01 / OVERVIEW
スナップショット
時価総額
約101億円
2026/9 時点
PBR
3.75倍
PERは赤字のため算出不可
ARR成長率
約20%
SaaSストック型モデル
保有株数
―
未確認
02 / SEGMENT
事業ごと・国/エリアごとの売上高比率
事業セグメント(FY12/2024)
単一セグメント:建設DX SaaS事業。主力プロダクト「SPIDERPLUS」は建設現場の図面管理・施工記録・検査報告をタブレット1台で完結させるクラウドサービス。売上構成はサブスクリプション(月額課金)が中心で、ストック型の収益構造。導入企業は22,000社超、ユーザー数は78万人超に到達。
地域展開
現時点では国内100%。建設業は地域性が強い業界であり、海外展開は現段階では行っていない。ただし、日本の建設現場における2024年問題(時間外労働規制の厳格化)への対応ニーズが追い風となっており、国内市場でのペネトレーション余地は依然として大きい。
03 / HISTORY
創業からの歴史
1997年、伊藤謙自氏が建設現場向けの図面・写真管理を効率化するアイデアをもとに有限会社レグルス(現スパイダープラス株式会社)を設立。当初は建設関連のIT受託開発を手がけていたが、やがて建設現場での紙図面・手書き記録の非効率に着目し、iPadを活用した施工管理クラウドの自社プロダクト開発に舵を切った。
2011年にiPad向け施工管理アプリ「SPIDERPLUS」をリリース。スーパーゼネコンや大手サブコンを中心に導入が広がり、建設現場のDXツールとしてのポジションを確立していった。2021年3月に東証マザーズ(現グロース市場)へIPO。上場時の売上高は約22億円だったが、その後もARR(年間経常収益)ベースで年率20〜30%の高成長を持続し、2024年12月期の売上高は約41億円に到達。2024年問題(建設業の時間外労働規制厳格化)を追い風に、導入企業数は22,000社、ユーザー数は78万人を突破した。社名もプロダクト名に合わせ「スパイダープラス株式会社」に変更している。
04 / MISSION, VISION, VALUE
ミッション・ビジョン・バリュー
企業理念は「私たちは、'働く'にもっと「楽しい」を創造する。」。建設現場の長時間労働・紙文化・属人的な業務プロセスを、テクノロジーで変革し、現場で「働く人」が本来の仕事に集中できる環境をつくることを目指す。
この理念は事業戦略と高い整合性を持っている。建設業界は日本の労働人口のおよそ7%を占める巨大産業でありながら、DX化は他産業に比べて大きく遅れていた。同社はこの「レガシーな巨大市場をSaaSで変革する」という文脈に早くから参入した先行者であり、「楽しさ」という言葉の裏には、建設現場の業務負荷を具体的に削減するプロダクトの実効性が根拠として存在する。
05 / LEADERSHIP
現経営者の特徴・過去の実績(レジリエンスの観点)
創業者の伊藤謙自氏が代表取締役社長を務める。1997年の設立から約30年にわたりトップを務めており、受託開発からSaaS型ビジネスモデルへのピボット、そしてIPOまでを一貫して主導してきたオーナー経営者である。
レジリエンスの観点では、同社は上場以来一度も黒字化していないにもかかわらず、売上高を倍増以上に伸ばしながら事業を拡大し続けている点が特徴的である。SaaS企業にありがちな「成長のために赤字を許容する」フェーズにあるが、IPO時に調達した資金をベースに、営業・開発投資を拡大しつつもキャッシュポジションを維持する堅実な資金管理は行われている。建設業界という比較的保守的なBtoB市場で22,000社の導入実績を積み上げてきた営業力と市場開拓力は、同氏のリーダーシップに負う部分が大きい。
06 / LATEST EARNINGS
直近決算の予想・ガイダンスに対する結果
FY12/2024 通期実績(前期比)
| 指標 | 今期(FY12/2024)実績 | 前期比 | 評価 |
|---|---|---|---|
| 売上高 | 40.72億円 | +27.4% | 高成長持続 |
| 営業利益 | 赤字 | ― | 先行投資フェーズ継続 |
| 導入企業数 | 22,000社超 | 増加 | 順調に拡大 |
| ユーザー数 | 78万人超 | 増加 | ネットワーク効果拡大 |
FY12/2025(2025年12月期)の会社予想は売上高48.96億円(前期比+20.2%)。引き続き20%超の増収を計画しているが、営業利益は赤字見通し。ただし赤字幅は縮小傾向にあり、会社側はFY12/2026での営業黒字化を見込んでいるとされる。SaaS企業の評価軸としては、ARR成長率・チャーンレート(解約率)・NRR(売上維持率)が重要であり、同社はこれらの指標を総合的に堅調に維持している。
07 / REVENUE & PROFIT
売上高の推移(上場前後〜直近)
売上高の推移(FY12/2018〜FY12/2025予、億円)
出典:IRBANK(irbank.net/4192/results)。12月期決算。FY18の9.1億円から7年間で約5.4倍に成長。年平均成長率(CAGR)は約27%。営業利益は上場以来一貫して赤字であり、SaaS企業として顧客基盤拡大のための先行投資フェーズにある。FY26(2026年12月期)に初の営業黒字化が見込まれている。
08 / VALUATION
バリュエーションの推移
PER推移
上場以来、当期純利益が赤字のためPERは算出不可。代替指標としてPSR(株価売上高倍率)で評価すると、IPO直後のPSR約20倍から直近はPSR約2倍まで大幅に低下しており、グロース株としての期待プレミアムは剥落している。PBRは3.75倍(2026年9月時点)。黒字化が実現すればPER評価が可能になり、バリュエーション基準が大きく変わる転換点となる。
09 / CAPITAL RETURNS
ROIC・WACC・ROEの状況
ROE
赤字継続のためROEはマイナス。直近FY12/2024時点の自己資本比率は約56%で、財務の安定性は保たれている。IPO時に調達した約60億円の資金により、赤字を出しながらも純資産はプラスを維持。
ROIC・WACC
赤字企業のためROICもマイナス。WACCは推定8〜10%程度(β値が高いグロース株特性を反映)。黒字化後にROIC>WACCを達成するには、営業利益率10%以上への到達が目安になると試算される。
10 / CASH FLOW
キャッシュフローの推移
CF概況(直近期)
営業CFはマイナス(本業の赤字に連動)。投資CFは開発投資中心でマイナス。財務CFはIPO時の公募増資等でプラスを計上した実績あり。現金及び現金同等物は約30〜40億円を確保しており、当面の資金繰りリスクは限定的。ただし赤字が長期化すると追加の資金調達(増資)リスクが顕在化する点には注意。
11 / INVESTMENT & M&A
直近の投資・M&A状況
目立ったM&A実績はない。資本配分は自社プロダクト「SPIDERPLUS」の機能拡張(AI活用・図面の自動認識など)、営業体制の強化(営業人員の採用・教育)、カスタマーサクセス体制の構築に集中している。SaaS企業としては、外部買収よりもオーガニック成長を重視するアプローチであり、売上規模を考えるとこの戦略は妥当と評価できる。今後、建設DX領域での隣接プロダクト(積算・BIM連携・安全管理等)への進出にあたっては、技術系スタートアップの買収が選択肢に入る可能性がある。
12 / SEGMENT GROWTH
成長ドライバーと市場環境
成長ドライバー
①2024年問題(建設業の時間外労働上限規制)による省人化・効率化ニーズの急拡大 ②建設業DX市場は2030年までに数千億円規模への成長が見込まれる成長市場 ③既存顧客へのアップセル(追加機能・上位プラン)によるARPU向上
建設業のDX化率は依然として低水準にあり、特に中小規模の建設会社ではいまだ紙図面・手書き記録が主流である。同社の導入企業22,000社は国内建設業者全体(約50万社)の4%程度に過ぎず、TAM(到達可能市場)に対するペネトレーション率の低さが成長余地の大きさを示している。ただし、中小企業へのダウンマーケット展開では、単価の低下とサポートコストの上昇のバランスが課題になる。
13 / COMPETITIVE POSITION
競争優位性や業界内でのポジション
最大の競争優位性は、①建設現場向け施工管理SaaSにおける先行者優位と22,000社超の導入実績が生むスイッチングコスト、②現場の職人が実際に使えるUI/UXを長年磨き込んできた現場密着型の開発力、の2点にある。建設現場向けDXツールには、アンドパッド(ANDPAD)、フォトラクション(Photoruction)、PLANESTなど複数の競合が存在するが、SPIDERPLUSは特にサブコン(設備・電気工事等の専門工事業者)への浸透率が高く、図面管理を軸とした独自のポジションを築いている。
一方で、建設DX市場全体がまだ成長初期段階にあるため、競合との差別化は「機能の違い」よりも「導入実績と現場での運用ノウハウの蓄積」に依存している面が大きい。大手ゼネコンが自社開発ツールを展開するリスクや、Microsoftなどプラットフォーマーが建設業向けソリューションを本格展開するリスクは潜在的に存在する。
14 / SCP ANALYSIS
SCP理論からの分析(市場動向・規制リスク・業界トレンド)
Structure(市場構造)
建設DX SaaS市場は成長初期の分散的な競争構造。SPIDERPLUS・ANDPAD・Photoructionなど複数のスタートアップが並走するが、いまだ圧倒的なシェアを持つ企業は不在。顧客となる建設業者は約50万社と極めて多く、市場自体が寡占化しにくい構造を持つ。2024年問題という規制変更がDXの追い風となっている。
Conduct(企業行動)
同社はプロダクト開発と営業体制強化への集中投資という行動パターンを一貫して取っている。赤字を許容しながらも顧客基盤を拡大し、スイッチングコストを高めてLTV(顧客生涯価値)を最大化するSaaS型の成長戦略。価格競争よりも現場適合性による差別化を志向。
Performance(業界トレンド・帰結)
建設業界全体のDX化率はまだ低いが、政府の「建設DX推進」政策や2024年問題を契機に急速に市場が拡大しつつある。先行者が顧客基盤を固めた後にはネットワーク効果(元請・下請間のデータ連携)が働く可能性があり、市場成熟期にはシェア上位企業への収益集中が見込まれる。同社がそのポジションを取れるかが長期的な投資判断の核心。
15 / INVESTMENT THESIS
これらの分析結果をもとにした現在の投資妙味
スパイダープラスへの投資妙味は、①建設業DXという巨大TAMにおける先行者ポジション、②PSR約2倍まで低下したバリュエーション(グロースSaaSとしては割安圏)、③FY2026に迫る黒字化転換という触媒、の3点の組み合わせにある。時価総額101億円・売上高49億円に対し、TAM(建設DX市場)は数千億円規模であり、市場に対する同社の浸透率はまだ4%程度に過ぎない。
リスクとリターンのバランスでは、黒字化が実現すればPER評価に移行しバリュエーションの再評価余地が大きい一方、黒字化が遅延すれば株価の一段安と増資リスクが浮上する「二極的なシナリオ」の銘柄である。SaaS企業への投資に慣れた投資家で、建設DX市場の成長性と同社の市場ポジションに賭けるのであれば、黒字化前の現時点が割安なエントリーポイントとなりうる。
16 / WATCH POINTS & RISKS
今後の注目ポイントやリスク要因
注目ポイント
・FY12/2026での営業黒字化の達成可否(最大のカタリスト)
・ARR成長率が20%超を維持できるか
・大手ゼネコン・サブコンでの大型契約の獲得動向
・2024年問題に伴う建設DX需要の加速度合い
・AI機能(図面自動認識等)による差別化の進展
・ARR成長率が20%超を維持できるか
・大手ゼネコン・サブコンでの大型契約の獲得動向
・2024年問題に伴う建設DX需要の加速度合い
・AI機能(図面自動認識等)による差別化の進展
リスク要因
・黒字化の遅延と、それに伴う追加増資(希薄化)リスク
・ANDPAD等の競合との価格競争・シェア争い激化
・建設業界の景気変動(公共事業削減・民間投資減少)の影響
・大手プラットフォーマー(Microsoft等)の建設DX参入リスク
・創業者依存の経営体制(キーマンリスク)
・ANDPAD等の競合との価格競争・シェア争い激化
・建設業界の景気変動(公共事業削減・民間投資減少)の影響
・大手プラットフォーマー(Microsoft等)の建設DX参入リスク
・創業者依存の経営体制(キーマンリスク)