この回のレポートは全4本に分割しています。本ファイルはその3本目、テーマは「中国EV戦略とQ&A全記録」です。
本パートは、戦略論の実例として中国のEV産業を扱う。BYD・吉利・奇瑞・NIO・小鵬・理想・小米など多数のメーカーが並立する理由は、「どこかが生き残ればいい」というレジリエンス志向と、複数のプレイヤーを持つことで規制をすり抜けやすくする狙いにある。BYDのような垂直統合モデルと吉利・NIOに近い水平分業モデルの違いも扱われ、合肥市がNIO中国に50億元を投じて17%を取得した事例など、中央政府と地方政府の二層構造も紹介される。
続いて、中国企業が実は協力し合っていないという指摘からレッドクイーン理論が導入される。競争し続けなければエコシステム自体が死ぬため、あえて競争環境を作り出しているという整理である。ここで訂正されるのが「いいものが生き残る」という理解で、正しくは「広まるものが生き残る」のであり、その補助線としてポリアの壺モデルが宿題として示される。
後半は硫黄島の戦いをケーススタディとして扱う。36日間の戦闘は「戦略的には完全に負けている」状態で行われた戦術の最大化であり、選択肢がゼロになった場所では戦略そのものが成立しないことを示す否定形の教材として提示される。そして本パートには、これら前半・後半を通じて交わされた質疑応答の全記録も収録している。
参加者から、中国側メーカーが自らの力を最大化する戦略を取った結果としてトヨタが見劣りしたのか、という質問が出た。回答は、トヨタという文脈というより「いかに自分たちの力を最大化するか」という発想が先にある、というものだった。
ここで技術的な理由が示される。EVとガソリン車を開発の観点で比較すると、実はガソリン車のほうが開発しにくい。EVはデータ化しやすく、予測モデルが作りやすく、シミュレーションどおりの性能を出しやすい。設計図どおりのパフォーマンスが出る。一方ガソリン車はシミュレーションどおりにいきにくく、これまでのノウハウの蓄積がきわめて重要になる。つまり後発が入り込みにくい領域である。ならば、そこから相手を外すにはどうするか——その答えの一つがEVだった。
ただし講師は、EVという単一の賭けではないと強調した。ESGというトレンドが同時期に立ち上がり、モビリティをESGの文脈で語れば乗れるのではないか、という読みもあった。複数のトレンドを見ながら選択肢を増やすやり方の中で、EVがはまって当たったから伸びた、という順序である。
では、なぜBYD、吉利、奇瑞、蔚来(NIO)、小鵬、理想、小米……とこれほど多くのメーカーが並立するのか。答えは端的に「どこかが生き残ればいいから」である。今は拡大の時期であり、複数の選択肢を持つことでレジリエンス=生き残りを確保している。
加えて規制への対応がある。BYDは確かに強いが、ヨーロッパの一部の国や米国はかなり警戒している。規制は明らかに意識して厳しく作られがちで、一社だけでやれば目立つ。複数のプレイヤーを持つことで、問題が出たときに対処でき、規制をすり抜けやすくなる。つまり国としてどう対応するかという単位でEVが設計されている。だからBYDだけを見るのではなく、小米はどういう戦略か、吉利は、蔚来は、と重ねて見ることで初めて中国の戦略が見えてくる。
野村総研の用語解説では、垂直統合=「商品・サービス供給に必要な工程の範囲を広げること」、水平統合=「特定の工程を担う複数の企業が一体化すること」と定義されている。一方セッションで使われた「水平分業」(工程ごとに専業企業が分担するモデル。ファブレス+ファウンドリ等)の権威ある定義は、今回取得できなかった。両者は別概念であり、混同しないよう注意。
出典:https://www.nri.com/jp/knowledge/glossary/suicyoku_suihei.html
参加者から、BYDがハイブリッドを積極的に作っているのは逆ベクトルではないか、という指摘が出た。これに対し講師は、逆方向に見えるがこれも戦略的に合理性がある、と答えた。中国の一般的な進め方は、先にEVを作ってノウハウと情報を集め、そのあとでガソリン/ハイブリッドのモデルを作る、という順序である。EVは新規性の高い層が買うモデルで、ガソリン車は既存のモデルを買う層が多い。既存層にも新規層にも売れる状態を作り、両方を自社で囲い込む——そのためにこの戦略が有効になる。
水素については別の話をしなければならない、と切り分けられた。技術的にできることと実用化はまったく違い、水素はコストがかかりすぎる。実用化のレベルで採算に見合ったところは、調べる限り今のところ出てきていない。参加者からは「バスで小規模な実用が始まった程度」という補足があり、認識が共有された。
「中国の指導部が国策として各企業を取りまとめているのか」という質問には、一概には言えないという前置きのうえで、二つの仕組みが説明された。第一に、中国は重点分野を明示した文書を出しており、その分野はバックアップされる。第二に、その中で優遇する企業を実名で出している場合がある。さらに重要なのが、中央政府と地方政府の両方が関わっているという点で、企業側が中央と地方の双方を取り込めるかどうかで選択肢が変わってくる。
例として蔚来(NIO)が挙げられた。合肥市に自社株式をかなり多く保有してもらうことで一気に資金を得て、それによって開発を進めた、という組み方である。
合肥モデルの規模:合肥市GDPは2010年2,700億元→2022年1.2兆元。3大市属国有資本プラットフォーム(合肥建投・合肥産投・興泰控股)の総規模は7,800億元超、10年以上で戦略的新興産業に累計投入資本金1,600億元超、プロジェクト総投資5,000億元超。主要投資案件は京東方(BOE)、長鑫存儲(CXMT)、蔚来汽車(NIO)。
出典:https://www.scmp.com/tech/tech-trends/article/3166064/ / 人民日報『中国経済週刊』2023年5月30日
セッションでは「中国がホワイトペーパーを出して重点分野を示している」と述べられたが、中国政府が「産業政策白書」という名称の文書を発行しているという事実は確認できなかった。中国の重点産業政策は、五カ年計画・国務院通知・政府活動報告・部門実施意見といった形で示される。
実体としては以下の通り。「中国製造2025」(2015年5月19日公布、10大重点分野)は2019年以降、米国の批判を意識して公式の場では使われなくなった。現在の中核概念は「新質生産力」(2023年9月に習近平が提起、2024年から本格化)。「未来産業革新的発展推進に関する実施意見」(2024年1月29日、工業情報化部など7部門)が重点6分野(製造・情報・素材・エネルギー・空間・ヘルスケア)を定めている。優遇企業の指定制度としては「専精特新」中小企業や信創リストが実在する。
「中国の企業には協力しているという認識があるのか」という質問に対する回答は明快だった。協力しなくていい。一部には協力もあるが、あえてそこまで協力しなくてよい。理由がレッドクイーン理論である。競争し続けないとエコシステム自体が死んでしまうため、あえて競争環境を生み出す。ただしその中でも重点を置いている企業はあり、ここに勝ってもらいたいという意図は明確に存在する。
自分が400点、周りが500点なら、自分も500点を目指す。600点を取れば周りも600点になる。700点になれば周りは800点、900点を狙ってくる。互いに時間と投資を削り合いながら、結果として全体が成長していく。この共進化がレッドクイーン理論である。
ここで参加者から「いいものが生き残るということか」という確認が入ったが、講師はこれを訂正した。いいものではなく「広まるもの」が生き残る。品質が高いことは、イコール広まることを意味しない。この点を理解するための補助線として提示されたのが、ポリアの壺モデルだった(宿題として調査が指示された)。
そして数の話。中国のEVスタートアップは元々150社ほどあり、最終的に残っているのは10社ほどだという。残りは潰れるか買収されるかで消えた。トーナメント戦を勝ち抜いた10社が強くないわけがない、という論理である。フィジカルAIでも同じ構造が進行しており、中国だけでスタートアップが200社あって互いに削り合っている、と述べられた。
中国EVスタートアップの社数:2018年ごろ中国には500社超のEVスタートアップが登記されていた(IEA / McKinsey引用)。2018〜2025年に約400社が事業停止し、2025〜2026年時点で残存ブランドは約100社。McKinsey予測では2030年までに生き残るのは50社未満。
→ 出発点は150社ではなく500社超、現在は10社ではなく約100ブランド。ただし「実質的に競争力があるのは10社程度」(BYD, 吉利, 奇瑞, SAIC, NIO, XPeng, 理想, 小米など)という意味であれば、業界の一般認識として大きく外れてはいない。「10社」は生き残った企業数ではなく主要プレイヤー数として扱うべき。
フィジカルAI/ヒューマノイド「200社」:中国工業情報化部(MIIT)の公式統計では2025年時点で140社超、機種数330超。「200社」を裏付ける公的・主要メディアのソースは見つからなかった。数字を出すなら「MIIT公表で140社超」を使うのが安全。なお2025年に中国企業が世界のヒューマノイド出荷の約85%を占め、2026年8月のBloomberg報道では97%まで上昇。2026年の出荷は前年比+300%、年初来で最大3万台。
出典:Stanford GSB / Pólya urn model / EconPapers (Arthur 1989) 裏取り済
参加者から、硫黄島の戦闘に今回の戦略論を当てはめて聞いていた、という発言があった。大きな戦略としては本土爆撃を遅らせるための時間稼ぎ、戦術としては島の制圧を許さない、万歳突撃を禁じる、ゲリラ戦で長期化させる——これは自分の力を最大化し相手を最小化する行為ではないか。ではデータフライホイールに当たるものは何か。島中に張り巡らせた地下壕や、高地を渡さないことか、と。
回答は、明確な否定から始まった。硫黄島はあの時点で、戦略的には完全に負けている。取れる方向が「硫黄島で時間を稼ぐしかない」という一点に絞られている時点で、そもそも戦略が取れない。選択肢がゼロだからである。したがってそこで行われたのは、時間稼ぎを最大化するにはどうするかという戦術の話に限定される。
実際に何をしたか。米軍が来ることは分かっていたので、壕を掘って隠れた。基本は二つだけである。いかに相手から見にくくするかと、どれだけ我慢できるか。島に上陸しても日本人がいるはずなのに誰もいない、どこから出てくるか分からない——この状態が恐怖を煽った。
別の参加者から補足が入った。当時すでに制海権と制空権を奪われており、その段階で持久戦しか選択肢がない。相手の思惑をずらすことしかできず、戦略としては失敗している。ただし数日で終わるはずの戦闘を36日間引き延ばした点は、戦術として非常に効果的だった。沖縄戦でも同様で、指揮官自らが率先して壕を掘る。硬い地盤で大の男が頑張っても1日20cmしか掘れない。だがそれを掘ることで上空からの砲撃を全て防げる。誰の想像も超えた忍耐だったからこそ、米軍は予測できなかった。普通の指揮官なら判断しないことを判断し続けた、というリアリズムである。
質問者自身が「企業はゴーイングコンサーンを前提とするので、この場では使わしくない教材か」と整理し、講師も同意した。その場所での最大化という意味では栗林中将は最大化された。それ以上のやり方は正直言ってない。だが戦略という意味では、もっと上のレベルの話になるため、取れていない。
そして講師はこう締めた。戦術レベルの見事さをそこで評価してしまうと、本来「そこを撤退して、次にどうやって戦略を組み立て直すか」を判断すべきだったという問いが消えてしまう。
講師は戦略の話で記憶に残っているものとして、2014年サッカーW杯前の本田圭佑のインタビューを挙げた。「今後3試合を戦っていくうえで戦略は何ですか」と聞かれ、「3試合の戦略を聞くとはどういうことだ」から始まり、各試合の準備をするものの数で決まるのだ、と答えたという。どれだけ準備するかが戦略であって、今準備している段階で戦略など話せるわけがない、と。戦略を正しく理解しているサッカー選手だと感心した、というエピソードである。
日本語・英語の複数検索(AFP/Goal.com/Sportiva/Number 等)を行ったが、本田圭佑が2014年FIFAワールドカップ前のインタビューで「戦略」について語った発言は、一次・二次いずれの資料でも確認できなかった。
同時期に確認できた実際の発言は「日本がW杯で優勝できない理由はない」(2014年5月31日、米フロリダ州クリアウォーターのホテルにて報道陣の質問に対して。AFPBB News、記事掲載6月2日)。この記事内に「戦略」という語を使った本田の発言はない。
エピソードとして引用する場合は、原典が特定できていない旨を添えるか、引用を取り下げるのが安全。
出典:https://www.afpbb.com/articles/-/3015118
無理。そもそも日本がルールメーカーになることはない。ルールメーカーになるのは米国と中国だけである。ルールを作る権力と、量で覆そうとする側の対立が米中構造であり、NVIDIAが日本に求めているのはサプライチェーンの確保にすぎない。ただしサプライチェーンに入り込めれば勝ち組にはなれる。SamsungもSK hynixもAIのルールメーカーではないが、HBMを供給する立場として勝ち組である。ルールメーカーにはなりづらいし、米国がそうさせない。
キャラクターが際立つから。青峰が出てきた時点で「こいつにどう勝つのか」が想像できず、一度アニメを止めて頭の中を整理したほどインパクトがあった。(好きなキャラクターは赤司と青峰。)
なぜ社会的弱者になったのかというプロセスが重要である。子供は親を選べず、東南アジアの子供は環境を選べない。五体満足で生まれなかった人もいる。そういう人たちが生きられる仕組みは必要だと思う。だが五体満足で生まれて社会に出た後に漏れたのは努力不足であり、そこは知らない。
耳が聞こえない子は聞きたくても聞けないし、話せない子は話したくても話せない。五体満足なら全部フル活用してなんぼだろう。伝わらない言葉で必死に伝えようとしてくる相手には、こちらも耳を傾け、手で伝えるなど工夫する。意思疎通とは、こちらが頑張って聞こうとするのと、向こうが頑張って喋ろうとするのが一致して初めて成立するものである。
近いというか、まさにその例である。加えてもう一つ考えなければならないのがメガトレンド。今うまくいかないから撤退するのが正しいのか。馬車メーカーが「車は作れないから馬車をもっとうまく作る」と言って生き残れるか、という話と同じ構造である。EVはやらなければならないものになっているにもかかわらず、自社の能力でできないから撤退する。逆に言えば、中国メーカーが日本勢を同じ土俵に上げないシステムを作ったということでもあり、中国のEV戦略に完全にはまっている。
当てはまる。日本にとっては半導体もそうである。情報量は増え、情報処理は高速化するのだから、半導体が重要になることは専門知識がなくても予測がつく。それでも捨てたということは、長期的に予測しやすいトレンドを全部捨てたということ。理由は「今儲からないから」である。
トヨタという文脈というより、いかに自分たちの力を最大化するかという発想である。開発の観点では実はガソリン車のほうが作りにくい。EVはデータ化しやすく予測モデルが作りやすいためシミュレーションどおりの性能を出しやすい。一方ガソリン車はシミュレーションどおりにいかず、これまでのノウハウの蓄積が極めて重要で、後から入り込みにくい。だから「ここから相手を外すにはどうするか」を考えた結果の一つがEVだった。
そのとおり。EV一本ではなく選択肢を増やすやり方であり、その中でEVがちゃんとはまって当たってきたから伸びている。必ずしも全てがうまくいくと言っているわけではなく、この部分がうまくいきそうだから強化しよう、という判断である。
それだけでいい。今は拡大していく時期なので、複数の選択肢を持つことでレジリエンス=生き残りを確保している。加えて規制がある。BYDは強いが、ヨーロッパの一部の国や米国はかなり警戒しており、規制は意識して厳しく作られがちである。一社だけでやったら目立つ。複数持つことで問題が出たときに対処でき、規制をすり抜けやすくなる。つまり国としてどう対応するかという単位でEVを設計している。だからBYDだけを見るのではなく、小米は、吉利は、蔚来は、と重ねて見ることで中国の戦略が見えてくる。
Huaweiはどちらかというと完全に垂直統合モデルに近い。しかもEVという文脈ではなく、通信と半導体に強いため、そちらの文脈で完全垂直統合モデルを形成しているイメージである。
これも戦略的に合理性がある。中国は先にEVを作ってノウハウと情報を集め、その後でガソリン/ハイブリッドのモデルを作るということを一部やっている。EVは新規性の高い層が買い、ガソリン車は既存のモデルを買う層が多い。既存の人たちにも新しい人たちにも買ってもらい、両方の層を自分で囲い込む——そのためにこの戦略が有効になる。
水素技術についてはまったく別の話をしなければならない。技術的にできることと実用化はまったく違い、コストがかかりすぎる。実用化についてはまだ見えている段階ではなく、進めているところはいくつかあるが、コストに採算が見合ったところは調べる限り出てきていない。(参加者から「バスで小規模な実用が始まった程度」という補足あり。)
一概には言えない。ただし中国は重点分野を示す文書を出しており、その分野はバックアップするとしている。さらにその中で「この企業を優遇する」と名前を出しているものもある。加えて中国の場合は中央政府と地方政府の両方が関わっており、企業側が中央と地方の両方を取り込めるかどうかで選択肢が変わってくる。蔚来(NIO)は合肥市に自社株式をかなり多く保有してもらうことで一気に資金を得て開発を進めた例である。
※Claude注:時期は2022年ではなく2020年4月、リターンは45倍ではなく合肥市側で約5.5倍。PART 4 の補足を参照。
むしろ色々な選択肢を持たなければいけない。選択肢をどう組み合わせるかが戦略で重要である。短期的に有効な手段は売上が上がりやすいがすぐに萎み、長期的にかかるものは収益性が高くなるが短期・中期では収益が上げにくく、その間は我慢しなければならない。だからどのくらいの時間を覚悟するかという発想と、その間をどう埋めるかという発想の両方が要る。この二つを捨てると長期戦略が取れなくなる。必ず生き残らなければならない。いくらいいアイデアでも途中で死んだら意味がない。
それだけではなく、人と人との繋がりそのものである。繋がりが多ければ多いほど選択肢が増える。専門知識を持っている人にネットワークが広がれば、その情報が一つの資産になり、結果として選択肢が広がる。
また資産を広げるという観点では、資金調達手段があると強くなる。「金がないから新幹線に乗れない」は自分で手段を一つ減らしている状態であり、借りられる相手がいたら話してみればいい。さらに他人のものも自分のものにしてしまうという発想も重要で、「使っていい」と言われているリソースがあるなら、まずどう使うかから考える。
協力しなくていい。一部には協力もあるが、あえてそこまで協力しなくてもいい。レッドクイーン理論というものがあり、競争し続けないとエコシステム自体が死んでしまうため、あえて競争環境を生み出している。ただしその中でも重点を置いているところはあり、ここに勝ってもらいたいという意図は明確に存在する。
いいものというより「広まるもの」である。品質が高いからイコール広まる、ではない。ポリアの壺モデルを調べてみるといい。これで選択肢をどんどん削っていくというやり方である。
自分も500点に持っていこうとする。600点を取れば周りも600点になり、700点になればまた頑張らなければならず、800点になれば周りは900点を狙ってくる。これが共進化である。互いに時間や投資を出し合って削り合い、いいものが出来上がって成長していく——これがレッドクイーン理論である。
潰れるか買収されるかである。この競争を勝ち抜いて残った10社が強くないわけがない、というトーナメント戦のイメージ。だからこそ中国はそういうところに重点的に支援する形になっている。
※Claude注:公開データでは「2018年に500社超→現在約100ブランド」。「10社」は主要プレイヤー数として理解すべき。PART 5 の補足を参照。
極力その業界に馴染みのない人の意見を聞き続けることが重要である。理由は情報距離という考え方で、業界に近ければ近いほど物が見えなくなる。物理的にも、近くにあるものに寄りすぎると何も見えない。全体を見ようとするなら適正距離まで下がる必要があり、近い人ばかりでは距離を調整できない。
ただし遠い人なら誰でもいいわけではない。他業界と比較すれば「うちとは違う」となるのが普通なので、なぜそこに共通点があるのかという正当性を説明できる人でなければ機能しない。データを示し、共通点を示し、だからこう準備すべきだと構築して説明する。そして経営者側にそれを理解する頭がある。この両方が合致する必要がある。センスメイキング理論の話でもあり、正当性・納得性を言葉とデータの中でどう構築するかが問われる。顧問に入っていて何も喋らない人間は本当にいらない。
硫黄島はあの時点で戦略的には完全に負けている。取れる方向が「硫黄島で時間を稼ぐしかない」となった時点で、基本的に戦略が取れない。だから行われたのは、時間稼ぎを最大化するにはどうするかという戦術の話である。
やったことは二つだけ。いかに相手から見にくくするかと、どれだけ我慢できるか。米軍が来ることは分かっていたので壕を掘って隠れた。島に上陸しても誰もいない、どこから出てくるか分からないという状態が恐怖を煽った。栗林中将はその場所での最大化という意味では最大化されており、それ以上のやり方は正直ないと思う。だが戦略という意味ではもっと上のレベルの話になるため、立場上取れていない。戦術レベルの見事さをそこで評価してしまうと、本来「撤退して次にどう戦略を組み立て直すか」を判断すべきだった、という問いが消えてしまう。
そのとおり。制海権と制空権を奪われている段階で持久戦であり、相手の思惑をずらすことしかできないので戦略としても失敗している。ただし数日で終わるはずの戦闘を36日間引き延ばした点は、戦術としては非常に効果的だった。沖縄戦も同様で、指揮官自らが率先して壕を掘る。硬い地盤で大の男が1日20cmしか掘れないが、それによって上空からの砲撃を全て防げる。誰の想像も超えた忍耐だったからこそ米軍は予測できなかった。普通の指揮官なら判断しないことを判断し続けた、というリアリズムである。
(補足:残壕の中は一日中サウナにいるような環境で、それを何日も続ける。実際に硫黄島に行き壕内に入った経験からしても、1時間でも無理なレベルである。)
基本的にワールドワイドに持っていくときはCATLのように香港上場をやる。だが流れとしては、まず上海(または深圳)に上場し、その後で香港上場という順序である。資金の使い向きも含めて、次回のYouTube動画と講義で詳しく説明する。