製造業の国内回帰、マーケティングから営業へ、無形資産から有形資産へ、デジタルからアナログへ。バラバラに見える5つの揺り戻しが同じ時期に重なるのは偶然か必然か。思想の分断から消費の分断へ、という因果で読み解いたセッション。
この回の後半、議論は経済思想史の講義から、現在進行形の戦略論へと一気に接続する。起点になったのは、マイキー氏が投げた一つの観察だった。人は進化するために新しい理論を作り、新しいことだけをやり続ける時代を生きてきた。ところが今、原点回帰する時代になっていることに皆さんは気づいているか、というものである。
挙げられた事例は5つある。テクノロジーを追求してきたのに農業に回帰する。製造業を一度外に出して、また戻そうとする。物を売るためのマーケティングが、また営業に戻っている。デジタルだけを進めろと言っていたアメリカの大手企業が、いまアナログに戻っている。無形資産へ移っていた資産の重心が、また有形資産へ戻ろうとしている。マイキー氏の指摘は、これらが1つの業界だけで起きているのなら「業界が変革した」で終わる話だが、社会構造全体で同時に起きているなら話は別だ、という点にあった。偶然と偶然が重なるなら、それは必然である。
ではなぜ必然なのか。参加者からの質問に答える形で示された因果連鎖が、この回の中核である。政治的分断が起きると思想的分断が起きる。思想的分断が起きると消費的分断が起きる。では、その分断はどこで起きているのか。デジタル空間である。SNSをはじめとするデジタル企業自体が分断のプラットフォームになっている。ということは、その被害を最も受けやすいのはデジタル企業自身である。自分の顧客が右か左かに割れてしまえば、顧客を失いかねない。だから彼らは囲い込み戦略に入る。そして、デジタル空間で起きた分断を解決する最短の手段はアナログで会うことである。デジタル企業がアナログに戻るのは必然だ、という結論に至る。
そして最後にマイキー氏が置いたのが、この回のタイトルにあたる一文である。技術の発展はアナログを効率化するためにしか出来上がっていない。デジタルというものは、アナログを強化するための流れでしかない。アナログとデジタルは対立していない。ベースがアナログである、というだけの話である。だからアナログが強い者は勝手にデジタルも強くなり、さらにアナログが強くなる。逆に、アナログがダメな者がデジタルに逃げているだけだ、と。
「AからBに行って、BからAに戻る」のではない。「AからBに行って、Bを経由してAが強くなる」。同じゼロに戻っているように見えても、前のゼロと今のゼロは違う。デジタルを知らなかったアナログの人が、デジタルを覚えてからアナログに戻れば、それは同じアナログではない。この「戻っているように見えて戻っていない」構造を掴み損ねると、原点回帰は懐古趣味に見えてしまう。
この議論の直前、渡辺氏が経済思想史の文脈から一つの補助線を引いていた。19世紀に起きたのは、階級の揺らぎができたということだ、という指摘である。
それまでの歴史では、階級は微動だにしないものとして扱われていた。代々受け継がれる資産、代々積み上げられた信用。これらは揺らがなかった。ところが革命が相次ぎ、それまで持っていた階級が闘争として崩れていく。あるいは技術革新によって、それまで流通していたものがまったく違う動きをするようになる。その結果、それまでの価値観や、強いはずのポジションが、そこまで強いポジションではなくなってしまった。渡辺氏はこれを「階級闘争がある意味で階級闘争にならなくなった」と表現し、これが今日の市場というものを生み出したと言える、と述べた。
マイキー氏はここを受けて、話を現代に一気に引き寄せる。基本的に人は進化するためにいろいろな理論を作ってきて、新しいことだけをやり続けるという時代がずっと続いてきた。ところが今、それが逆転している。そこから、この日の後半が始まる。
マイキー氏が挙げた事例を整理すると次のようになる。いずれも「進んできた方向を反転させている」という共通点を持つ。
| 領域 | これまで進んできた方向 | いま起きている反転 |
|---|---|---|
| 製造 | 生産拠点を海外へ移す(オフショア) | アメリカが製造業を国内に戻そうとしている。マイキー氏の説明では、これは製造業が消えていったという限界に到達したためであり、限界の底で反転した。 |
| 産業の重心 | テクノロジー中心へ | テクノロジーは続けるが、農業へ回帰する動きが並行して起きている。 |
| 売り方 | マーケティングへ(デジタル広告、インフルエンサー) | 営業に戻っている。SalesforceやAdobeのようなサービス業界のAI企業が、人事として営業マンを徹底的に膨らませようとしている。 |
| 資産の性格 | 有形資産から無形資産へ | Netflix、Google、Facebook(Meta)が、デバイスを作るなど有形資産の側へ戻ろうとしている。 |
| 接点 | アナログからデジタルへ | アメリカの大手企業がアナログに戻っている。TikTokは出版とライブコマース、Netflixは体験施設、ディズニーはクルーズ。 |
マイキー氏はこの一覧を提示したうえで、これが全部一瞬の同じタイミングで来ている、それが2020年以降から始まっていることだ、と述べた。そしてこう問い直す。便利になった、それだけを追求し続けた時代だったのが、今はこれが原点回帰に行かなければいけない時代になっている。これが偶然なのか必然なのかを考えればいい、と。
マイキー氏の論法は、個々の事象の是非を論じない。「1つの業界だけなら業界の変革で終わるが、社会構造全体で起きているなら別の説明が要る」という判定基準を先に置き、そこから因果を探しに行く。この判定基準そのものが、実務で使える道具である。自分の業界で起きている変化が、他の業界でも同時に起きていないかを確認する。起きていれば、業界固有の説明では足りない。
この因果の説明は、参加者(遠藤氏)からの質問に答える形で展開された。質問は「デジタルからアナログへ、無形資産から有形資産へ戻っているという話があったが、それは新しいデバイスがどんどん出てきたからなのか」というものだった。
マイキー氏の回答は、まったく別の説明を持ち出した。基本的に言われていることとして、政治的分断が起きると何が起きるか。思想的分断が起きる。思想的分断が起きると何が起きるか。消費的分断が起きる。では、その消費的分断を起こさないためにデジタル企業は何をするか。囲い込み戦略に入る。
ここでマイキー氏は逆から問い直す。今の社会の分断はどこで起きているか。アナログか、デジタルか。デジタルである。ということは、デジタル企業がアナログに戻るのは必然である。なぜなら、デジタル空間で起きている分断を解決するのに最も早いのは、アナログで会うことだからである。
さらに一段踏み込む。デジタル上でのやりとりが加速することによって政治的分断が起き、思想の分断が始まり、産業の分断が始まり、消費の分断が始まる。ではその被害を最も受けやすいのは誰か。デジタル企業である。彼ら自身が分断のプラットフォームになっているからである。自分の客がみんな違う考え方を持ってしまい、右か左かという状態になっている。消費の分断が始まると、自分たちの顧客を逃すかもしれない。自分たちが左だ右だと言ってしまえばなおさらである。
ではそれを抑えるにはどうするか。デジタルとアナログでは、どちらのほうが関係値が濃いか。アナログである。ということは、顧客との会話もデジタルでするよりアナログでしたほうがよい。だからアナログ戦略が強くなってくる、という結論に至る。
「思想の分断→産業の分断→消費の分断」という連鎖は、勉強会での独自の整理であり、学術的に確立した定式ではない。ただし、その各段について関連する研究・現象は存在する。
消費行動の政治的分極化については、「ブランド・アクティビズム」への反発として観測される事例が複数ある。企業が政治的な立場を表明した際に、特定の消費者層からのボイコットが起きる現象は、2010年代後半以降、米国で繰り返し報告されてきた。デジタルプラットフォームがフィルターバブルやエコーチェンバーを通じて分極化を強めるという議論も、長く研究対象になっている。
一方で、「だからデジタル企業がアナログに戻る」という因果の最終段は、企業側の公式説明としては確認できない。要確認 Netflix、ディズニー、TikTokの体験施設・物販への進出は、公表されている理由としては収益源の多角化、ブランド接点の拡大、IPの収益化といった説明がなされている。マイキー氏の読みは、公表されている理由の背後にある構造的動機についての仮説として受け取るのが正確である。
マイキー氏の説明では、TikTokは本の出版をやり、アナログで囲い込みに行っている。TikTokを使うなと言われたときに離れるアメリカ人がたくさんいるかもしれない。そこに対して、出版やTikTok主催のライブコマースといったアナログの接点をアメリカでどんどん作っている。そうすると「やっぱりTikTokはいいよね」となって、離れないようにさせる戦略を取っている、という読みだった。
Netflixも実際に囲い込み戦略をしなければいけない。だから遊園地を作る、と述べられた。
Netflixは体験型施設「Netflix House」を、勉強会の2週間後にあたる2025年11月12日、フィラデルフィア近郊のキング・オブ・プルシア・モール(ペンシルベニア州モンゴメリー郡)に開業した。米国初の同種施設であり、2番目の拠点としてダラスが予定されている。
各施設は10万平方フィート(約9,300平方メートル)を超える規模で、『ウェンズデー』『イカゲーム』『ストレンジャー・シングス』といった同社の主要作品を題材にしたライブ体験、テーマ料理・ドリンク、ミニゴルフ、VRアトラクションで構成される。厳密には「遊園地」ではなく、モール内に入る体験型エンタメ施設であるが、「配信企業が物理的な接点を作りに行っている」という説明の骨格は事実と一致する。
ディズニーもアナログからデジタルへ行き、またアナログへ戻っている、とマイキー氏は述べた。旅客船を作るなどして、触れ合う時間を増やす方向へ動いている。そして「今、ディズニーで一番収益率が高いのはあれですもん、旅客船ですもん」「船のツアーです」「あれが利益率が圧倒的に高いんですよ」と続けた。さらに、ディズニーの世界一周クルーズは20万ドルほどする、誰が払うのかと思うが金持ちが払う、という具体例も挙げている。
ディズニーのクルーズ事業が成長領域であり、収益性が高いことは公開情報で裏づけられる。ディズニーのクルーズ船隊は直近会計年度で30億ドルの売上を生み、同社は600億ドル規模の拡張計画で5隻の追加を計画していると報じられた。CFOのヒュー・ジョンストンは、クルーズ事業がマージンを押し上げる(margin accretive)と明言している。
一方で、「ディズニーで一番収益率が高いのがクルーズである」という点は、公開されているセグメント別の開示からは確認できなかった。要確認 ディズニーはExperiences(テーマパーク・クルーズ・消費財)セグメント内でクルーズ単体の利益率を独立開示していないため、社内での相対比較を外部から検証することはできない。
また、「ディズニーの世界一周クルーズが20万ドル」という点も裏取りできなかった。要確認 ディズニー・クルーズラインは世界一周航路を運航していない。高額スイートを含む長期航路の価格帯としては存在しうる水準だが、該当する商品を特定できなかった。この数字は各自での確認が必要である。
マイキー氏は、AI企業でありサービス業界の会社が、いま営業マンを徹底的に膨らませようとしている、と指摘した。SalesforceやAdobeを見てくださいと。デジタルが最強のはずなのに、人事として営業マンを増やしている、という観察である。
この指摘は公開情報と正確に一致する。Salesforceはカスタマーサポート部門の人員を9,000人から約5,000人へ、およそ4,000人削減した。AIエージェントが顧客対応の50%を処理するようになり、2025年初頭からサポートコストは17%削減され、100万件を超える顧客対応が完了している。
一方で、同社は3,000人から5,000人の営業職を新規採用し、アカウントエグゼクティブ(AE)を年内に2万人規模へ拡大する方針を示した。マーク・ベニオフCEOは、AIが定型的な顧客対応を担える一方で、複雑な営業関係には依然として人間が必要だと説明している。
Adobeについては、2026年時点で総従業員数が33,061人と前年の30,279人から2.1%増加し、Sales and Marketingが全社の19.9%を占めている。要確認 ただし「営業を意図的に膨らませる施策」を打ち出したという公式発表は確認できなかった。Salesforceの事例は明確に裏づけられ、Adobeについては一般的な人員増の範囲を超える証拠が見つからなかった、というのが照合結果である。
参加者から、ヒューマンメイドというブランドがアナログ店舗中心のまま上場したという話題が出たのを受けて、マイキー氏は議論を展開した。デジタルというものはアナログを強化するための流れでしかない。その立ち位置でしか変わっていない。デジタル空間上で人の物語がすべて完結するような、映画『レディ・プレイヤー1』のような世界を想像する人がいるかもしれないが、僕らが生きている時代に来るかどうか分からない、と。
その根拠として挙げられたのがMetaのMeta Questである。あれだけのデータセンターを持っていながら、あの画質しか実現できていない。Meta自体があれだけ資金を投入しておいて、それでもこけている。「1000億ドルの赤字ですよ」という数字が示され、そのレベルなのだから『レディ・プレイヤー1』の世界はまだ当分先の話になる、という結論だった。
Meta Reality Labs(VR/AR部門)の累計営業赤字は、2020年から2025年までの6年間で836億ドルである。年次の内訳は、2020年 66.2億ドル、2021年 101.9億ドル、2022年 137.1億ドル、2023年 161.2億ドル、2024年 177.2億ドル、2025年 191.9億ドル。
勉強会が行われた2025年10月29日時点――ちょうどMetaが第3四半期決算(Reality Labsの四半期赤字44億ドル)を発表した日にあたる――での累計はおよそ700億ドル台だった。したがって発言の「1000億ドル」は、当時の実績より3割ほど大きい。誇張 ただし、赤字が桁違いの規模で継続しているという論旨自体は、公開データによって強く裏づけられる。むしろ2026年に入って累計は900億ドル台に迫っており、「1000億ドル」という数字は当時の誇張であると同時に、近い将来の実績として現実味を帯びている。
マイキー氏はここで、NVIDIAのOmniverseを最も良い例として挙げた。仮想空間の中で工場の設立や生産性を最大化するための設計をすべてシミュレーションしたうえで、フォルクスワーゲンなどが実際の工場を作っている。これも結局、アナログを強化するためにやっているではないか、という指摘である。
この整理は重要である。同じデジタル技術でも、Reality Labsは「デジタル空間そのものを目的地にする」方向に投資し、Omniverseは「アナログの工場を強くするために」使われている。マイキー氏の枠組みでは、前者が苦戦し後者が成果を出しているという事実自体が、命題の裏づけになる。
参加者から「AからBに行って、BからAに来るという流れではないか」「今まではAとBの中間を目指しましょうという発想だったところから、Aの理屈を持ってきてBをさらに進化させていくという形になっている」「それがきっと、今まで光が当たっていなかったところ、人が嫌っていたところ、手間がかかっていたところにチャンスがあるのではないか」という発言が出た。
マイキー氏はこれを受けて、この回の核心にあたる一文を置いた。技術の発展は、アナログを効率化するためにしか出来上がっていない。今までの歴史はそうである。すべての技術の歴史において、そもそもデジタルというものは存在しなかったのだから、アナログを強化するために金を使ってきたのだ、と。
そのうえで循環の構造を説明した。技術ができて使ってみると問題点が出る。また改善してデジタルが強くなる。それでアナログが強くなるが、まだ問題点が出てくる。またデジタルを強くして、それを戻すとまた改善される。しかしまた新しい問題が出てくる。これをただ繰り返しているだけである。だから基本はアナログベースで考える。
もし僕らがデジタル空間で生まれたのであれば、デジタルを強化してアナログを利用すればいいと思う。しかし僕らは残念ながらアナログで生まれている人間である。VTuberではないのだから、と。
参加者から「アナログとデジタルが相克しているのではなく、ベースはアナログだと考えなければいけないのですね」という確認が入り、マイキー氏はそれを肯定した。そこは落ちやすいところで、そちらに行けば何かが良くなると考えてしまいがちだが、根本は人間自身がアナログなのだ、という整理である。
「アナログがクソな奴がデジタルに逃げるだけなんです。だから営業とかプレゼンがゴミな奴がマーケティングに頼るんですよ、デジタル上の」。マイキー氏はこれに続けて、インフルエンサーブランドはほぼ終わってきた、みんな結局店舗に戻った、あれはコロナの時だけだった、と述べた。参加者が「それはアナログが否定されている時だからデジタルが強くなっているだけではないか」と応じ、マイキー氏は「それだけの話なんです」と肯定している。今までアナログの逃避先がなかったところに、空間上という逃げ先ができただけだ、という整理だった。そのうえで「アナログが強い奴はデジタルも勝手に強くなる。さらにアナログが強くなる。これが循環しているだけ」と締めている。
この議論の途中で、参加者から重要な疑問が提示された。変化の循環という言い方が、相反していて矛盾しているように感じる、というものである。理由は明快で、循環というのは帰ってくるというイメージがあるのに対し、変化はあくまで変わっていくものだから。今は時代として変革しているのに、原点回帰という循環の話が出てくると、うまく交差しない、という指摘だった。
マイキー氏の回答は、まず自分の説明の不備を認めるところから始まった。「それは多分僕の説明が悪くて、循環とはいい時も悪い時もあるよね、という循環があるという話です」。つまり循環=原点に戻ることではなく、循環=好況と不況の波がある、という意味だった。原点回帰は、その波の中でたまたま今、最も合理的な選択肢として選ばれているだけである。
整理するとこうなる。変化には常に対応していかなければならない。最も合理的な手段を選ぶのが戦略である。それがたまたま今、原点回帰という形になっているという話に過ぎない。そして、その原点回帰の選択肢が合理的だという時代が一気に重なっているから「おかしいよね」と言っている。この二段構えである。
ではなぜ「戻っている」と言えないのか。マイキー氏の説明は次のとおりである。今までの蓄積や経験があるから、0から1になって1が出来上がり、また0に戻ったときに、前の0と今の0は違う。原点回帰したとき、今まではデジタルを知らない人がアナログに強かった。そのアナログが強い人がデジタルにも強くなり、その人がまたアナログに戻ったら、デジタルの知識が入っているから同じ変化ではない。
参加者はこれを受けて、行きすぎた技術は余分になってしまうので削ってバランスを取る、という理解を示した。マイキー氏はアメリカの製造業を例に挙げ、製造業を戻したのは限界の底に行ったからだ、製造業が消えていったから元に戻しましょうという話だ、と補足している。
マイキー氏はさらに、人間という生物の性質に踏み込んだ。良い時はそのままやるが、悪くなったときに変化を考える。イケイケならそのまま行けばいいと考えるが、イケイケは必ずどこかで止まる。しかし止まらないように変化するということを、人はやらない。必ず落ちる。重要なのは、落ちたときにどう変化するかである。このサイクルに必ず入る。
成長し続けた企業はない。絶対にどこかで落ちてまた上がって、落ちてまた上がっている。そうでなければ株はあのような動きをしない。そして株が落ちたときこそ、会社自体が変化している。この観察が、循環と変化を接続する説明になっている。
抽象論のあと、マイキー氏はその日に面談したという経営者の話を紹介した。マイキークラブに入りそうな「頭がぶっ飛んでいる」女性経営者である。
面談を申し込んできた理由を尋ねると、その人はこう答えたという。マイキーさんは4,000人分のデータを持っている。私は絶対にその4,000分の1である。だからこの4,000分の1の取り扱い方をマイキーさんは知っているはずだ、と。マイキー氏はこの角度の歪んだ切り口を面白がった。
経歴を聞くと、13年間ドイツにいて花の修行をしていた。今は日本で花屋をやっており、教え方も作り方もすべてドイツ流である。マイキー氏は「この時点でもう差別化戦略ができている」と評価した。
その経営者は、複数の経営者からアドバイスを受けた際に「これを全部デジタル化しろ」「アナログを捨てろ」と言われたという。マイキー氏はこれに真っ向から反対した。
デジタルはそのまま進めればいい。しかしアナログの場所は絶対的に重要である。だから店舗は絶対に残せ。利益の最大化を考えるならデジタルに移したほうがいいかもしれないが、このアナログの店がいずれまた必要になるから、収益性が低かったとしてもアナログという戦略だけは残しておいたほうがいい、と伝えたところ、非常に納得されたという。
その理由づけをマイキー氏はこう説明した。これは短期的戦略ではなく長期的戦略として考えたときの話である。短期的戦略ならアナログの花屋はやめてしまえばいい。しかしオンラインだけで販売することの危険性もある。だからデジタルで広げて、アナログで客を囲い込む。この戦略を組むために、今はデジタルに集中していい。ただしアナログ戦略もしっかり作り、捕まえた客をどうやって逃さないかを考えるためには、もうアナログしか方法がない。だからこの店舗自体は残しておくように、と。
その経営者はさらにこう語ったという。ドイツに行きましたと。ドイツ語は話せたのかと聞くと、話せません、1週間勉強して行っただけです、と。マイキー氏の評価は、1週間でドイツ語が覚えられるわけがない、しかし1週間勉強したのは偉い、というものだった。日本人は「ある程度喋れるようになってから行こう」と考える。1週間やっても分からなかったから行くしかない、と言ってその後13年いた。その時点で頭がおかしいではないか、と。マイキー氏は面談中に入会を即断している。「私はクソバカで、マイキーさんの無能の4,000分の1なんです。私を優秀にする幅を絶対にマイキーさんは持っているはずだ」という切り口についても、そう言えている時点で超優秀だ、と評価した。
参加者から、この日の議論を裏づける事例として挙げられたのがヒューマンメイドだった。NIGO氏が手がけたブランドで、アナログの店舗中心でありながら上場したという指摘である。ラフォーレなどに店舗があるが、この時代にもうアナログしかやっていない。ただしInstagramだけはしっかり発信しており、集客はInstagramに頼って、並ばせて売っている。それが日本に数店舗あるだけで上場までいけるのは、この日の話とすごく重なっている、という発言だった。
その参加者はさらに、今まで不採算部門だったところが、テクノロジーや新しい進化によってもう一度見直されるチャンスが来ているのではないか、と述べた。例としてグリーンテックのような領域を挙げ、そこに今後のチャンスがあるように聞こえた、と。マイキー氏はこれを「あると思います」と肯定した。
発言では「先週上場した」とされているが、公開記録では時期が異なる。HUMAN MADE株式会社(証券コード456A)は、2025年10月23日に東証グロース市場への上場が承認され、実際の上場日は2025年11月27日だった。
つまり、勉強会が行われた10月29日時点では上場承認済み・上場前の段階であり、「先週上場した」という認識は正確ではない。時期のずれ おそらく上場承認の報道(10月23日=前週)を上場そのものと受け取ったものと思われる。なお、同社の売上高は2022年1月期の32億円から2025年1月期の約112億円へ、年平均成長率52%で伸びており、NIGO氏(長尾智明氏)と資産管理会社NIGOLDの保有比率は合計64.6%である。「アナログ店舗中心で上場水準まで到達した」という論点自体は、上場承認と業績の実態によって裏づけられている。
セッションの終盤、マイキー氏はリライブの佐々木社長から相談が来ていることに触れ、「国内だけで300億売っているんですよ。服で、Tシャツで」と述べている。
公開情報では、リライブシャツを展開する仙台の企業は年商700万円から3年で100億円企業に成長したと報じられており、リライブウェアシリーズは2017年の発売以来累計230万枚以上を販売している。「国内だけで300億」という数字は、確認できた公開情報(100億円)と大きく食い違う。要確認 単年売上か累計か、グループ全体か単体か、あるいは小売価格ベースの流通総額か、といった数え方の違いが背景にある可能性があるが、外部からは特定できなかった。