OVERVIEW / 本レポートの位置づけ
本レポートの概要|投資判断の実践と日本企業論
この回のレポートは全3本に分割しています。本ファイルはその3本目、テーマは「投資判断の実践と日本企業論」です。
バックログ急増
3〜6ヶ月
Vera Rubin投入後の見通し
Samsung歩留まり
60%代
Appleから外れた要因、Innolightと対比
NTT IOWN推進
約30年
株価は横ばいで評価に課題
学習効率比率
1:7〜8
ギフテッド教育の勉強・アウトプット比
本パートではバックログ(受注残)の重要性を扱う。受注残が積み上がっている銘柄は先々の売上が確定しており、HBMメモリー業界がSK・Micronの長期契約化によって安定投資先へ転換した前例が光通信にも当てはまるかが焦点。NVIDIA Vera Rubin投入を機に今後3〜6ヶ月でバックログ急増と長期契約締結が相次ぐ可能性や、Q&Aで議論されたハイブリッドボンディングとの関係、Innolightの歩留まり92%とSamsungの60%代の対比なども合わせて紹介する。
続いて、光通信技術で世界有数の実力を持ちながら株式市場での評価が低い日本企業の課題を扱う。藤倉や住友電工は高品質な部材供給力を持つものの、Corningのような規格の「ルールメーカー」になれておらず、NTTのIOWN構想も約30年推進しながら株価は横ばいという「技術力はあるがナラティブが伝わらない」構造的な問題を確認する。
最後に、マイキー氏が提示する投資実践フレームワークとして、バックログの量、長期契約の有無、セグメント構成、アクティブ/パッシブ層のタイムラグ、決算書のナラティブ変化という5つの確認ポイントと、参加者向けの宿題リストを整理する。あわせて「情報量が多いほど学習効果が下がる」という認知負荷理論に基づく学習効率の話にも触れる。
Section 7
主要Q&A・ディスカッション
ハイブリッドボンディングで銅配線を削減すると、光通信と矛盾しないか?
矛盾しない。銅配線削減(ハイブリッドボンディング)は「チップ間の内部配線を裏面・近傍に集約する」話。光ファイバー化は「サーバー間・データセンター間の外部通信を光に置き換える」話。スコープが異なる。ハイブリッドボンディングは熱効率を大幅に改善し、光通信への移行と並行して進む。(前田氏の質問→マイキー氏回答)
光通信業界で長期契約がまだ結ばれていないのはなぜか?
従来の光通信部品は銅線が主流で、GPU更新サイクルに合わせた部品交換のタイミングが明確でなかったため。NVIDIA Blackwell / Vera Rubin世代から銅→光への本格移行が始まるため、今後3〜6ヶ月で調達・長期契約の動きが加速すると予測。(マイキー氏)
Lumentumの光スイッチ(OCS)は低電力という観点でも注目されるか?
その通り。電気変換を省略することで消費電力60%削減。データセンターのランニングコストの大部分を占める電力費を劇的に減らせることから、省電力・グリーンデータセンターという観点でも引き合いが強まる方向性。(マイキー氏)
Innolight(中国企業)がマレーシアに工場を移すことは中国政府的にOKか?
問題ない。中国企業が輸出できなくなることが最も痛手であり、アメリカ向けの売上を確保するために海外製造は合理的な判断。シーメンスのように外部でも製造して主要マーケット(米国)へのアクセスを確保する戦略。(マイキー氏)
TSMC・ブロードコムが光通信の規格に名前が上がってこないのはなぜか?
現状ではコーニングがマルコアファイバー規格を主導し、NVIDIAと組んでいる構図。TSMC・ブロードコムはパッケージング・半導体設計の企画には関与しているが、光通信の物理接続規格はコーニングが主導権を握っている。OSAT(後工程受託製造)の観点でASE・Amkorが絡む話は別セッションで扱う予定。(前田氏の質問→マイキー氏回答)
歩留まりの強弱が投資判断にどう影響するか?
製造組み立ての歩留まり(yield)が高い企業は、同じ材料・設備投資から得られる出荷台数が多いため利益率が高くなる。Innolight の92%は異次元の数字で、Samsungが歩留まり60%代でAppleから外されたことと対比すると中国メーカーの優位性が際立つ。Coherent・Lumentumは組み立て工程自体を持っていないため比較できない。(マイキー氏)
Section 8
日本企業の課題 ── 技術力 vs ナラティブ
光通信・光トランシーバー技術で実は日本企業は世界有数の技術力を持つが、株式市場での評価は低い。その理由をマイキー氏・前田氏が分析。
日本企業の強み
- 光ファイバー・コネクター製造技術は世界トップクラス
- 光トランシーバー技術の蓄積が豊富
- 精密製造の品質管理が高い
- NTTはIOWN(光通信基盤)構想を推進中
日本企業の課題(「日本病」)
- IRやナラティブ(投資家への語り)が下手
- 標準規格・ルール策定に参加できていない
- グローバルエコシステムへの自社取り込みが弱い
- セグメントの整理が遅く複合事業ディスカウントが続く
| 日本企業 |
技術・ポジション |
課題・評価コメント |
| 藤倉 |
高品質ファイバー・コネクター |
「優秀なパーツ屋」に留まる。ルールメーカーになれていない。特許切れの懸念もあり。 |
| 住友電工 |
国内最大の光ファイバーメーカー |
技術力はあるが外部への営業・IRが弱い。海外展開も限定的。 |
| NTT |
IOWN構想(All-Photonics Network) |
光通信構想を30年推進も株価30年横ばい。お荷物事業が多くナラティブが通じていない。 |
日本企業が取るべき方向性(マイキー氏の見解)
単体でやろうとせず、ルールメーカー(Corning・NVIDIA等)のエコシステムに積極的に取り込まれる戦略が必要。技術力をナラティブで訴求し、グローバル投資家に理解させるIR力の向上が急務。
参考:
プリズミアン(イタリア)は海底ケーブル・地中ケーブルで強固なエコシステムを構築し急成長。
Amphenol(米)はコネクター分野でエッジの立ったビジネスモデルを持つ。
Section 9
投資実践フレームワーク ── 技術理解と株式分析の統合
マイキー氏の投資分析メソッド(光通信版)
株式分析で最重要なのは「技術の理解」。技術を知ることで、製品ライフサイクル・需要発現タイミング・受注から納品までのリードタイム・バックログの意味が分かるようになる。光通信分野では以下を必ず確認する:
①
バックログ(受注残)の量と伸び:先々の売上の確度を表す先行指標
②
長期契約の有無・期間:安定経営の根拠(HBMのように契約化されているか)
③
セグメント構成:AI事業の比率が高いほど高いマルチプルで評価される
④
アクティブ/パッシブのタイムラグ:どちらが先行しているかで次の狙いを決める
⑤
決算書でのナラティブ変化:Corningのように事業統合+AI集中宣言があれば株価上昇の予兆
宿題リスト(参加者向け)
- Corning の2026年3月期決算書を読み、セグメント統合とナラティブ変化を確認する
- 藤倉とCorningの違いを具体的に調べる(パーツ屋 vs 規格メーカーの対比)
- Innolight・Lumentum・Coherent の直近決算書でバックログと長期契約の記述を確認
- NVIDIA Vera Rubin の発売スケジュールと採用光通信部品の仕様を確認
- 認知負荷理論(Cognitive Load Theory)を理解して、アウトプット比率を高める
学習効率の話(マイキー氏の補足)
ギフテッド教育では「1時間勉強→7〜8時間アウトプット(議論・プレゼン)」が標準。
情報量が多いほど学習効果が下がる(認知負荷理論)。マイキークラブの情報量は通常の20〜30倍あるため、参加者は倍以上のアウトプットを意識しないと吸収効率がほぼゼロになる。