STUDY REPORT / 全4本中 4本目

HBM熱問題とチャイナディスカウント
― 微細化の限界、データセンターのボトルネック、そして日本株と中国株の再評価

なぜSK hynixが選ばれるのか。ボトルネックは技術ではなく規制と環境なのか。チャイナディスカウントを剥がしたら中国企業はいくらになるのか。半導体の物理制約から相場の読み方まで、この回の後半を再構成する。

テーマ:半導体技術・中国株・日本株・相場観登壇:マイキー氏/前田氏形式:勉強会(オンライン)
EXECUTIVE SUMMARY

この回で何が語られたか

62%
SK hynix のHBM市場シェア。マイクロン21%、サムスン17%(2025年Q2)
1.4nm
現在到達している微細化水準。ここから先が本当に伸ばせるのかが論点
約50%
データセンターの熱のうちメモリ由来とされる割合(参加者の調査値)
90.2%
東京エレクトロンの海外売上比率(2026年3月期)。うち中国が34.1%
10万円超
キオクシアHD株価。IPO価格1,455円から桁違いの上昇
1兆ドル×7社
チャイナディスカウントがなければ中国IT7社が1兆ドル企業になるという講義中の試算

この回の後半は、技術の物理制約から始まった。EUV露光装置は光を何度も反射させ、極めて高い精度で目的の位置に到達させる必要があるため、微細調整が異常に難しい。二度刷りをすればその調整の負荷も倍になる。それでもEUVを使うのは、そこまでの微細加工が現状EUVでしかできないからである。ただし、削るときにずっと均一にできるかというとそうでもない。ならばそれをカバーする技術は何か──という捉え方をするとよい、というのが前田氏の整理だった。

そのうえで、ロジック側の課題として二つが挙げられた。ひとつは微細化そのものの限界(1.4nmから先)。もうひとつがメモリ問題である。今後のAI半導体はメモリとロジックを必ず一体化させなければならないが、この行き来が増えるほどエネルギーを食い、次の計算に進む回数が遅くなる。参加者からは「メモリで熱の50%が出ているらしい」という調査結果も共有された。だからマイクロンはHBM4でメモリの最初の層にロジック半導体を入れ、情報のやり取りを速くしようとしている。

そして、なぜSK hynixが注目されやすいのかという問いへの答えが、この回でもっとも実務的な洞察だった。性能ではなく「重ねたときに歪みにくい」からである。積層時に歪まない=歩留まりが高い=安定している。だから選ばれやすい。積層技術の勝負は、ピーク性能ではなく安定性で決まっている、という指摘である。

後半は視点が一気に広がる。データセンターの真のボトルネックは規制と環境団体であるという読み、民主主義のコストをめぐる踏み込んだ議論、チャイナディスカウントを剥がした場合の中国企業の評価額試算、キオクシアや東京エレクトロンといった日本株への期待、そしてトランプ大統領周辺の売買を追う短期トレード論まで。最後は勉強会コミュニティの運営連絡で締められた。

セッションを貫く1本の線

「制約はどこにあるのか」を一貫して問い続けた回である。半導体では微細化ではなく熱と歪み。データセンターでは技術ではなく規制と住民。中国株では企業の実力ではなくディスカウント。日本株では技術ではなくファイナンスと組織。ボトルネックが技術の外側に移っているとき、技術だけを見ていても投資判断はできない、というのが通底したメッセージだった。

PART 0 / 物理の壁

EUVの微細調整と、二度刷りという負荷

質問者の理解はこうだった。これまでの流れは、ちゃんとした像が取れないから露光装置の波長をもっと短くしようという動きだった。ただしそれは高くつくし大変で、二度刷りしないときれいにならない。だからレーザーできれいにしましょうという装置が出てきた──という認識でよいか。

前田氏はまずEUV露光装置の技術的背景から説明した。EUV露光装置は何回も反射させたうえで、極めて高い精度で細くし、目的の位置に到達させなければならない。この微細な調整が異常に難しい。だから二度繰り返すというやり方も、その調整自体がかなり大変になる。ではなぜそれでもEUVかというと、そこまでの微細加工が現状EUVでしかできないからである。そして問題は、削るときに本当にずっと均一にできるかというとそうでもない点にある。それをカバーする技術として何があるか、と捉えるとよい、と。

📌 Claude補足 ― 装置の位置づけの補正 要確認

質問中の「レーザーできれいにする装置」は、前レポート(3本目)で扱った Applied Materials の Centura® Sculpta®(2023年2月発表)を指している。ただし公表資料上これはパターンシェーピングシステムであり、レーザー加工装置としては説明されていない。EUVダブルパターニングに伴う追加工程を削減し、コスト・複雑性・環境負荷を下げることを目的とした装置である。「レーザーで引っ張る」は比喩と理解するのが安全。

PART 1 / メモリウォール

ロジックとメモリを一体化させると、熱が跳ね上がる

前田氏が挙げたロジック側の課題は二つ。第一に微細化そのもの。現在1.4nmまで来ているが、本当にそれ以上できるのかという問題が出てきている。第二に、HBMが注目される本当の理由であるメモリ問題だ。

今後AI半導体でやらなければならないのは、メモリとロジックの一体化である。ところが一体化すると、実はエネルギーを大きく消費し、やり取りが大きくなるほど次の計算に進む回数が遅くなる。参加者からは「メモリで熱の50%が出ているらしい」という数値が共有された。だからマイクロンはHBM4において、メモリの一番最初の層にロジック半導体を入れて情報スピードを速くしようとしている。また、まったく別のアプローチとしてニューロモルフィック回路の研究もある、と補足された。

積層のジレンマ

参加者が「一体化させることで発熱を抑えるということか」と確認したのに対し、前田氏は「いや、発熱はこれで上がってしまう」と即座に否定した。重ねれば重ねるほど熱がこもる。HBMとは、性能を取るために熱の問題を引き受ける構造そのものである。

なぜSK hynixが選ばれるのか

ここが白眉である。前田氏の説明はこうだ。SK hynixが注目されやすいのは、性能というよりも重ねたときに歪みにくいからである。歪みにくい=歩留まりが高い=安定している。だからSK hynixが選ばれやすい。「歩留まりが高い」という評価の実体が、ここでは積層時の変形耐性にあることが明示された。そして、その領域をやっているのがアプライドマテリアルズである、と前レポートの内容に接続された。

HBM市場シェア(2025年 Q2)

単位:% 出典:Astute Group/Counterpoint Research 集計に基づく報道

📌 Claude補足 ― HBMシェアと、講義で触れられなかった逆転

  • 2025年Q2のHBMシェアは SK hynix 62%/マイクロン 21%/サムスン 17%マイクロンがサムスンを抜いて2位になっている点は講義では触れられなかったが、「SK・サムスンが量産型、マイクロンが高付加価値型」という講義中の整理を再考させる事実である。
  • 2026年はHBM4の本格量産で構図が動く見通し。サムスンはHBM4量産に伴いシェア30%超への回復が期待されるとの報道がある一方、2026年8月時点でサムスンのHBM4歩留まりは約80%、HBM4Eは70%超に達したとも報じられている。
  • SK hynixはHBM4の開発を完了し、電力効率40%改善・データレート10Gbpsを掲げて量産前の認定待ちとされる。マイクロンは最大11GbpsのHBM4サンプルを出荷済みで、2026年のHBM年換算売上ランレートを約80億ドルと見込む。
  • つまり2026年はHBM4での順位入れ替えが起こりうる年。「SK hynixが強い」という前提を固定して持ち続けるのは危険。

出典:https://www.astutegroup.com/news/general/sk-hynix-holds-62-of-hbm-micron-overtakes-samsung-2026-battle-pivots-to-hbm4/

配線層も細くなっている

「半導体の層は一番下だけで、上は配線だけではないのか」という質問に対し、前田氏は「配線もかなり細くなってきている」と答えた。16層といった多層構造になっており、消費電力を抑えるためには回路自体、電力が通るところを極端に細くしなければならない。そしてこれがうまくいったのがマイクロンだった、と。消費電力の観点でマイクロンが評価される理由がここにある。

なおマイキー氏からは、10年以上前にフロリナート(フッ素系不活性液体)にサーバーを漬け込む液浸冷却を実際にやっていたという経験談も出た。熱をどう上げないかについて当時から取り組んでいた、という話である。

PART 2 / 真のボトルネック

データセンターを止めているのは技術ではない

前田氏は、アプライドマテリアルズの動向を見ると次のトレンドが見えると述べたうえで、いま熱問題がかなり来ているので、それに対してどういうソリューションが提示されていて、どこが強みを持っているかを見るとよい、と示唆した。

これに対しマイキー氏は、もっと手前の問題を提起した。そもそもデータセンターの建設が需要に追いつくのか。仮にアメリカが規制も市民の意見も全部無視するなら、ラムリサーチもSK hynixも一気に化けるだろう。だが実際にデータセンターの開発が遅れているのは、市民団体や環境団体の反対があるからだ、と。両者は「規制問題と環境問題の2つがボトルネック」という認識で一致した。

メタが金を出したら黙った

マイキー氏は、大手企業と一般市民の対立が続く中で、メタが「お金をあげるよ」と言った途端に反対が静まった例に触れた。反対運動の相当部分は補償で解決可能である、という現実的な観察であり、規制リスクを評価する際の実務的な視点になる。

PART 3 / 議論

民主主義のコストをめぐる、踏み込んだ会話

この流れで、かなり踏み込んだ議論が交わされた。マイキー氏は「民主主義と言いつつ、バカの意見なんか聞かなくていいんだよという国が勝つのではないか」「人権と言っていたら中国には勝てない」という趣旨の見方を示した。前田氏も「歴史的に見て、民主主義という形が長く定着している基本事例がないと理解している」と応じている。

この議論の扱い方

これは登壇者が意図的に強い表現を使った速度と統治形態のトレードオフに関する私見であり、レポートとして事実認定するものではない。投資判断に落とすなら、感情的な賛否ではなく「意思決定コストの差が、インフラ建設スピードの差としてどれだけ数値に表れるか」という形で検証可能な仮説に変換すべき論点である。米国のデータセンター許認可期間と中国の同種案件の期間を実測比較する、といった検証が考えられる。

PART 4 / 中国株

チャイナディスカウントを剥がしたら、いくらになるのか

マイキー氏は、中国企業に実際にチャイナディスカウントがなかった場合に時価総額がどれくらいになるかを試算し、YouTubeで公開したと述べた。金融の計算式を使い、ディスカウント分を戻して簡易計算した結果、中国のIT企業だけで7社ほどが1兆ドル企業になるという。現時点で最も高いのはテンセントで5,500億ドルほど。BYDはバッテリーまで押さえているため、それも計算に入れるとテスラに匹敵するレベルの評価になるのではないか、と。

前田氏も「エコシステムまで含めると、本来的にはBYDのほうがテスラより高くてもおかしくない」と同意した。マイキー氏は「テスラのやりたいことを全部やってしまっているのがBYD」「Appleのやりたいことを全部作ってしまっているのがXiaomi」と表現している。

中国型垂直統合の射程

前田氏の指摘が重要である。日本で考えるような「製品を作る/ラインを持つ」だけの垂直統合ではなく、輸出入から輸送経路まで全部押さえている。マイキー氏はこれを「Amazonの物流網まで取ってしまっているようなもの」と言い換えた。さらに国家戦略とすべてが連動している。だから同じ土俵で比べても勝てない、という結論である。

📌 Claude補足 ― 試算値の扱い 要確認

「中国IT7社が1兆ドル企業になる」「テンセント5,500億ドル」「BYDがテスラに匹敵」といった数値は、いずれもマイキー氏自身が独自の前提でディスカウントを戻した推計であり、市場コンセンサスや公式評価ではない。中国株のバリュエーション水準は規制・地政学・上場地の要因で大きく変動するため、この試算をそのまま投資判断に用いるのは危険である。前提となる割引率とディスカウント幅の設定根拠を、動画本編で必ず確認すること。

PART 5 / 日本株

キオクシア、東京エレクトロン、そして「ぶら下がる」戦略

日本株では、まずキオクシアが挙げられた。マイキー氏によれば、一部で聞いている話としてアメリカでの上場観測がある。ベインキャピタルが入っており、ベインの株主はSK hynixとキオクシアの両方に関わっている。だからSK hynixが動けばキオクシアも動くのではないか、という見立てである。加えて直近のEPSが「化け物並みに伸びている」ため、日本企業の理想的なスタイルのひとつとして海外からも評価されている、と。

📌 Claude補足 ― キオクシアの現状(発言の先を行っている)

  • 米国上場は既に「観測」ではなく正式発表済み。キオクシアは2026年5月15日、米国証券取引所へのADS(米国預託証券)上場計画を発表した。米規制当局の承認が条件で、上場先取引所と時期は未定。
  • 株主構成は、ベインキャピタル系SPC「BCPE Pangea Cayman2」が14.19%で筆頭株主。東芝が14.12%(従来14.48%から低下したことで順位が入れ替わった)。SK hynixはこのSPCの議決権の大半に転換できる債券を保有しており、実質的な影響力を持つが、2028年までキオクシアの同意なく議決権ベースで15%以上を保有しないという契約制限がある。
  • 業績は2025年度通期で売上高2兆3,370億円(+37%)、営業利益8,704億円(+93%)、純利益5,544億円(約2倍)。株価はIPO価格1,455円から10万円台まで上昇した局面がある。2026年8月には自社株買い発表で急伸する一方、業績は下振れとも報じられており、値動きは荒い。
  • つまり講義中の「SKが行くからキオクシアも行くのではないか」という推測は、資本構造の実態としては裏付けがあるが、上場自体は既に決定事項として発表済みである。

出典:https://jp.bloomingbit.io/feed/news/118091 / https://www.tradingkey.com/jp/analysis/stocks/us-stocks/261977683-samsung-skhynix-dram-sndk-tradingkey

東京エレクトロンについては、マイキー氏が「アメリカ企業がバチバチに揉めている中で頑張っている」と評価しつつ、補助金を受けているラムリサーチやアプライドマテリアルズと戦う構図の厳しさを指摘した。任天堂には「ファイナンスをどうにかしろ」、ソニーには「CMOSを頑張ってTSMCにぶら下がれ」という辛口の助言が出た。

「ぶら下がる」は敗北ではない

前田氏はこれを「ある意味適切な生存戦略」と評価した。独自でやっていくよりも、どちらかにぶら下がったほうが早い。ネオクラウド各社(前レポート参照)はまさにこれをやっており、「今はぶら下がる時期だからぶら下がる。そのうえで次の戦略を立てている」ように見える、と。エコシステムへの従属を、次の一手までの時間稼ぎとして設計するという発想である。

東京エレクトロン 地域別売上構成(2026年3月期)

単位:% 出典:東京エレクトロン IR(個人投資家向けページ)

📌 Claude補足 ― 東京エレクトロンの構造リスク

海外売上比率は約90.2%で、講義中の「海外売上比率9割」は正確。ただし内訳を見ると中国が34.1%と最大で、韓国22.3%、台湾20.4%が続く。日本はわずか9.8%。米中の輸出規制が動くたびに売上の3分の1が直撃を受ける構造であり、「補助金がなくて不利」という論点以上に、地政学リスクの集中が評価の焦点になる。

出典:https://www.tel.co.jp/ir/personal/index.html

PART 6 / 相場観

トランプ周辺の売買を追う、という短期戦略

マイキー氏が「面白い見方」として挙げたのが、トランプ・オーガニゼーションとその周辺が何の株を買っているかを見る手法である。短期トレードが狙いやすいという。実例として、アメリカが中国を訪問する前にNVIDIAやボーイングの株を買い漁っていた件、くら寿司の件、そして石油の局面での動き(金曜に悪材料を流し、月曜に復活させ、その間に買う)が挙げられた。

歴史的な対比も語られた。ウォーターゲート事件以降、歴代大統領は自分が株を持っていれば売却するか、ETFに切り替えるかしてきた。反発を受けるからである。ジミー・カーターのように、無関係でもレッテルを貼られて支持率を落とした例もある。ところがトランプ大統領周辺にはその配慮がない。「人の目を気にせずにやっている人間は強い」というのがマイキー氏の評価だった。

📌 Claude補足 ― 開示情報で確認できる事実

  • 2026年5月の公開資料により、トランプ大統領がNVIDIA、ボーイング、マイクロソフトなどの株式を大量に取得していたことが開示され、複数のメディアが報じた。中国訪問のタイミングと重なる購入も報じられている。
  • また2026年第1四半期にテック株を大きく買い増していたことも報道されている。政権の政策がその企業の事業を後押しする局面での購入という点で、利益相反の観点から批判的な報道も存在する。
  • なおジミー・カーターの事例については、大統領在任中に家業のピーナッツ事業をブラインドトラストに移した経緯が知られている。講義中の「無関係なのにレッテルを貼られて支持率を落とした」という描写は、細部の裏取りが必要な部分。

出典:https://www.axios.com/2026/05/19/trump-stocks-nvidia-boeing / https://www.quiverquant.com/news/Trump+Discloses+Large+Stock+Purchases+in+Nvidia,+Robinhood,+Palantir+and+Other+Tech+Firms

この手法を使う際の注意

大統領の資産開示は取引から数十日〜数か月遅れて公表される。開示を見てから追随しても、価格には既に織り込まれている可能性が高い。「開示を見て買う」のではなく「次に何を交渉するかが分かっている人間の行動パターンを読む」という使い方でなければ、実効性は乏しい。マイキー氏の言い方も「自分が何を交渉するか分かっているから買っている」という点に力点があった。

PART 7 / 雑談・運営連絡

面談、コミュニティ告知、そして「行きたい国でビジネスを作れ」

講義の合間と末尾には、コミュニティの近況と告知が共有された。網羅性のため記録しておく。

面談・人脈

マイキー氏は半導体業界の関係者と面談し「なぜそんなに半導体に詳しいのか」と驚かれたという。かつて自身がハードを扱っていた経験(前述のフロリナート液浸冷却など)が背景にある。また、元経済産業省で現在は三井不動産のイノベーション部門トップを務める石田氏がコミュニティに参加予定であることも紹介された。不動産でも新しいことをやらないと立ち行かないため勉強しに来る、という趣旨だという。

コミュニティ告知

企画日程内容
マイキー感謝祭 第1回(東京)6月20日 13時〜/夜19時〜代々木公園で運動会(雨天決行)。夜は会場を移して二部制。出版メンバー以外の一般参加も可
誕生日会土曜日会場変更あり。参加申込URLはミーティングリンクで共有
福岡開催7月10日宮崎の高校への登壇と前後する日程
買い回りメンバー募集期間限定4万5,000分まで進行。優等性ではハードルが上がるためメンバー増強で負担を分散する
Zoomフェス(緑氏主催)6月25日プレゼンのお手本を見られる数少ない機会として参加推奨
次回勉強会月曜週末は面談で埋まっており連絡が遅れる可能性あり

※日程はいずれも講義中に告知されたもの。申込リンクはDiscordに掲載。

「行きたい国でビジネスを作れ」

雑談の中で共有された、マイキー氏が商社時代に上司から教わったという言葉。「行きたい国があれば、その国でビジネスを作れば会社の金でその国に行ける」。実際にシリア、アフガニスタン、イスラエル、サウジアラビアなど、行きたい国で仕事を作って渡航してきたという。前レポート1本目の「全部イエスと言う」「境界線を自分で引かない」という実践論と、まっすぐ地続きの話である。

また、マイキー氏の締めの言葉として「ちゃんとリサーチの幅を広げて、好奇心を持って疑問を持つところからやっておいてください」が繰り返された。翌週にYouTubeでラムリサーチの解説を図付きで出す予定であり、復習に使ってほしい、とのアナウンスもあった。

Q&A / 質疑応答

この回の質疑(技術・相場 パート)

Q1.これまでの流れは、露光装置の波長を短くする方向だった。ただ高くつくし二度刷りしないときれいにならない。だからレーザーできれいにする装置が出てきた、という理解でよいか。
A.(前田氏)EUV露光装置は何度も反射させたうえで高精度に目的位置へ到達させる必要があり、微細調整が異常に難しい。二度繰り返せば調整負荷も倍になる。それでもEUVを使うのは、その微細度が現状EUVでしかできないから。問題は削るときに完全に均一にできないこと。それをカバーする技術として捉えるとよい。
Q2.ではASML以外、たとえば中国の露光装置と組み合わせても成立するのか。
A.(前田氏)ロジック側にも問題が二つある。ひとつは微細化限界(現在1.4nm)、もうひとつがメモリ問題。今後のAI半導体はメモリとロジックを一体化させる必要があり、やり取りが増えるほどエネルギーを食い、次の計算に進む回数が遅くなる。
Q3.メモリで熱の50%が出ていると調べたが。
A.(前田氏)だからマイクロンはHBM4でメモリの最初の層にロジック半導体を入れ、情報スピードを速くしようとしている。別系統ではニューロモルフィック回路の研究もある。
Q4.ロジックとメモリをくっつけるのは発熱を抑えるためか。
A.(前田氏)いや、発熱はこれで上がってしまう。重ねれば重ねるほど熱が問題になる。SK hynixが注目されやすいのは性能よりも、重ねたときに歪みにくいから。歪みにくい=歩留まりが高い=安定している。そこをやっているのがアプライドマテリアルズ。
Q5.半導体の層は一番下だけで、上は電気の配線だけではないのか。
A.(前田氏)配線もかなり細くなってきており、16層といった多層になっている。消費電力を抑えるには回路そのもの、電力が通る部分を極端に細くする必要がある。これがうまくいったのがマイクロン。
Q6.データセンター関連で一番のボトルネックは規制問題と環境問題の2つという認識でよいか。
A.(マイキー氏)そこである。仮に規制も市民の意見も無視すればラムリサーチもSK hynixも一気に化ける。実際に開発が遅れているのは市民団体・環境団体の反対が理由。ただしメタが補償を提示した途端に反対は静まった。
Q7.エコシステムまで含めると、本来BYDのほうがテスラより高くてもおかしくないのでは。
A.(マイキー氏)同意。テスラのやりたいことを全部やってしまっているのがBYD、Appleのやりたいことを全部作ってしまっているのがXiaomi。しかも垂直統合は製品ラインだけでなく輸出入・輸送経路まで及び、国家戦略とも連動している。
Q8.キオクシアはそこまで戦略的なのか。
A.(マイキー氏)ベインキャピタルが入っており、ベイン経由でSK hynixとキオクシアが繋がっている。SKが動けばキオクシアも動くのではないか。直近のEPSの伸びも著しく、日本企業の理想的なスタイルのひとつとして海外から評価されている。(※米国上場は2026年5月に正式発表済み。Claude補足参照)
ACTION / 宿題・次アクション

この回から持ち帰るべき課題

  1. HBMの熱問題に対して、どの企業がどんなソリューションを出しているかを一覧化する。冷却(液浸・水冷)、構造(ロジックダイ内蔵)、材料の3系統で整理する。
  2. HBM4での各社の量産時期・歩留まり・シェア見通しを追い、SK hynix優位が続くかを検証する。
  3. 米国のデータセンター許認可にかかる期間と、環境・住民対応のコストを実データで調べる。ボトルネックの定量化を試みる。
  4. マイキー氏のYouTube「チャイナディスカウントを外した場合の中国企業の時価総額試算」を視聴し、前提となる割引率とディスカウント幅の置き方を確認する。
  5. キオクシアの米国ADS上場の進捗と、ベインキャピタル系SPC・SK hynix・東芝の持分構造の変化を追う。
  6. 東京エレクトロンの中国売上比率(34.1%)が、米中規制の変更でどれだけ振れるかを感応度分析する。
  7. 大統領の資産開示の公表ラグを実測し、「開示追随」戦略が成立しないことを自分で確認する。
  8. 翌週公開予定のラムリサーチ解説(YouTube)を復習に使う。
GLOSSARY / 用語集

この回に登場した用語

HBMHigh Bandwidth Memory。DRAMを縦に積層して広帯域を実現するメモリ。AI半導体に不可欠。
HBM4次世代規格。ベースダイにロジックを載せる構成が採られ、TSMC等のファウンドリが関与する。
メモリウォール演算性能に対しメモリ帯域・遅延がボトルネックになる現象。AI時代の中心課題。
歩留まり製造した製品のうち良品となる割合。積層では変形(歪み)耐性が歩留まりを左右する。
ニューロモルフィック回路脳の神経回路を模した計算アーキテクチャ。従来型とは全く別のアプローチ。
液浸冷却サーバーを絶縁性液体に浸して冷却する方式。フロリナート等が用いられる。
チャイナディスカウント規制・地政学リスク等により中国企業の評価が本来より低く付く現象。
ジャパンディスカウント同様に日本企業の評価が低く付く現象。ガバナンス・成長期待などが要因とされる。
ADS(米国預託証券)外国企業が米国市場で株式を流通させるための証券。キオクシアが上場を計画。
ブラインドトラスト公職者が資産運用を第三者に一任し内容を知らされない仕組み。利益相反回避に用いられる。
ウォーターゲート事件1972年の米政治スキャンダル。以降、大統領の資産管理に高い透明性が求められるようになった。
CMOSイメージセンサーソニーが世界シェア首位の撮像素子。講義では「TSMCにぶら下がれ」という文脈で言及された。