoo!ファイナンス、株探、日本経済新聞、日立製作所ニュースリリース。