STUDY REPORT / 2026年2月度 勉強会

NVIDIAはなぜ1月決算か――決算期末月から読む、ジェンスン・ファンの中国カレンダー

物販の返品サイクル・CES・旧正月という三つの1月/H20からH200へ/CUDAという囲い込みの本丸
EXECUTIVE SUMMARY

「決算月がずれている」という違和感から始める企業分析

1月最終日曜
NVIDIAの会計年度末。ウォルマート等の小売と同じ「物販型」カレンダー
約120〜150億ドル
2024年のH20(対中特別仕様)売上推計。当時のNVIDIAには極めて大きい
5,890億ドル
DeepSeekショック(2025年1月27日)の1日での時価総額消失。単日として史上最大
CUDA
NVIDIAの本丸。GPUではなく開発基盤からの離脱こそが最大の脅威
2026年1月29日
ジェンスン・ファンの台北到着。訪中の直前に「第二販路」を固めた
1%未満
2026年8月期のデータセンター売上に占める中国向けHopperの比率(実績)

この回は、講師が唐突に出した一つのクイズから始まった。マグニフィセント・セブンと呼ばれる7社のうち、マイクロソフトの決算期末は6月、アップルは9月、アマゾン・アルファベット・テスラ・メタは12月31日、そしてNVIDIAだけが1月である。なぜNVIDIAは1月なのか。参加者からは「12月決算を見てから調整するため」「旧正月に合わせたのでは」といった答えが出たが、講師の関心はもう少し手前にあった。決算期末月のような、誰でも調べられるのに誰も理由を問わない情報を、そのまま流さずに引っかかれるかどうか。それがリサーチの入口だという立て方である。

答えは三層で示された。第一に、NVIDIAはもともとグラフィックボードを売る物販企業であり、需要のピークはクリスマスと年始のセールにある。返品まで含めた現金の出入りを1月末で洗い切って2月から新年度に入るというのは、ウォルマートやベストバイと同じ小売型の会計カレンダーである。第二に、1月はCESがあり、その年のテクノロジー需要の見取り図が最初に出てくる月である。そして第三に、1月から2月にかけての旧正月は、中国が新しい年度に向けて動き出す直前の仕込みの時期にあたる。この三つ目こそが、この回の中心だった。

そこから講師は、ジェンスン・ファンが旧正月前後にどこにいたかという行動履歴を年ごとに追う。2024年は中国、2025年も中国、そして2026年も中国。ただし、目的は毎年まったく違う。2024年は輸出規制で高性能GPUを出せなくなったなかで、テンセント・アリババ・バイドゥといった主要顧客をCUDAから離脱させないための引き止めであり、その結果として劣化版H20の大量発注が入った。2025年はDeepSeekショックで市場が「もうGPUは要らないのでは」と疑い始めたその瞬間に、現地で「中国は想像以上にGPUを欲しがっている」という事実を確認しに行った出張だった。

そして2026年1月。中国側がH200の購入を控えるよう動き始めたという状況で、ファンが訪中の直前に台湾へ飛び、TSMCや台湾のサーバー各社と会っていた。講師の読みは明快である。これは「中国で売れなかった場合の第二販路」を、結果が出る前に押さえに行った動きだ、と。事業に置き換えれば、主要取引先を失うかもしれないと感じた瞬間に、引き止めと同時に別の売り先を確保しておくということにほかならない。

■ セッションを貫く1本の線 決算期末月という「調べれば誰でも分かるのに誰も理由を問わない一行」を起点に、企業の商売の型(物販か否か)、需要のカレンダー(CES・旧正月)、そして経営者の移動履歴までを一本の線でつなぐ。NVIDIAの1月は、会計上の区切りではなく中国市場に対する意思決定の締切である――これがこの回の核心である。
PART 0

チケット転売とNFT――日本で新技術が入らない理由

本題に入る前、参加者どうしの雑談から始まっている。話題はライブチケットの転売とマナーの問題だった。日本のチケット価格は欧米より安く、参加者の一人によれば海外では500ドルや700ドルの水準に対し日本は2万円程度で、その分グッズ販売で稼ぐ構造になっている。値段を3倍4倍にしてしまえば転売の旨味は消えるが、今度は若い層が来られなくなる。だから技術で解決するしかない、という流れになるのだが、そこでコストが壁になって導入が進まない、というのが日本の現状だという。

そこで出たのがNFTによる二次流通の管理という発想である。二次流通のスプレッドの一部を主催者に還流させれば導入コストを回収できるのではないか、という問いに対して、実務経験のある参加者は二つの理由を挙げた。ひとつは、還流させてしまうと「主催者が転売で稼いだ」という構図が作れてしまうため、そもそも転売禁止というルールにせざるを得ないこと。もうひとつは、パブリックチェーンを使うとプラットフォーム上で売買が成立してしまうため、実験ではプライベートチェーンを使わざるを得なかったが、その運用は構築で数十万円でも、独自チェーンの維持となると数千万円規模のランニングになり採算が合わないこと。加えて、暗号資産業界の評判が悪すぎるため、そこに関わると発信の場そのものを失いかねないという事情も語られた。

シンガポールでは7万人規模の会場でスムーズに動き、韓国はID・KYCと結びついているため「一度やらかすと二度と入れない」運用が成立している。それに対し日本は、チケット購入時にメールアドレスを登録するだけで、KYCの実質的なチェックがない。アカウントは事実上いくらでも作れてしまう。角川をはじめIPを大量に保有する企業がこの領域に踏み込まないのはなぜか、という疑問が残されたまま、話題はNVIDIAへ移っていった。

📌 Claude補足:日本のブロックチェーン関連の業界団体について

発言中に「日本の省庁の中にあるブロックチェーンの協会」という表現があり、その承認が必要で癒着しているという指摘がなされた。日本には一般社団法人日本ブロックチェーン協会(JBA)および日本暗号資産等取引業協会(JVCEA、金融庁の認定資金決済事業者協会)が存在するが、いずれも省庁の内部組織ではない。チケットのNFT化に直接の「認可」が必要という制度は確認できず、講師以外の参加者による発言でもあるため、要確認として残す。

PART 1

マグニフィセント・セブンの決算期末月クイズ

講師が最初に投げたのは、7社の決算期末がバラバラである理由を説明できるか、という問いだった。整理すると次のようになる。1975年創業のマイクロソフトは6月、1976年創業のアップルは9月。一方、1990年代以降に立ち上がったアマゾン、アルファベット(グーグル)、テスラ、メタはすべて12月31日で揃っている。そしてNVIDIAだけが1月である。

企業決算期末講師が示した読み筋
Microsoft6月1970年代創業。企業向け年度契約サイクルに近い
Apple9月iPhoneの新作発表が9月。発表直後の初速を新年度の第1四半期に丸ごと乗せる設計
Amazon / Alphabet / Tesla / Meta12月31日1990年代以降の新興。暦年と揃えるのが標準
NVIDIA1月(最終日曜)物販型の小売カレンダー+CES+旧正月

アップルの9月については、講師の説明が具体的だった。9月にiPhoneが出て、その月末で年度を締める。すると新年度の最初の四半期に、ブラックフライデー、クリスマス、年始セールというアメリカ最大の消費期がまるごと入る。新作の勝負どころを新年度の頭に置く設計だ、という読み方である。

📌 Claude補足:小売業が1月決算を選ぶ理由(一次情報で裏取り)

ウォルマートの会計年度は2月1日開始・翌年1月31日終了である。小売業がこの区切りを選ぶ理由として一般に説明されているのは、まさに講師の説明どおり、年末商戦で売った商品の「返品」が1月に集中するためである。ホリデーシーズンに販売した商品が翌年度に返品されると翌年度の数字が歪むため、返品まで含めて1月末で洗い切ってから新年度に入る。ベストバイも同様に1月末〜2月初の52/53週カレンダーを採用している。NVIDIAの会計年度末は「1月の最終日曜日」であり、この小売型カレンダーと同じ発想に立つ。ただし、NVIDIAがこの期末を選んだ公式な理由を同社が説明した資料は確認できなかった要確認。「もともとグラフィックボードの物販企業だったから」という因果は、講師の推論として受け取るのが正確である。

■ ここで身につけるべき型 決算期末月は10-K(有価証券報告書)の1ページ目に書いてある。誰でも見られるが、ほとんどの人は「へえ」で終わる。講師が繰り返したのは、そこで「なぜ」と一段掘れるかどうかが、リサーチの深さの分岐点だという点である。NVIDIAを見るなら1月を見ろ、というのはそういう意味だった。
PART 2

1月の三層構造――返品・CES・旧正月

講師が示したNVIDIAの1月は、三つの層が重なっている。第一層は物販のカレンダーである。ゲーム向けグラフィックボードの需要はクリスマスと年始に最も膨らみ、10月から1月にかけて現金の出入りが最も激しくなる。返品を含めてここを締め切ってから新年度に入る。

第二層はCESである。1月にラスベガスで開かれるこの見本市で、その年のテクノロジー需要の方向がまず示される。NVIDIAは近年ここで基調講演を行っており、市場に対する年初の宣言の場になっている。

第三層が、この回の主題である旧正月だ。中国は旧正月が明けてから新しい年度が実質的に動き出す。ということは、旧正月の期間に市場へどれだけ仕込みを入れられるかが、その年の中国事業を決める。講師の言い方を借りれば、NVIDIAにとって旧正月は「最も大事な時期」であり、だからこそジェンスン・ファンの旧正月前後の動きを見れば、その年に何を狙っているかが読める、ということになる。

■ 講師の主張(帰属を明示) 「NVIDIAが1月決算なのは、物販・CES・旧正月の三つが重なるからだ」という三層の因果は、公開データで裏取りできる部分(小売型カレンダーの合理性、CESの開催時期、旧正月の商習慣)と、講師自身の解釈(NVIDIAが三つを意識して1月を選んだ)が混在している。後者は同社の公式説明ではなく、講師の読み筋として扱うのが正確である。
PART 3

2024年と2025年――旧正月の訪中は毎年目的が違う

2024年:CUDAから離脱させないための引き止め

講師はまず、ジェンスン・ファンが長らく旧正月に中華圏へ戻っていなかったこと、それが2024年1月に久しぶりに復活したことを指摘し、参加者に理由を問うた。答えは輸出規制である。生成AIブームと並行して対中半導体規制が強まり、当初は制限外だったGPUにも規制がかかった。中国はNVIDIAの売上の約2割を占めていたが、そこに製品を出せなくなった。中国側は「なら自分たちで作る」と言い出し、習近平政権は「NVIDIAが制限されるならHuaweiに乗り換えればいい」という姿勢を取った。

ここで講師が強調したのは、NVIDIAにとっての本当の痛みはGPUの売上ではないという点である。テンセントもアリババもバイドゥも、CUDAというNVIDIAの開発基盤の上で開発している。HuaweiのGPUに移れば、CUDAから開発者が離れる。囲い込みの構造そのものが崩れる。だから性能を落とした特別仕様であっても中国に出し続け、CUDAへの依存を維持しなければならなかった――これがファンが直接顧客を回った理由だという説明である。結果として大量発注が入った。

📌 Claude補足:H20の数字と、CUDA利用者の国別比率

H20の規模:発言では「120億ドルの発注」とされた。公開報道ベースでは、対中特別仕様H20の2024年の売上は120億〜150億ドルと推計されている。また2025年第1四半期には、バイトダンス・アリババ・テンセントを含む中国企業から160億ドル超のH20発注が入ったと報じられた。発言の「120億ドル」は2024年の売上推計のレンジ下限におおむね一致するが、「発注額」と「売上」が混在しているため、どちらを指すかは区別して読む必要がある。

「世界のAIエンジニアの半分が中国人/CUDA利用者の50%が中国人」:この数字は裏取りできなかった要確認。近い公開データとしてMacroPoloのGlobal AI Talent Trackerがあり、NeurIPS 2024で論文を発表した研究者4,622人のうち38%が学部を中国で取得している(2019年は29%)。ただし同調査によれば、中国で学部を出た研究者の72%は米国の機関で働いており、中国に残っているのは11%にとどまる。「中国人研究者が多い」ことと「中国国内でCUDAが使われている」ことは同じではない。CUDA利用者の国別内訳を示す公表データは確認できなかった。

規制の起点:発言では「バイデン政権になってから輸出制限」とされたが、Huawei・SMICへの輸出規制はトランプ第1期(2019〜2020年)に始まっており、A100/H100クラスのGPUを対中規制の対象に加えたのが2022年10月のバイデン政権である。「AI以前から規制はあった」という趣旨は正しいが、起点は前政権にある。

2025年:DeepSeekショックのただ中で「需要の実在」を確認しに行く

2025年1月については、講師は「旧正月以外に何がありましたか」と問い、参加者から「大統領就任式」という答えを引き出した。そのうえで「ジェンスン・ファンは就任式のときどこにいたか」と重ねる。答えは中国だった。当時メディアではトランプ大統領との不仲説が流れたという。

そこにDeepSeekが登場する。米ハイパースケーラーが投じてきた金額よりはるかに小さいコストで同等水準のモデルが作られたという話が広がり、市場は「そこまでGPUは要らないのでは」という過剰投資懸念に傾いた。株価は1日で大きく崩れた。しかし講師の読みでは、ファンが現地で確認したのは二つ――中国の開発速度が想像以上に速いこと、そして中国が想像以上にHシリーズを欲しがっていること――であり、その事実が「ハイパースケーラーの投資は妥当だった」というイメージの切り替えにつながり、株価と半導体セクターが戻った、という筋である。

📌 Claude補足:DeepSeekショックの数字と、ファンの実際の動線

下落幅:発言では「6000億ドル」「日本円で約100兆円」とされた。実績は5,890億ドル(2025年1月27日、株価は約17%下落)で、単日の時価総額消失としては米国株式市場史上最大である。「約6000億ドル」という丸め方は妥当な範囲。

就任式とホワイトハウス訪問の順序:ここは発言と報道に食い違いがある。報道ベースでは、ファンは2025年1月20日のトランプ大統領就任式を欠席し、旧正月の社員行事のためアジアを回った。1月19日に北京のペニンシュラホテルでNVIDIA中国法人の旧正月パーティーに出席している。一方、発言にあった「就任式の数日前にホワイトハウスを訪問した」については、報道されているトランプ大統領との会談は2025年1月31日、就任式の後である。「就任式のとき北京にいた」は事実だが、「ホワイトハウス訪問→その足で中国へ」という順序は逆になる。発言を書き換えず、食い違いとして記録しておく。

PART 4

2026年1月――H200を止められたら何が起きるか

ここで講師は参加者に「では今年、2026年1月にファンは何のために中国へ行くのか」と問いを投げ、長い沈黙のあとに参加者の一人が「H200の差し止め」と答えた。中国側が、米国の許可が出たとしてもH200を購入するなという方向に動いた、というニュースである。理由は、同等のものをHuaweiが作り始めているから。

講師が整理した論点は二つだった。第一に、NVIDIAはそれでもH200をどうやって中国に売り込むか。CUDAへの依存を継続させるためには、性能を落としてでも製品を置き続ける必要がある。第二に、中国が本当に買わなかった場合、すでに確保してしまった生産量をどう捌くか。この二つ目が、次のパートにつながる。

参加者との対話のなかで、中国側がHuaweiに移った場合に何が起きるかも確認されている。世界中のデータセンター案件はほとんどが米国絡みであるため、NVIDIAの購入自体は続く。しかし中国国内の大規模な用途がHuaweiのチップに移れば、開発はHuaweiのプラットフォーム上で行われることになり、CUDAから人が離れていく。GPUの一時的な売上ではなく、開発者コミュニティという資産が削られる、という構図である。

■ 論点の核心(講師の整理) NVIDIAが本当に守っているのはGPUのシェアではなくCUDAという囲い込みである。したがって対中販売は、売上の問題ではなくプラットフォーム維持コストとして見るべきだ、というのが講師の立て方である。なおこの見方には、「中国市場を失ってもデータセンター需要全体が伸びればNVIDIAの成長は損なわれない」という対立する見方も市場には存在する(実際、後述の答え合わせでは後者の側面も強く現れた)。
PART 5

訪中の前に台湾へ――結果が出る前に第二販路を押さえる

参加者から「H200を欲しい人は他にもいるのでは」という指摘が出たところで、講師は「そこなんです」と受けて、ファンが訪中の直前に台湾へ飛んでいた事実を出した。TSMCの首脳と会い、台湾での研究開発拠点の話をし、余る可能性のあるH200を、クアンタやフォックスコンといったAIサーバーを世界中で構築する企業に振り向ける段取りをつけていた、という説明である。

講師はここを「ジェンスン・ファンの営業のスタイル」として、自社の事業に置き換えるよう参加者に促した。メイン取引先との取引がなくなるかもしれないと考えたとき、まず顧客を引き止めに行くのは当然だが、それでも引き止まらない可能性は残る。ならば第二、第三の売り先を探す。ここまでは誰でも言える。差が出るのは順番で、結果が確定する前に販路を確保したうえで交渉に臨むか、失ってから慌てるかである。前者なら交渉に余裕が生まれ、万一ダメでも代替がある。この一石二鳥の設計を、ファンは訪中の前に済ませていた、という読みだった。

📌 Claude補足:台湾訪問の日付と「NVIDIA Constellation」の正確な位置づけ

発言では「1月13日か14日ごろ、訪中の1週間ほど前に台湾へ行った」「NVIDIAコンステレーションという台湾R&Dセンターを作った」とされたが、報道と照合すると次のようになる。

日付:ジェンスン・ファンが台北に到着したのは2026年1月29日。同日にTSMC創業者のモリス・チャンと会食(チャン氏の1年以上ぶりの公の場)、1月31日に台湾半導体エコシステムの首脳を集めた晩餐会を開催、台北市長とともに台湾本社の協定に署名している。発言の「1月13〜14日」とは半月ほどずれる。この勉強会自体が1月30日前後に行われているため、直前の出来事として語られた可能性が高いが、日付は食い違う。

NVIDIA Constellation:これはNVIDIAの台湾本社(社屋)の名称で、2025年5月のCOMPUTEXで発表され、台北市北投士林サイエンスパークのT17/T18区画が候補地とされた。2025年10月時点で地上権をめぐる問題から代替地を模索していたと報じられている。「2026年1月の訪台で新設したR&Dセンター」という時系列ではない点は区別しておきたい。

「H200の中国向け見込み150億ドル」:発言中のこの数字は裏取りできなかった要確認

図1:対中GPU売上の「規模の変化」と、失った分をどこで埋めたか(単位:億ドル)/出典:各種報道および NVIDIA FY2027 Q2 決算発表(2026年8月26日)をもとにClaude作図
ANSWER CHECK

2026年8月時点での答え合わせ

この回で語られた見通しは、その後どうなったか。2026年2月時点の発言と、2026年8月末までに確認できる事実を突き合わせる。

2026年2月時点の見立て2026年8月時点の事実判定
中国はH200を買うなと言っている。北京側が壁になる2026年3月にファンが「中国から発注を受け生産を再開する」と表明。5月に米政府が中国企業10社への販売を認可。しかし北京の指導で中国企業は購入を手控え、認可枠は消化されなかった的中
中国で売れなかった分は台湾のサーバー企業経由で世界のデータセンターに振り向ける2026年8月26日発表のFY2027 Q2で売上962億ドル(前年比+106%)、データセンター890億ドル(同+117%)。中国向けHopperはデータセンター売上の1%未満。Blackwell Ultraの立ち上がりで全体は過去最高的中
Huaweiが同等品を作り始めており、CUDAから人が離れるリスクがあるHuaweiは2026年にAscend 950PRを75万個出荷する計画、910Cも約60万個に増産。CANN NextがCUDA類似のSIMTプログラミングモデルを実装し、移行コストを下げた。バイトダンス・アリババが大口発注的中(ただし成熟度ではCUDAに未達との評価も併存)
H200が中国で全く売れない可能性がある2026年8月、NVIDIAは中国で「わずかな数量」のH200販売を開始。ゼロではないが認可枠には遠く届かず方向は的中/完全な差し止めには至らず
■ この答え合わせから読めること 講師の予測で最も価値があったのは「中国が買わない」という個別の当否ではなく、買わなかった場合の受け皿を先に作っていたという構造の指摘である。実際、中国向けが1%未満に落ちても全社売上は前年比2倍を超えた。第二販路の確保が効いたという意味では、この回の読み筋はそのまま数字で検証された形になる。
Q&A

質疑応答(このテーマに属するもの・全件)

Q. NFTによるチケット管理が進まない根本的な理由は何か。二次流通のスプレッドを主催者に還流させれば元は取れるのでは。
A. 主催者に還流させると「主催者が転売で稼いだ」という構図が作れてしまうため、実務上は転売禁止のルールにせざるを得ない。加えてパブリックチェーンではプラットフォーム上で売買が成立してしまうため、実験はプライベートチェーンで行った。
Q. 韓国やシンガポールではどうなっているのか。
A. シンガポールは技術導入に積極的で、7万人規模の会場でテストしたときは非常にスムーズだった。韓国はIDとKYCが結びついており、一度違反すると二度と入場させない運用が成立しているため、そもそも不正が起きにくい。
Q. プライベートチェーンの構築・運用コストはどれくらいか。
A. イーサリアム系で作るなら構築は20〜30万円程度。ただし独自チェーンを立てて維持する場合、ランニングは数千万円規模になり採算が合わない。ブロックチェーンは止められないため、維持し続ける必要がある点も重い。
Q. NVIDIAが1月決算なのは、他のM7の決算を見てから会計に織り込むためか。
A. 一つの意見として拾うが、答えはそこではない。物販の返品サイクル、CES、旧正月の三層が理由である。
Q. NVIDIAは他社にとってコストなので、先にコストを計上して後の調整をしやすくする狙いでは。
A. 観点としては面白いが、今回の答えとは別筋である。
Q. なぜジェンスン・ファンは2024年1月の旧正月に中華圏へ戻ったのか。
A. 輸出規制でGPUを出せなくなり、中国側がHuaweiへの乗り換えを示唆したため。CUDAから主要顧客(テンセント・アリババ・バイドゥ)を離脱させないための引き止めが目的で、結果として劣化版H20の大量発注につながった。
Q. 万一H200が止まったらどうなるか。
A. NVIDIAの売上が下がると同時に、中国で別のチップとCUDA代替の開発基盤が進む。中国国内の大規模用途がHuaweiに移れば、開発がHuaweiのプラットフォーム上で行われ、CUDAから開発者が離れていく。
Q. H200を欲しい人は他にもいるので、別に売れるのでは。
A. まさにそこ。だからファンは訪中の1週間ほど前に台湾へ行き、TSMCおよびクアンタやフォックスコンといったAIサーバー構築企業と、余剰分を世界中のデータセンターに振り向ける段取りを済ませていた。
Q. 台湾に拠点を作るのは、台湾が中国に取られた場合でも中国国内で売れるようにする布石か。
A. それは違う。中国国内にはすでにNVIDIA製品を生産する工場が存在しており、その点では大きく変わらない。
Q. 中国はそんなに大量に買っていたのか。
A. H200については見込みで150億ドル規模と語られた(※この数値は裏取りできず要確認)。世界中で不足しているとはいえ、中国の購入量はそれだけ大きかった。
HOMEWORK

宿題・次回への予告

  1. NVIDIAを見るときは1月を見る。決算期末月・CES・旧正月の三つが重なる月に、その年の戦略変更が出る。今後もこの月の動きを定点観測すること。
  2. モロッコを追う(産業的ポイント)。米インフレ抑制法によりバッテリー要素の一定比率を域内で作る必要が生じ、さらに2027年からは中国発のバッテリー規制(バッテリーパスポート)が義務化される。環境負荷の高いバッテリーは欧州で使えなくなる。そこで米欧双方と自由貿易協定を持つアフリカの拠点としてモロッコに中国資本が集中している。「モロッコ製だが技術は中国製」という製品が一気に入ってくる可能性がある。
  3. キューバを追う(地政学的ポイント)。キューバ経済を支えていたのはベネズエラで、医療・軍事の提供と引き換えに石油を得る仕組みだった。その石油が止まり、地域によっては1日20時間の停電に至っている。トランプ政権の側近マルコ・ルビオ国務長官は両親がキューバ移民で、キューバの民主化に強いこだわりを持つ。ここが動けばカリブ海の構図が変わる。
  4. 講師のYouTube第3弾「AI・債券・株式の2026年予測」(金融業界)を視聴すること。次いでバッテリー業界の2026年見通しの回も公開予定。
📌 Claude補足:宿題2・3の現時点(2026年8月末)での進捗

モロッコ:中国の国軒高科(Gotion High-Tech)がケニトラでアフリカ初のバッテリーギガファクトリーを建設中で、2026年第3四半期に生産開始予定。LFPセル10GWhから段階的に100GWhへ拡張する計画で、アフリカ開発銀行が1億ユーロを融資している。欧州側は「中国製EVへの関税を迂回する裏口になる」との懸念を強めており、講師の指摘した構図はそのまま現実化している。なおモロッコは米国とFTAを結ぶアフリカで唯一の国であり、EUとも連合協定を持つ、という発言部分は事実に合致する。2026年2月4日には米国と重要鉱物に関する協力覚書も締結した。

キューバ:2026年1月3日に米特殊部隊がベネズエラのマドゥロ大統領を拘束し、1月29日にトランプ大統領がキューバへ燃料を供給する国への関税を警告する大統領令に署名。3月には全土規模の停電が発生し、ルビオ国務長官は「トランプ政権の任期終了までにキューバは不可逆的な変化の軌道に乗る」と述べている。8月末時点で政権交代そのものは起きていないが、講師が予告した方向に事態は進んだ。

GLOSSARY

用語集

CUDA
NVIDIAのGPU向け並列計算プラットフォーム。スタンフォード大学出身のイアン・バック氏らが開発を主導した。NVIDIAの競争優位の本体はGPU単体ではなくこの開発基盤への囲い込みにある、というのが講師の見方。
H20 / H200
H20は対中輸出規制に適合させるために性能を落としたNVIDIA製AI GPU。H200はHopper世代の上位品で、2026年に米政府が中国向け販売を条件付きで認可したが、北京側が購入を抑制した。
CANN
HuaweiのAscend向け計算基盤。CUDAに相当する。2026年にはCUDA類似のSIMTプログラミングモデルを実装し、中国のAI企業の移行コストを下げたと報じられている。
DeepSeekショック
2025年1月、中国のDeepSeekが低コストで高性能なモデルを公開したことで、AI設備投資の過剰懸念が広がった一件。1月27日にNVIDIAは1日で5,890億ドルの時価総額を失った。
ハイパースケーラー
大規模データセンターを自社運営する企業群。ここではメタ、マイクロソフト、アルファベット(グーグル)、アマゾンを指す。
スターゲート計画
2025年に発表された米国内の大規模AIインフラ構想。NVIDIAはインフラ側の中核を担う立場にある。
CES
毎年1月にラスベガスで開かれる世界最大級のテクノロジー見本市。その年の需要動向が最初に示される場として、講師はNVIDIAの1月を構成する要素の一つに挙げた。
バッテリーパスポート
バッテリーの原材料・製造工程・環境負荷などの履歴を電子的に記録・開示させる制度。宿題パートで2027年からの義務化と、それが欧州市場でのバッテリー調達構造を変える点が指摘された。