4004 東証プライム 化学・半導体材料

レゾナック・ホールディングス

旧昭和電工。日立化成(旧昭和電工マテリアルズ)との経営統合を経て、半導体後工程材料を中核とする総合化学メーカーへ再編中。18事業売却を掲げる高橋秀仁社長のもと、AI半導体向け成長投資と旧来事業の収益改善という二正面作戦の進捗をナラティブでまとめました。

01 / OVERVIEW

スナップショット

株価

13,910円

2026/7/17 終値

時価総額

約2.57兆円

2026/7/17 時点

PER(2026年12月期会社予想ベース)

約33倍

実績PER(2025年12月期)は減益影響で90倍近辺まで拡大

保有株数

100

ポートフォリオ登録数

出典:株探・Yahoo!ファイナンス(2026/7/17時点の株価・時価総額・発行済株式数)、レゾナック2025年12月期決算説明資料(2026/2/13)。株価は日々変動するため、最新値は証券会社アプリ等でご確認ください。

02 / SEGMENT

事業ごと・国/エリアごとの売上高比率

事業セグメント別 売上収益構成比(2025年12月期、新セグメント区分)

40%
24%
14%
14%
半導体・電子材料 40%(5,063億円) クラサスケミカル 24%(3,003億円) モビリティ 14%(1,784億円) ケミカル 14%(1,744億円) イノベーション材料他 7%(922億円)
2025年12月期より開示セグメントを再編(石油化学を独立の「クラサスケミカル」として切り出し、黒鉛電極とカーボン負極材を統合し「グラファイト」サブセグメント化)したため、旧区分(2024年12月期:半導体・電子材料2,155億円/イノベーション材料5,172億円等)との単純な前年比較はできない点に注意。半導体・電子材料が全社売上の4割を占め、後工程材料(パッケージング材料)がその中核。

地域別の収益構造

開示ベースで、日本が5,308億円と最大。次いでアジア(中国除く、台湾・韓国等の半導体サプライチェーンが中心)2,117億円、中国1,194億円、その他(米州・欧州含む)1,119億円という順。半導体・電子材料の主要顧客(TSMC・サムスン電子・SK Hynix等の後工程パッケージング拠点)が集積する東アジアへの依存度が高く、AI半導体の投資サイクルに地理的に連動しやすい収益構造になっている。

出典:レゾナック2025年12月期決算説明資料(resonac.com)、IRBANK(irbank.net/E00751/segment、irbank.net/E00751/region)。地域別内訳は開示区分の合計が連結売上収益の全体と厳密には一致しないため、詳細な内訳は次回更新時に有価証券報告書で再確認予定。

03 / HISTORY

創業からの歴史

起源は1939年6月1日、日本電気工業株式会社と昭和肥料株式会社の合併により発足した「昭和電工株式会社」に遡る。以来80年以上にわたり、石油化学・電子材料・アルミニウム・黒鉛電極(電炉用電極)など幅広い分野を手がける総合化学メーカーとして歩んできた。特に黒鉛電極事業は2017〜2018年に中国の環境規制強化による供給減少と価格急騰を追い風に過去最高益をたたき出し(2017年12月期営業利益778億円、前期比85%増)、同社の稼ぎ頭として一時代を築いた。
転機は2019年、日立製作所グループの総合電子材料メーカー日立化成へのTOBを実施し、約9,640億円で完全子会社化(後に「昭和電工マテリアルズ」へ改称)したことである。これにより半導体後工程材料・回路材料等の事業基盤を一気に獲得し、会社の規模はほぼ倍増した。しかしその直後、黒鉛電極市況が急落(中国メーカーの供給再増加・価格競争)し、コロナ禍も重なって2020〜2021年は営業赤字に転落するなど、大型買収の"消化不良"に苦しむ時期が続いた。
2023年1月1日、昭和電工と昭和電工マテリアルズ(旧日立化成)が完全に経営統合し、持株会社「レゾナック・ホールディングス」と事業会社「レゾナック」が発足。社名は英語のRESONATE(共鳴する)とCHEMISTRY(化学)を組み合わせた造語で、統合を「第2の創業」と位置づけた。2022年に社長に就任した髙橋秀仁氏のもとで、半導体・電子材料への集中と非中核事業の売却(2022〜2026年で計18事業)を矢継ぎ早に断行しており、旧来型の総合化学メーカーから「半導体材料の専業に近い企業」への大転換が現在進行形で進んでいる。
04 / MISSION, VISION, VALUE

ミッション・ビジョン・バリュー

レゾナックが掲げるパーパス(存在意義)は「化学の力で社会を変える」。2026年4月には「目指す姿」に「人々が幸せに暮らせる社会と美しい地球を次世代に手渡すために共創し」という一文を追加し、単なる企業成長にとどまらない社会的な意義づけを強めている。バリューとしては「プロフェッショナルとしての成果へのこだわり」「機敏さと柔軟性」「枠を超えるオープンマインド」「未来への先見性と高い倫理観」の4つを掲げ、2021年12月から全社的な浸透活動を開始し、2030年をゴールとする長期ビジョンの中で企業文化として定着させることを目指している。
事業戦略との整合性という観点では、「機敏さと柔軟性」「枠を超えるオープンマインド」というバリューが、非中核の18事業を短期間で売却し半導体材料へ経営資源を集中させるという大胆なポートフォリオ転換の実行力に直結している。旧昭和電工・旧日立化成という異なる企業文化を持つ組織を統合した経緯もあり、経営陣は「脱JTC(伝統的日本企業)」を明言のスローガンとして掲げ、子会社的な気風や年功序列的な意思決定プロセスの排除を進めている点も、理念と実際の組織運営が高いレベルで連動している例と言える。
05 / LEADERSHIP

現経営者の特徴・過去の実績(レジリエンスの観点)

代表取締役社長兼CEOの髙橋秀仁氏(1962年生、東京都出身)は、東京大学経済学部卒業後、三菱銀行(現・三菱UFJ銀行)に入行。その後、日本ゼネラル・エレクトリック、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパンなど外資系企業を渡り歩き、米コロンビア大学でMBAを取得するなど、いわゆる「生え抜き」ではない異色の経歴を持つ。2015年に昭和電工へ入社し、2020年には常務執行役員CSOとして日立化成の大型買収(約9,640億円)に深く関与、2022年1月に社長就任、2023年のレゾナック発足に伴い持株会社の社長兼CEOに就いた。
レジリエンスという観点で象徴的なのは、自らが主導した日立化成買収の直後に黒鉛電極市況の急落とコロナ禍が重なり、2020〜2021年に営業赤字へ転落した局面への対応である。買収を「失敗」と片付けるのではなく、2023年の完全統合・組織再編、そして就任以降の2022〜2026年で計18事業を売却するという迅速なポートフォリオ入れ替えを断行し、赤字体質からの脱却と半導体材料への集中を同時に進めた。「ここから5年は負ける気がしない」と公言するなど、大型M&Aの一時的な消化不良を認めた上で、迅速な構造改革で立て直す姿勢は、同社の意思決定における一貫したレジリエンスのパターンと言える。
06 / LATEST EARNINGS

直近決算の予想・ガイダンスに対する結果

2025年12月期 通期実績(前期比)

指標2025年12月期実績前期比評価
売上収益1兆3,471億円-3.2%半導体・電子材料以外の需要低迷が影響
コア営業利益1,091億円+18.4%半導体後工程材料の伸びが牽引
営業利益(IFRS)467億円-47.6%一過性費用等でコア利益との乖離大
親会社所有者帰属当期利益290億円-60.5%大幅減益

2026年12月期 会社予想と2026年1〜3月期(第1四半期)実績

指標2026年12月期会社予想(2026/2/13公表)前期比2026年1〜3月期実績前年同期比
売上収益1兆3,100億円-2.8%3,079億円-4.1%
コア営業利益1,400億円+28.3%336億円+126.4%
営業利益(IFRS)1,050億円+125.0%経常利益ベースで+80.7%
親会社所有者帰属当期利益770億円+165.2%153億円+74.6%
2025年12月期は、コア営業利益こそ半導体後工程材料の好調で+18.4%と伸びたものの、構造改革費用等の一過性項目を含む「営業利益」ベースでは前期比47.6%減、最終利益も60.5%減という厳しい実績に終わった。これを受け2026年12月期は、純利益が前期比2.7倍の770億円という高い増益率を会社側は見込んだが、この水準はQUICKコンセンサス(796億円)をやや下回っており、市場の期待値の高さがうかがえる。
その後発表された2026年1〜3月期(第1四半期)実績は好材料が続いた。半導体・電子材料セグメントは売上高1,347億円(+21%)、営業利益340億円(+74%)と大きく伸長し、なかでも後工程材料は売上高709億円(+38%)と四半期として過去最高を更新。AI向け先端半導体の実装(パッケージング)工程向け材料の数量拡大が主因である。この結果を受け、会社側は2026年12月期上期(1〜6月)業績予想を売上高6,150億円→6,600億円、営業利益350億円→570億円(+74.8%)、純利益200億円→380億円(+93.3%)へ上方修正しており、通期の会社予想(純利益770億円)に対しても上振れ余地があるとの見方が強まっている。
07 / REVENUE & PROFIT

売上高・税引前利益の推移(直近10年間)

売上高・営業利益(判明分、FY2017〜FY2026予想)

年度(12月期)売上高営業利益(率)メモ
FY20177,804億円778億円(10.0%)黒鉛電極市況高騰で当時の最高益
FY2018約9,000億円1,100億円超(12%程度)黒鉛電極ブーム継続、会社予想ベース
FY2019非開示(次回更新時に反映)黒字(率10.37%)日立化成の子会社化で規模拡大開始
FY2020非開示営業赤字黒鉛電極市況急落+コロナ禍
FY2021非開示営業赤字市況低迷継続
FY2022非開示黒字(率1.55%)黒字転換も低水準
FY2023非開示営業赤字レゾナック発足初年度、統合・構造改革費用
FY20241兆3,915億円黒字(率3.38%)半導体後工程材料が回復基調
FY20251兆3,471億円(-3.2%)467億円(3.47%、-47.6%)コア営業利益は+18.4%と対照的
FY2026(会社予想)1兆3,100億円(-2.8%)1,050億円(8.0%、+125.0%)半導体材料の伸びとグラファイト黒字化
IRBANKによれば、2015年12月期から2025年12月期にかけて売上高は約1.7倍(10年平均成長率5.67%)に拡大した。ただし年度ごとの振れ幅は極めて大きい。2017〜2018年は中国の環境規制強化に伴う黒鉛電極市況の急騰で当時の過去最高益を記録したが、2019年の日立化成買収(約9,640億円)で会社の規模がほぼ倍増した直後に黒鉛電極市況が急落、コロナ禍も重なり2020〜2021年は営業赤字に転落した。2023年のレゾナック発足(完全統合)に伴う一過性費用でも再び赤字化するなど、単純な右肩上がりの成長企業ではなく「大型買収・市況変動・組織再編」を繰り返しながら規模と事業構成を作り変えてきた企業である点を踏まえて数値を読む必要がある。

出典:ログミーファイナンス(2017年12月期決算)、IRBANK(irbank.net/4004/pl、10年成長率)、レゾナック決算説明資料(2025・2026年12月期)。FY2019〜FY2023の売上高絶対値は各社サイトで開示形式が異なり当サイトで確定できていないため、次回更新時に確認の上で反映する。

08 / VALUATION

PERの推移(直近10年間)

PER(各年末実績、FY2020・FY2021・FY2023は営業赤字によりN/M)

19.4倍 FY16 18.4倍 FY17 4.3倍 FY18 5.8倍 FY19 N/A FY20 N/A FY21 11.3倍 FY22 N/A FY23 9.9倍 FY24 40.7倍 FY25

出典:IRBANK(irbank.net/4004/per、各年末終値ベース)。FY2020・FY2021・FY2023は営業赤字のためPER算出不能(N/M)。黒鉛電極ブーム期のFY16〜FY17は10倍台後半で評価されていたが、日立化成統合の消化不良期(FY18〜FY21)は低PER〜赤字が続いた。FY2025の40.7倍は前期比60.5%の当期利益急減を分母にしているための一時的な急騰で、会社予想の当期利益(770億円)ベースの予想PERは約33倍。半導体材料株としての成長期待からFY22以降のPER水準が切り上がっている。

出典:株探・Yahoo!ファイナンス(2026/7/17時点株価・時価総額)、レゾナック決算説明資料。

09 / CAPITAL RETURNS

ROIC・WACC・ROEの推移(直近10年間)

ROE(自己資本利益率、10年推移)

4.2% FY16 10.6% FY17 25.0% FY18 14.6% FY19 N/A FY20 N/A FY21 5.9% FY22 N/A FY23 8.5% FY24 4.2% FY25

出典:IRBANK(irbank.net/4004/pl)。FY2020・FY2021・FY2023は営業赤字のためROE算出不能(N/M)。日立化成統合直後のFY18に25%まで急伸したがこれは分母(自己資本)がまだ小さかった一時的な高水準で、その後は消化不良期の赤字と統合関連費用で低迷。東証プライムが目安とする資本コスト経営の水準(ROE8%程度)に安定的に届いていない状態が続いており、自己資本比率は31.8%(前年から2.1pt改善)。

ROIC・WACC(概算試算)

ROIC(FY25概算)
約2%
WACC(概算)
7〜8%
0%15%

投下資本(自己資本6,989億円+有利子負債9,466億円=1兆6,455億円)に対し、税引後営業利益(営業利益467億円×(1-30%)≒327億円)を用いた概算。無リスク金利(日本10年債利回り約2.8%)+β1.1〜1.3程度×ERP5〜6%で概算したWACC(7〜8%)をROICが下回っており、FY25時点では資本コストに見合う価値創出ができていない可能性が高い。FY26会社予想の営業利益(1,050億円)ベースで再試算するとROICは4%台まで改善する見込みで、半導体材料への集中が進むほどROIC−WACCスプレッドの改善余地があると考えられる。公式開示のない当サイト独自の概算試算である点に留意。

出典:レゾナック2025年12月期決算説明資料(自己資本比率・有利子負債・ROE等)。ROIC・WACCの10年推移データは未整備のため、次回更新時に反映予定。

10 / CASH FLOW

営業・投資・財務・フリーキャッシュフローの推移(直近10年間)

営業・投資・財務・フリーCF(8年推移、億円/FY2020は買収特殊要因のためグラフ外)

FY17 FY18 FY19 FY21 FY22 FY23 FY24 FY25 営業CF 投資CF 財務CF フリーCF
(億円)FY17FY18FY19FY20*FY21FY22FY23FY24FY25
営業CF672.81,497.8785.51,092.91,152.81,003.51,186.91,636.51,302.9
投資CF-299.1-493.4-481.6-9,300.5+286.1-546.7-618.7-523.1-871.2
財務CF-183.7-610.6-185.5+8,965.2-1,217.4-1,039.6-628.8-204.7-698.9
フリーCF373.71,004.5304.0-8,207.61,438.9456.8568.21,113.5431.6
設備投資-388.7-412.7-502.2-690.5-786.5-1,070.7-966.3-883.1-1,067.3

*FY2020(2020年12月期)は日立化成買収(約9,640億円)の資金決済に伴い、投資CF・財務CFが一時的に桁違いの規模へ振れた特殊年度のため、上のグラフでは可読性を優先し表示対象から除外し、この表でのみ開示している。それ以外の年度では、営業CFが概ね700億〜1,650億円のレンジで安定的に生成されており、フリーCFも大半の年度でプラスを確保。2026年12月期は半導体・電子材料の増産に向けて837億円規模の「記録的」設備投資を計画しており、この投資を吸収してなおフリーCFを維持できるかが今後の焦点になる。

出典:IRBANK(irbank.net/E00751/cf)。

11 / INVESTMENT & M&A

直近の投資・M&A状況

最大のM&Aは2019年の日立化成へのTOB(約9,640億円で完全子会社化)だが、直近の資本配分の主軸はむしろ逆方向、すなわち「非中核事業の売却」にある。髙橋秀仁社長は2022年の就任以降、2026年までの5年間で計18事業を売却する方針を掲げており、これは日本企業としては異例のスピードとされる。半導体・電子材料に集中する一方、シナジーの薄い事業(伝統的化学品・特殊機能品の一部等)を継続的に切り離すという「選択と集中」を徹底している。
成長投資の面では、2026年12月期に半導体・電子材料の生産能力増強のため837億円規模の「記録的」設備投資を計画していると報じられている。後工程(パッケージング)材料は世界シェア上位を握る製品群が多く、AI半導体向けの実装工程で使用される材料の需要が数量・単価の両面で伸びていることが、大型投資の裏付けになっている。資本配分の方向性は明確で、「非中核事業の現金化」と「半導体材料への再投資」を両輪とするポートフォリオ転換が今後数年の中心テーマとなる。
12 / SEGMENT GROWTH

主要事業ごとの成長性

半導体・電子材料セグメントの伸び(2026年1〜3月期、前年同期比)

+21% 半導体・電子材料 売上高 +74% 半導体・電子材料 営業利益 +38% 後工程材料(四半期最高) -4.1% 全社売上高

出典:レゾナック2026年12月期第1四半期決算説明資料。全社売上高は非成長セグメント(モビリティ・グラファイト等)の需要低迷でマイナスとなる一方、半導体・電子材料は大幅増収増益。

最も成長性が高いのは半導体・電子材料、なかでも後工程(パッケージング)材料である。AI向け先端半導体の高性能化に伴い、チップを積層・実装する後工程での材料使用量・要求精度が上昇しており、レゾナックが世界シェア上位を持つ銅張積層板・感光性絶縁材料・ダイボンディングフィルム・CMPスラリー等の需要が数量・単価の両面で伸びている。会社は半導体・電子材料の売上構成比を2030年度までに5割へ引き上げる目標を掲げており、現在の4割からの上積みが今後数年の成長ドライバーになる。
一方、モビリティ・ケミカル・クラサスケミカル(旧石油化学)・グラファイト(黒鉛電極)といった非中核・成熟事業は、需要の循環性や中国メーカーとの価格競争にさらされやすく、成長ドライバーというより「売却対象またはキャッシュ創出源」としての位置づけに変わりつつある。グラファイト事業はかつての主力事業だったが、現在は「安定収益事業」に再分類され、半導体・電子材料という「コア成長事業」を支える収益源という役割分担が明確になっている。
13 / COMPETITIVE POSITION

競争優位性や業界内でのポジション

最大の競争優位性は、半導体後工程材料という領域で「グローバル・ニッチトップ」の製品群を多数抱えている点にある。後工程で使われる主要材料10〜15品目のうち7〜8品目でレゾナックは世界シェア1位または2位を握っており、銅張積層板・感光性絶縁材料・ドライフィルムレジスト・ダイボンディングフィルム・CMPスラリー(STI用)などで首位級の地位を持つ。前工程(シリコンウエハ等)で世界的な強さを持つ信越化学工業とは棲み分けが成立しており、日本の半導体材料産業全体が「特定材料でほぼ独占」というオンリーワン企業がひしめく構造の中で、レゾナックは後工程領域の代表格というポジションにある。
業界内での立ち位置としては、五大総合化学メーカー(三菱ケミカル・住友化学等)と同列に語られることが多いが、非中核事業の売却を通じて「総合化学メーカー」から「半導体材料の専業に近い企業」へと自らポジションを変えつつある点が特異である。この転換が完了すれば、信越化学工業と並ぶ「日本発・半導体材料のグローバルプレイヤー」としての評価を得る可能性がある一方、転換途上の現段階では、旧来型の化学品事業(低収益・高シクリカル)を抱えたままの評価にとどまりやすい、過渡期特有のポジションにある。
14 / SCP ANALYSIS

SCP理論からの分析(市場動向・規制リスク・業界トレンド)

Structure(市場構造)

半導体材料業界は製品カテゴリーごとに数社の寡占構造が成立しており、日本企業が世界シェア上位を占める品目が多い「ニッチトップの集合体」という特徴がある。後工程材料ではレゾナックが主要品目の大半でシェア上位を握る一方、伝統的化学品(石油化学・特殊化学品等)は中国メーカーの供給拡大により価格競争が激化し、構造的な低収益化が進んでいる。同社が"稼ぐ市場"と"縮む市場"の両方に同時に属している点が構造上の特徴である。

Conduct(企業行動)

2022年以降、非中核事業を計18件売却するという迅速なポートフォリオ再編を進める一方、半導体材料には837億円規模の記録的設備投資を実行するなど、資本配分にメリハリをつける行動様式が明確である。「脱JTC」を掲げた企業文化改革(子会社的気風・年功序列の排除)も進めており、伝統的な総合化学メーカーとしては異例のスピード感を持つ経営行動が続いている。

Performance(業界トレンド・帰結・規制リスク)

AI半導体投資サイクルが続く限り、後工程材料への需要は追い風を受けやすい。一方で、①AI関連設備投資サイクルが反動減局面に入った場合の需要急減リスク、②中国メーカーの技術キャッチアップによる汎用品市況の一段の悪化、③半導体材料は経済安全保障上の輸出管理・規制強化の対象になりやすいこと、④18事業売却の完了時期・条件が計画通りに進むかという実行リスクが、収益性のボラティリティを左右する構造的要因になっている。ROICがWACCを下回る現状から脱却できるかは、この事業構造転換の完遂度合いにかかっている。
15 / INVESTMENT THESIS

これらの分析結果をもとにした現在の投資妙味

レゾナックへの投資妙味は、「旧来型の総合化学メーカーが、世界シェア上位の半導体後工程材料を軸にした専業企業へ生まれ変わる過程」に、変身がまだ道半ばの段階で投資できる点にある。半導体・電子材料セグメントは前年同期比21%増収・74%増益、後工程材料は38%増収で四半期最高を更新するなど、AI半導体の実装工程向け材料としての成長は既に数字で確認できている。会社は同セグメントの売上構成比を2030年度に5割へ引き上げる目標を掲げており、目標達成に向けた進捗次第では収益構造そのものが底上げされる余地がある。
一方で、現時点のROIC(概算2%程度)はWACC(概算7〜8%)を明確に下回っており、全社的にはまだ「資本コストに見合わない」状態にとどまる。2026年12月期の会社予想(純利益770億円、前期比2.7倍)もアナリスト予想平均をやや下回る水準であり、市場は既にかなりの回復を織り込んだ上でなお強気に評価している(会社予想PERで約33倍)。18事業売却の完了とグラファイト等の非中核事業の収益改善が計画通り進み、半導体材料の増益ペースが続けば評価の正当化余地は大きいが、逆に半導体投資サイクルの反動や事業売却の遅延があれば、割高感が意識されやすい局面にあるとも言える。
16 / WATCH POINTS & RISKS

今後の注目ポイントやリスク要因

注目ポイント

・半導体・電子材料の売上構成比50%(2030年度目標)に向けた進捗
・後工程材料(AI向け先端半導体実装用)の四半期ごとの伸び率
・837億円規模の記録的設備投資(2026年)の稼働時期と投資回収ペース
・残る非中核事業(計18事業のうち未売却分)の売却進捗と条件
・2026年12月期通期実績が会社予想(純利益770億円)・コンセンサス(796億円)を上回れるか
・ROIC−WACCスプレッドのプラス転換時期

リスク要因

・AI関連半導体設備投資サイクルの反動減リスク
・モビリティ・クラサスケミカル・グラファイト等、非中核事業の構造的な低収益性の解消遅延
・中国メーカーの技術キャッチアップによる汎用化学品・炭素製品での価格競争激化
・半導体材料に対する経済安全保障上の輸出管理・規制強化リスク
・有利子負債9,466億円という財務レバレッジと格付けへの影響
・18事業売却の実行スピード鈍化・売却条件の悪化
・2023年統合以降の企業文化改革(脱JTC)の定着度合いと人材流出リスク