TSRとCOSRの話が終わった後、参加者の上田氏(税理士)との対話から、このセッションの主題が立ち上がった。「EBITDAと純利益の差が大きく生まれているとき、どう判断するか」という問いに、上田氏は「利益よりもEBITDAのほうが重要なので、そちらが高くなるように持っていく」と答えた。マイキー氏の返答は端的だった。実際のところ、一番大事なのは純利益である。 なぜならEBITDAを強化することで死んでいった企業がたくさんあるからだ、と。
マイキー氏の説明では、EBITDAが重宝されるようになったのはアメリカでLBO(レバレッジド・バイアウト)が大流行した時期であり、これはバイアスである。そしてそのバイアスが教科書に載っている。LBOでは買収資金を借入で賄うため、企業の返済能力を外に示す必要がある。EBITDAをいじることで「これだけの返済能力があります」と見せられ、資金調達がしやすくなった。しかもEBITDAは減価償却を足し戻すため、長らく「キャッシュフローに近いもの」として重宝されてきた。だからバフェットが「ふざけるな、こんなものはまやかしの利益だ」と言った――という歴史の説明である。
本質的な問題は、EBITDAが設備投資(CAPEX)を計算から除外していることにある。マイキー氏はこれを、中古トラックで稼ぐ運送屋の例で説明した。ボロボロのトラックで年間1000万円稼ぎ、ガソリン代と給料を払って手元に500万円残った。稼ぐ力としては素晴らしい。しかし彼が無視しているのは、そのトラックの寿命である。あと1年で動かなくなり、仕事を続けるには来年1000万円の新車が要る。実質的には赤字である。EBITDAは財布にいくらあるかだけを見て、明日の仕事道具を買い換えるための金がいくら必要かを完全に無視したスコアなのだ。
後半は指標の穴がPBRに移る。ラーメン屋の秘伝のタレの例が使われた。30年の試行錯誤で行列のできる秘伝のタレを完成させても、自分で作ったタレは帳簿に資産として載らない。載っているのは古い店舗と鍋で合計100万円である。ところが別の店がその店を1億円で丸ごと買収すると、そのタレの価値は「のれん」として貸借対照表に載る。自力で育てた会社のPBRは100倍、買収された会社のPBRは1倍。本当に秘伝のタレを持っているのは前者なのに、指標の上では後者のほうが割安に見える。 セッションはこの構造をどう交渉に使うか、そして「お化粧」と資金調達の実務、VC市場の現状へと展開して終わった。
会計指標には必ず穴がある。その穴は、指標を提示する側が有利になるように設計されている。したがって使う側に立てば武器になり、使われる側に立てばカモになる。マイキー氏は自らを「性格の悪い人間なので、必ず穴を見つけてそれを武器に変えることを常に考えてきた」と説明した。この回で語られた実務例には法的・倫理的にきわどい領域が含まれるため、本レポートは発言をそのまま記録したうえで、注記を添える形式を取る。
上田氏との対話から始まったこのパートで、マイキー氏はまず基本の対応関係を示した。EBITDAは営業キャッシュフローと連動していなければならない。だから営業キャッシュフローを出せ、と言う。両者に大きな変化がある場合ほど、不正の疑いが強まるという読み方である。
そして歴史的背景の説明が続く。EBITDAの売りは何かというと「ブーム」であった。アメリカがこれで突き進んでいったので、日本の企業のファイナンス資料にはあまり書かれていない。ではなぜアメリカで流行ったのか。LBOである。買収資金を借入金で賄う以上、投資家に対して「この会社を買って自分たちが入り、バイアウトするときには非常に大きな利益が出せます」と示す必要がある。EBITDAをいじることで資金調達がしやすくなった、というのがマイキー氏の説明だった。
加えて、EBITDAは減価償却を足し戻すため、長らく「キャッシュフローに近いもの」として重宝されてきた。だからこそバフェットが怒った、という文脈である。マイキー氏は、バフェットやチャーリー・マンガーのような投資家がEBITDAを「まやかしの利益」と呼んだ、と述べている。
発言の帰属に補正が必要である。 講義では「ウォーレン・バフェットが何と言ったかというと『ブルシット・アーニング』と言った」と述べられたが、この有名な言い回しはチャーリー・マンガーのものである。マンガーは「EBITDAという語を見るたびに、それを『でたらめの利益(bullshit earnings)』に置き換えるべきだと思う」と述べている。バフェット側の代表的な発言は「減価償却を費用として考えないというのは、まったく正気の沙汰ではない」「減価償却は非現金費用ではない。現金費用である。ただ先に払っているだけだ」「EBITDAを使う人は、あなたを騙そうとしているか、自分自身を騙しているかのどちらかだ」といったもので、批判の内容は共通するが、この一語の帰属はマンガーが正しい。両者はともにフリーキャッシュフローと純利益を選好する。
LBO起源説はおおむね裏付けられる。 EBITDAという指標は、TCI(ケーブルテレビ)のジョン・マローンが考案・普及させたとされる。マローンは全米規模で拡大するために巨額の負債を負い、利益をすべて再投資したため純利益の見栄えが悪くなった。そこで、減価償却と支払利息を除外したEBITDAのほうが事業実態を表すと主張した。1980年代の投資銀行家とLBO投資家は、買収に伴う負債を返済できるだけの収益力があるかを判定する道具としてこれを採用し、1980〜90年代のLBOで標準指標になった。マイキー氏の「LBOで流行った」「これはバイアスである」という説明は、この経緯と整合する。
マイキー氏は、EBITDAで調整可能な項目を列挙した。特別損失や営業費用で損を出しておいて営業利益だけを保つ。減価償却が大きくてもそこはごまかせる。さらにSBC(ストック・ベースト・コンペンセーション、株式報酬費用)――株式で報酬を出す際にかかる費用――も、ほとんどの企業が現金支出ではないという理由でEBITDAから除外する。そうすると数字が良くなる。営業利益の下で調整できる企業なら、そこも無視されてしまう、という指摘である。
マイキー氏がここで持ち出したのが、この回でもっとも分かりやすい比喩である。
中古のトラックで稼ぐ運送屋がある。ボロボロのトラックを使って年間1000万円を稼いだ。ガソリン代と給料を払って、手元に500万円の現金が残った。目先の現金だけに注目するEBITDA君は言う――「稼ぐ力としては素晴らしいね」。
しかし彼が無視しているのは、減価償却=トラックの寿命である。トラックはあと1年で寿命を迎えて動かなくなる。仕事を続けるには新しいトラックを買わなければならない。これが来年1000万円かかる。だとすれば実質的には赤字である。
ところがEBITDAは、将来の機械・整備・買い換えのための金、つまりCAPEX(設備投資)を計算から除外している。したがってEBITDAは、財布にいくらあるかだけを見て、明日の仕事道具が壊れて買い換えるための金がいくら必要なのかを完全に無視したスコアなのだ。
マイキー氏はここから、EBITDAの機能を一言で定義した。EBITDAをごまかすことによって未来を伏せる。そして「将来的に金を稼げますよ」という無理な説明として使える。 これが指標としての本質的な用途だ、というのである。
参加者からは実務上の反論に近い補足も出た。日本企業であればEBITDAで一旦の目安を掴んでおいて、ディスカウント・キャッシュフローでそれが正当化されるかを他の手法も併用しながら検証し、妥当性を探るという段取りを踏む。しかしアメリカ企業の売り手側は、EBITDA一本押しで直近の類似事例を出し、「この価格で買え」という押し付けのようなところが比較的あった、という印象である。同業種の直近事例が10倍だったからこの案件も10倍だ、他は11倍や12倍もあるぞ、というところから交渉が始まる、という証言だった。
見なければならないのはフリーキャッシュフローである。加えて、EBITDAの箇所では、営業利益と無形資産の売却損益といった項目をしっかり固定化しなければならない。EBITDAはそれらの項目を変えられてしまうので、ごまかしが効く。だから営業キャッシュフローとEBITDAの差をどれだけ出すかで、どれだけごまかしているかが見える。多少ならいいが、乖離が極端に大きい場合は疑ってかかる、というのが実務手順として示された。
EBITDAの調整を極限まで振り切った例として、マイキー氏はWeWorkを挙げた。同社が示したのは「コミュニティ調整後EBITDA」という独自指標である。赤字を垂れ流していたにもかかわらず、上澄みの利益を作るためにEBITDAの調整項目を変え、マーケティング費用、一般管理費、拠点の運営コスト、成長投資までも除外した。
マイキー氏の指摘は会計の筋道に沿っている。賃料収入から賃料原価と減価償却を差し引いたものが本来計上されるべき利益であるのに、EBITDAという語を道具として使い、会社全体の収益からそれらを解除したうえで算出していた。運営に必要なコストを無視して数字を提出していた。これがWeWorkのやったことであり、これで投資家を黙らせたのだ、という説明である。
WeWorkは2018年4月、初の社債発行(7億ドル超を調達)にあたって開示資料に "community adjusted EBITDA"(コミュニティ調整後EBITDA)という指標を掲載した。この指標は、利息・税金・減価償却・償却に加えて、マーケティング費用、一般管理費、開発・デザイン費用といった基本的な事業費用まで差し引く前の数字だった。同社はこれを2億3300万ドルと開示した。同時期に開示された数値では、売上高は倍増して8億6600万ドル、損失も倍増して9億3300万ドルであった。
債券リサーチ会社Covenant Reviewの創業者アダム・コーエンは「『コミュニティ調整後EBITDA』という言葉を人生で見たことがない」とコメントしており、アナリスト・報道の双方から強い批判を浴びた。2019年のIPO申請書ではこの語は姿を消したが、代わりに主要な本社経費を除外する「コントリビューション・マージン」が用いられ、これも同様に批判された。マイキー氏の説明は、除外項目の内訳を含めて公開情報と一致する。
参加者からは、EBITDAだけ、マルチプルだけでM&Aをやってしまうケースがあり、WeWorkの場合はソフトバンクがそれに近い形で影響を受けたのではないか、という指摘が出た。マイキー氏はこれに対し、「だから僕がキャッシュフローが大事だと言っているのは、まさにそこなんです」と応じている。WeWorkではEBITDAは非常に良かったがフリーキャッシュフローがなく、営業キャッシュフローも枯渇していた状態だった、という整理である。
別の参加者からは、EBITDAには運転資本が入っていないという指摘も出た。在庫が異常に増えていても、売掛金が実際には激増していても、EBITDAからは分からない。マイキー氏は「その通り、分からない」と同意した。貸借対照表を見れば分かるはずだが、M&AのFA(ファイナンシャル・アドバイザー)にもPLは強いがBSに弱い人が多い、という会話が交わされている。
マイキー氏は続けて、PBRも同様にごまかせる、これ自体が妥当な判断のできない指標だと言われている、と述べ、次の例を出した。
| A店(自力で育てた) | B店(A店を買収した) | |
|---|---|---|
| 実態 | 30年の試行錯誤で、行列のできる秘伝のタレを完成させた。 | A店の価値を見込んで、1億円で丸ごと買収した。 |
| タレの会計上の扱い | 自分で作ったタレは帳簿に資産として上げられない。 | 支払った1億円が「のれん」として資産に載る。 |
| 帳簿に載っている資産 | 古い店舗と鍋などで合計100万円。 | のれんを含めて1億円。 |
| 市場評価 | 1億円 | 1億円 |
| PBR | 約100倍(=1億円÷100万円) | 約1倍(=1億円÷1億円) |
| 見た目の評価 | 非常に割高に見える | 割安に見える |
マイキー氏の指摘はこうである。自分たちで作った秘伝のタレを持っているのはA店なのに、PBRに戻すとB店のほうが安く見えてしまう。これは地(=実態)をごまかす一つのやり方である。 したがって、その会社が本当に能力を持っているのか、それとも金を持っているだけなのか。買収した先の市場評価と、そこにどういうタレがあったのか。そしてそのタレの価値が算入されていないことを前提として見なければならない、という結論になる。
参加者からは、会計上は外部との売買で現金を対価としてやり取りしない限り帳簿には載らないので、評価が難しい、という補足があった。不動産であれば日本の上場企業でも時価評価の一部開示が始まっているが、無形資産のそれは難しい、という会話である。
マイキー氏の説明は、会計基準の規定と正確に一致する。 IFRSでは、IAS第38号「無形資産」第48項が自己創設のれんを資産として認識してはならないと明確に規定している。理由は、自己創設のれんは分離可能でもなく、契約その他の法的権利から生じたものでもないため、そもそも識別できない資源であり、原価で信頼性をもって測定できないからである。
さらに同基準では、内部創出のブランド、題字、出版タイトル、顧客名簿およびこれらに実質的に類似する項目も、自己創設のれんと区別することが不可能であるため計上が禁止されている。後述する「ゼロから作ったファッションブランドの価値」という参加者の質問は、まさにこの規定に該当する。
一方、企業結合(買収)によって生じるのれんは資産計上が認められる。したがって「自分で育てれば載らないが、他社が買えば載る」という非対称は、会計基準上の設計としてその通りである。日本基準でも自己創設のれんの資産計上は認められていない。
参加者から、ファッションブランドを自社でゼロから作った場合はどう値段をつけるのか、周りの類似事例や売上倍率で決めるのか、という質問が出た。マイキー氏の答えは「それもあるが、今の話をしっかりと投資家に説明する」である。「これくらいの価値が生まれるデザインです」と示し、「あなたの会社のBSはこうなりますから、こういう影響がありますよね。でもこれを計算していないこちら側のBSは不利なんです」と説明したうえで、価値という切り口で交渉して価格を上げる。使い方はそこにある、という回答だった。
ではDCF(ディスカウンテッド・キャッシュフロー)ならどうか、という問いに対しては、DCFにも欠点があるという応答だった。一個ずつ全部潰していくしかない。結果としてどうとでも数字は作れる。3年先、4年先、5年先のフリーキャッシュフローはどうとでもなる。今の会計には「ゲタの計算方法がない」――つまり将来価値の下駄をどう履かせるかの標準がない。だからこそ無形資産への投資を3年ほどかけて積み上げる、という手が出てくる、という話である。前田氏がここで大きくうなずいていたと参加者が指摘し、マイキー氏は「前田さんなら今の話はよく理解できると思う」と応じた。
ここから会話は、指標の穴を実務でどう使うかという話題に移る。参加者の一人が、まだそこまで見ていない人たちがたくさんいるので、悪用とまでは言わないが、お化粧して資金調達を引っ張りやすくする方法はまだ全然ありだと思う、と述べた。マイキー氏はこれに同意し、自身が調達するときは「バレないように化粧する」と応じている。
参加者からは、弁護士が入り複数の担当者が3か月かけて実施するデューデリジェンスに対し、会計士とタッグを組んで資料を出し、何もバレずに100億円を引っ張ってきた、という自身の経験が語られた。特に銀行はEBITDAを重用しているので、銀行から資金を引く場合はEBITDAで化粧するのが一番いい、という会話である。マイキー氏の側からも、海外で運営している投資会社で同じ手法を活用し、現在6億ドル規模の調達を指示している、という発言があった。さらに、韓国の会社の売却に入った際、作成したシステムを30億円で売ったのもまさにこの手法だ、会計士と組んで数字を作れるようになるとめちゃくちゃなことができる、という説明が続いた。
銀行はそんなに簡単に金を貸すのか、という質問に対しては、知り合いに「銀行は俺の財布だ」という名言を残した人物がおり、80億円を引っ張って踏み倒したことがある、という逸話が紹介された。マイキー氏の総括は、銀行や、金を持っているだけの投資家であれば、これだけで十分に引っ張れる。この手法を知っているのはアメリカの一部とヨーロッパの一部くらいで、アジアの富裕層や同業者はかなり遅れている、というものだった。
このパートの内容は、話者本人が自身の経験として語ったものであり、本レポートは発言をそのまま記録する。 ただし、事実と異なる財務情報を意図的に作出して金融機関や投資家から資金を調達する行為は、日本法上、詐欺罪(刑法246条)や、上場企業であれば金融商品取引法上の虚偽記載に該当しうる。マイキー氏自身も「悪用とまでは言わない」「これは化粧である」という言い方で、会計基準の枠内での見せ方の工夫という位置づけを取っている。会計基準の範囲内で自社に有利な指標を選んで説明することと、事実と異なる数字を作出することの間には決定的な線がある。 発言の中でその線がどこに引かれているかは明示されておらず、聞き手が自分で判断すべき論点として残る。なお、直前のセッションで語られた「オルツの循環取引」は、まさにその線を越えた側の事例である。
マイキー氏は自身の方法をこう説明した。ほぼすべての指標や計算方法について、自分は基本的に性格の悪い人間なので、必ず穴を見つけに行って、それを武器に変えることを常に考えてきた。相手が指標を提示してきても「穴を見つける、穴を見つける」しか考えていないので、こういうことはこうだろうな、というのを調べまくり、勝手に独学で勉強しまくっていた時期があった、と。
これに対して渡辺氏が、それは哲学でも同じで、アウフヘーベンされた先にできた穴を見つけるという営みだ、と応じた。EBITDAが頂点になっているところに減価償却という問題が出てくるのは、まさに前段のセッションで語られた「矛盾を見つける」という話とつながる、という指摘である。マイキー氏は「綺麗に繋がりました」と応じ、この日の二つのセッションが接続された。
終盤の話題は、指標の話から資金調達市場の構造変化に移った。参加者が、ベンチャー投資では3%程度の出資であれば皆がどんどん金を入れていく状況を見ていたが、今年破綻したオルツの上場前に話を聞いていたときは、こうなるとは想定していなかった(結局投資はしなかった)と述べたのが発端である。
マイキー氏は、ベンチャーキャピタルから調達する際は、まずテーブルに着くまでが一番大変だと応じた。VCに会うまでのプレゼンテーションが勝負であり、いくら知識を得てもプレゼンが下手ならそのテーブルに立てない。ビジネスモデルの魅力をいかに伝えるかである。そしてテーブルに立つまでが勝負ではなく、立ってからが勝負であり、そこからさらに絞られる。だからコンサルタントに、この案件ならこのVCに持っていくべきだと全部分かっている人が周りにいると、テーブルに着くのが非常に楽になる。その人にお化粧までしてもらえるなら価値は確定に近い、という説明だった。
| ステージ | マイキー氏の説明 | 参加者の観測 |
|---|---|---|
| シード | ビジョン・ミッション・バリューが評価軸になる。数字のマジックはまだ効きにくい(1期・2期しかないため)。AIによってコスト削減が進み、会社のランニングコストが昔より大幅に低い。1億円かかっていたものが3000万円でできるようになったので、同じ予算で3社に投資できる。結果としてシードの裾野がやばいほど広がっている。 | 日本ではまだそこまでの波は来ていない。 |
| レイター | 資金調達そのものが重要になるステージ。数年分の数字が溜まっているので、そこで数字の化粧を施すことができる。しかしアメリカでは最近、レイターでの調達が難しくなってきている。投資家の側も成長しているからだ。レイターは1点集中になりつつある。 | 日本では銀行系のキャピタルがレイターをバシバシやろうとしている感じを受ける。 |
銀行がベンチャーデットに向かう理由についてもやりとりがあった。銀行の業務はデット(融資)なので、そちらのほうが都合がいい。ただしドッド・フランク法の規制が今後緩和されていくと、2026年に向けてシードへの投資もかなり増えてくると言われている、というのがマイキー氏の見立てである。日本については、タイミーが200億円規模を調達してからベンチャーデットが随分広がったという感覚が参加者から示された。マイキー氏は最後に、企業にとってはむしろ株式で調達したほうが振り切ったことができるが、デットにすると借金として残る、と付け加えている。
オルツ(alt Inc)について。 AI議事録アプリ「AI GIJIROKU」などを手がけたオルツは、2024年10月に東証グロース市場へ上場したが、上場からわずか10か月後の2025年7月30日に上場廃止が決定し、民事再生手続に入った。売上高の最大9割が循環取引だったと指摘され、協力会社を経由して広告宣伝費や研究開発費を用い、実態のない売上高を計上したと認定されている。2021年12月期から2024年12月期までの売上高の大半が過大計上だったとされる。負債総額は約24億円。参加者の「今年破綻したオルツ」という言及は事実と一致する。
ドッド・フランク法の緩和について。 2026年に入り、米国では規制緩和が具体的に進行している。2026年3月13日に「住宅ローン信用へのアクセス促進」に関する大統領令が署名され、資産300億ドル未満のコミュニティバンクおよび1000億ドル未満の小規模銀行の負担軽減が指示された。またベンチャーキャピタル関連では、銀行がベンチャーキャピタル・ファンドやクレジット・ファンドを保有・運営できるよう、ボルカー・ルールの適用除外を拡大する規制案が提示されている。マイキー氏の「2026年でシード投資も増えると言われている」という見立ては、この方向性と整合する。
タイミーの調達について。 200億円規模という数字はこの場での参加者の記憶に基づく発言であり、内訳(エクイティかデットか、時期)は特定できなかった要確認。日本のベンチャーデット市場が拡大したという定性的な認識自体は、金融機関系ファンドの参入増加という報道傾向と整合する。