16問の質疑応答・2×2マッピング・キャリアデザインまで10のアクション
この回のレポートは全4本に分割しています。本ファイルはその4本目、テーマは「質疑応答と宿題」です。
セッション中に寄せられた16件の質疑応答を全件収録するパートである。藤川氏・カ原氏・山まち氏・まき氏ら参加者から、相互依存度と権力不均衡の関係、トヨタと部品会社の力関係、CrowdStrikeとZscalerの技術的な違い、そして『黒子のバスケ』を題材にした相互依存の解釈まで、幅広い論点が寄せられている。
後半の質問はティール組織とリーダーシップに集中する。GreenとOrangeを行き来する現実的な組織像、テスラやGoogle・マイクロソフトを例にした発達段階の見立て、LMXを機能させる体制づくり、投資家目線で見てバリュエーションが最大化するステージ、キャリアアンカーを使った囲い込みの是非など、実務家からの具体的な問いに前田氏・マイキー氏が答えている。
末尾には10件のアクションアイテムを収録した。GMの事例研究やホールドアップ問題の予習といった理論編の宿題から、自社取引先の2×2マッピング、TSLとLMXの評価制度への当てはめ、力関係を測る点検項目、コミュニケーションのトレーニングまで、次回までに取り組むべき論点を整理し、資産運用EXPOの告知にも触れている。
まず用語の確認から。権力不均衡は「ロー(低)」になる。不均衡とは差が大きくなることなので、力の差を埋めるとは不均衡を小さくすることを意味する。
「埋めるというより、依存されない会社を探しに行く方が有効では」という追加の指摘については——それも実は「力を埋める戦略」に含まれる。他のパートナーを探索すればその相手の力は相対的に弱まるので、別の恋人を探しに行けばいいだけの話である。
マイキー氏の補足:YouTubeで話したソニーと自動車電機の話で、結局差が埋まらないから他を探しに行けばいいと気づき始めた、という例がまさにこれにあたる。
完全に支配する方向に走る。がんじがらめにするという戦略を立てる。
ただし危険なのは、個々の企業が力を持ち始めると支配力が弱まる点である。そのとき支配関係を維持するコストがめちゃくちゃかかってくる。したがって短期的には支配が正解でも、長期的には不均衡を埋めた方が戦略として正しい。だからこそ取引コスト理論も併せて見た方がいい。
同業内でも当てはまることは多い。同業内でも技術の方向性が完全に一致することは少なく、若干ずれていることが普通だからである。
例としてサイバーセキュリティ業界のCrowdStrikeとZscaler。両社ともサイバーセキュリティだが技術の方向性が違うため、かなり近い協業関係になっている。ちょっとしたずれでも大きな動きが出てくる。
「つまり仲良くして力の差を埋めるというのは、バリューチェーンの上流・下流でお互いに意味のある関係を強めるということか」という確認に対しては「本当におっしゃる通り」と全面同意。バリューチェーンやサプライチェーンの中でどういう力関係を作っていくかという視点がないと、この理論は実務につながらない。
逆パターンの事例がある。GMで調べてください。GMが(供給業者に)支配されたという経緯があり、そこから抜け出すのに10年ほど苦しんだ。原因は特殊技術を1社に委ねてしまったことである。
つまり力関係は企業の大きさだけで決まらない。自分たちが小さい企業なら、他社が持っていない特殊技術を「持っているように見せる」だけでも力の差は埋められる。仲の良さも同様で、実際にそう思っていなくても見せ方は作れる。資源とは相手がどう受け取るかで決まる部分があり、どう思わせるかは重要な能力である。
それはリサーチの話であり、リサーチができること自体がある意味資源である。
そして重要な視点として——コミュニケーション能力も資源の一部に入る。資源依存理論で言う「資源」は、単に持っているモノだけでなく、技術・能力・実力、さらにコミュニケーション能力やネットワークまで全て含まれる。そう考えると、見えないところの分析ができること自体が会社の強みになる。
その通り。相互依存を構築できたのは緑間のチームと、黒子・火神のチームだけである。3チームとも成長したが、紫原・青峰・赤司のチームは相互依存を構築できなかったから成長できなかった——資源依存理論そのままの展開になっている。
奇跡の世代は各自が最強であるがゆえに、高校でも味方を信用しなかった。紫原は氷室というパートナーを無視し、赤司は無冠の五将と関係を作らなかった。関係値の向上が一切なく、自分に依存させる状態が続いた結果、チームが崩れた。逆に黒子・緑間のチームは信用のポイントを積み上げていった。だから最後にアメリカのトップチームにも勝てた。
セキュリティには大きく3つの技術がある。エンドポイントセキュリティ(守るべき1点に強力なプロテクトをかける)、ゼロトラスト(来る人全員を敵と見なし、多重の関門を設ける)、トレーサビリティ(盗まれた後に相手をたどれるようにする)。
CrowdStrikeはエンドポイントが突出して強く、Palo Alto Networksは全方位が高い包括型、Zscalerは特殊技術を持つが飲み込めるほどの規模ではない。だからPalo Altoは弱みを補う相手と協業し、CrowdStrikeはZscalerと組むことでネットワーク側の対抗手段を得る。
マイキー氏の補足:CrowdStrikeは端末を守り、Zscalerは通信を守る。CrowdStrikeが端末のウイルスを検知した瞬間、その情報がZscalerに渡り、Zscalerが端末から社内システムへのアクセスを自動遮断する。3社ともAPIを公開しており、ログを統合できるのが前提にある。Palo Altoは環境全体を守る。
その可能性はある。現実的にはそうなるかもしれない。ただし方向性としてはGreenに持っていくことを目指す、というのが重要である。
関連して、テスラはOrangeで止まっていると思われる。逆にGoogleやマイクロソフトはGreenのベースを作っているイメージ。ただし完璧なGreenになった会社を見たことがない。日本のAmazonは完全にOrange。重要なのは完璧かどうかではなく、そういう仕組みがあるかないかである。
LMX理論はあくまで経営者側と社員との関係値を扱うものなので、外部(第三者)はサポート役でしかない。シニアマネージャーに横で担当させるという形も、理論上は外部にはならないが、本筋ではない。
そしてそれが全部できるようになったら、それはもうGreen型の組織になっている。完璧なGreenを見たことはないので、あくまで方向性の話になる。
マイキー氏の追加:入ってくる社員が全員優秀なわけがない。だから教育システムが決定的に重要になる。逆に言えばGreenを否定することは教育を否定することと同じである。
その通り。リテンションコストが下がり、加えて帰属意識が高まる。チームワーク、つまりそこへのコミット量が上がると言われている。
本質は内発的動機づけである。「給料のためにここにいるんじゃない、これを実現したいからこの組織にいるんだ」という内発的動機が強まることで、恐怖や金銭という外部要因に囚われない社員が生まれる。莫大なコストはかかるが、それは時間的コストであって、最終的に金銭的コストは下がる。
めちゃくちゃいい。それだけでも十分。ただしそれより重要なこととして、3つをまとめると「キャリアデザイン」になる。
キャリアデザインを押し出しているのがセールスフォースやマイクロソフト。ソニーも取り入れ始めたことで成長している。キャリアデザインをどう作らせ、どう示してあげるかがリーダーの役目であり、さらにそのキャリアデザインが会社の役に立つ仕組みを設計するところまでがセットになる。
ポイントはルール変更のスケジュールを考えること。全ての意見を受け取っていたら組織は成立しない。下から上がってくるものは、その会社の方向性に対するアンチである。
重要なのは妥協案を明示すること。「10の要求のうち1は変えられるが9は我慢してくれ。次はみんなで頑張ってレベル2を変えよう」——こうやって進めていく。10まで到達すればまた新しい問題が出てくるが、それでいい。ルール自体が変更されていく会社なのだと社員から見えるかどうかが決定的である。
逆に変わらないと「変われないリーダーだ」と見なされてしまう。方向性を変える必要はない。細かいルールを変える妥協案を見つけることがポイントである。
そして根本から変えることを望む社員がいるなら、それは社員としては無理な話。しかしどうでもいいルールが実は多い。それを変えても支障がないように設計し直すのもリーダーの役目であり、どこまでできてどこまでできないかをはっきり言うことが要になる。
両方のパターンがある。中にはGreenが嫌だという人もいる。ただし前提として、成果主義はある程度全員が成果を出せる状態を作るまでの段階である。たいていはOrangeで止まるが、Greenの土台を作っておかないといけない。
参加者からの実務的な補足:KPI・インセンティブでガチガチの会社では、2年ほど経つと疲れ始める層が出る。「マネージャーになってもやることは一緒だ」と見え始めるタイミングの層には、成果は出して当然という前提のうえで、別の部分での成長余地を見せてあげることが必要になる。つまりGreenになるからカルチャーが変わるのではなく、成果の上にアドオンしていくという捉え方。
面白い視点だが、AIはその人が面白いかどうかを判断できない。Greenの組織は面白い組織だと考えているので、そこが難しい。AIには「面白さ」が拾えない。
直近の利益最大化という意味ではOrange(成果主義なので見えやすい)。
ただしGreenのステージに入って業績のグロースが鈍化する局面は、リスクではあるがそれを乗り越えると次のステージがある。変革時にはたいてい業績が落ちるが、Greenで内発的動機づけが効いていれば人は残る。投資家に対しては「今は力を蓄えている潜伏期で、次の成長に向けた投資をしている。だから今は我慢してほしい」と客観的に示す形になる。
まず前提の確認から。キャリアデザインは自分で作るものであり、会社はその土台を作る側である。
リーダーにも社員にもテーマがあるからこそ内発的な動機になる。目的がお金になってしまうとそこまで行けない。本人が内発的動機を見つけた上で、それをどうサポートするかが組織の役目である。もちろん会社にとってメリットのある方向で設計する。
マイキー氏の締め:ただ淡々とやっている人には、キャリアデザインもクソもない。
セッション時点で募集最終日とアナウンスされた。Tシャツ等のグッズ製作のため人数を確定させる必要があるとのこと。金曜日は人が少なくセッティング・セットアップも見られるため、得られるものが多いという案内があった。当日サンプリングや景品配布を希望する参加者は運営に相談するよう呼びかけられた。
セッション内で言及された「5月15〜17日」は、資産運用EXPO【夏】=2026年5月15日(金)〜17日(日)、東京ビッグサイト東7ホールと一致する。同シリーズは年3回開催で、【春】が2026年1月16〜18日(東京ビッグサイト南展示棟4ホール)、【関西】が2026年8月28〜30日(インテックス大阪6号館)。主催はRX Japan。
この日程から逆算すると、本セッションは2026年5月上旬の収録と推定される。