投資分析 勉強会レポート
光通信インフラ × AI半導体
サプライチェーン 完全分析
アクティブ層・パッシブ層の構造と主要3社の投資判断フレーム
📡 テーマ:光トランシーバー・OCS・データセンター通信 🏢 主要企業:Innolight / Lumentum / Coherent 💡 関連:Corning / 藤倉 / NVIDIA / Google ⏱ 収録:約70分
OVERVIEW / 本レポートの位置づけ

本レポートの概要|OCS技術とCorning標準化

この回のレポートは全3本に分割しています。本ファイルはその2本目、テーマは「OCS技術とCorning標準化」です。

OCS電力削減
60%
Google TPU(R300)向け独占供給
伝送速度移行
800G→1.6T
マルコア規格策定の背景
特許失効時期
2025年10-11月
Corningの主要特許・中国勢が注視
マルコア参加社数
4
Corning・藤倉・住友電工・Teralink

本パートはLumentumが手がけるOCS(光回路スイッチ)の技術的インパクトを解説する。電気変換を挟む従来方式に対し、微小ミラーで光を光のまま反射させるOCSは遅延をほぼゼロにし消費電力を60%削減する。ただし現状はGoogleのTPUネットワーク向け(R300)に独占供給する形にとどまり、他のハイパースケーラーへの展開が今後の課題であることも押さえる。

続いて、LumentumとCoherentが抱えるセグメントディスカウント(複合事業企業への評価割引)の解消策を、先行事例であるCorningの2026年3月期決算から読み解く。レガシー事業の統合によるキャッシュフロー創出、AIインフラ事業への全額再投資、投資家への明確なナラティブ発信という3ステップが株価上昇につながった構造を確認する。

最後に、通信速度が800Gから1.6Tへ移行する中でCorningが主導した共通規格マルコアファイバーを扱う。規格そのものを作る「ルールメーカー」であるCorningに対し、藤倉や住友電工は高品質な部材を供給する立場にとどまる構図と、Corningの主要特許が2025年10〜11月に失効することで中国企業が攻勢を強める懸念にも触れる。

Lumentum の革新技術:OCS(光回路スイッチ)

従来の電気スイッチとの比較で、Lumentum が Google と共同開発した OCS は業界を根本から変える可能性を持つ。

従来の電気スイッチング
光信号到達
電気に変換(損失・遅延)
交通整理(スイッチング)
再び光に変換(損失・電力消費)
次のノードへ送信
Lumentum OCS(光回路スイッチ)
光信号到達
内部の微小ミラーが物理的に傾く
光のまま反射・直接接続
遅延≒0 / 電力60%削減 / 変換ロスなし
次のノードへ直接送信
OCSのインパクトと課題
インパクト:データセンター間の巨大ネットワークを光でダイレクトに結ぶ世界を実現。消費電力60%削減・遅延ほぼゼロは、データセンターのランニングコストを根本から変える。

課題:現状はGoogleのTPUネットワーク向けに独占供給(R300)しており、Meta・Microsoft・Amazon等の他ハイパースケーラーへの展開が困難。新製品でGoogle以外向けの展開を模索中。
セグメントディスカウントの解消 ── Corningの事例から学ぶ

LumentumとCoherentが直面する「セグメントディスカウント(複合事業企業のバリュエーション割引)」の解消手法として、Corningが2026年3月期決算で実行した戦略が参考になる。

Corning が実行した3ステップ
① 天井を打ったレガシー事業を1つに統合し、コスト削減&キャッシュフロー創出
② そのキャッシュを全額AIインフラ事業(光ファイバー・コネクター)に再投資すると明言
③ 投資家向けに「AI事業への集中」を明確なナラティブで発信

→ 2026年3月以降、株価が明確に上昇。セグメントディスカウントが解消された事例。
LumentumとCoherentへの示唆
両社も同様に「古い事業を整理・統合して、AI向け事業への投資を明示する」必要がある。次回以降の決算発表でバックログ強調とセグメント再編が行われた場合、評価基準(バリュエーション倍率)が上がる可能性がある。

→ 両社の決算書でCorning式の事業再編が起きるかどうかが投資判断の重要ポイント。

マルコアファイバー共通規格(パッシブ層の標準化)

データセンターの通信速度が800G→1.6Tへ移行する中、各社がバラバラに作るとコネクターの規格が合わなくなる問題が発生。これを解決するためCorning主導で共通規格「マルコアファイバー」が策定された。

参加企業 役割 強み
Corning(米) 規格策定の主導・Glass Bridge技術 接続規格そのものを作る「ルールメーカー」。NVIDIAと共同開発。チップとファイバーをワンタッチ接続できる企画標準を保有。藤倉より圧倒的に高い評価。
藤倉(日) 高品質ファイバー・コネクター部材供給 優秀なパーツサプライヤーだが「部材売り」に留まる。ルールメーカーではなくルール適合者。
住友電工(日) ファイバーケーブル供給 国内最大手の光ファイバーメーカー。技術力はあるが海外向け営業・IRが課題。
Teralink 接続ソリューション 共通企画のコネクター技術
Corning の懸念点:特許切れ(2025年10〜11月)
Corningのガラス成分・製造プロセスに関する2つの重要特許が2025年10〜11月に切れる予定。中国企業が特許切れを狙って積極的に営業攻勢をかけている状況。ただし Corningは共通規格(マルコアファイバー)とNVIDIAとの強固なエコシステムで対抗可能と見られる。

本レポートは「光通信インフラの投資地図 — Innolight・Lumentum・Coherent」を全3本に分割・再構成したうちの2本目です(テーマ:OCS技術とCorning標準化)。