この回の後半は、前夜に実際に起きた事件から始まった。マイキー氏の知人経営者である小山氏が、自身が発注しているYouTube制作会社に対して激怒した。理由は成果物の質ではない。重要な可能性のあるメッセージを10日間無視されたことである。翌日、幹部16名全員が呼び出され、マイキー氏も同席することになった。
ここでマイキー氏が指摘した問題は二つある。第一は、誰かが発信したときに誰も反応しない、というコミュニティ全般の問題である。マイキー氏と小山氏のあいだには20ほどのグループがあり、二人は必ず返す。だが大半の経営者は読んで終わりにする。既読すらつかないため、読んだのかどうかも分からない。「能力のある経営者は大体返してきます」。第二は、その会社が上場申請中であることを理由に「外部営業を控えてほしい」と証券会社から言われていた点である。マイキー氏はこれを一蹴した。サービスを受ける側にとっては知ったことではない。誰が社長かも分からない状態でよいのか、と。
そこで持ち出されたのが、トップが自ら動いている実例である。OpenAIを広げているのは誰か。サム・アルトマンである。NVIDIAの経済循環システムを回しているのは誰か。ジェンスン・ファンである。ChatGPTを企業に広げたのは誰か。サティア・ナデラである。「お前はナデラよりもアルトマンよりもファンより偉いのか」——ここから会話が始まった、という。
そして具体的な数値が提示された。経営者が契約更新の3か月前に挨拶に行くかどうかで継続率が15%変わる。アップセル・クロスセルを営業担当ではなく社長がやると成約率が25%変わる。マーク・ベニオフは四半期ごとにトップ100アカウントを自ら全社回っており、それによって契約継続率が80%から98%になった。アドビのCEOはクラウド移行時に四半期で250社を訪問した。スノーフレイクでは経営者が出ることで継続までの相談時間が37%短くなった——。数字の出所は当日は明示されなかったが、主張の骨格は一貫している。継続率を作っているのは製品ではなくコミュニケーションである。
議論はここからさらに二段展開する。一つはプライベートエクイティである。マイキー氏は「日本の経営者が一番参考にすべきは経営者の意見ではなくPEの動きだ」と述べ、小賀氏が実際にベインとカーライルに買収された企業の当事者から聞いた話を語った。月次フリーキャッシュフロー計画で徹底的に詰められ、財務担当が精神的に追い込まれるほどの緊張感が持ち込まれる。もう一つは日本企業のPL偏重である。450社規模の講演でキャッシュフローを計算していた人は5人もいなかった。棚卸資産回転日数が440日ある医療機器メーカーで、経営者は営業利益率30%に満足してバランスシートを一切見ていなかった。「去年起きたことはどうでもいい。今年どうするかが重要である」という一言が、この日の財務観を要約している。
売上を作るのは製品改善ではなく、解約されないことである。そして解約を止めるのは値引きでも機能追加でもなく、誰が顧客の前に立つかである。同じ理屈が社内にも適用される。反応を返さない組織は、外向きにも反応を返せない。コミュニケーションの水準が、そのままLTVの水準になる。
前夜、マイキー氏は小山氏と会っていた。小山氏はマイキー氏のYouTube制作会社に対して激怒しており、自分の会社との契約を切るだけでなく、コンサルティング先に対しても全員解約するよう指令を出す、と言い出した。「お前の会社はもう上場もできないし潰れるだろう、というぐらいまで追い込んでやる」。翌日、幹部16名全員が呼び出される事態になり、マイキー氏もその場に同席した。
マイキー氏が最初に指摘した問題は、コミュニケーションそのものだった。誰かがメッセージを出したときに誰も反応しない。これはマイキークラブの全員にほぼ言えることだ、と厳しく述べている。Discordで誰かがアウトプットしても、フィードバックが出ない。マイキー氏と小山氏のグループは20ほどあるが、二人は必ず返す。ところが大半の経営者は読んで終わりにする。それが重要事項かもしれない段階で、10日間無視され続けた——それが小山氏の怒りの内実だった。
マイキー氏はここで、LINEなら既読がつくのでまだ分かる、と補足している。Discordのようなツールでは、読んだのか読んでいないのかすら分からない。資料を作った人がいても、何の反応もない状態になる。マイキー氏自身も、こうした無反応を繰り返された経験から、小山氏と二人で「全員で無視し返そう」と決めて事業を止めたことがあると明かした。その後に凡ミスが起き続けたが、「僕らの知ったことではない」。失敗したときに尻拭いをするのはこちら側なのだから、拭けないなら出すな、という論理である。
質疑で「反応とは具体的に何を指すのか」と問われたマイキー氏の答えは、拍子抜けするほど低いハードルだった。「最悪スタンプを押せばいい」。文章で返すのが一番よく、フィードバックを返してあげるのが望ましいが、反応するだけでもよい。読んだかどうかが分かる状態を作ること自体に意味がある、ということである。実際に小山氏は「あざす」「いいっすね」「これ面白いっす」「こうしたほうがいいんじゃないですか」と返してくるが、他の20人ほどは無言のままだという。
その会社の問題として上がったのがLTVの高さである。LTVを最も上げる方法は何か。契約を解約されないことである。ではどうすれば解約されないのか。マイキー氏が持ち出したのは、経営者自身が顧客を回ることの効果を示す数値だった。
| 主体 | 当日提示された内容 | 数値 |
|---|---|---|
| 一般論 | 経営者が契約更新の3か月前に挨拶に行った場合と行かなかった場合 | 継続率が15%変わる |
| 一般論 | アップセル/クロスセルを営業担当が行う場合と社長が行う場合 | 成約率が25%変わる |
| セールスフォース | マーク・ベニオフが四半期ごとにトップ100アカウントを選定し自ら全社訪問 | 契約継続率が80%→98% |
| アドビ | 永続ライセンスからクラウドへの移行時、CEOが自ら訪問 | 四半期で250社 |
| スノーフレイク | サービス継続の局面で経営者が出ていくことの効果 | 相談に要する時間が37%短縮 |
マイキー氏の論法は一貫していた。80%と98%のどちらが欲しいか。もちろん98%である。その差を抱えるだけで売上が安定する。ではその差は何によって作られているのか。すべてコミュニケーションである。継続率を高くさせるという作業ができないのであれば、その会社は不安定になりやすい。だからこそ、投資先を見つけるなら「喋れる経営者」を見る——ストーリーテリングができ、営業ができ、継続率を担保できる経営者の会社は売上が上がり成長する、という接続になる。
そして最後に置かれたのが、改善との比較である。もちろん事業をやるならサービスは改善しなければならない。だが改善にあまり違いがなかった場合、顧客は「あまり改善していないのに値上げするのか、他社に変えよう」となる。そこで社長が出ていって納得してもらえるなら、そのほうが早い。「来年こうします」とストーリーテリングをすれば時間の猶予ができ、その間に作ってしまえばよい。改善に何十時間もかけるより先に、挨拶に行くほうが安いという主張である。
要確認当日提示された5つの数値は、いずれも公開情報で裏取りできなかった。「15%」「25%」については、講師は「罰金税とかでも出てますけど」と出典に触れているが(ベイン等のコンサルティングファーム名の聞き取りと推測される)、該当する調査を特定できなかった。セールスフォースの「80%→98%」、アドビの「四半期250社訪問」、スノーフレイクの「37%短縮」も、企業のIR資料・報道のいずれにも該当する記載を確認できていない。数値の出所は自分で確認すべき項目である。
ただし、周辺の公開データは検証できた。セールスフォースについては、ドル建ての解約率(dollar attrition rate)が一桁台の9%まで低下した(=金額ベースの維持率約91%)と2018年時点で報じられており、2011年以降で解約が45%減少したとされる。またNRR(純収益維持率)は120%超という水準が示されている。スノーフレイクのNRRはFY2025末(2025年1月31日時点)で126%、四半期別では128%(2024年4月末)、127%(同7月末)と推移している(同社10-Q/決算リリース)。
ここで重要なのは指標の定義差である。当日語られた「契約継続率98%」は顧客数ベースの維持率(logo retention)を指していると読めるが、企業が開示しているのはNRR(既存顧客からの収益が前年比でどれだけ増えたか。アップセルを含むため100%を超えうる)やドル建て解約率である。これらは互いに換算できない別指標であり、「98%」と「126%」を同じ土俵で比較することはできない。自社で継続率を管理する際は、まずどの指標を見ているのかを定義してからでないと、他社比較そのものが成立しない。
アドビのクラウド移行の事実関係。当日CEO名が「インド人の経営者」として想起されていたのはシャンタヌ・ナラヤンである。アドビは2011年に初のサブスクリプション提供を開始し、2013年5月にCreative Suite 6を最後の永続ライセンス版とすると発表、以降はCreative Cloudのみとした。5万人超が反対署名を行う「No Cloud」運動が起き、株価は発表後の数か月で12%下落、2013年に2億ドルの売上ギャップが見込まれた。移行を乗り切った結果、FY2025の総売上は237.7億ドル(前年比11%増)に達している。「顧客を説得して回らなければ成立しなかった移行だった」という文脈自体は、この経緯と整合的である。
議論の中盤、マイキー氏が投げた問いがこれだった。企業が一番参考にすべきは経営者の意見ではなく、PEの動きではないか。彼らを真似ればうまくいくのではないか、と。小賀氏はこれに強く同意し、直近で三社のPE被買収企業の当事者に会っている、と実見聞を語った。
月次のフリーキャッシュフローベースの計画を出せと言われ、徹底的に詰められている。財務担当者は「精神的にもう限界だからやめてくれ」と言うほどの状態だという。それまでは四半期ベースでPL・BSを出し、キャッシュフローは付随的に出す程度だったのが、キャッシュフローを軸に管理される体制に変わった。MBOだったため支払いコストの負担も重い。
カーライル・ジャパンが30%、社長本人が自分で買い、残りを米国本社が持つ構造で、1,000億円規模の利益が出たという。その後は徹底的に業績を上げさせられたが、EXIT後も株価はいまだに戻っていない水準にある。要確認個社が特定できないため、この案件の詳細は検証できていない。
小賀氏がもう一つ挙げたのが、1か月前に買収された会社の話である。「軍が来ました、本当に」。社内に調査チームが並び、米国人も、米国で育った日本人もいる。緊張感がまったく違う、と当事者が語ったという。小賀氏の結論は、キャッシュフローベースでの徹底的な社内管理、KPIを含むレビュー、そしてそれに対するプレゼンという意味で、それまでプレッシャーがなかった人たちがゲームチェンジを強いられている、というものだった。厳しくはあるが、2年で「ものすごく鍛えられた」とも述べている。
マイキー氏はPEの強さを三つに分解した。第一はデューデリジェンスを継続的に行う学習能力である。常に市場を見張り、常にデューデリをかけている状態になっている。第二は強制的なチーム構築である。外部から人を引っ張ってきてでも社内を作り直す。この無理やり性、強制性、独裁性を社内の仕組みに入れて事業を変える。第三はお荷物事業部の徹底的な排除である。人権関係なしに切っていく。この割り切りがないと事業そのものが凹む、という指摘である。
マイキー氏が挙げた実務的な論点がこれである。日本の場合、自社でリストラや事業整理をやると間違いなく叩かれる。だからPEに買ってもらってやってもらえば、「自分たちではなくPEにやられた」と言い訳ができる。ただしマイキー氏の見立てでは、日本のPEはそこまでやってこない。米国のPEなら平気でやる。だから日本企業には米国のPEにどんどん入って整理してもらう必要がある、という主張である。「経営をしている方はPEがどれだけえぐいかを調べてもらえば分かる。じゃないと事業再生できない」。
PEのバリューアップ手法として一般に知られている型は、当日の議論と整合する。買収完了直後の100日計画(First 100 Days Plan)で優先課題を確定させ、月次あるいは週次のKPIダッシュボードで進捗を管理し、CFO・経理体制を入れ替えるか強化する、というのが標準的な流れである。特にレバレッジド・バイアウト(LBO)では買収時の負債返済スケジュールが確定しているため、PLの利益ではなく手元に残る現金(フリーキャッシュフロー)が最優先の管理指標になる。「月次FCF計画で詰められる」という当事者の証言は、この構造から必然的に導かれるものである。
要確認個別の案件(ベイン/カーライルの日本案件、1,000億円の利益)については、社名が特定されていないため裏取りができていない。日本ではカーライル・ジャパンが複数のバイアウトファンドを運用し、ベインキャピタルも日本で複数の大型案件を手がけているが、当日の話がどの案件を指すかは判別できない。
PEの話は自然にキャッシュフロー論へ移った。マイキー氏は自身の講演での実測値を挙げている。450社ほどの前でプレゼンした際に「キャッシュフローを計算している会社はどれくらいあるか」と聞いたところ、5人もいなかった。
日本人はPLマインドだと外国人から馬鹿にされている、というのがマイキー氏の観察である。海外はCFから見る。前田氏もこれに同意し、さらに「キャッシュフローを見る前に、それがどういう構成になっているのか、資金調達がどういう構成になっているのかを見なければならない」と付け加えた。マイキー氏は過去に、キャッシュフロー計算書を頼んだら現預金残高を出してきた人がいた、というエピソードも披露している。求めていたのはフリーキャッシュフローであって、残高ではない。
CF → BS → PL。マイキー氏の言い方では「CFを見てBSを見れば、ぶっちゃけPLはどうでもいい」。理由は明快で、去年起きたことはどうでもよく、今年どうするのかが重要だからである。PLは過去の記録であり、CFとBSは現在の体力と将来の自由度を示す。日本のファイナンス教育がPL・BSに、とりわけPLに重心を置きすぎているのが問題だ、という指摘である。
CFOを務める参加者から、実体験として強烈な事例が出た。9月に入った現職ではPLしか見ておらず、経営者全員が単年度しか見ていない。そこで土日でフォーマットを一から作り直し、BSもキャッシュフローも毎月出すようにした、という。
さらに前職の医療機器メーカーでの話が続く。入社して最初に驚いたのが、棚卸資産回転日数が440日ほどあったことである。経営者はまったく見ていなかった。PLで営業利益率が30%あり、それで満足してしまってBSを一切見ていない。当のCFOはROICもROEも知らなかった。「なんでCFOをやっているんですか」というマイキー氏の問いに対する答えは「年功序列社会だから」だった。
この参加者は実際にベトナムの工場に行き、在庫の山を見て執行役員会に上げ、在庫を半分程度に減らした。当時200日、現在は100日を切っているだろうという。そしてその工場で起きていたのが本末転倒の極みだった。在庫が多すぎて製品を作るスペースが在庫の山に脅かされており、そのために工場を拡張するという話になっていた。在庫を置くために工場を建てる、という状態である。ライフが最長10〜15年の医療機器という商品特性から、社内に「気にしない風潮」があったとも語られた。
「ウォルマートは在庫回転がDXで30日から1週間になった」という発言は、公開財務データと食い違う。ウォルマートの棚卸資産回転日数(DIO)は、2020年初頭に約37日、2022年に50日超のピーク、その後2024〜2025年にかけて40日台前半へ低下、という推移をたどっている。直近では2026年4月期の3か月で41.63日、通期の在庫回転率は9.10回(=おおむね40日前後)である。「1週間(7日)」という水準に達した形跡はない。「元々30日ぐらいだった」という前段も、実際の推移では30日台後半から50日台のレンジで動いている。
ただし、ウォルマートが在庫管理の効率で小売業のベンチマークであること、そしてその改善がサプライチェーンのデジタル化によって進んだこと自体は事実である。方向性は正しく、数値の桁が違うケースとして記録しておく。
440日という数字の意味。棚卸資産回転日数440日とは、在庫が売れるまでに平均1年2か月かかっている状態を指す。仮に年商が同じでも、DIOが440日から200日に短縮されれば、運転資本として拘束されていた現金の半分以上が解放される。PLの営業利益率30%は、この拘束された現金を一切表示しない。参加者が使った「逆ROIC」という表現は、投下資本利益率(ROIC=税引後営業利益÷投下資本)の分母である投下資本が肥大していることで、利益率が高くても資本効率が悪化している状態を指している。PL上の高収益と資本効率の悪さが同居しうるという、この回で最も実務的な指摘である。
中国の在庫について。当日「今の中国は在庫の山になっている」「国内需要を殺しに行っている」という指摘があった。公開統計はこの見立てと整合的である。中国の生産者物価指数(PPI)は2022年10月から下落が継続し、2025年5月は前年比3.3%減(生産者デフレ33か月目)、6月は3.6%減と、2023年7月以来の急落を記録した。消費者物価指数(CPI)は2025年通年で前年比0.0%と、マイナスを記録した2009年以来16年ぶりの低水準となっている。内需が下振れる一方で政府主導の投資と供給能力の積み増しが続き、輸出単価の下落を伴う「デフレ輸出」が観測されている(内閣府『世界経済の潮流2025』、経済産業省『通商白書2025』ほか)。
財務の議論の流れで、マイキー氏はビットコインを財務に組み入れた企業(トレジャリー企業)が軒並み下落していることに触れ、「自分の事業に関係ないところに金を使うな」と述べた。この論点は同日の別テーマ(技術の誇大宣伝と現実)で詳しく扱われたため、本レポートでは深追いしない。ただし「事業と無関係な資産をBSに乗せる」ことがキャッシュフロー経営の対極にあるという位置づけで語られた点だけ、ここに記録しておく。
この日の終盤、参加者から「年収5,000万という分岐点はどう解釈すればよいか」という質問が出た。マイキー氏はこれを、自身が実施している面談・統計データの話として答えている。
前提として、マイキー氏自身が数値の粗さを明言している。「かなりラフナンバーでやったデータ」であり、30構造・40構造といった詳細な解析はしていない。約4,000人分のデータを使い、継続率、約束を守るかどうかといった要素を含めて統計を取った結果である、と。そのうえで示された傾向は以下のようなものだった。
| 観察軸 | 当日語られた傾向 |
|---|---|
| 年収5,000万 | 金を持っている層は忍耐力が強い。ただし人にもよるため、まだ曖昧な数字である |
| 性別 | 女性のほうが数値は良い。男性のほうが堅実で忍耐力がやたら強い層もいる、という別の傾向も併存する |
| 45歳 | 「45歳」という境界がここでも出てくる。ただし全員が全員ではなく、40代・50代・60代・70代でも優秀な人は優秀である |
| 面談での落選基準 | コミュニケーション能力がない人は落とす。1対1で喋れないなら、1対多ではもっと喋れなくなる |
| 女性の年代差 | 50代以上の女性は強い人が多く、しつこさがある。逆に30代女性は弱い傾向 |
| 男性の傾向 | 楽をする傾向が強く、それが45歳以上で短絡的に出る |
マイキー氏が挙げた仮説が興味深い。45歳以降の女性はずっと主婦をしていたケースなどでスタート地点が近く、子どもが手を離れて事業を始めたという人もいるため、新築のような勢いがある。一方で45歳以上の男性はずっと働いているため、実力差の格差が大きく開いている。「女性の上のほうの方がフレッシュな感じがする」というのが面談を通じた印象だという。年齢に関係なくフレッシュな人が良い、とも述べている。
そしてマイキー氏がこの日繰り返した価値観が「しつこさ」である。「ビジネスってしつこさが一番大事だと思っている」。具体例として、前日に1時間半のZoomに付き合わされた話が挙げられた。ある女性が「私を救ってください」「何でもする」と食い下がり、マイキー氏が「その状態ではお金を受け取れません」と断っても、「うんと言うまでZoomを切らない」と粘ったという。結局マイキー氏は金銭は受け取らず、「まずは頑張ってください、いつでもウェルカムなので」と伝えたが、その粘り強さ自体は高く評価している。
要確認このセクションの数値は第三者検証が不可能である。約4,000人という母数、年収5,000万という分岐点、性別・年代別の傾向は、いずれもマイキー氏の内部データに基づくもので外部から確認できない。加えて、面談という場は自己選択バイアス(マイキー氏のコミュニティに申し込む人だけが対象)と観測者バイアス(同一人物が判定している)の両方を強く受ける。講師自身が「かなりラフナンバー」「全員が全員ではない」と留保をつけている点は、そのまま尊重して読むべきである。
ただし「45歳」という境界に労働市場側の裏づけはある。政府統計に基づく報道では、45歳以上の転職者は全転職者の3%程度にとどまり、24歳未満の約3分の1の水準である。男性だけで見ると45〜54歳の転職者比率は65歳以上に次いで2番目に低い。また転職後の賃金についても、40代までは「増えた」が「減った」を上回るが、50代以降は逆転する、というデータが示されている。参加者の一人が「日本全体の労働市場で言われている45歳という境界は、企業の求人情報を見ていると実感としてある」と述べたのは、この構造を指している。マイキー氏の面談データが独立に同じ境界を示したことは示唆的だが、両者が同じ原因を測っているという保証はない。
A(マイキー氏)最悪スタンプを押せばいい。むしろ可能ならフィードバックを返してあげてほしい。文章で返すのが一番よいが、反応するだけでもよい。これはマイキークラブに限った話ではなく、自分の他のビジネスグループでも大体そうである。能力のある経営者は大体返してくる。
補足として、小山氏とは「なぜ俺らしか回答していないのか」という話をよくしており、小山氏の答えは「誰も読んでないんじゃないですか、俺らの言葉なんか」というものだった。二人でクライアントに向けてしっかり文章を書いて送っても、小山氏だけが「あざす」「いいっすね」と返し、他の20人ほどは無言のままだという。
A(小賀氏)非常によく分かる。彼らのデューデリジェンス、発想力、そして買収後にどうEXITするかまで考える点に参考になる部分が多い。たまたま直近で三社のPE被買収企業の人に会っており、一社がベイン、もう一社がカーライルだった。ベインの案件では月次のフリーキャッシュフロー計画を出せと言われて徹底的に詰められており、財務担当が「もうやめてくれ」と言うほどである。カーライルの案件では、カーライル・ジャパンが30%、社長が自分で買い、残りを米国本社が持つ構造で1,000億円ほどの利益が出た。その後徹底的に業績を上げさせられ、EXITしたものの株価はいまだに戻っていない。
1か月前に買収された会社の当事者は「軍が来ました、本当に」と表現した。社内に調査チームが並び、米国人も米国で育った日本人もいて、緊張感がまったく違うという。厳しくはあるが、2年ほどで非常に鍛えられ、「あなたはそれだけ苦労しているが、それによってあなた自身の価値が増えた」と伝えた。
A(参加者・CFO)今の会社には9月に入ったばかりだが、やはりPLしか見ていない。しかも経営者全員が単年度しか見ていない。前任のCFOが辞めて自分が入ったので、土日でフォーマットを一から全部作り直し、BSもキャッシュフローも毎月出すようにした。
海外で仕事をしていたときも、BSは浸透しておらずみんなPLしか見ていなかった。医療機器メーカーにいたときに最初に驚いたのが、棚卸資産回転日数が440日ほどあったことである。経営者はまったく見ておらず、PL上の営業利益率30%で満足していた。当時のCFOはROICもROEも知らなかった。理由は年功序列社会だから、である。ベトナムの工場に行って在庫の山を見て執行役員会に上げ、その後在庫を半分程度に減らした。当時200日、今は100日を切っているだろう。
その前にいた化学メーカーでは社長が公認会計士だったが、管理会計をまったくやっておらず、やはりPLしか見ていなかった。製品別損益も出せていなかった。
A(マイキー氏)5,000万というのも人によるので、まだ曖昧な数字である。ただ、金を持っている層は忍耐力が強いということだと思う。かなりラフなナンバーでやったデータで、30構造・40構造といった解析はしていないので、アウトプットしただけのものである。約4,000人分のデータを使い、継続率や約束を守るかどうかも含めて統計を取った結果、大体それぐらいになった。女性のほうが数値は良く、男性のほうが堅実で忍耐力が強い層もいる。45歳という境界はここでも出てきた。ただし全員が全員ではなく、傾向の話である。20代でもダメな人はダメである。
A(マイキー氏)基本的にコミュニケーション能力がない人は落とす。面談は1対1なので、みんなコミュニケーション能力が高くなる場面である。それでも1対1で低かったり、何を考えているのか分からない人は大体落としている。1対1でこれだけ喋れないなら、1対多になったらもっと喋れなくなると判断する。これは継続力のときと同じで、結局は最初の印象だけでもいい。
女性を見ている感じでは、女性のほうが長期的目線が長い。短絡的な思考ではないということである。男性のほうが楽をする傾向が強く、それが45歳以上で短絡的に出る。50代以上の女性は強い人が多く、叩かれ強い。逆に女性は30代のほうが弱い。50代のほうがしつこい。ビジネスはしつこさが一番大事だと思っている。
45歳以降の女性はずっと主婦をしていたなどでスタート地点が近く、子どもが手を離れて事業を始めた人もいるため、新築のような勢いがある。一方で45歳以上の男性はずっと働いているので、実力差の格差が大きい。女性の上のほうがフレッシュな感じがする。フレッシュな人は年齢に関係なくよい。
A(マイキー氏)これはマイキークラブの会員ではなく、その前段階の人たちのデータである。マイキークラブの面談数だけで2,000数百件あり、これも今データを集約中である。この1か月の面談でも、小山氏のところ以外を含めて実施したが、やはり45歳以上の男性ほど落としている。