002594 深セン証券取引所 自動車・EV・電池

BYD(比亜迪)

世界最大のNEV(新エネルギー車)メーカー。2025年に売上高8,000億元を突破した一方、純利益は19%減。「国内の消耗戦」と「海外の急拡大」がひとつの決算書のなかで真っ向からぶつかっている会社を、10年の数字で解剖する。

01 / OVERVIEW

スナップショット

株価

約13.2ドル

2026年8月時点・米ドル換算。過去1年で▲12.0%

時価総額

約1,203億ドル

世界企業ランキング193位(2026年8月)

PER(TTM実績)

26.8倍

2025年末は27.9倍/2024年末は10.3倍

保有株数

未確認

2025年12月期 売上高

8,039.7億元

前期比+3.46%。初の8,000億元超え

2025年12月期 純利益

326.2億元

前期比▲18.97%。市場予想356.5億元に未達

2025年 NEV販売台数

460.2万台

+7.7%。うち海外104.6万台(+約140%)

売上総利益率

17.74%

2024年の19.44%から1.7pt低下

出典:BYD 2025年12月期年次報告(2026年3月27日発表、CnEVPost報道)、CompaniesMarketCap(時価総額・株価・PER、2026年8月時点)。株価・時価総額・PERは日々変動するため、売買判断の際は必ず証券会社アプリ等で最新値をご確認ください。深セン上場A株のほか、香港市場(1211.HK)にも上場しています。

02 / SEGMENT

事業ごと・国/エリアごとの売上高比率

事業セグメント別 売上構成比(2025年12月期、総額8,039.7億元)

自動車・自動車関連製品 6,486.5億元(80.68%) 携帯電話部品・組立 1,552.4億元(19.31%) その他 約0.8億元(0.01%) 自動車:前期比+5.06% 携帯部品:前期比▲2.74% ※電池・半導体は自動車セグメントに内包され外部開示は限定的

国内 / 海外 売上構成比(2025年12月期)

中国国内 約4,932億元(61.35%) 粗利率16.7% 海外 3,107.4億元(38.65%) 粗利率19.5% 海外売上は前期比+40.1%。構成比は2024年28.55%→2025年38.65%へ10pt上昇 海外の粗利率が国内を2.8pt上回る=「稼ぐ場所」が国外に移りつつある 2025年の輸出台数は104.6万台(前年比約2.4倍)で初の100万台超え

この会社の売上は、実質的に2本柱しかない。2025年12月期の総売上8,039.7億元のうち、自動車・自動車関連が6,486.5億元(80.68%、前期比+5.06%)携帯電話部品・組立が1,552.4億元(19.31%、前期比▲2.74%)。両者でほぼ100%を占める。「EVの会社」というイメージが強いが、売上の5分の1はアップルなどを顧客とするスマートフォンの受託製造(比亜迪電子)である点は押さえておきたい。

電池・半導体は独立セグメントとして開示されない。BYDはリン酸鉄リチウム(LFP)系の「ブレードバッテリー」を自社生産し、2026年7月の中国国内動力電池シェアは19.23%で第2位(1位CATL 42.33%)。IGBT・SiCなどのパワー半導体も内製している。ただしこれらは大半が社内向けで、決算上は自動車セグメントに吸収されている。「垂直統合が強みだ」と語られる一方、その強みが数字として外から検証できない——これはBYDを分析する上での構造的な情報制約である。

いま最も重要な変化は地域構成にある。海外売上は3,107.4億元(前期比+40.1%)に達し、構成比は2024年の28.55%から2025年38.65%へ、1年で10pt上昇した。全体の売上成長率が+3.46%しかないなかで海外が+40%——つまり国内はマイナス成長だったということである。

そして海外のほうが儲かっている。2025年の粗利率は海外19.5%に対して国内16.7%。差は2.8pt。中国国内が値下げ合戦(価格戦)で利益を削り合っているのに対し、欧州・南米・東南アジアではブランドプレミアムを乗せられている。BYDの損益計算書はいま「国内で稼いだシェアを、海外で現金化する」構造へ移行しつつあると読める。逆に言えば、この海外シフトが関税や現地規制で止まった瞬間、利益の源泉が消える。

出典:BYD 2025年年次報告(CnEVPost 2026年3月27日)、海外売上・粗利率はBigGo Financeの年次報告集計、動力電池シェアはCnEVPost(2026年7月分、8月18日)。構成比は当サイトが金額から算出。

03 / HISTORY

創業からの歴史

1995年・深センの電池工場から始まった。創業者・王伝福(ワン・チュアンフー)は、中国政府系の研究機関で電池研究に従事していた技術者だった。1995年、いとこの呂向陽から資金を借り、20名ほどでニッケルカドミウム電池の製造会社「比亜迪」を深センに設立する。日本メーカーが億単位の自動化ラインで作っていた電池を、人海戦術+治具の工夫で桁違いに安く作るという手法で価格破壊を起こし、2000年代前半にはモトローラ・ノキアの携帯電池サプライヤーへと成長した。

2003年・自動車への飛躍(と株価暴落)。BYDは経営難に陥っていた国有の秦川汽車を買収し、突如として自動車産業に参入する。電池メーカーが車を作ると発表した直後、香港市場の株価は数日で3割以上下落した。だが王伝福は「電気自動車の時代が来る。そのとき電池を持っている者が勝つ」という一点で押し切った。この判断が正しかったと市場が認めるまでには、その後20年近くを要した。

2008年・バフェットとマンガーの投資。チャーリー・マンガーの推薦により、バークシャー・ハサウェイのエネルギー部門が2億3,000万ドルで2億2,500万株(約10%)を取得。この一報は世界にBYDの名を知らしめた。ただし2010年代のBYDは決して順風満帆ではなく、純利益は2016年の50.5億元から2019年の16.1億元へ3年で3分の1に落ち込んでいる。補助金政策の変更に翻弄され、「補助金企業」と揶揄された時期である。

2020年・ブレードバッテリーという転換点。LFP(リン酸鉄リチウム)をセルごと長い板状にしてパックに直接組み込む「ブレードバッテリー」を発表。エネルギー密度で不利だったLFPを、パック効率と安全性・コストで巻き返す設計思想だった。これが以後のBYD車のコスト競争力の土台となる。2022年3月にはガソリン専用車の生産を完全に停止し、世界の大手完成車メーカーで初めて内燃機関から全面撤退した。

2022〜2024年・爆発的成長期。NEV販売台数は2020年18.9万台 → 2021年60.4万台 → 2022年186.3万台 → 2023年302.4万台 → 2024年427.2万台。売上高は2021年2,161億元から2024年7,771億元へ3年で3.6倍、純利益は30.5億元から402.5億元へ13倍になった。2023年第4四半期には四半期BEV販売台数でテスラを上回り、世界一のEVメーカーとなった。

2025年・成長エンジンの入れ替わり。販売は460.2万台(+7.7%)と当初目標を下方修正したうえでの着地。売上は+3.46%にとどまり、純利益は19%減の326.2億元と、2019年以来6年ぶりの減益となった。一方で海外輸出は104.6万台と初の100万台超え(前年比約2.4倍)。従業員数は96.89万人から約87万人へ約10万人の削減を実施している。2025年9月にはバークシャー・ハサウェイが保有株をすべて売却し、17年におよぶ投資関係が終了した。創業から30年、BYDは「中国で急成長する会社」から「中国では守り、海外で攻める会社」へと性格を変えつつある。

出典:BYD 2025年年次報告および各年次報告(CnEVPost集計の年別NEV販売台数を含む)、CompaniesMarketCap(売上高履歴)、バークシャー撤退はCNBC(2025年9月21日)。従業員数は年次報告ベース。

04 / MISSION, VISION, VALUE

ミッション・ビジョン・バリュー

公式スローガンは「Build Your Dreams(夢を築く)」。社名BYDの由来として同社が公式に掲げている言葉である。ただし社内的には、より具体的な理念として「技術為王、創新為本(技術こそ王であり、イノベーションこそ本質である)」が繰り返し語られてきた。王伝福自身が技術者出身であり、この標語は単なる飾りではなく資源配分の原則として機能している。

環境ビジョンは「地球温度を1℃下げる(用技術創新,満足人們対美好生活的向往/Cool the Earth by 1℃)」。太陽光発電・蓄電池・電動車・都市モノレール(雲軌)を組み合わせた「ゼロエミッション・エネルギー・エコシステム」を提唱しており、自動車専業ではなくエネルギー企業として自らを定義している点が特徴的である。

理念が数字に表れている唯一の項目がR&D費である。2025年の研究開発費は634億元(前期比+17%)。同年の純利益326.2億元の約1.95倍にあたる。つまりBYDは「稼いだ利益の倍を研究に突っ込んでいる」会社だ。減益局面でもR&Dを増やしたという事実は、経営者の優先順位を何より雄弁に語る。

ただし投資家として冷静に見るべき点もある。R&D費の高さは技術志向の証明であると同時に、「利益が出ていないのではなく、利益を出さない選択をしている」状態でもある。競争が緩めば利益は跳ね返るが、競争が続く限りこの支出は止められない。理念を評価するときは「その理念が撤退不能なコスト構造を作っていないか」を必ずセットで確認したい。

出典:BYD公式サイト(bydglobal.com)掲載のブランドステートメント、BYD 2025年年次報告(R&D費634億元、+17%)。R&D/純利益倍率は当サイト算出。

05 / LEADERSHIP

現経営者の特徴・過去の実績(レジリエンスの観点)

王伝福(ワン・チュアンフー)・会長兼社長(1966年生、1995年創業)。安徽省の貧しい農家に生まれ、両親を早くに亡くしながら中南工業大学で冶金物理化学を専攻、北京有色金属研究総院で修士号を取得。国立研究機関で電池研究に従事したのち、29歳で起業した。創業から31年、一貫してトップに立ち続けている創業経営者である。エンジニア出身で、いまも技術レビューに自ら入るとされる。

危機対応の実績①:2003年の自動車参入。秦川汽車の買収を発表した際、投資家は激怒し株価は急落した。「電池屋が車を作れるわけがない」という当時の常識に、王伝福は「車は鉄の塊だ。作れない理由がない」と応じたと伝えられる。市場の反対を押し切って20年後に正解になったという点で、この人物のリスク許容度は極めて高い。

危機対応の実績②:2016〜2019年の利益消失。中国政府のNEV補助金削減により、純利益は50.5億元(2016年)→16.1億元(2019年)へ約3分の1まで縮小した。この局面でBYDは撤退せず、むしろブレードバッテリーの開発と車載半導体の内製化に資源を投下し続けた。その成果が2021年以降の爆発的成長を生んだ。「業界が最も悲観的なときに投資を積み増す」——これがこの経営者の一貫したパターンである。

そして2025〜2026年、3度目の逆風が来ている。国内の価格戦で減益、Q1 2026は純利益▲55%。王伝福自身が「中国のNEV業界は淘汰の段階(knockout stage)に入る」と警告している。同時に会社は約10万人の人員削減という創業以来初の大規模リストラを実行し、海外3拠点(ハンガリー・ブラジル・トルコ)の新工場を立ち上げつつある。過去2回と同じく「守りながら攻める」構えだが、過去2回と違うのは、今回は会社の規模が大きすぎて機動力が落ちている点だ。

レジリエンス評価。逆境に対する耐性は3度の実証があり、経営者リスクとしては低い部類に入る。一方でガバナンス面の集中リスクは高い——創業者が会長・社長を兼務し、31年間トップを続けている企業では、後継者計画が最大の未開示リスクとなる。王伝福は1966年生まれで現在60歳。承継の道筋がまだ市場に示されていないことは、長期保有を検討するうえで無視できない論点である。

出典:BYD公式サイト経営陣紹介、BYD 2025年年次報告における経営者コメント(CnEVPost報道)、Wikipedia(Wang Chuanfu/BYD Auto)、人員削減は年次報告の従業員数(96.89万人→約87万人)。

06 / LATEST EARNINGS

直近決算の予想・ガイダンスに対する結果

2026年第1四半期(2026年4月28日発表)

売上高 1,502.3億元(前年同期比▲11.82%)/親会社株主帰属純利益 40.8億元(▲55.38%)/売上総利益率 18.8%(前年同期比▲1.3pt、前四半期比+1.4pt)/R&D費 113億元/営業活動キャッシュフロー 27.9億元(▲67.48%)。

減益要因は①中国国内の価格戦による単価下落、②R&D費の高止まり、③為替差損。粗利率が前四半期比では改善(+1.4pt)している点は、海外比率の上昇が効き始めた兆候と読める。

2025年12月期 通期実績 vs 市場予想

項目実績市場予想判定
売上高8,039.7億元(+3.46%)8,362.6億元未達
純利益326.2億元(▲18.97%)356.5億元未達
NEV販売台数460.2万台(+7.73%)460万台(下方修正後目標)達成
海外販売台数104.6万台(約2.4倍)100万台超過達成
期末配当は1株あたり0.358元(年間ベースで前年から大幅減配)。

2025年通期は、売上・利益ともに市場予想に届かなかった。売上8,039.7億元は予想8,362.6億元に対して▲3.9%、純利益326.2億元は予想356.5億元に対して▲8.5%。「販売台数目標は(下方修正後の水準を)達成したが、金額では届かなかった」——これは1台あたり単価と利益率が想定以上に削られたことを意味する。

マージン圧縮の正体は、値引きではなく製品ミックスである。会社は粗利率低下(19.44%→17.74%)の主因を「製品構成の変化」と説明した。国内では低価格帯モデルの比重が上がり、高価格帯(騰勢・仰望・方程豹)が伸び悩んだ。中国自動車産業は「淘汰段階」に入り、多くのメーカーがシェア維持のために利益率を犠牲にしている——BYDも例外ではないという素直な自己申告である。

Q1 2026はさらに厳しく、純利益は▲55.38%。ただしこの数字はやや割り引いて見る必要がある。第1四半期は春節を含む中国自動車の伝統的な閑散期であり、前年同期(2025年1Q)は新型「智駕版」投入による特需で異常に強かった。営業CFが▲67%と落ち込んだ点のほうが、実は重要度が高い。

投資家として置いておくべき留保。2四半期連続で市場予想を下回ったという事実は、コンセンサス形成の前提(=BYDは常に上振れる)が崩れたことを意味する。②配当が大幅に減額された(0.358元/株)。③一方で海外は台数・金額とも計画を超過しており、「悪い決算」ではなく「国内が悪く海外が良い決算」である。この二極化がいつまで続くかが焦点となる。

出典:BYD 2025年12月期年次報告(2026年3月27日、CnEVPost/市場予想はBloomberg調査)、BYD 2026年第1四半期報告(2026年4月28日、CnEVPost)。

07 / REVENUE & PROFIT

売上高・利益の推移(直近10年間)

売上高(白)と親会社株主帰属純利益(緑=増益/赤=減益) 2016〜2025年12月期

16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 売上高(最大8,039.7億元=175px) 純利益(最大402.5億元=175px・別スケール) ※2本の棒は縦軸スケールが異なります

売上高(億元):2016年 1,034.7 → 2017年 1,059.1 → 2018年 1,300.5 → 2019年 1,277.4 → 2020年 1,566.0 → 2021年 2,161.4 → 2022年 4,240.6 → 2023年 6,023.2 → 2024年 7,771.0 → 2025年 8,039.7。10年CAGRは約22.8%。ただし内訳を見ると2021→2024の3年で3.6倍、2024→2025は+3.5%。成長は明確に「終わった」のではなく「踊り場に入った」段階である。

親会社株主帰属純利益(億元):2016年 50.5 → 2017年 40.7 → 2018年 27.8 → 2019年 16.1 → 2020年 42.3 → 2021年 30.5 → 2022年 166.2 → 2023年 300.4 → 2024年 402.5 → 2025年 326.2。10年間で3度も減益局面がある(2017-19、2021、2025)ことがこのグラフの本質だ。

グラフが語る最大の事実——BYDの利益は極めて振れやすい。2016〜2019年は売上が増えているのに利益が3分の1に縮んだ。2021年も売上+38%で利益は▲28%。そして2025年、売上+3.5%で利益▲19%。この会社は「売上が伸びれば利益も伸びる」という単純な会社ではない。補助金政策・原材料価格・価格競争という3つの外部変数が、利益率を毎年書き換えてしまう。

利益率の水準そのものが薄い。2025年の純利益率は4.06%。同年の売上総利益率17.74%から、R&D費634億元(売上比7.9%)と販管費を引くとほとんど残らない構造である。製造業として売上8,000億元の企業が純利益326億元というのは、「規模はあるが薄利」の典型だ。この薄さゆえに、価格が数%動くだけで利益は数十%動く。10年グラフのギザギザは、その感応度の高さを可視化したものである。

出典:2016〜2019年の売上高はCompaniesMarketCap(人民元建て換算)およびSMM報道、2020〜2024年はStockAnalysis.com(原データS&P Global Market Intelligence)、2025年はBYD年次報告(CnEVPost)。純利益は各年の年次報告および決算報道(2019年▲42.03%、2017年▲19.5%等の開示率から逆算した年もあり、億元単位で丸めています)。CAGR・利益率は当サイト算出。グラフは当サイトが金額データからSVGで作図。

08 / VALUATION

PERの推移(直近10年間)

各年末時点の実績PER(倍) ※右端は2026年8月時点のTTM実績PER

26.1 2016 45.9 2017 52.2 2018 94.1 2019 125 2020 249 2021 44.5 2022 19.0 2023 10.3 2024 27.9 2025 26.8 26/8

このPERチャートは、BYDという銘柄の性格を残酷なほど正確に描いている。2021年末のPERは249倍。当時のBYDは売上2,161億元・純利益30.5億元にすぎず、株価は「これから起きること」だけを織り込んでいた。そして実際にそれは起きた——2022〜2024年で純利益は13倍になった。

結果として起きたのは「株価が上がらずPERが下がる」現象である。2021年249倍 → 2022年44.5倍 → 2023年19.0倍 → 2024年10.3倍。利益が急拡大したぶんだけPERは切り下がり、2024年末には自動車株として極めて割安な水準まで低下した。「成長を先に買われた株は、成長が実現しても株価が上がらない」という教科書的な事例である。

そして2025年、PERは10.3倍から27.9倍へ再び跳ね上がった。これは株価が上がったからではなく、分母(利益)が19%減ったからだ。2026年8月時点のTTM PERは26.8倍。株価は過去1年で▲12.0%、年初来でも下落基調にある。

現在の26.8倍をどう見るか。10年平均(約61倍)より大幅に低く、直近5年平均(約66倍)と比べても低い。しかし2024年末の10.3倍という「利益ピーク時の底値PER」と比べると2.6倍の水準にある。つまりいまのBYDは「利益が落ちた状態で、それなりのマルチプルが付いている」状態だ。ここから株価が上がるには、PERの拡大ではなく利益そのものの回復が必要になる。バリュエーションの余白は、数字上あまり残っていない。

出典:CompaniesMarketCap「BYD P/E ratio」(各年末時点の実績PER、2026年8月時点のTTM PER 26.78倍)。株価騰落率も同サイト。10年平均・5年平均は当サイトが表の値から算出。

09 / CAPITAL RETURNS

ROIC・WACC・ROEの推移

ROIC(投下資本利益率)の推移 2021〜2025年

WACC概算 約9% 4.3% 2021 12.7% 2022 17.3% 2023 19.4% 2024 9.2% 2025 緑=WACC概算(約9%)超え=価値創出/赤=WACC近辺・以下=価値創出ほぼゼロ

ROE(自己資本利益率)

直近(2026年8月時点)11.86%/過去10年平均 10.85%。利益ピークだった2024年は20%台後半、2019年前後の谷では3〜5%台と、年による振れ幅が極端に大きいのがBYDのROEの特徴。

WACC(加重平均資本コスト)

当サイトの概算試算で約9%。中国10年国債利回り(無リスク金利)+株式リスクプレミアム約6%×ベータ1.3〜1.5で株主資本コスト約10%、有利子負債コスト約3%、ネットキャッシュ企業のため負債ウェイトは小さい。あくまで簡易試算であり幅を持って見てください。

ROIC − WACC スプレッド

2021年 ▲4.7pt/2022年 +3.7pt/2023年 +8.3pt/2024年 +10.4pt/2025年 +0.2pt2025年に価値創出がほぼゼロまで戻ったのが最重要ポイント。

2016〜2020年のデータ

信頼できる一次データが確認できなかったため掲載を見送ります。参考として、この期間の純利益は50.5億元→16.1億元→42.3億元と乱高下しており、ROICは概ね一桁台前半で推移したとみられます。次回更新時に反映予定。

BYDが「価値を創り出した」のは、実質3年間だけである。ROICは2021年4.3% → 2022年12.7% → 2023年17.3% → 2024年19.4%(ピーク) → 2025年9.2%。当サイト概算のWACC約9%を明確に上回ったのは2022〜2024年の3年間だけで、2025年にはスプレッドがほぼゼロまで縮んだ

これは「利益が減った」以上の意味を持つ。ROICの分母である投下資本は、海外工場(ハンガリー・ブラジル・トルコ・タイ・インドネシア)や電池・半導体設備への投資で急拡大している。分子(利益)が減り、分母(投下資本)が増えるという最悪の組み合わせが2025年に起きた。企業価値の観点では、いま投じている1元が1元分の価値しか生んでいない状態である。

ただしこれは投資フェーズの必然でもある。海外工場は稼働初期に必ず低採算になる。ハンガリー工場は2026年第2四半期に量産開始予定であり、投下資本はすでに計上されているが利益貢献はこれからだ。「先に分母が増えて、あとから分子が追いつく」形になるか、それとも「分母だけ増えて終わる」か——2027年以降のROICが、この投資サイクルの成否を判定する最も明快な指標になる。

出典:ROICはMacroTrends(BYDDY, Return on Investment)、ROEはFinanceCharts(2026年8月時点)。WACCおよびROIC−WACCスプレッドは当サイトの概算試算であり、公式開示値ではありません。

10 / CASH FLOW

フリーキャッシュフローの推移

フリーキャッシュフロー(億元) 2020〜2025年

0 +336 2020 +281 2021 +434 2022 +476 2023 +361 2024 ▲247 25年9月期TTM ※2025年の値は2025年9月末までの直近12か月(TTM)。通期確定値は次回更新時に反映予定

フリーキャッシュフロー(億元):2020年 +336 → 2021年 +281 → 2022年 +434 → 2023年 +476 → 2024年 +361 → 2025年9月末TTM ▲247。5年間プラスを維持してきたFCFが、2025年に大きくマイナスへ転じた。

これは減益より重い変化である。利益が減っても現金が回っていれば会社は困らない。だがFCFがマイナスということは、本業で稼いだ現金より設備投資のほうが大きい状態を意味する。BYDの場合、海外5拠点(タイ・ブラジル・ハンガリー・トルコ・インドネシア)の同時建設と、電池・半導体の内製設備が同時に走っている。

2026年1Qの営業CFは27.9億元(前年同期比▲67.48%)とさらに悪化した。営業CFが7割近く減るというのは、利益の減少幅(▲55%)を上回るペースであり、運転資本(在庫・売上債権・仕入債務)の悪化が起きている可能性を示唆する。中国自動車業界ではサプライヤーへの支払サイト長期化が問題視されており、当局が支払期日の短縮を求めた経緯もある。この規制が効くほど、BYDの営業CFには下押し圧力がかかる。

財務的な余力そのものは厚い。直近で確認できるバランスシートでは現金1,474億元に対し有利子負債502億元、ネットキャッシュ約972億元。数年間FCFがマイナスでも耐えられる体力はある。したがって当面の焦点は「潰れるか」ではなく、「この投資が何年でリターンを生み始めるか」である。同時に、2025年の配当が1株0.358元へ減額されたことは、会社自身がキャッシュを守りに入っているサインと読める。

出典:FCF 2020〜2024年および2025年9月末TTMはStockAnalysis.com(原データS&P Global Market Intelligence、百万元を億元に換算)、2026年1Qの営業CFはBYD第1四半期報告(CnEVPost)、現金・有利子負債はStockAnalysis.com。2016〜2019年および2025年通期のCF確定値は本稿執筆時点で信頼できるデータを確認できず、次回更新時に反映予定。

11 / INVESTMENT & M&A

直近の投資・M&A状況

BYDの資本配分は、M&Aではなく「自前の工場建設」に一貫して向かっている。他の中国自動車メーカーが海外ブランドの買収(吉利のボルボ、上汽のMG等)で国際化したのに対し、BYDは自社工場をゼロから建てる方式を採る。垂直統合の思想がそのまま海外展開にも適用されている。

海外生産拠点(2026年時点):

  • タイ(ラヨーン)——稼働済み。2025年8月以降、欧州向けの輸出拠点としても機能。
  • ブラジル(バイーア州カマサリ)——旧フォード工場を転用。稼働開始済み。
  • ハンガリー(セゲド)——欧州初の乗用車工場。2026年1月に試験生産を開始し、2026年第2四半期に量産開始予定。EUの対中関税を回避する最重要拠点。
  • トルコ——建設中。EU関税同盟を利用した欧州向け供給拠点となる想定。
  • インドネシア——建設中。東南アジア第2拠点。

メキシコ工場への動き。2026年8月時点で、BYDと吉利が日産・メルセデス合弁の旧メキシコ工場の買収に最終入札者として名を連ねていると報じられている。米国の関税政策で撤退する日欧メーカーの生産資産を、中国勢が拾いにいくという構図である。実現すれば北米市場への足がかりとなるが、米国側の政治的反発は極めて強く、不確実性は高い。

技術投資:R&D 634億元と「フラッシュ充電」。2025年の研究開発費は634億元(+17%)。純利益の約2倍を投じている。技術面の目玉は第2世代ブレードバッテリーと超急速充電(10%→70%を5分)であり、これを支えるため2026年末までに全国2万か所のフラッシュ充電ステーション建設を計画している。これは自動車メーカーが充電インフラ事業者を兼ねるという重い投資であり、FCFがマイナスに転じた一因でもある。

子会社の資本政策。半導体部門(比亜迪半導体)の分離上場は複数回申請・撤回を繰り返し、現時点で実現していない。グループ内取引比率の高さが独立性要件を満たさないことが主因とされる。垂直統合モデルの裏返しとして、事業ごとの外部資金調達がやりにくい構造になっている点は、資本効率上の弱点である。

出典:海外工場計画はAutomotive WorldCarNewsChina(2026年1月25日)。メキシコ工場入札はReuters/SCMP報道(2026年8月)。R&D費・フラッシュ充電計画はBYD 2025年年次報告(CnEVPost)。半導体子会社IPOはSCMPほか。

12 / SEGMENT GROWTH

主要事業ごとの成長性

成長率の対比(2025年12月期・前期比)

海外売上高 +40.1% 海外販売台数 +約140% 自動車セグメント売上 +5.06% 全社売上高 +3.46% 携帯部品セグメント ▲2.74% ※海外販売台数の伸びは棒の長さを圧縮して表示しています

①海外事業——唯一の高成長エンジン(売上+40.1%、台数+約140%)。2025年の海外売上3,107.4億元は全社の38.65%。台数104.6万台。2026年の会社目標は公式に130万台(+約24%)で、証券会社向けには150万台という数字も語られている。欧州ではテスラを月次登録台数で上回る月が出てきており、南米・東南アジア・中東でシェアを伸ばしている。粗利率も国内より2.8pt高いため、成長性と収益性の両面でここが唯一の頼みの綱である。

②国内自動車事業——成長は止まり、防衛戦へ。自動車セグメント全体では+5.06%だが、海外の+40%を除けば国内はマイナスである。2026年7月の中国NEV市場シェアは23.5%で首位を維持しているものの、月次の国内販売は前年割れが続いている。小米(Xiaomi)・華為(Huawei)系ブランド・吉利などの攻勢に加え、値下げ余地が尽きつつある。「1位だが縮んでいる」という、最も扱いの難しいポジションにある。

③電池事業——外販は伸び悩み。2026年7月の中国国内動力電池シェアは19.23%で、CATL(42.33%)に大きく引き離された2位。BYDの電池は大半が自社車両向けであり、外販比率が低いことがシェア天井の原因になっている。垂直統合の代償として、電池を「独立した成長事業」として育てられていないのが実情である。

④携帯電話部品・組立(比亜迪電子)——縮小(▲2.74%)。売上1,552.4億元。スマートフォン市場の成熟に加え、受託製造は構造的に低マージンである。AIサーバー関連への転換を模索しているが、現時点では全社の足を引っ張るセグメントとなっている。

総括:成長の絵は「海外1本足打法」である。4事業のうち明確に伸びているのは海外だけ。したがってこの銘柄の成長性を評価するということは、実質的に「欧州・南米・東南アジアでの中国車の受容度」と「各国の関税・規制」を評価することとほぼ同義になる。

出典:セグメント別成長率はBYD 2025年年次報告(CnEVPost)、海外売上はBigGo Finance集計、2026年7月のNEV市場シェアおよび動力電池シェアはCnEVPost(2026年8月13日・18日)、2026年海外販売目標はCarNewsChina

13 / COMPETITIVE POSITION

競争優位性や業界内でのポジション

BYDの堀は、ブランドでも技術でもなく「垂直統合によるコスト」である。電池セル・パック、IGBT/SiCパワー半導体、モーター、車載制御ソフト、車体、そして完成車組立まで、ほぼすべてを自社グループ内で持つ完成車メーカーは世界に存在しない。テスラですら電池セルの大半を外部調達している。この構造がある限り、同じ性能の車をBYDより安く作れるメーカーは基本的に現れない。

ただしこの堀には賞味期限がある。垂直統合の優位は「規模が拡大し続ける」ことを前提に成立する。工場・設備が固定費である以上、稼働率が落ちれば1台あたりコストは跳ね上がる。国内販売が前年割れを続ける現在、かつて最大の武器だった垂直統合が、逆に固定費の重石として働き始めている可能性がある。2025年の約10万人の人員削減は、その調整の一環と読める。

業界内ポジション(2026年8月時点):

  • 中国NEV市場——シェア23.5%で首位(2026年7月)。ただし2位以下との差は縮小傾向。
  • 中国NEV輸出——2026年7月のシェア32.2%で圧倒的首位(テスラは12.3%)。
  • 世界NEV販売——年間460万台で世界最大。テスラを台数で大きく上回る。
  • 中国動力電池——シェア19.23%で2位(CATL 42.33%)。
  • 欧州——月次新車登録でテスラを上回る月が出現。ただし絶対数はまだ小さい。

技術面の差別化:ブレードバッテリーとフラッシュ充電。LFPをパックに直接組み込むブレードバッテリーは、コストと安全性でNCM系に対する優位を確立した。第2世代では10%→70%を5分という超急速充電に対応し、これを2万か所の自社充電ステーションで支える計画である。「車を作る会社」から「エネルギーのインフラを持つ会社」へ移ろうとしている点は、テスラのスーパーチャージャー戦略の再現でもある。

弱点は明確にブランドとソフトウェアである。BYDは「安くて壊れない実用車」としては強いが、プレミアム帯(仰望・騰勢)の販売は伸び悩んでいる。またADAS(先進運転支援)では、華為のADSや小米の自社開発に対して優位を主張しにくい。中国市場の競争軸が「価格」から「知能化(スマート化)」へ移っている以上、この弱点は今後より効いてくる。

出典:シェアデータはCnEVPost「Automakers' share of China's NEV market in July 2026」同「Top battery makers' share in China in July 2026」、欧州登録台数はCnEVPost(2026年3月24日)。技術仕様はBYD発表(第2世代ブレードバッテリー、2026年3月)。

14 / SCP ANALYSIS

SCP理論からの分析(市場動向・規制リスク・業界トレンド)

Structure(市場構造)

中国NEV市場は「寡占に向かう途中の過当競争」状態にある。NEV浸透率は6割を超え、市場そのものの成長率は鈍化した。にもかかわらずプレイヤー数は依然として多く、BYD・吉利・華為系・小米・長安・奇瑞などが同じ価格帯で正面衝突している。需要成長が止まったのに供給者が減っていない——これが価格戦の構造的原因である。

参入障壁は「資本」から「ソフトウェアと販売網」へ移った。小米のように異業種から参入して短期間でシェアを取る例が出ており、従来型の製造能力による参入障壁は以前ほど機能していない。一方で海外市場は現地生産・現地認証・販売網が必要なため、参入障壁は中国国内より高い。BYDが海外へ重心を移すのは、この障壁の高さを味方につける動きでもある。

Conduct(企業行動・規制リスク)

企業行動:BYDは「値下げでシェアを守り、海外で利益を取る」という二正面戦略を選んだ。国内では価格を下げ、粗利率17.74%まで受け入れる。海外では19.5%の粗利率で稼ぐ。同時にR&Dは634億元に増やし、人員は10万人減らす。攻めと守りを同時に実行する、極めて負荷の高い経営である。

規制リスク①・EU:中国製BEVへの相殺関税が課され続けており、ハンガリー・トルコでの現地生産が唯一の回避手段。工場立ち上げの遅れは直接的な収益リスクになる。
規制リスク②・米国:実質的に閉ざされた市場。メキシコ工場買収は政治的障壁が極めて高い。
規制リスク③・中国国内:当局は過度な値下げ競争(いわゆる「内巻」)の抑制と、サプライヤーへの支払期日短縮を求めている。前者は利益にプラス、後者は運転資本にマイナスに働く。
規制リスク④・新興国:ブラジル・インド・インドネシア等で輸入関税の引き上げと現地生産要求が進行中。

Performance(業界トレンド・帰結)

帰結①:業界全体の利益率が構造的に低下している。中国自動車産業の営業利益率は歴史的低水準にあり、BYDの純利益率4.06%はその縮図である。王伝福自身が「淘汰段階に入る」と述べたとおり、今後数年は「儲ける競争」ではなく「生き残る競争」が続く。淘汰が進めば最終的に生存者の利益率は回復するが、それは早くても2027〜2028年の話になる。

帰結②:競争軸が「価格」から「知能化」へ移る。電動化は既に達成された前提条件となり、差別化要因はADAS・車載OS・コックピット体験へ移った。ここは華為・小米が強い領域であり、ハードウェアの垂直統合が効きにくい戦場である。BYDにとって最も不利な形で競争軸が変わりつつある。

帰結③:中国勢の海外進出が世界の自動車産業を再編する。米国の関税政策で日欧メーカーがメキシコ等から撤退し、その生産資産を中国勢が拾う構図が現実に動き始めた。BYDの海外拡大は単なる輸出ではなく、グローバルな生産地図の書き換えである。この過程で各国の政治的反発が強まることは避けられず、企業業績と地政学が直結する期間が続く。

出典:BYD 2025年年次報告における経営陣の市場認識(「price wars and a highly competitive environment are squeezing automakers' profit margins」「knockout stage」)、中国NEV浸透率・国産ブランドシェアは業界統計報道、EU相殺関税・各国関税動向は各種報道。SCPフレームへの整理と評価は当サイトの分析であり、特定の投資判断を推奨するものではありません。

15 / INVESTMENT THESIS

これらの分析結果をもとにした現在の投資妙味

結論から言えば、BYDはいま「事業として強く、株式として難しい」局面にある。世界最大のNEVメーカーであり、他社が真似できない垂直統合を持ち、海外は年40%で伸びている。それでも株価は過去1年で▲12%、PERは26.8倍——市場は「良い会社」であることを認めつつ、「良い投資先」だとは判断していない

強気シナリオ(買う理由)は3つある。
海外が構造的に伸びている——売上+40.1%、台数+140%、粗利率も国内より高い。2026年目標は130万台。ハンガリー工場が2Qに量産入りすれば欧州関税を回避できる。
財務は健全——ネットキャッシュ約972億元。数年のFCFマイナスに耐えられる。
淘汰の勝ち残り候補——価格戦が続けば体力のないメーカーから消える。生存者としてのBYDは、競争が終わった後の市場で高い利益率を取り戻す可能性がある。

弱気シナリオ(買わない理由)も3つある。
ROIC−WACCスプレッドがほぼゼロ——2025年ROIC 9.2%に対しWACC概算約9%。いま投じている資本が価値を生んでいない。
FCFがマイナスに転落——5年続いたプラスが2025年に反転。営業CFは2026年1Qに▲67%。
PERに余白がない——2024年末の10.3倍から26.8倍へ。利益が回復しない限り、バリュエーション面からの上値余地は乏しい

この銘柄の投資判断は、結局ひとつの問いに集約される。——「海外の+40%成長は、国内の減益をいつ埋め切るのか」。2025年時点で海外構成比は38.65%。仮に海外が年30%で伸び、国内がフラットなら、2027年頃には海外が売上の過半を占める計算になる。そのとき全社の粗利率は国内主導の16%台から海外主導の19%台へ寄っていく。この「ミックス改善による利益回復」が実現するかどうかが、投資妙味の核心である。

タイミングの観点。数字が最も悪い局面(2026年1Q ▲55%)を通過しつつあるが、まだ改善の確認は取れていない。確認すべきチェックポイントは、①2026年上期決算での粗利率、②ハンガリー工場の量産開始、③国内月次販売の前年比が反転するか、の3点。この3つのうち2つが好転した段階で、初めて「利益回復シナリオが動き出した」と判断できる。逆に言えば、現時点はまだ「安いから買う」局面ではなく「変化を待つ」局面である。

※本セクションは公開情報に基づく当サイトの見解であり、特定の銘柄の売買を推奨するものではありません。投資判断はご自身の責任でお願いします。

出典:本ページ01〜14セクションに記載の各出典を総合。株価騰落率・PERはCompaniesMarketCap(2026年8月時点)。

16 / WATCH POINTS & RISKS

今後の注目ポイントやリスク要因

注目ポイント(カタリスト)

①ハンガリー・セゲド工場の量産開始(2026年2Q予定)——欧州で「中国車」ではなく「欧州製BYD」を売れるようになる。EU相殺関税の回避と、欧州でのブランド認知の両方に効く最大級のカタリスト。

②2026年上期決算の粗利率——1Qは前四半期比+1.4ptと改善の兆しがあった。海外比率上昇によるミックス改善が続くかを確認する最初の関門。

③海外販売130万台目標の進捗——2025年104.6万台からの+24%。四半期ごとの海外台数が最も素直な進捗指標になる。

④中国当局による価格競争の抑制——過度な値下げに規制が入れば、業界全体の粗利率が反転する。BYDはシェア首位のため最大の受益者になり得る。

⑤第2世代ブレードバッテリー/フラッシュ充電の普及——2026年末に2万か所の充電網。技術優位を販売に転換できるか。

⑥メキシコ工場買収の帰趨——実現すれば北米への足がかり。ただし政治リスクは極めて高い。

リスク要因

①国内販売の前年割れ継続——2026年に入っても中国国内販売は前年比マイナスが続いている。シェア首位でも市場が縮めば台数は減る。最大かつ最も直接的なリスク。

②FCFのマイナス継続と運転資本の悪化——2026年1Qの営業CFは▲67.48%。海外5拠点の同時建設が続く間、キャッシュ創出力は圧迫される。当局によるサプライヤー支払期日短縮の要請も逆風。

③競争軸の「知能化」シフト——華為・小米のADAS/車載OSに対して、BYDの強み(垂直統合によるコスト)は効きにくい。堀の種類が市場から求められなくなるリスク

④各国の関税・非関税障壁——EU相殺関税、米国市場の実質閉鎖、ブラジル・インドネシア等の関税引き上げ。海外成長シナリオの前提が政治で崩れる。

⑤経営承継リスク——王伝福(1966年生)が31年間トップを兼務。後継者計画が開示されていない。

⑥情報開示の制約——電池・半導体が独立セグメントとして開示されず、外部から収益構造を検証しにくい。中国本土上場企業に共通するガバナンス・開示面のディスカウント要因。

⑦減配——2025年期末配当0.358元/株へ減額。株主還元は当面期待しにくい。

出典:本ページ各セクションに記載の出典を総合。とくにBYD 2025年年次報告(CnEVPost)、2026年第1四半期報告(CnEVPost)、海外展開計画(CarNewsChina)。