同じAI時代に、二つの正反対の賭けが走っている。片方は債務を積んで今この瞬間の容量を取りに行くオラクル。もう片方は7年前に学校へ端末を配り、裁判を引き延ばして時間を味方につけるグーグル。どちらが正しいかではなく、資金調達の設計と時間軸の設計が経営そのものである、という回。
金利と借入の講義の締めくくりで、講師は「いまお金の借り方で最も問題になっているのはどこか」という問いを投げた。答えはオラクルだった。ここから話は、AIインフラ投資の資金繰り、CDSを使ったヘッジ戦略、そしてGoogleとサンダー・ピチャイの評価へと展開していく。一見すると別々のトピックだが、講師の関心は一貫している。資金をどう調達し、その返済をいつ、誰から回収するのか。その時間軸をどこに置いているか。
オラクルの側から見ると、構図はこうだ。データセンターの建設費用が重要になり、OpenAIと組み、メタとも契約が決まっている。場所を確保していかなければならないのに金が足りない。だから債券を発行する。9月に180億ドル、続いて380億ドル規模。その結果、大手企業の中で最も負債の大きい企業になった。ここでモルガン・スタンレーが最も厳しい見方を示した。今のペースで契約のまま進めると、2028年までに負債額が3000億ドルに達する。
問題は、その回収先がOpenAIへの依存度が極めて高いことである。そしてOpenAIが黒字化するのは2030年見込みで、それまでは負債を抱え込んだまま支払いが続く。講師が示した試算では、年間の営業損失が700億ドル規模になる。日本円で年10兆円の赤字が続く。参加者から「本当にキャッシュフロー的にずっと赤が続いてしまう」という応答が出た。
ここに二つの追い打ちがかかる。一つはムーディーズとS&Pグローバルによるジャンク格付けへの引き下げの可能性。もう一つがCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)の急騰である。オラクルのCDSが売れすぎている。1年間でスプレッドが3倍、0.4%程度から1.1%超まで上昇した。数週間で50億ドル規模のCDSが購入されているという。講師はこれを「昔のマイケル・バーリみたいな状態」と表現した。
オラクルは今この瞬間の容量を取りに行った。データセンターの用地と電力は、遅れたら取り返せない。だから債務を積んでも先に押さえる。その代償として、返済の時間軸をOpenAIの黒字化(2030年見込み)に預けてしまった。自分の時間軸を他社に握られている。
グーグルは逆をやった。7年前から学校にChromebookを配り、いま学生になっている世代がChromeとAndroidを使い慣れる状態を作った。反トラスト訴訟についても、講師の見立てでは裁判を引き延ばすことで争点そのものをずらしている。3年かかる頃には、Chromeへの依存ではなくAIオーバービューで検索を取っているから、争点が変わっている。時間を味方につける設計になっている。この対比が、この回の骨格である。
この話に入る前段として、講師は借入の設計そのものを論点にしていた。企業が借入をするとき、固定金利ならいいが変動金利ならここまで見て仕組みを考えなければならない。そしてお金の借り方には色々な種類があるという文脈で、ソフトバンクの例が出た。
ソフトバンクが借入をしたとき、講師はなぜ劣後債が良かったのかを説明したという。理屈はこうである。自己資本比率を落とさない、資産に最も近い状態を保ったまま、次の資金調達につなげるために、あえて劣後債を発行する。普通社債で調達すれば負債が増えて自己資本比率が下がり、次の調達余地が狭まる。劣後債なら資本性が一部認められるので、その圧迫を抑えられる。
そのうえで講師は「これができるのは孫さんが頭がいいからだ」と評価した。そして「ちなみに、いまお金の借り方で最も問題になっているのはどこか」と問い、オラクルの名前を出す。同じ「大型調達」でも、設計が違えば意味が正反対になるという対比が、この構成の意図である。
劣後債は、発行体が清算・破綻した場合の弁済順位が普通社債より低く、株式より高い債券である。この性質から、格付機関は劣後債の一定割合を資本とみなして評価する(エクイティ・クレジット)ことがある。負債として計上されつつ、財務レバレッジの評価上は一部が資本扱いになるため、自己資本比率や格付への影響を抑えながら資金調達ができる。
代償として、投資家はより高い利回りを要求する。つまり調達余力を買うために、金利コストを上乗せして払っている取引である。講師が「次の資金調達を流すためにあえて劣後債を発行する」と述べたのは、この構造を指している。
オラクルが債券を発行している理由は明快である。データセンターの建設費用が重要になり、OpenAIと組み、メタとも契約が決まっている。そのために場所を確保していかなければならないが、金が足りない。だから発行する。180億ドル、そして380億ドル。その結果、大手企業の中で最も負債の大きい企業になった。
ここで講師が引いたのがモルガン・スタンレーの見立てである。「さすがモルガン・スタンレーだという感じで、かなりエッジの効いたコメントをしてくる」と評したうえで、その内容を紹介した。今のペースで契約のまま進めていくと、2028年までに負債額が3000億ドルに達する。
そして回収の問題である。回収する先がOpenAIへの依存度が非常に大きい。OpenAIが実際に黒字化するのは2030年になる。それまでは負債を抱え込んだまま支払いが発生し続ける。営業損失額は試算上、年間700億ドル規模で出ている。10兆円の赤字が毎年出て、営業損失だけでキャッシュフロー的にずっと赤が続く――講師と参加者の応酬で、この構造が確認された。
180億ドル:オラクルは2025年9月に約180億ドルの大型社債を発行しており、テック業界でも記録級の起債の一つとされている。講義中の数字は正確である。
380億ドル:この380億ドルは、オラクル自身の社債ではなく、オラクル向けデータセンターを開発する Vantage Data Centers のプロジェクト(ウィスコンシン州・テキサス州)に対する、JPモルガンなどが主導する230億ドル+150億ドルのタームローンとして報じられている。2025年10月時点で「記録的な380億ドルのデータセンター関連債務」として報道された。したがってオラクルのバランスシート上の債務と、オラクル関連のプロジェクト債務は分けて見る必要がある。講義中は「オラクルが380億ドルで債権発行してる」と語られており、この点は主体の帰属がやや粗い。
2028年3000億ドル:この予想値そのものの一次ソースは確認できなかった 要確認。ただしモルガン・スタンレーがオラクルの信用リスクについて厳しい見解を出していたことは複数の報道で裏づけられる。2025年11月下旬、同社アナリストはオラクルのCDSに「通常の信用投資家だけでなく、この種の金融商品の経験が乏しい『ツーリスト』が集まっている」と指摘し、今後5年間のデフォルト保険コストが年1.25%まで上昇したと報告している。
OpenAIとの契約規模:オラクルとOpenAIは2025年9月に約3000億ドル規模の契約を締結している(2027年開始の5年契約で、オラクルがAIインフラを構築しOpenAIに計算資源を供給する)。講義中の「2028年までに負債3000億ドル」という数字は、この契約規模3000億ドルと混同されている可能性がある。数字の帰属については、発言をそのまま採用せず、契約額と負債予想額を分けて確認したほうがよい。
株が落ちている理由について、講師は二つを挙げた。
ムーディーズとS&Pグローバルによってジャンクに落とされる可能性が出てきている、というのが講師の指摘である。
格付が落ちれば負債コストが上がる。負債コストが上がれば、すでに巨額の債務を抱えた状態がさらに厳しくなる。悪循環の入口になる。
クレジット・デフォルト・スワップのスプレッドが、この1年間で約3倍まで上昇した。0.4%程度から1.1%超へ。数週間で50億ドル規模のCDSが購入されている。
講師の表現では「昔のマイケル・バーリみたいな状態」。CDSに投資家が殺到している状態である。
ここで講師が説明した投資家の動きが、この回の実務的な収穫の一つである。すでにオラクル株を持っている人たちが、株を保有したままCDSで挟み込んで利益を確定させている。CDSを買うということは、今後オラクルの株が落ちたとしても保険なのでその分儲かる。つまり株の下落分をCDSでカバーする。挟み込み戦略である。
そしてこの構造には副作用がある。CDSの情報が流れること自体が、売り懸念を高める。CDSの価格が上がっていくことで株式の減少を一応抑えている面もあるが、同時に「これだけ保険が買われている」という事実がシグナルになって、さらに売りを呼ぶ。
CDS(Credit Default Swap)は、発行体のデフォルトに対して保険をかける金融商品である。買い手はスプレッド(保険料)を定期的に支払い、デフォルトが起きれば損失を補填される。スプレッドの上昇は、市場がその発行体のデフォルト確率を高く見積もっていることを意味する。
マイケル・バーリは、2007〜2008年の金融危機に先立ってサブプライム住宅ローン担保証券にCDSでショートポジションを組んだ投資家である。講師が「マイケル・バーリみたいな状態」と表現したのは、特定の発行体・資産クラスに対して保険が集中的に買われている状態を指している。
2026年時点の状況を確認すると、オラクル株は2025年9月の高値から約58%下落している(2026年3月時点、FY2026 Q3決算前後)。負債は1000億ドルを超え、OpenAI向けデータセンターのためにさらに500億ドルの調達が計画されているとされる。2026年上半期を通じてオラクル株は低迷し、「2001年以来最悪の四半期」と報じられる局面もあった。講師が2025年11月に指摘した懸念の方向は、その後の株価で裏づけられている。
一方、受注残高(バックログ)は5230億ドルと報告されており、需要そのものは巨大である。問題は需要ではなく、それを現金化するまでの間の資金繰りと、フリーキャッシュフローの深いマイナスにある、という整理が2026年の市場の見方になっている。
参加者から「保険をかけているとはいえ、ものすごい債務になるまでデータセンターを作るのはなぜか」という質問が出た。講師の答えは即答だった。「スターゲート計画です。トランプとの約束なので。」
理由づけはこうだ。トランプに喧嘩を売ったらどうなるかは、イーロン・マスクを見ればよく分かる。そしてトランプとラリー・エリソンは40年、50年の付き合いである。ラリー・エリソンが言っているのは、「トランプを味方にすると非常にいいが、敵に回したときは本当に面倒くさい」ということだ。大きな債務を作るよりも面倒くさい、という参加者の要約に講師も同意している。
さらに、オラクルがこければ何万人という社員にも火が及ぶ。スターゲート・プロジェクトに乗ることで資本が入りやすくなり、いろいろなところともビジネスができるようになる。だからイーロン・マスクは外され、いまやりづらそうにしている。サム・アルトマンとマーク・ザッカーバーグはあそこできちんと立ち回った――という評価だった。
スターゲート・プロジェクトは2025年1月21日、ホワイトハウスでの記者会見でトランプ大統領、サム・アルトマン(OpenAI)、ラリー・エリソン(オラクル)、孫正義(ソフトバンクグループ)が並んで発表された。今後4年間で5000億ドルを米国のAIインフラに投資するという計画である。
初期出資者はソフトバンクグループ、OpenAI、オラクル、MGX。ソフトバンクグループとOpenAIがリードパートナーで、ソフトバンクが財務、OpenAIが運営を担い、孫正義が会長に就く体制とされた。
ただし2025年後半には、データセンターの管理権をめぐって3社間で対立が生じたとも報じられており、2025年末時点で確保された容量は約7.5GWで、当初の年内10GWという目標には届いていない。講師が「トランプとの約束だから債務を積んででもやる」と説明した構図は正しいが、その計画自体も摩擦を抱えている点は補足しておく。
そして参加者からもう一つ、重要な指摘が入った。OpenAIを中心とした相関図の中で、OpenAI自身もSPV(特別目的事業体)を使っている。クレジットレーティングが落ちると、すべてが連鎖する。財務仕様としてなかなか黒字化しないものがほとんどなので、来年の年末まで持つのかどうか、時限爆弾を抱えながらの状況である――という見立てである。
これに対する講師の応答が、この回の投資観を端的に示している。「リスクを負っているので、僕はオラクルに期待している。ただ今の段階で見ると、OpenAIよりもAnthropicのほうに期待している。」理由は、AnthropicのほうがB2Bの契約比率が圧倒的に多いから、である。
話題はGoogleへ移る。ここで講師は自分の予測が当たったことを確認している。「絶対Googleが来るって言ってたでしょう。」大手ハイテク株がみんな押されていたのに、Googleだけは上がっていった。「もうMicrosoftを超えますよ、時価総額」という発言も出ている。
なぜGeminiがそこまで良くなったのか。講師の答えは二段階だった。第一に、DeepMindのデミス・ハサビスが優秀であること。第二に、データの深さである。私生活で我々がメインで使っているのは大体Googleのアプリだ。だから「本当にディープラーニングという名前の deep をやっているのはGoogleだ」。表面的なデータではない。
参加者もこの見方を補強した。でかいプラットフォームを持っていることと、歴史の新しいOpenAIとの差がある。講師はこれを比喩でまとめた。OpenAIやAnthropicは「健康状態を肌の診断でやっている」ような状態なのに対して、Googleは「内臓の調査までしている」。これがGoogleの強さである。
ここから話はGoogleのCEOに移る。講師は「サンダー・ピチャイがなぜすごいのかを説明できる人がいない」と述べ、20分ほどの解説動画を撮ってあるので見てほしい、と案内した。
参加者が「ピチャイはアナリストのレポートでも酷評されることが多いのでは」と問うと、講師はその弱点を認めた。「ピチャイの弱点は自己表現力がないこと」である。だがやることを見れば、着々とエコシステムを拡大し、レジリエンスを高めるためにネットワークのように張り巡らせている。
そして講師は踏み込んだ主張をした。日本人の経営者が最も参考にすべきなのはサンダー・ピチャイだ、と。理由は消去法でもある。イーロン・マスクのようなイカれたことをやるとか、アンディ・ジャシーのように国に対してかますといったことは、多分できない。マーク・ザッカーバーグを参考にするとコーポレートガバナンスの問題で企業が死ぬ。ザッカーバーグの独裁が許されるのは特殊な条件があるからである。したがって、M7の中で参考になるのはジェンソン・ファンかピチャイのどちらかで、とくにコミュニケーションに難のある日本人にとってはピチャイが最も良い――というのが講師の見立てだった。
講師の説明はこうだ。Googleの歴史は、AIが出てくるまでずっと保護主義をやりすぎて結果として失敗し、そこからどうやって挽回したか、というレジリエンスの高さの歴史である。そしてまさに日本人に必要な能力がレジリエンスではないか。だからピチャイが最も参考になる経営者なのではないか。
参加者からは「ピチャイだけでなくGoogleの歴史を学んだほうがいい」「エリック・シュミットらがどういう役割を果たし、どういう人材配置をしてきたのか、その意思決定の仕方こそ見なければならない部分ではないか」という補強が入った。
参加者の一人が触れた「7年間かけたGoogleの施策」について、講師が説明した。Chromebookである。Googleはどの企業よりも学校にデバイスを配ってきた。そうすると今の学生たちはChromeが使いやすくなり、Androidが使いやすくなる傾向が生まれる。それを7年前から仕掛けている。これがピチャイの戦略であり、これがはまってくると「Geminiが強いよね」という状態になる。
この論理は、講義の冒頭近くで別の文脈で語られていた話と接続する。人は一度使い慣れたものから抜けられない。プラットフォームは中毒性があって初めてプラットフォームになる。iPhoneからAndroidに、AndroidからiPhoneに変えられないのと同じである。医師の側から見れば、いい薬が出ても、慣れていて次が読める薬のほうを選択する。ゲーム機も同じで、いまさらPlayStationからXboxに変えようとは思わない。Chromebookを学校に配るという施策は、この「使い慣れ」を7年かけて世代単位で作る行為である。
Chromeのスピンオフ(分離)はどうなったのか、という質問に対して、講師は「結局しなくてよくなった」と答えたうえで、その先の読みを述べた。もちろん相手方は控訴してくるので長引くだろう。Chromeについての裁判はまた3年ほどかかるはずだ。その頃にはもうChromeへの依存ではなく、AIオーバービューである程度取っているから、別の問題の観点になる。裁判をずらすことによって焦点が変わってくる。結果として「Chromeじゃないよね」という状態になり、Chromeは残る。
これがGoogleの戦略であり、「めちゃめちゃうまい」というのが講師の評価である。これこそピチャイの緻密な頭の良さと深さだ、と。
ワシントンDC連邦地裁は2025年9月2日、オンライン検索の反トラスト訴訟において、GoogleはChromeブラウザを売却する必要はないとの是正措置判断を示した。担当はアミット・メータ判事である。
ただし無罪放免ではない。同判決は、Googleが検索やAI製品を配布する際に競合他社の配信を妨げるような排他的契約を結ぶことを禁止し、あわせて競合が競争力を高められるよう一部の検索データの共有を命じた。Google側は控訴する方針を示しており、講師が述べた「相手方は控訴してくるので長引くだろう」という見立ては正しい。
「裁判が長引くうちに争点が陳腐化する」という講師の読みは、判決そのものの内容というより訴訟の時間軸に関する戦略的評価である。ただし、この判決が排他的契約の禁止とデータ共有を命じている以上、「時間さえ稼げば無傷」とは言い切れない点は留保しておきたい。
講師は2025年11月21日の時点で「もうMicrosoftを超えますよ、時価総額」と述べた。実際にAlphabetの時価総額がMicrosoftを上回ったのは2025年11月25日で、約7年ぶりのことだった。報道では、この動きにバフェット(バークシャー・ハサウェイ)による投資が大きく寄与したと解説されている。予測から実現まで4日である。
その後、Alphabet株は2025年通年で約65%上昇し、2026年1月12日には時価総額4兆ドルを突破。NVIDIA、Microsoft、Appleに次ぐ4社目となり、Appleを約7年ぶりに上回って世界2位となった。AppleがGoogleの生成AIを採用したことによる投資回収期待が背景にあると報じられている。
Googleは2025年11月18日(米国時間)にGemini 3を発表した。中核モデルのGemini 3 Proが同時に提供開始され、検索やアプリを含むGoogleのサービス全体、およびAPIを通じて展開された。
ベンチマークでは、LMArenaでEloスコア1501、Humanity's Last Exam で37.5%を記録したと報告されている。勉強会の3日前という極めて近いタイミングでのリリースであり、講義中に「ジェミニがめちゃくちゃ評判がいい」「凄まじすぎる」という反応が出ていたのは、この直後の熱量を反映している。
講師は「AIバブルに最も懸念を持っていたのはウォーレン・バフェットなのに、最近バフェットはGoogle株を買い取った。異例で」と述べた。事実関係を確認する。
バークシャー・ハサウェイは2025年11月14日提出のフォーム13Fで、2025年7〜9月期にアルファベット株1790万株を取得したことを開示した。14日終値ベースの市場価値は約49億ドル(約7500億円)である。同時にアップル株は15%削減している。その後さらに積み増され、アルファベットはバークシャーの米国株ポートフォリオで上位の保有銘柄となった。
なお、この投資判断については報道が分かれている。バフェット自身が「アルファベットへの投資を決断したのは2025年の自分だ」と述べた一方、後継者であるグレッグ・アベルの判断とする見方もある。「バフェット個人の異例の判断」と断定するには留保が必要である 要確認。ただし「バークシャーがアルファベットを大きく買った」という事実自体は確定している。
この回でもう一つ実践的だったのが、CEO交代の予測方法である。講師はAppleについて、去年から「ティム・クックが出ていく」と言い続けていた、と述べた。その根拠が周りの人事である。
CFOが交代し、COO(最高執行責任者)も交代している。側近の役職者が立て続けに辞めている。それが見えているからこそ、ティム・クックが辞めるのではないかという憶測を立てられる。そして実際、ティム・クックは後継者に対して引き継ぎ作業を行い始めていると明言した。1年後にアメリカのニュースメディアでも語られるようになった。
講師の総括はこうである。「これもなぜかというと、全部リサーチなんですよ。」周りの人材がどれくらい辞めていったのか、内部の編成がどう行われ始めているのか。事業のリサーチとはこういうものだ、と。そして多角面でどう分析するかによって、それが自分の事業にどれだけ影響があるのかというところまで、リサーチの幅として見ておくことが大事である。
Appleは2026年4月20日、ティム・クックがCEOを退任し、2026年9月1日付でジョン・ターナス(ハードウェアエンジニアリング担当上級副社長)が新CEOに就任すると発表した。クックは執行会長(Executive Chairman)としてAppleに残り、各国の政策当局との関係構築を中心に担う。
あわせてジョニー・スロージが新設のチーフ・ハードウェア・オフィサーに昇格し、ターナスが率いていたハードウェアエンジニアリング部門を引き継いだ。クックのCEO在任は2011年8月24日からちょうど15年である。
講師が2024年頃から「側近の人事異動からティム・クックの退任が読める」と述べていた見立ては、約1年半後に的中したことになる。「人事の連鎖からトップの交代を読む」という手法自体が、この事例で検証された形である。
トップの交代は、発表される時点ではすでに決定済みの情報である。だがその決定に至るプロセスは、周辺の人事という形で先に外へ漏れる。後継候補の下に人が集まる、退任予定者の側近が先に去る、後継者が担当していた部門に新しい責任者が置かれる。これらは公開情報として順に出てくる。
講師が「全部リサーチ」と言い切ったのは、この意味においてである。特別な内部情報ではなく、公開されている人事発表を時系列で並べ、その構造を読むだけで先が見える。同じ手法は取引先の与信管理、競合の戦略転換の察知にも使える。
オラクルが180億ドルの債券を発行した。なぜかというと、データセンターの建設費用が重要になってきて、OpenAIと組んだり、メタとも契約が決まっている。それによって場所を確保していかなければならないのに金が足りないから発行した。そして最近さらに380億ドル規模の調達をしている。その結果、大手企業の中で最も負債の大きい企業がオラクルになった。
モルガン・スタンレーが最も厳しい見解を出しており、今のペースで契約のまま進めていくと2028年までに負債額が3000億ドルに達するという。そして回収先はOpenAIへの依存度が大きく、OpenAIが黒字化するのは2030年見込みで、それまでは負債を抱え込んだままの支払いが続く。営業損失額は試算で年間700億ドル規模である。
株が落ちている理由は二つ。①ムーディーズとS&Pグローバルによるジャンク格付けへの引き下げ可能性。②CDS(クレジット・デフォルト・スワップ)が売れすぎており、スプレッドが1年で3倍(0.4%程度→1.1%超)に上昇。数週間で50億ドル規模のCDSが購入されている。
他のメタ、Microsoft、Amazon、Googleと比べて財務状況が良くない。それらの企業はキャッシュがかなりあり、余裕資金内でやっている(最近はAmazonやMicrosoftも社債発行を始めており、現金が厳しいのではという予想が立ち始めて株が落ちた面もある)。だがそれでも信用度が高い。
前から言われている材料の一つである。加えて財務仕様として、それがなかなか黒字化しないものがほとんどなので、来年の年末まで持つのかどうかという時限爆弾を抱えながらの状況である。
講師の応答:リスクを負っているので自分はオラクルに期待している。ただし今の段階で見るとOpenAIよりもAnthropicのほうに期待している。理由はAnthropicのほうがB2Bの契約比率が圧倒的に多いから。
まずDeepMindのデミス・ハサビスが優秀であること。そしてデータの深さである。私生活で我々がメインで使っているのは大体Googleのアプリであり、「本当にディープラーニングという名前の deep をやっているのはGoogle」。表面データではない。
比喩としては、OpenAIやAnthropicが「健康状態を肌の診断でやっている」のに対し、Googleは「内臓の調査までしている」状態。これがGoogleの強さである。参加者からは、でかいプラットフォームを持っていることと歴史の新しいOpenAIとの差、という補強も出た。
ピチャイの弱点は自己表現力がないこと。だがやることを見れば、着々とエコシステムを拡大し、レジリエンスを高めるためにネットワークのように張り巡らせている。
そのうえで、日本人の経営者が最も参考にすべきなのはピチャイだと講師は主張した。イーロン・マスクのようなことも、アンディ・ジャシーのように国にかますことも、多分できない。マーク・ザッカーバーグを参考にするとコーポレートガバナンスの問題で企業が死ぬ(ザッカーバーグの独裁が許されるのは特殊な条件があるから)。M7の中で参考になるのはジェンソン・ファンかピチャイであり、とくにコミュニケーションに難のある日本人にはピチャイが最適だろう、と。
参加者からは「ピチャイだけでなくGoogleの歴史を学んだほうがいい。エリック・シュミットらがどういう役割を果たし、どういう人材配置をしてきたのか、その意思決定の仕方こそ見なければならない」という補強が入った。講師も同意し、Googleの歴史はAIが出てくるまで保護主義をやりすぎて失敗し、そこから挽回したレジリエンスの歴史だ、と応じている。
結局しなくてよくなった。ただしもちろん相手方は控訴してくるので長引くだろう。Chromeについての裁判はまた3年ほどかかるはずである。
だがその頃には、もうChromeへの依存ではなくAIオーバービューである程度取っているから、別の問題の観点になっている。裁判をずらすことによって焦点が変わってくる。結果として「Chromeじゃないよね」という状態になり、Chromeは残る。これがGoogleの戦略であり、めちゃめちゃうまい。まさにピチャイの緻密な頭の良さと深さである。
「スターゲート計画です。トランプとの約束なので。」
トランプに喧嘩を売ったらどうなるかはイーロン・マスクを見ればよく分かる。トランプとラリー・エリソンは40年、50年の付き合いである。ラリー・エリソンが言っているのは「トランプを味方にすると非常にいいが、敵に回したときは本当に面倒くさい」ということ。大きな債務を作るよりも面倒くさい。
オラクルがこければ何万人という社員にも火が及ぶ。スターゲート・プロジェクトに乗ることで資本が入りやすくなり、いろいろなところともビジネスができるようになる。だからイーロン・マスクは外され、今すごくやりづらそうにしている。あれだけ金を持っていても、である。サム・アルトマンとマーク・ザッカーバーグはあそこできちんと立ち回った。ザッカーバーグはあれだけの経営者になっても謝罪まで行っている。
講師の締めくくり:「やっていることはもう独裁主義です、アメリカは。」
ティム・クックは明言している。後継者に対してはもう引き継ぎ作業を行い始めていると言っている。それを講師は1年前から言っており、1年後にアメリカのニュースメディアでも語られるようになった。
なぜ言えたかというと全部リサーチである。周りの人材がどれくらい辞めていったのか、内部編成がどう行われ始めているのか。CFOが辞め、COO(最高執行責任者)も辞めている。側近が立て続けに辞めているのが見えているからこそ、ティム・クックが辞めるのではないかという憶測が立てられた。事業のリサーチとはこういう感じである。