スナップショット
株価
60,070円
2026/8/20 時点
時価総額
約6.5兆円
自己株除き1億846万株ベース
PER(実績)
約48倍
実績EPS 1,249.8円ベース
PBR
約11倍
BPS 5,408円ベース
売上高
4,369億円
2026年3月期(+11.1%)
営業利益率
42.3%
2026年3月期(営業1,850億円)
自己資本比率
78.9%
有利子負債ゼロ(実質無借金)
保有株数
―
ポートフォリオ未登録
事業ごと・国/エリアごとの売上高比率
製品別 出荷額構成(2026年3月期、出荷額ベース)
| 製品カテゴリ | 構成比 | 通期YoY | 4Q QoQ | 中身 |
|---|---|---|---|---|
| ダイサ(切断装置) | 31% | +1% | +23% | ダイシングソー・レーザソー。生成AI/OSAT向けICが伸長 |
| グラインダ(研削装置) | 28% | +17% | ▲9% | ウェーハ研削。パワー半導体向け減速の影響 |
| 周辺装置 | 3% | ▲2% | +69% | 洗浄・搬送等 |
| 精密加工ツール・その他 | 約38% | ― | ― | ブレード・研削ホイール等の消耗品、保守サービス |
| 出荷額 合計 | 4,428億円 | +10.3% | ― | 過去最高 |
同社は単一セグメント(精密加工装置・精密加工ツール)で開示しており、上記は出荷額の内訳。精密加工ツール等の構成比は装置3カテゴリの残差から算出した概算です。出典:ディスコ 2026年3月期決算説明資料、IR気象台(irweather.jp)。
地域別・用途別の構造変化
用途ミックスの劇的なシフト
創業からの歴史
出典:The社史 ディスコ(the-shashi.com/tse/6146)、ディスコ公式サイト 社史、週刊東洋経済 2014年4月18日号、有価証券報告書。
ミッション・ビジョン・バリュー
出典:ディスコ公式サイト「Will会計」「人的資本戦略」、The社史「社内通貨Willによる個人単位の管理会計の導入」(the-shashi.com)、週刊東洋経済 2014年4月18日号、日経ビジネス。
現経営者の特徴・過去の実績(レジリエンスの観点)
出典:The社史 ディスコ 関家一馬(the-shashi.com)、日経ビジネス、日本経済新聞、週刊東洋経済 2010年6月19日号・2014年4月18日号、有価証券報告書。
直近決算の予想・ガイダンスに対する結果
2027年3月期 第1四半期(2026年4〜6月)実績 vs 会社ガイダンス
| 指標 | 会社ガイダンス | 実績 | 達成率 | 前年同期比 |
|---|---|---|---|---|
| 売上高 | 1,061億円 | 1,143億円 | 107.7% | +27.1% |
| 営業利益 | 420億円 | 490億円 | 116.7% | +42.2% |
| 経常利益 | 423億円 | 484億円 | 114.5% | +42.5% |
| 四半期純利益 | 295億円 | 342億円 | 116.0% | +44.0% |
| 営業利益率 | 39.6% | 42.9% | ― | 前年同期38.3%から+4.6pt |
| 個別出荷額 | ― | 1,165億円 | ― | +25.3%(四半期最高) |
2027年3月期 上期予想(従来「未定」から新規開示)
| 指標 | 前年同期実績 | 今期予想 | 増減率 |
|---|---|---|---|
| 上期 売上高 | 1,945億円 | 2,428億円 | +24.8% |
| 上期 営業利益 | 789億円 | 1,049億円 | +33.0% |
| 上期 経常利益 | 795億円 | 1,048億円 | +31.9%(3期連続で上期最高益) |
| 上期 純利益 | 559億円 | 738億円 | +32.0% |
| 上期 配当 | 129円 | 171円 | +42円の増配 |
| 通期予想 | ― | 未開示 | 「四半期先のみ開示」方針 |
出典:ディスコ 2027年3月期第1四半期決算短信(2026年7月23日)、株探(kabutan.jp)、ディスコ 2026年3月期決算短信(2026年4月22日)、IR気象台(irweather.jp)。
売上高・利益の推移(直近10年間)
売上高(白)・営業利益(グレー)の推移(2017年3月期〜2026年3月期、単位:億円)
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 営業利益率 | 局面 |
|---|---|---|---|---|
| 2017年3月期 | 1,342 | 313 | 23.3% | ― |
| 2018年3月期 | 1,674 | 510 | 30.5% | メモリ投資ブーム |
| 2019年3月期 | 1,475 | 386 | 26.2% | 米中摩擦・メモリ調整 |
| 2020年3月期 | 1,411 | 365 | 25.8% | 10年で最も苦しい年でも利益率25.8% |
| 2021年3月期 | 1,829 | 531 | 29.0% | コロナ後の巣ごもり需要 |
| 2022年3月期 | 2,538 | 915 | 36.1% | 半導体不足による設備投資ラッシュ |
| 2023年3月期 | 2,841 | 1,104 | 38.9% | パワー半導体(SiC)向けが牽引 |
| 2024年3月期 | 3,076 | 1,215 | 39.5% | 生成AI需要の立ち上がり |
| 2025年3月期 | 3,933 | 1,668 | 42.4% | HBM・先端パッケージング本格化 |
| 2026年3月期 | 4,369 | 1,850 | 42.3% | 6期連続最高益 |
10年間で売上高は3.3倍、営業利益は5.9倍。売上総利益率は70.1%(2026年3月期)と、装置メーカーとしては突出して高い。税引前利益は経常利益とほぼ一致(2026年3月期:経常1,849億円 vs 営業1,850億円)しており、営業外・特別損益の振れがほとんどない点も同社の特徴です。出典:ディスコ 各期決算短信、株探、IRBANK。
営業利益率の推移(2017年3月期〜2026年3月期、単位:%)
最も注目すべきはこのグラフである。10年間で最低の年(2017年3月期)ですら23.3%。半導体装置というシリコンサイクルの直撃を受ける業種で、この下限の高さは異例である。2007年に導入された経費管理レベルという仕組みが、市況悪化局面で自動的にコストを絞る設計として機能している。
PERの推移とバリュエーション
把握できているPER・PBRの定点
| 時点 | 株価 | PER(実績) | PBR | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2025年4月(52週安値) | 22,640円 | 約20倍 | ― | 実績EPS 1,143.3円ベースの概算 |
| 2026年4月21日(決算前) | 74,240円 | 62.5倍 | 14.6倍 | IR気象台の記載値 |
| 2026年4月24日 | 71,700円 | 約57倍 | ― | 実績EPS 1,249.84円ベース |
| 2026年8月20日 | 60,070円 | 約48倍 | 約11倍 | 実績EPS 1,249.8円・BPS 5,408.1円ベース |
同社は通期業績予想を開示していないため(四半期先のみ開示方針)、予想PERは市場コンセンサスに依存し、公式には存在しません。上記はすべて実績EPSベース。10年分の連続したPER推移は本稿の調査範囲では信頼できるデータ系列を確認できなかったため、確度の高い定点のみを掲載しています。次回更新時に反映予定。
ROIC・WACC・ROEの推移
資本効率指標
| 決算期 | ROE | ROIC | ROA | 自己資本比率 | WACC(概算) | ROIC − WACC |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 2025年3月期 | 27.6% | ― | ― | ― | 約8〜10% | 大幅な価値創出 |
| 2026年3月期 | 25.1% | 約27.0% | 19.4% | 78.9% | 約8〜10% | +17〜19pt |
ROEは決算短信ベース、ROIC・ROAは決算短信からの外部試算(実効税率30%、余剰現金10%と仮定)。WACCは当サイトによる概算で、リスクフリーレート約1.5〜1.8%、株式リスクプレミアム約6%、半導体装置セクターの高ベータ(1.1〜1.4程度)を前提に置いた粗い推計です。同社は有利子負債ゼロのため、WACCは実質的に株主資本コストと一致します。精緻な資本コストの算定は行っていません。ROIC・ROE・自己資本比率の10年連続系列は次回更新時に有価証券報告書から整備予定。
営業・投資・財務・フリーキャッシュフローの推移
キャッシュフロー(2026年3月期、単位:億円)
| 項目 | 金額 | 内容 |
|---|---|---|
| 営業CF | +1,335 | 営業利益1,850億円に対し、運転資本の増加分を吸収してなお強力 |
| 投資CF | ▲1,358 | 設備投資(羽田R&Dセンター新棟・広島郷原新工場)+定期預金の積み増し |
| 財務CF | ▲450 | 配当支払いが中心(有利子負債ゼロのため返済はない) |
| FCF | ▲22 | 一時的にマイナスだが、定期預金積み増しを除けば実質プラス |
| 現金及び預金(期末) | 2,846 | 前期末比+554億円。有利子負債ゼロ、ネットD/Eレシオ▲0.5倍 |
2017年3月期〜2025年3月期のCF内訳は本稿の調査範囲では一次資料の連続系列を確認できなかったため掲載していません。数値の推測は行わず、次回更新時に有価証券報告書から補完する予定です。出典:ディスコ 2026年3月期決算短信。
直近の投資・M&A状況
出典:ディスコ 2026年3月期決算短信・剰余金の配当に関するお知らせ(2026年4月22日)、IR気象台、The社史。
主要事業ごとの成長性
用途別ミックスの変化(グラインダ・ダイサの用途別IC比率)
| 指標 | 2025年3月期4Q | 2026年3月期4Q | 変化 | 意味 |
|---|---|---|---|---|
| グラインダ 用途別IC比率 | 48% | 76% | +28pt | 先端ロジック・HBM向けへの大転換 |
| グラインダ「その他半導体」比率 | 22% | 7% | ▲15pt | パワー半導体(SiC等)の減速が顕在化 |
| ダイサ 用途別IC比率 | 62% | 69% | +7pt | 生成AI/OSAT向けICが伸長 |
出典:ディスコ 2026年3月期決算説明資料、IR気象台。
競争優位性や業界内でのポジション
出典:ディスコ公式サイト よくあるご質問、半導体業界サイト各種、IR気象台、The社史。
SCP理論からの分析(市場動向・規制リスク・業界トレンド)
Structure(市場構造)
参入障壁は極めて高い。①加工ノウハウの累積性、②装置+消耗品+アプリケーションの一体提供によるスイッチングコスト、③顧客の量産ラインに組み込まれた実績(歩留まりに直結する工程で、新規参入品を試す動機が顧客側にない)。
買い手集中度は上昇傾向にある。TSMC、サムスン、SKハイニックスといった先端メーカーへの需要集中が進んでいるが、供給側がほぼ一社である以上、交渉力は依然として売り手に傾いている。粗利率70.1%・営業利益率42.3%という水準が、その力関係を数字で証明している。
Conduct(企業行動・規制リスク)
組織面では個人Will会計とPIM活動により、全部署に年5%以上の経費削減が課され、市況の谷でもコストが自動的に絞られる。不況耐性が組織設計に埋め込まれているという点が、他の装置メーカーとの最大の違いである。
情報開示の面では、通期業績予想を出さず四半期先のみを開示する方針をとる。市況変動の大きさに対する誠実さとも、投資家にとっての予見可能性の低さとも読める。
規制リスク:①米国の対中半導体規制。中国向け約1,350億円が対象になり得る。②HBM関連の輸出規制強化。③日本政府の輸出管理措置。④台湾海峡の地政学リスク(台湾向け1,174億円、TSMC向け482億円)。同社は特定国への依存が突出しているわけではないが、規制は装置メーカーを直撃する形で設計されることが多い。
Performance(業界トレンド・帰結)
業界トレンドとして最も重要なのは、ムーアの法則の減速がディスコにとっては追い風であるという点である。微細化が限界に近づくにつれ、性能向上の手段はチップレット、3D積層、先端パッケージングへ移行した。HBMは何層も積層し、CoWoSは複数の基板を精密に貼り合わせる。これらはすべて「切る・削る・磨く」工程を増やす。露光装置の微細化競争が鈍る一方で、後工程の加工工程は増え続けるという構造変化が、同社の追い風になっている。
リスクシナリオは2つ。①シリコンサイクルの反転。生成AI投資が一巡すれば装置需要は急減する。ただし消耗品収益が下支えする構造があり、2020年3月期でも営業利益率25.8%を維持した実績がある。②パッケージング技術のパラダイム転換。加工工程を減らす技術(例えばウェーハレベルでの一体成形の進展)が普及すれば、需要の前提が崩れる。現時点でその兆候は見えないが、独占的地位が長く続く企業ほど、技術的断絶に対する脆弱性は蓄積する。
これらの分析結果をもとにした現在の投資妙味
判断の分かれ目は、「生成AI由来の需要が構造変化なのか、循環なのか」という一点に集約される。構造変化(=チップの複雑化が不可逆)と見るならプレミアムは正当化され得るし、循環(=投資が一巡すれば戻る)と見るなら48倍は明確に高い。ここは事実で決着がつく問題ではなく、時間軸の置き方の問題である。
実務的には、①用途別IC比率(グラインダ76%)がさらに上がるか頭打ちになるか、②中国向け約1,350億円が規制で削られないか、③四半期ごとのガイダンス達成率、の3点を追い続けるのが最も情報効率が高い。同社は通期予想を出さない代わりに、毎月の個別売上高・出荷額を速報で開示しており、先行指標の粒度は極めて細かい。この開示を追える投資家にとっては、むしろ情報優位を作りやすい銘柄と言える。
※ 本記述は公開情報に基づく分析であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
今後の注目ポイントやリスク要因
注目ポイント(カタリスト)
② HBM・先端パッケージング案件の本格立ち上がり:IRコメントで先端パッケージング比率が言及されるかが焦点。
③ 追加配当ロジックの継続性:中間決算時の現預金残高と必要資金の見直し開示。「余剰資金÷3」は事前試算が可能なため、BSを追えば配当を先読みできる。
④ 用途別IC比率:グラインダのIC比率76%がさらに上昇するか。パワー半導体(現在7%)の底打ちも注目。
⑤ 台湾・TSMC向けの推移:1,173.8億円(+57.8%)、うちTSMC向け482.4億円。CoWoS増設計画との連動を確認。
⑥ 新工場の立ち上がり:羽田R&Dセンター新棟、広島郷原新工場。生産能力の制約が需要を取り逃がしていないか。
リスク要因
② シリコンサイクルの反転:半導体装置は循環産業。生成AI投資が一巡すれば装置需要は急減する。ただし消耗品収益と経費管理レベルが下支えする構造はある。
③ 米国の対中半導体規制:中国向け約1,350億円が対象になり得る。HBM関連の規制強化も直撃リスク。
④ 台湾集中と地政学:台湾向け1,174億円、TSMC向け482億円。台湾海峡の緊張は業績と株価の双方に影響。
⑤ 通期ガイダンス非開示:予見可能性が構造的に低く、四半期ごとのサプライズ幅が大きい。信用買残の膨張と重なると値動きが荒くなる。
⑥ 為替感応度:1USD=1円の変動で年間17億円の影響。2027年3月期1Qは1USD=157円の円安前提であり、為替反転時の下振れリスクがある。
⑦ 固定費の増加:有形固定資産2,232億円(+192億円)、平均年収1,879万円。市況悪化時の固定費負担。ただし賞与の業績連動比率が高く、人件費は自動的に調整される設計になっている。
⑧ 長期政権と後継者:関家一馬氏の社長在任は17年超。オーナー家経営ゆえの継続性は強みだが、承継の設計は開示が薄い。
出典:ディスコ 2027年3月期第1四半期決算短信(2026年7月23日)、2026年3月期決算短信・決算説明資料(2026年4月22日)、IR気象台(irweather.jp)、株探、The社史。