スナップショット
株価
5,395円
2026/8/20 時点
時価総額
約8.8兆円
2026/8/20 時点
PER(実績)
約57倍
実績EPS 94.9円ベース
PER(今期予想)
約27倍
修正後純利益3,260億円ベース
売上高
1兆1,824億円
2026年3月期(+20.7%)
営業利益率
16.0%
2026年3月期(営業1,887億円)
自己資本比率
57.8%
2026年3月期末
保有株数
―
ポートフォリオ未登録
事業ごと・国/エリアごとの売上高比率
セグメント別 売上高・利益(2026年3月期、単位:億円)
| セグメント | 売上高 | 構成比 | セグメント利益 | 利益率 | 前年比(売上) |
|---|---|---|---|---|---|
| 情報通信 | 6,530 | 55.2% | 1,527 | 23.4% | +44.7% |
| 自動車 | 1,794 | 15.2% | 68 | 3.8% | +1.3% |
| エレクトロニクス | 1,723 | 14.6% | 77 | 4.4% | ▲7.3% |
| エネルギー | 1,570 | 13.3% | 189 | 12.1% | +8.1% |
| 不動産 | 110 | 0.9% | 50 | 44.9% | +1.9% |
| 連結 | 11,824 | 100% | 1,887 | 16.0% | +20.7% |
セグメント合計と連結売上高は消去・その他の差により一致しません。出典:フジクラ 2026年3月期決算短信(2026年5月14日)。
地域別売上高(2024年度=2025年3月期)
収益構造の読み方
創業からの歴史
出典:フジクラ 個人投資家向け会社説明会資料(2026年2月11日、daiwair.webcdn.stream.ne.jp)、The社史「AI・データセンターへの集中と電線大手の再定義」(the-shashi.com)、日経ビジネス、週刊東洋経済。
ミッション・ビジョン・バリュー
出典:フジクラ 個人投資家向け会社説明会資料(2026年2月11日)、フジクラ公式サイト。
現経営者の特徴・過去の実績(レジリエンスの観点)
出典:フジクラ 個人投資家向け会社説明会資料(2026年2月11日)、日経ビジネス(business.nikkei.com)、週刊東洋経済、The社史。
直近決算の予想・ガイダンスに対する結果
2027年3月期 第1四半期(2026年4〜6月)実績と通期予想の修正
| 指標 | 実績・予想 | 前年同期比 | 評価 |
|---|---|---|---|
| 1Q 売上高 | 4,020億円 | +50.1% | 大幅増収 |
| 1Q 営業利益 | 1,048億円 | +155.1% | 2.6倍 |
| 1Q 経常利益 | 1,115億円 | +166.8% | 2.7倍 |
| 1Q 四半期純利益 | 804億円 | +156.8% | 2.6倍 |
| 通期 売上高予想(修正後) | 1兆7,550億円 | +48% | 期初1兆2,430億円から大幅上方修正 |
| 通期 営業利益予想(修正後) | 4,320億円 | 2.3倍 | 期初2,110億円から倍増 |
| 通期 経常利益予想(修正後) | 4,530億円 | ― | 3,160億円→4,530億円(+43.4%) |
| 通期 純利益予想(修正後) | 3,260億円 | 2.1倍 | 期初1,560億円から大幅増 |
| 参考:2026年3月期実績 | 売上1兆1,824億円/営業1,887億円/純1,571億円 | +20.7%/+39.2%/+72.5% | 5期連続最高益 |
出典:フジクラ 2027年3月期第1四半期決算短信(2026年8月7日、prtimes.jp)、日本経済新聞(nikkei.com)、ビジネス+IT(sbbit.jp)、2026年3月期決算短信。
売上高・利益の推移(直近10年間)
売上高(白)・営業利益(グレー)の推移(2017年3月期〜2026年3月期、単位:億円)
| 決算期 | 売上高 | 営業利益 | 営業利益率 | 純利益 |
|---|---|---|---|---|
| 2017年3月期 | 6,538 | 342 | 5.2% | 129 |
| 2018年3月期 | 7,401 | 343 | 4.6% | 184 |
| 2019年3月期 | 7,108 | 277 | 3.9% | 15 |
| 2020年3月期 | 6,723 | 33 | 0.5% | ▲385 |
| 2021年3月期 | 6,437 | 244 | 3.8% | ▲54 |
| 2022年3月期 | 6,704 | 383 | 5.7% | 391 |
| 2023年3月期 | 8,065 | 694 | 8.6% | 403 |
| 2024年3月期 | 7,998 | 695 | 8.7% | 510 |
| 2025年3月期 | 9,794 | 1,355 | 13.8% | 911 |
| 2026年3月期 | 11,824 | 1,887 | 16.0% | 1,571 |
売上高は10年間で1.81倍だが、営業利益は5.5倍、純利益は12.2倍。「規模の成長」ではなく「利益率の成長」が価値を作った10年であることが数字に出ている。営業利益率は2020年3月期の0.5%を底に、2026年3月期には16.0%まで回復した。税引前利益は開示区分の都合で経常利益ベース(2026年3月期1,995億円)で把握している。出典:フジクラ 個人投資家向け会社説明会資料(2026年2月11日)、各期決算短信。
純利益の推移(2017年3月期〜2026年3月期、単位:億円)
2020年3月期の▲385億円は同社史上最大級の赤字。この一年が「100日プラン」の起点になった。
PERの推移とバリュエーション
把握できている実績PER・PBRの定点(会社公表値・報道ベース)
| 時点 | 株価 | PER | PBR | 備考 |
|---|---|---|---|---|
| 2020年3月期 | ― | 算定不能 | ― | 純損失▲385億円のため |
| 2026年2月4日(終値) | 22,810円 | 47.68倍(予想) | 13.52倍 | 会社説明会資料の記載値 |
| 2026年5月19日(終値) | 4,695円 | 49.5倍(実績) | 13.9倍 | 実績EPS 94.9円・BPS 338.5円 |
| 2026年8月20日 | 5,395円 | 約57倍(実績)/約27倍(今期予想) | ― | 通期上方修正後の予想純利益3,260億円ベース |
株価の水準が2月と5月で大きく異なるのは株式分割の影響。1株当たり指標の比較には注意が必要です。10年分の連続したPER推移は本稿の調査範囲では信頼できるデータ系列を確認できなかったため、確度の高い定点のみを掲載しています。次回更新時に反映予定。
ROIC・WACC・ROEの推移
資本効率指標の推移(会社開示ベース)
| 決算期 | ROIC | ROE | 自己資本比率 | WACC(概算) | ROIC − WACC |
|---|---|---|---|---|---|
| 2021年3月期 | ― | ▲3.4% | 28.6% | 約7〜8% | 明確な価値毀損 |
| 2024年3月期 | 11.1% | 16.7% | 47.1% | 約8〜9% | +2〜3pt |
| 2025年3月期 | 19.0% | 24.4% | 49.1% | 約9〜10% | +9〜10pt |
| 2026年3月期 | 24.0%(実績試算24.6%) | 32.2%(実績試算32.5%) | 57.8% | 約10〜11% | +13〜14pt |
ROIC・ROE・自己資本比率は会社の中期経営計画進捗資料(2026年2月11日)記載値。2026年3月期の実績試算値は決算短信からの外部試算(実効税率30%、余剰現金10%と仮定)。WACCは当サイトによる概算で、リスクフリーレート約1.5〜1.8%、株式リスクプレミアム約6%、同社の高ベータ(1.3〜1.5程度)、有利子負債1,016億円に対し時価総額が数兆円規模で株主資本ウェイトがほぼ100%であることを前提に置いた粗い推計です。精緻な資本コストの算定は行っていません。2021年3月期のROICは開示範囲外。次回更新時に10年連続系列の整備を予定。
営業・投資・財務・フリーキャッシュフローの推移
キャッシュフローの推移(単位:億円)
| 決算期 | 営業CF | 投資CF | 財務CF | FCF | コメント |
|---|---|---|---|---|---|
| 2022年3月期 | 404 | +78 | ▲369 | 482 | 固定資産・子会社株式売却で投資CFがプラス(再生フェーズの資産圧縮) |
| 2023年3月期 | 581 | ▲97 | ▲339 | 484 | 設備投資は抑制、借入金返済を継続 |
| 2026年3月期 | 1,329 | ▲362 | ▲1,113 | 967 | 営業CFが3年で3.3倍。財務CFの大幅マイナスは配当・借入返済 |
2024年3月期・2025年3月期のCF内訳は本稿の調査範囲では一次資料を確認できなかったため掲載していません。数値の推測は行わず、次回更新時に有価証券報告書から補完する予定です。出典:フジクラ 2023年3月期決算短信(連結キャッシュ・フロー計算書)、2026年3月期決算短信。
直近の投資・M&A状況
選択と集中の変遷(会社資料より整理)
| 時期 | 転換(撤退・分社化) | 強化(投資・拡大) |
|---|---|---|
| 2020〜2021年度 (事業再生フェーズ) | フジクラコンポーネンツ社事業譲渡(21/5)、フジクラエンジニアリング社事業譲渡(21/7)、マレーシアFFC社清算、タイ・ナワナコン第2工場閉鎖、海外EPC事業撤退、光ケーブル英国スウィンドン工場閉鎖 | 成長分野である光ケーブルSWR®/WTC®へは投資を継続 |
| 2022年度〜 (持続的成長フェーズ) | FPC事業分社化(22/5)、送電・特殊電線事業分社化(22/10)、自動車事業のモルドバ・中国ウーフー工場での生産終了、自動車欧州事業再編、導体(銅電線)事業分社化(2024年) | 佐倉SWR®新工場建設決定(23/5)、MT/MMCフェルール増産投資、HDDアクチュエータ増産投資、メキシコ・ポーランドの光コンポーネント増産投資、カナダでのダークファイバプロバイダ事業に参画、DAS-Local5G事業拡大のため米国企業を買収、第一電子工業の吸収合併・分割(25/5)、佐倉 光ファイバ・SWR®新工場建設決定(25/8、450億円・2029年度稼働)、超電導線材の新工場建設決定(25/8) |
出典:フジクラ 個人投資家向け会社説明会資料(2026年2月11日)、日本経済新聞(2026年5月19日)、フジクラ 各四半期決算説明会質疑応答、The社史。
主要事業ごとの成長性
核心的事業領域の成長(2023年度→2025年度予想、単位:億円)
| 領域 | 2023年度 | 2025年度(予想) | 成長率 | ドライバー |
|---|---|---|---|---|
| 情報ストレージ(データセンター) | ― | ― | +160% | 生成AIによるDC投資拡大、光配線ソリューション需要の急拡大 |
| 情報インフラ | ― | ― | +20% | 米国・カナダにおける新規事業の寄与 |
| 情報端末 | ― | ― | 微減 | スマホ成長飽和・競争激化、ウェアラブル量産化の遅れ、自動車市場の変調 |
| 核心的事業領域 合計 | 6,414 | 9,720 | +51.5% | 情報ストレージが約4倍に拡大 |
領域別の内訳金額は会社資料でグラフのみの開示のため、成長率のみ掲載しています。出典:フジクラ 個人投資家向け会社説明会資料(2026年2月11日)。
競争優位性や業界内でのポジション
出典:週刊東洋経済 2025年2月15日号、フジクラ 決算説明会質疑応答(2025年5月13日・2025年8月7日)、deallab 光ファイバー業界の世界市場シェア分析、ニュースイッチ(日刊工業新聞社)。
SCP理論からの分析(市場動向・規制リスク・業界トレンド)
Structure(市場構造)
足元の最大の構造要因は供給制約である。生成AI向けデータセンター投資の急増に対し、光ファイバの母材からの生産能力増強には数年を要する(フジクラの佐倉次世代工場も2025年8月決定→2029年度稼働)。この時間差が、需要側の交渉力を弱め、供給側に価格決定力を与えている。売り手にとって歴史的に有利な局面と言える。
買い手側は米ハイパースケーラー数社への集中が進んでおり、買い手集中度は高い。通常なら買い叩かれる構造だが、供給が足りない現在は逆転している。この力関係が持続するかどうかが最大の変数。
Conduct(企業行動・規制リスク)
規制・政策リスクは両面ある。追い風としては、2025年10月の米国商務省との枠組み合意(AIインフラ強化分野の光ファイバケーブル供給者に選定、対象需要200億ドル)がある。これは日米の「戦略的投資に関する覚書」に基づくもので、政府間の枠組みが直接の商機になっている稀なケース。
一方で、①米国の通商政策・関税の変更、②対中規制の変化、③日米間の政治情勢の変化は、いずれも同社の北米51%依存という構造に直撃する。政策が商機を作っている以上、政策が商機を奪うこともあり得る。ホルムズ海峡封鎖等による物流停滞・原材料不足リスクは、会社の業績予想に未反映と明記されている。
Performance(業界トレンド・帰結)
ただしSCP分析の要点は、Structureが変われば Performanceは戻るという点にある。現在の高収益は供給制約に支えられており、業界全体で増産投資が進めば(フジクラ自身の3,000億円も含めて)2029年度前後に供給が追いつく可能性がある。半導体でも光ファイバでも、「作れば売れる」局面の後には必ず「作りすぎた」局面が来た。2020年に同社自身が経験したのがまさにそれである。
もう一つの帰結は業界内の順位変動である。「電線御三家の3番手」だった同社の時価総額は約8.8兆円に達し、住友電工・古河電工を大きく引き離した。密度と施工という土俵を選んだことが、規模の劣位を無効化した。ただしこの評価は「AIインフラ関連の代表銘柄」という市場の物語に支えられており、物語が変わればバリュエーションも変わる。
これらの分析結果をもとにした現在の投資妙味
※ 本記述は公開情報に基づく分析であり、特定銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
今後の注目ポイントやリスク要因
注目ポイント(カタリスト)
② 米国での新工場判断:会社は判断を留保中。踏み込めば需要の確度が高いというシグナル、見送れば慎重姿勢の継続。どちらに転んでも情報価値が高い。
③ SWR®/WTC®の心数競争:13,824心の次にどこまで密度を上げられるか。密度が差別化の源泉である以上、技術ロードマップの更新が競争優位の寿命を決める。
④ 通信エンジニアリング事業の拡大:ケーブル販売から施工まで請け負う領域が伸びれば、粗利率と顧客ロックインの両方が改善する。
⑤ 核融合・超電導:現時点で収益貢献はほぼゼロだが、CFS・京都フュージョニアリング・英国STEPへの供給実績が積み上がれば、次の物語になる。
⑥ エレクトロニクス事業の立て直し:利益率4.4%・利益▲66.5%の同事業に構造改革が入るか。分社化・売却の可能性も含めて注視。
リスク要因
② バリュエーションの高さ:実績PER約57倍・PBR13倍台・EV/EBITDA35.7倍。製造業として極めて高い水準で、成長鈍化に対する株価の感応度が非常に高い。決算内容が良くても売られる局面(2026年5月の決算後ストップ安)を既に経験している。
③ 増産投資の回収リスク:日米最大3,000億円。2020年の中国向け過剰投資で385億円の赤字を出した前例がある。需要のピークと供給能力の立ち上がりがずれた場合、同じ構図が再現し得る。
④ 北米51%依存:米国の通商政策・関税・対中規制の変更、為替の反転がいずれも直撃する。政策が商機を作っている構造は、政策が商機を奪う構造でもある。
⑤ 在庫・固定資産の積み上がり:棚卸資産+366億円、有形固定資産+255億円。需要が続く前提の先行投資であり、反転時には在庫調整と稼働率低下が同時に来る。
⑥ 供給制約の解消:業界全体の増産が2029年前後に効いてくれば、現在の価格決定力は失われる。SCPで言えばStructure自体の変化であり、最も本質的なリスク。
⑦ 原材料・物流:会社は「ホルムズ海峡封鎖による物流停滞、一部原材料不足リスクは業績予想に未反映」と明記している。
出典:フジクラ 2027年3月期第1四半期決算短信、2026年3月期決算短信、個人投資家向け会社説明会資料(2026年2月11日)、各四半期決算説明会質疑応答、日本経済新聞、The社史。