NVIDIAは前年比73%増という数字を出して株価を下げた。同じ週、AnthropicとGoogleが桁違いの資金を調達した。ラック電力密度が跳ね上がり、空冷では追いつかなくなる。この回の後半は、決算の読み方から冷却部材の銘柄名までを一本の線で繋いだ講義だった。
講義はNVIDIAの決算を参加者に説明させるところから始まった。指名された参加者は、過去最高の数字が出たのに決算前に上がっていた株価が決算後に下がった、その理由が読みきれなかった、と答えた。講師の評価は「素晴らしい、その通り」であり、そこから本題に入る。今回のGAFAM決算でも、Microsoft・Amazon・Google・Metaはいずれも良い数字を出したのに、上がったのはGoogleとMetaだけで残りは落ちた。すなわち、業績を上げる会社に価値がないということが今回完全に証明された、というのが講師の言い方だった。
数字そのものは圧倒的である。売上高681億ドル、前年同期比73%増。データセンター部門は75%増。通期の売上高と純利益も桁違いで、次の四半期には780億ドルと、三か月で100億ドル積み増すガイダンスまで出した。それでも株価は下げた。講師の読みは明快で、投資家は今の利益については安心しているが、未来の成長持続性に強い疑念を抱いている、というものである。
疑念の内訳として三つが挙げられた。第一に、データセンター一本足の脆弱性。売上の91%がそこに寄っているため、AI側に問題が起きれば一気に崩れる。第二に、顧客のキャッシュフロー。高いチップを買っているのに、それが顧客側の利益として十分に現れず、むしろキャッシュフローが減っている。第三に、GPUの残存価値である。GPUは学習・推論・データ分析という三段階で使われ、一、二年で学習の最前線から降りて推論に回される。だが推論にそれほどの需要が集まるのか。回せない分が余れば、GPUにそんな価値はないという評価が下る。ブラックウェルも同じ道を辿る、と。
そのうえで講師は、ドットコムバブルとの違いを一点だけ挙げた。当時は光ファイバーを作れば誰かが使うという前提で作りすぎ、価格が暴落して倒産が続いた。今のデータセンターは予約待ちの需要過剰の状態にあり、供給過剰ではない。加えて米国の運営企業には潤沢な自己資金がある。それでも足りずに債券発行に踏み切っている――Metaのようにほぼ無借金だった企業まで調達を始めた――のが現在地である、という整理だった。
講師はまず、1月決算という時期の意味を復習として置いた。この会社はもともとゲームの会社であり、決算期がそこに由来している。だから1月末にジェンスン・ファンが中国を訪れることにも意味がある、という話が過去回で扱われている。今回はその決算そのものが転換点になった。
図1:NVIDIA 四半期売上高と次四半期ガイダンス(単位:億ドル)。実績値はNVIDIAの決算発表に基づく。FY2027 Q1は会社ガイダンス(780億ドル±2%)。
講師が繰り返し強調したのは、この驚異的な成長がすでに投資家に織り込まれ、慣れられているという点だった。だから今見られているのは別のところにある。二年前からYouTubeで言い続けてきた「実業でAIを使ってしっかり利益が上がっているかどうかを見られる時代が来る」が、本格的に始まったのだ、と。NVIDIAの顧客が高いチップを購入しても、それが十分にキャッシュフローに現れていない。むしろ減っている。この一点が株価の重石になっている、という読みである。
AI業界は実験段階からインフラ段階へ移行する転換点にある、というのが講師の時代認識である。そのうえで、これまでOpenAIの一強だった構図が三つに分かれてきたと整理された。法人特化(B2B)がAnthropic、インフラ統合がGoogle、消費者基盤(B2C)がOpenAIである。
| 領域 | 米国 | 中国(講師が挙げた対になる企業) | 根拠 |
|---|---|---|---|
| 法人特化・専門性 | Anthropic | Zhipu AI(智譜) | 金融・医療・製造など専門領域に強く、B2B市場に特化している点 |
| インフラ・エコシステム統合 | Baidu(百度) | 検索エンジン・クラウド・デバイス・自社チップまで垂直統合している点 | |
| 消費者基盤 | OpenAI | DeepSeek | 一般消費者の利用量が最大。ただしDeepSeekは検索寄りという留保つき |
| (補足)動画・クリエイティブ | OpenAI | MiniMax | 動画生成・クリエイティブツールの領域で評価が高いとされた |
Anthropicについては、量ではなく質という自身の持論の実例として位置づけられた。専門性が高いほど信用性と安全性が要求されるため、安全性に振り切った戦略が法人市場で効く。金融にも医療にも強く、重要市場と言われる専門性の高い分野で圧倒的な強さを持つ、と。同社の資金調達額300億ドル、評価額3800億ドル、売上10倍という数字が挙げられ、スタートアップとしてはOpenAI・SpaceXに次ぐ規模になったと説明された。Claude Codeについては、従来のチャット型AIが相談役だったのに対し、これは実行役に変わったという言い方がされている。
Googleについては、100年債の発行が取り上げられた。テック企業として28年ぶり、前回はモトローラだった、という説明である。用途はデータセンター構築と同時に電力確保、そして半導体開発。今のGoogleが作ろうとしているのはデータセンターではなく電力そのものだ、というのが講師の読みだった。そしてGoogle最強論の根拠として、AnthropicにGoogleが投資していること、TPUが広がることでGoogle CloudとAWSが優先的に使えるようになること、Appleが結局Geminiと組んだことが挙げられた。
OpenAIについては数字が厳しい。2026年の損失予想は140億ドル。加えて、技術者がAnthropicに引き抜かれるのではないかという指摘が米国の専門家から出ている、と紹介された。もともとAnthropicはOpenAIから独立してできた企業であり、内部の人脈が強い、というのが講師の説明である。トラフィックシェアも、ChatGPTが2025年1月の86%から64%まで下落し、その分をGoogleのGeminiが取っている。
図2:チャット型AIのウェブトラフィックシェア推移(単位:%)。講義で言及された2025年1月・2026年1月の数値を、公開集計値(Similarweb系データを引用した報道)で裏づけたもの。2026年4月時点はより新しい集計による参考値。
ここがこの回の主題である。ブラックウェルの供給によって熱設計電力が大幅に上がり、ラックあたりの電力密度が従来のデータセンターの数倍になる。電力が増えれば運用方法が変わる。これまで空冷だったものが、液体による冷却に変えざるをえなくなる。だから液冷の技術を持つ会社の株が上がる――「僕がずっと予測してYouTubeで一年も二年も喋ってきたことが、今もう起きている」というのが講師の言い方だった。
そのうえで、講師は具体的な企業名を挙げていった。まず米国のVertiv Holdings。ブラックウェル専用の冷却デザインを作っているのがここであり、間違いなくVertivだ、という言い方だった。次にSchneider Electric。エネルギー管理と冷却を統合したソリューションを出している。そしてnVent。実際に冷却ソリューションを大規模に展開している。
そこから重要部品として日本企業に話が移る。筆頭がニデック(旧・日本電産)で、拠点あたりのサーバー用水冷モジュールの生産能力を10倍に拡大している点がポイントだと説明された。国内の液冷フロントランナーとしては、ダイキン、住友精密工業、三菱重工業、富士通が挙げられ、冷却が必要なスーパーコンピュータの存在にも触れられている。加えて、ブラックウェルの生産をめぐってFoxconnがパナソニックの工場を買収したという話も出された。
| 企業(講師が挙げた順) | 講義中の位置づけ | 裏取り状況 |
|---|---|---|
| Vertiv Holdings(米) | ブラックウェル専用の冷却デザインを担当。最注目 | 液冷を含むデータセンター電源・冷却の主要サプライヤーであることは公開情報と整合 |
| Schneider Electric(仏) | エネルギー管理と冷却を統合したソリューション | 電力管理と冷却の統合提供は同社の事業内容と整合 |
| nVent(米) | 冷却ソリューションを大規模展開 | 液冷を含む電気接続・熱管理製品を扱う企業として整合 |
| ニデック(6594) | サーバー用水冷モジュールの生産能力を10倍に拡大 | 数字は確認できるが時期がずれる(下記補足) |
| ダイキン/住友精密工業/三菱重工業/富士通 | 国内の液冷フロントランナー | 個社ごとの液冷事業規模までは今回未検証要確認 |
| Foxconn/パナソニック | Foxconnがパナソニックの工場を買収し、ブラックウェル生産が入る | 買収の事実を確認できず要確認 |
前田氏からの問いかけで、米中のどちらが進んでいるかという議論に入る。前田氏の整理は、まず何が米国で進み、何が中国で進んでいるかを明確に分ける必要がある、というものだった。エネルギーインフラに関しては完全に中国が進んでいる。だからこそ、中国側で伸びてくる企業に対応する企業を米国から探すことが重要になる、と。
マイキー氏の応答も同じ方向だった。M7クラスの企業は自前で統合できる資金力を持ち、それによって企業価値を上げていく。この動きは中国企業にはできておらず、ここは米国が強い。ただし国全体で見れば中国のほうが進んでいる。GPUの生産では米国が上だが、中国は安いコストで出せることと、UIの作り込みが非常にうまいという強みを持つ。
Microsoftについては、やや遅れているという評価が示された。ただしAnthropicに投資したことで変わる可能性がある。もともとMicrosoftは最強のB2B企業であり、GoogleとAmazonはB2Cが強かった。そのGoogleがAnthropicを通じてB2Bにも一気に広がってくると、Microsoftが落ちる可能性がある。逆にMicrosoftがAnthropicを取り込んで既存のB2Bをさらに強化するなら、Anthropicの力は絶対に必要になる、という両にらみの見方だった。
Anthropic自身の制約についても議論があった。前田氏が、エネルギーやチップの内製化を進める必要があるのではないかと問うたのに対し、マイキー氏は、そこはAmazonとGoogleが押さえているためAnthropicはあくまでソフトウェアの会社であり、当面はソフトで行くのではないかと答えた。半導体の設計まで手を広げるのは今の体制では合わない、という見立てである。
終盤、参加者から「地兵(土地)に価値がなくなりエネルギーにシフトしている。ハイパースケーラーだけでなく国も一緒にやらないと駄目で、反トラスト法を敷いている時点で中国に勝てないのではないか」という問いが出た。マイキー氏はこれに同意し、日本については原発反対の議論が続いている時点で電力の議論が成立していない、と厳しく評価した。さらに、中国が高速道路建設で立ち退きに応じない住民の家の周りに工事を進めてしまうような強制力を例に挙げ、そのくらいの強制力がなければインフラは作れない、と述べた。
関連して、セキュリティ領域についてはCrowdStrikeが最強になるという見方が示された。AIにセキュリティを内製化させる方向にも懸念があり、エラーが起きたときに人が監視して戻せるのかという問題が残る。マイキー氏は、Amazon Goの「Just Walk Out」が完全自動に見えて実際には裏で多数の人間が監視していた例を挙げ、セキュリティ分野でも当面は人の監視が続くだろうと述べた。
本セクションはClaudeによる事後検証であり、勉強会での発言ではない。2026年2月28日時点で語られた見通しについて、2026年8月末〜9月初旬時点の公開情報と突き合わせた結果を記す。
| 2026年2月時点の見通し | 2026年8月時点の状況 | 判定 |
|---|---|---|
| Anthropicは今年中に黒字化するのではないか | 2026年第2四半期に営業利益5.59億ドルを計上し、初の四半期営業黒字を達成した。売上ランレートは7月末時点で650億ドル超(5月時点で約470億ドル、2025年末は約90億ドル) | 当たり |
| Anthropicは2026年中に上場するかもしれない | 6月1日に非公開でIPOを申請。10月の上場を想定した観測が出ており、投資家は約2兆ドル規模の評価を狙っていると報じられている | 当たり |
| 液冷は必ず来る。Vertivに注目すべき | Vertivは通期売上ガイダンスを135億〜140億ドルへ引き上げ、受注残は150億ドル超。株価は年初来で7〜8割上昇した | 当たり |
| 日本の液冷本命はニデック | 液冷というテーマ自体は継続して評価されたが、株価は8月中旬に2,815円をつけたあと9月初旬に2,470円へ調整。ガバナンス不安と業績回復期待が交錯する状態が続いた | テーマは的中、個別株は素直に反応せず |
| Googleが最強になる(Gemini・TPU・Apple提携) | Geminiのトラフィックシェアは21.5%(1月)から27.9%(年央)へ拡大。Apple Intelligenceへの統合も進行 | 当たり |
| 中国ではZhipu AIがメディアに取り上げられるようになる | 時価総額は香港ドル建てで1兆香港ドルを突破。上半期売上は前年同期比約400%増。中国のAI純粋銘柄として最大の時価総額に | 当たり |
| 好決算でも株が売られる状態が続く | 2月の決算後にNVIDIA株は約5%下落したが、8月26日の決算では時価総額が4000億ドル超増加し、株価は回復した。7月にチップ株全体で1兆ドルが失われたのちの反発局面 | 短期は的中、通年では反転 |