STUDY REPORT / 2025年12月度 勉強会

AI導入ロードマップと機会損失――なぜ提案書のKGIは「売上」ではなく「止血」なのか

主題:中国の産業選別とロボット/KGIをコスト削減に置く理由/機会損失の3レイヤー/フェーズ1〜10のロードマップ/AIファーストBPRとHITL/連結化の値崩れと中間管理職/日本企業が動かない構造
EXECUTIVE SUMMARY

「これは売上を上げるものではなく、コストを下げるものです」

提案のKGI
止血
売上ではなくコスト削減。経営はまず出血を止めるところから始まる
機会損失の分類
3レイヤー
オポチュニティロス/ストラテジックロス/コンペティティブロス
ロードマップ
フェーズ1〜10
基盤と効率化 → 組織・人材 → プロセス → 市場・顧客 → 優位性と統制
最大の障害
生産性のパラドックス
左上。PLに直結しない。インターネットもコンピュータも同じ道を通った
中間管理職が消える理由
連結化の値崩れ
SECIの4工程のうち、AIで最も価値が落ちるのが連結化だから
テコにする外圧
開示基準の変更
時価総額3兆円以上から強制適用。そこから段階的に降りてくる

この回の後半、マイキー氏がフレームワークの設計論から実際の提案資料に話を移したところで、議論の性格が一変した。理論から、日本企業に何をどう売るかという実務へ降りたのである。そこで最初に確認されたのが、この資料のKGI(最終目標指標)は何かという問いだった。前田氏が「KPIを作るということはKGIを作らなければならないが、それを適正に作れるのか」と疑問を投げたのに対し、マイキー氏の答えは「作れないので、一緒に作ってあげなければいけない」であり、そのうえで置かれたKGIがコスト削減、経営でいえば止血だった。

なぜ売上ではないのか。マイキー氏の説明は市場の評価軸に根拠を置いている。現代の風潮では、売上を上げることのメリットよりもコストを削減できていることのほうが評価される。世界中のGAFAやマグニフィセント・セブンの決算発表を見れば、どれだけ削減できているか、どれだけ効率性と生産性が上がっているかがアピールポイントになっている。コストを削減すれば1人あたりの生産性が上がる。そしてマイキー氏はこの論理の到達点を指し示した――「この究極体が何かというと、これを全部説明できるようになると、なぜアメリカの若年層の失業率が上がっているのかも全部説明できるんです」

そのうえで彼は、提案書の見出しを「利益」ではなく「機会損失」に切り替えた。理由は市場との連動性である。プロフィタブルではなくオポチュニティ・ロスを押したほうが市場に合っている、という判断だった。しかも損失は3つのレイヤーに分けられている。オポチュニティロス(機会損失)、ストラテジックロス(戦略的損失)、コンペティティブロス(競争上の損失)である。参加者からは「機会損失のほうが引っかかるし、今アメリカがそうなっているから、いずれ日本もそうなるという話もできる。しかも人口が減っていて若い人がいない」という賛同が出た。

後半の議論は、それでも日本企業は動かないという現実に費やされた。小賀氏がプライム上場企業に資料を持ち込んだが、まともなフィードバックは得られなかったと報告する。長谷川氏は「資料を見せた瞬間にフリーズが起こる」と分析した。ある参加者は「プライム上場の社長や経営企画が分からなかったら、もっと分かる人はいない。これが分かるなら日本はDXがうまくいっていた」と断じ、別の参加者は「これはCIOが読めばいいでしょう、と言って自分は奥の院に隠れる社長が何人も思い浮かぶ」と述べた。ではどうするか。マイキー氏の答えは正面突破の放棄だった。開示基準の変更という外圧をテコにする。強制的にやらされるからである。

この回を貫く1本の線

提案は、相手が動く理由の側から設計しなければならない。利益は説明できても動機にならないが、損失は動機になる。理解は説明できても行動にならないが、義務は行動になる。だから提案書のKGIは止血であり、見出しは機会損失であり、導入のテコは開示基準の強制適用である。正しさで動かすのではなく、構造で動かす

PART 0

開始前の20分――サピエント、エッジ、そして中国という「選別」

この日の勉強会は、講義が始まる前におよそ20分の雑談があった。内容は雑談と呼ぶには濃く、後半のAI導入論と正面から接続している。ここでは切り捨てずに記録する。

来年の注目はサピエント・インテリジェンス

口火を切ったのはマイキー氏の予測だった。来年の注目はサピエント・インテリジェンスである、と。彼は前年12月ごろに「絶対DeepSeekが来る」と言い、翌1月に的中したという実績を引き合いに出したうえで、「当たるか外すか分からないですけど」と留保を添えている。「予想するって結構リスキー」「来年という縛りがきつい。5年と言ってしまえばほぼ当たる」という自覚も同時に述べられた。

予測の帰結として語られたのがエッジコンピューティングである。サピエントが来れば推論が一気に来て、エッジコンピューティングが伸びる。来年の中国のスマホはおそらく「AIスマホ」ではなく「エッジコンピューティング・スマホ」と「エッジコンピューティングPC」で盛り上がる、という見立てだった。さらに医薬品分野との連携性が高いとし、開拓できる範囲は結局のところ希少疾患であるという指摘も加えられた。

参加者から「サピエントが伸びてきたら、中国はNVIDIAのGPUではなく独自チップの開発に進むのでは」という問いが出ると、マイキー氏は「そうすると今度はカンブリコン・テクノロジーズとファーウェイが伸びてきます」と即答した。半導体チップでこの2社が伸び、NVIDIAとAMDに対抗する構図になるのではないか、という展開である。

中国の道が複雑すぎるという優位

話題はFSD(完全自動運転)に移った。ここでの論点は意外なところにあった。中国の道は超複雑なので、中国で自動運転がいけるところまでできたら、世界中の道が全部できるというものである。アメリカの道はストリートとアベニューで整然と区切られていて標識も読み取りやすいが、中国は大通りに標識がなく、裏通りは輪をかけて複雑である。ライダーのセンサーが自動車でどれくらいできるのか、という技術論に、道路環境の難易度という前提条件が重ねられた。そのうえで、電池で勝てなければエネルギーで勝てず、そこにメタルとAIが加わると相当厳しい、宇宙産業もある、という総括が続いた。

中川氏の解説:資源を「選別」できる国とできない国

ここで中川氏が加わり、議論の解像度が一段上がった。論点は単純である。中国が強いのは人口ではなく選別である

中川氏の説明はこうだ。中国には13億人いるが、ほとんどはそれほど大したことはない。しかしトップ層、とりわけ中国製造2025に入っている宇宙・医薬品・半導体・ロボットといった分野には、政府が補助金を集中投下している。1000億円単位の新しい工場を政府が建てている。そこで1000億円規模の設備を自前で建てなければならない他国の企業が、立ち打ちできるのか――という問いである。日本やアメリカにそれができるか。たとえばホンダが航空機をやっているからそこに巨額の補助金を出す、ということはできない。アメリカでもボーイングに対して同じことはできない。競争があるのが当たり前だからである。

中川氏はさらに、選別の対象が「目立つ分野」であることを指摘した。鉛筆工場の技術がいくら目立っても世界では目立たない。半導体・宇宙といった世界で戦っている領域だからこそ、月に行ったという成果が「すごい」と映る。だから他が全部ダメでもその領域だけに集中する。清華大学のような特別なエリートを擁する研究機関では、理系の新卒に5000万円を出しているという。中川氏はこれを「共産党と書いて、極端な資本主義」と表現し、極端な差別社会だと思う、と付け加えた。

参加者からは「日本の1億人の中で1000人選ぶのと、10何億の中から1000人選ぶのはだいぶ違う」「人数の暴力はマジで勝てない」という反応が出た。一方でマイキー氏は、優先産業を自分の国にとって何なのかをしっかり決めていること自体が合理性だと述べ、「日本みたいにまんべんなくみんなに、みたいなことをやっていたら、みんなお花畑状態になってしまう」と評した。ただし同じ口で「日本は何をしたって生きていける。コンビニでバイトしたって普通に生きていける」とも述べ、「日本こそ本当に社会主義の国」「こんなにケツを拭いてくれる国はない」という皮肉に着地している。日本の政府は衰退の延命処置、呼吸器のようなサービスをしている、という評だった。

Unitreeのロボットと、その用途

最後に話題はロボットに移る。中川氏がYouTubeでユニツリー(Unitree)のロボットについて話した、という導入から、参加者たちは「人間が見ていない動き」「やたら動く」「サッカーもやる」と反応した。中川氏の見立ては率直だった。「あれは戦争に使うと思います」「ターミネーターですね」。マラソンのロボットもボクシングのロボットも作っているが、最終目標はとにかく足が動くことである。政府が莫大な補助金を出しているのもそれで説明がつく、というのが中川氏の解釈だった。参加者から「10とか歌ったら外さない」「そんなものが来たら戦えない」という声が続いた。

価格についても具体的な数字が出た。犬型で80万円、人間型でも300万円ぐらいで、市販もされているという。ソフトのVLAモデルについて中川氏は「深センにあるマインドロボティクス」と述べている。最近の進歩として、以前はすぐひっくり返っていた中国のロボットが、ひっくり返っても立ち上がるようになった点が挙げられた。もがいていたものが、ヒュッと立ち上がるようになったという。

図1:講義中に語られたUnitree製ロボットの価格と、公開情報で確認できる価格帯の対照。犬型については発言値と公開値に大きな開きがあり、人間型はおおむね一致する。詳細は直下のClaude補足を参照。出典:発言値は勉強会、公開値はWebSearchによる公開情報にもとづきClaude作図。
📌 Claude補足:ロボット価格は「犬型80万円」が発言と公開情報で食い違う

WebSearchで確認しました。人間型については発言とほぼ一致します。Unitree G1の基本モデルは日本国内でおよそ300万円前後(米ドルでおよそ16,000ドル)とされ、研究開発(R&D)版は600万円以上です。講義中の「人間型でも300万円ぐらい」は、G1の基本モデルの価格として妥当な数字です。

一方で犬型については食い違いがあります。四足歩行ロボット Unitree Go2 の価格は1,600米ドル(およそ23万円)から、というのが公開されている水準で、「犬型で80万円」という発言よりかなり安い帯にあります。ただしGo2にはエアー/プロ/R&Dなど複数のグレードがあり、上位版やセンサー追加構成では価格が大きく上がるため、80万円という数字はそうした上位構成を念頭に置いたものである可能性があります。本レポートでは発言を書き換えず、両方を並置します。なおフルサイズ人型のH1は海外報道でおよそ9万米ドル(約1,300万円)とされており、桁が一つ変わります。

要確認 VLAモデル(Vision-Language-Action、視覚・言語・行動を統合したロボット制御モデル)の開発元を「深センにあるマインドロボティクス」とする発言については、裏取りできませんでした。Unitree Robotics自体は杭州に本社を置き、モーターなどの駆動部品を外部調達に頼らず自社で開発・製造していること、4D LiDAR L2などのセンサー製品も自社で持っていることが公開情報から確認できます。またUnitreeがVLAモデル「UnifoLM-VLA-0」をオープンソースで公開したのは2026年3月で、この勉強会(2025年12月)の時点ではまだ公開されていません。発言が指している企業名の特定はできなかったため、要確認として残します。

📌 Claude補足:「中国製造2025」の正式な中身と補助金の規模

中国製造2025は2015年5月に中国政府が発表した10年計画の産業政策で、重点分野は10、重点品目は23に設定されています。10分野は、次世代情報技術(半導体・AI)、高度工作機械とロボット、航空宇宙・航空機、海洋エンジニアリング、先進軌道交通機器、省エネ・新エネルギー自動車、電力機器、農業機器、新材料、バイオ医療・医療機器です。中川氏が挙げた「宇宙・医薬品・半導体・ロボット」は、いずれもこの10分野に含まれます。

補助金の規模についても公開データがあります。半導体分野では国家集成電路産業投資基金(通称「大基金」)を通じて、第1期(2014〜2019年)に約1,387億元、第2期(2019〜2025年)に約2,041億元が出資されています。中川氏の「1000億円単位の工場を政府が建てている」という描写は、規模感として過大ではありません。要確認 ただし「清華大学の理系新卒に5000万円」という具体的な待遇水準については、公開情報で裏取りできませんでした。中国の大手テック企業が卓越したAI人材に極めて高額の初年度報酬を提示する事例は報じられていますが、清華大学の研究機関における新卒待遇として同額を確認できる資料は見つかりませんでした。

PART 1

なぜKGIは「売上」ではなく「止血」なのか

前田氏の問いは、コンサルティング提案の急所を突いていた。KPIを作るということは、その上位にKGIとゴールを作らなければならない。しかしそれを適正に作れるのか。会社が決めることであり、業界も時代も不確実性が強いなかで、その作り方が会社によってはまったく作れないのではないか――という疑問である。

マイキー氏の答えは二段構えだった。第一に、実務的な事実として「作れないので、一緒に作ってあげなければいけない」。作れない会社のほうが多い。第二に、それでも経営者はこれを知っておく必要がある。とくに「ロスをしっかり見てほしい」というのがマイキー氏の願いだった。

市場が評価しているのはコスト削減である

ではKGIを何に置くのか。マイキー氏の答えはコスト削減だった。理由は市場の評価軸である。現代の風潮では、売上を上げることのメリットよりも、コストを削減できているということのほうが評価される。世界中のGAFAやマグニフィセント・セブンの決算発表を見れば、どれだけ削減できているか、どれだけ効率性と生産性が上がっているかがアピールポイントになっている、と述べた。そしてコストを削減すれば、1人あたりの生産性が上がる。

マイキー氏はこの論理の延長線上に、より重い帰結を置いた。「この究極体が何かというと、これを全部説明できるようになると、今度はなぜアメリカの若年層の失業率が上がっているのかも全部説明できるんですよね」。中川氏が「なるほど、そうですね」と応じ、マイキー氏は「全部説明できるんですよ」と繰り返している。

経営の内部から見ても同じ順序になる、という説明が続いた。KGIを決めなければならないとき、まずやらなければいけないことは確実にコスト削減である。会社というのはまず止血を止めるところが重要で、経営のなかでは止血しなければいけないところから始める。だから止血の部分がロスであり、それに対するKPIがこれです、と提示する。ゴールは止血である――これがマイキー氏の説明の骨格だった。

ここに前田氏が実務的な裏づけを添えた。上場企業の決算を見ていて思うのは、ほとんどの企業は売上を下げたほうがいいということである。自分はいつも「売上を止めろ」というタイプで、売上を下げたほうがフリーキャッシュフローが増えると言っても、まったく理解されない、と。

図2:米国の失業率。全体平均に対して、22〜27歳の若年層(大学卒業者を含む)の失業率が明確に上回っている。マイキー氏の「コスト削減が評価される市場構造で若年層失業率の上昇が説明できる」という主張の背景データ。数値は時点・集計対象によって幅があるため、複数の値を並置している。出典:WebSearchによる公開情報にもとづきClaude作図。
📌 Claude補足:米国の若年層失業率は、たしかに全体を上回っている

WebSearchで確認しました。米国では大学を卒業した22〜27歳の若年層の失業率が5.8%に達し、国全体の失業率を上回っているという報道があります。集計対象を22〜27歳全体に広げた2025年5月時点の数字では7.4%とされ、米国平均のおよそ4%を大きく上回ります。「若年層の失業率が上がっている」という発言そのものは、公開データと整合します。

原因についても、コーディング補助・データ入力・市場調査の要約といった、これまで若手社員が担ってきた定型的タスクの自動化が挙げられています。エントリーレベルの採用は2025年1月以降で四半期ベース3%減、2020年3月比では23%減という数字も出ています。AnthropicのDario Amodei氏が「1〜5年でエントリーレベル職の50%が消滅し、失業率が10〜20%に上昇する可能性」と警告したことも広く報じられました。

ただし「コスト削減が市場に評価される構造が若年層失業率を説明する」という因果の主張は、公開データが直接裏づけるものではありません。報道が主として指摘しているのは、AIによるタスク自動化がエントリーレベルの仕事を代替しているという直接効果です。マイキー氏の説明は、その手前にある投資家の評価軸(コスト削減が株価に効く)が経営判断を規定しているという一段深い層を指しており、論理としては筋が通りますが、実証された因果関係として扱うべきものではありません。この差は明示しておきます。

PART 2

機会損失の3レイヤー――なぜ「利益」ではなく「損失」で語るのか

ここがこの提案書の設計上、最も戦略的な選択だった。マイキー氏は明言している。「僕がポイントとしているのは、利益を上げるのではなくて、機会損失が何なのかというところを認識させるのが、提案として強いと思った」

市場との連動性を考えたとき、プロフィタブル(収益性)ではなくオポチュニティ・ロス(機会損失)を押したほうが市場に合っているのではないか。だからあえてオポチュニティ・ロスに切り替えたという説明である。参加者からは「たしかに機会損失のほうが引っかかるし、今アメリカがそうなっているから、いずれ日本もそうなるでしょうという話もできる。しかも人口が減っているし、若い人がいない」という賛同が出た。

損失は3つのレイヤーに分けられている。オポチュニティロス(機会損失)、ストラテジックロス(戦略的損失)、コンペティティブロス(競争上の損失)である。この3分割のうえで、まずオポチュニティロスを段階ごとに分別化し、左から右へフェーズを進めていく構造になっている。マイキー氏は、オポチュニティロスの最初のカテゴリー――目に見えない人件費のような項目――で「みんな絶対つまずいている」と述べた。

そしてなぜあえてロスにしたのかという理由を、彼はもう一度言い切っている。「これがAI導入の目的なんですよね」

レイヤー意味するもの提案上の使いどころ
オポチュニティロス
(機会損失)
やれば取れたはずのものを取れていない損失。目に見えない人件費など、カテゴリー1の段階でほとんどの企業がつまずいている導入の入口。段階ごとに分別化して、フェーズ1から順に潰していく
ストラテジックロス
(戦略的損失)
戦略の選択そのものを誤ることによる損失。R&Dが遅れる、意思決定が間に合わないなどフェーズ中盤。新商品開発が「遅れる」ことを防ぐという文脈で語られる
コンペティティブロス
(競争上の損失)
競合との相対的な位置が下がることによる損失。優位性と統制が確立できない状態フェーズ後半。ロードマップの終端で回収される
表1:講義で示された機会損失の3レイヤー。各レイヤーの定義は講義中の断片的な言及を再構成したもので、資料上の正式な定義文とは異なる可能性がある。
提案設計としての含意:小沢氏がこの構造の急所を突いた質問をしている。「フェーズの最初の1・2のところでは削減時間や金額が評価として分かりやすいが、進んだ後のフェーズ5・6の新商品や新しく何かを作っていくところは、数字として出ていない。日本だとPLの人が多いので、成果が出ていないように見えるとそこが一番突っ込まれて、動かなくなりそうな気がする」。マイキー氏の答えは明快だった。「あれは何かを作るのが目的ではなくて、機会損失を抑える資料なんですよ。R&Dが遅れてしまうとか、そういうのを防ぐという資料です」。売上を約束していないから、売上で評価されない。この一貫性が、提案書が突っ込まれない構造を作っている。
📌 Claude補足:「生産性のパラドックス」の出典と、その解消の経緯

マイキー氏がロードマップの左上に置いた最大の障害「生産性のパラドックス」は、経済学でソロー・パラドックスとして知られる現象です。WebSearchで確認したところ、ロバート・ソローが1987年の書評で述べた「至るところでコンピューターの時代を目にするが、生産性の統計ではお目にかかれない」という一節が出典です。マイキー氏の「インターネットを導入したときもコンピュータを導入したときも、実際にPLに反映されるまでむちゃくちゃ時間がかかる」という説明は、この現象の指摘そのものです。

このパラドックスをめぐっては、IT投資不足説、統計の不備説、そして効果発現ラグ説(効果が現れるまでに長い時間が必要である)などが議論されました。1990年代後半になると情報化投資のプラス効果を確認する研究が相次ぎ、1990年代後半から2000年代前半にかけて米国の労働生産性の伸び率が上昇したことが統計上確認されています。つまりパラドックスは最終的にタイムラグの問題として解消されたというのが今日の整理です。したがってマイキー氏が「これは時間がかかるものだから、利益ではなく機会損失で語る」という設計にしたのは、この歴史を踏まえた合理的な選択だと評価できます。

PART 3

フェーズ1から10へ――順番を飛ばせない理由

ロードマップは左から右へ、フェーズ1からフェーズ10まで並んでいる。マイキー氏はこの並びの必然性を、否定形の連鎖で説明した。基盤と効率化を作らないと組織・人材にいけない。そうするとプロセスの改善にもいけない。そうしないとサービスや顧客、市場にも響かない。これができていないと優位性もできないし、統制もできない。だからこの流れを作った、と。

とくに左下の部分は「完全に基盤効率化のファウンデーション」として設計されている。そして左上こそが生産性のパラドックスが立ちはだかる場所であり、PLに直結しない領域である。

ロードマップの中に置かれた要素として、マイキー氏は次のものを挙げた。データオプスの民主化オーグメンテーション(拡張)の文化を作ること、AIファーストにするための会社づくり予測可能な需要のセンシング、そしてデータフライホイール――データがぐるぐる回るような経営戦略を作っていくこと。テーマに対するソリューションとしては、データカタログの整備と品質管理の自動化といった項目が並ぶ。さらにCXOと呼ばれる責任者をどこに置くかまで明確化したうえで、フェーズ1から10までを順に進めると、前パートで説明した3次元の四角形がすべて埋まる仕組みになっている。

そのうえでマイキー氏は、この資料が完成品ではないことを繰り返し強調した。「これは本当に妥当性に作ってあるやつなので完成度が低い」。ヒアリングをしながら的確にKPIを決めていくことと、フェーズの入れ替えが必要になるかもしれないこと、ロスの部分も変わってくるかもしれないことを挙げ、「大体こういうものに当てはまるだろうと予想して作っている」と述べた。たとえば在庫を持たない業態もあり、ボトルネックがそこに存在しない場合は変えなければならない。

コンサルタント側のメリットとして語られたこと:マイキー氏はこの仕組みが顧客のためだけではないことも隠さなかった。「アドバイスしている側も時間ロスをしたくないので、どこが欠けているかをしっかり見えるようにして、全部数値化できているのであれば、そのコンサルティングする時間もすごく短縮できる」。そのうえで彼はコンサルティングの定義を述べている。「ちゃんとデータというものをサイエンス的に考えたうえで、このアドバイスをどうやって提供するのかというところまでやって、初めてコンサルティングになる」。制作時間については「合間の時間で2〜3時間でパパっと作った」「23時間がっつり時間をくれれば、多分すごく精度が100倍くらい高いものが作れる」と述べており、海外でコンサルに入ったときは10倍くらい細かいデータで全部モニタリングする形にしていたという。
📌 Claude補足:「データオプスの民主化」と「オーグメンテーション」の一般的な用法

ロードマップに置かれた用語のうち、実務での標準的な意味を補っておきます。データの民主化(data democratization)は、データへのアクセスと分析能力を専門部署に集中させず、現場の非専門職が自分で扱える状態にすることを指します。オーグメンテーション(augmentation/拡張)は、AIを人間の代替(automation)ではなく能力の拡張として位置づける考え方で、Augmented Intelligence(拡張知能)という呼び方でも使われます。前パートで扱った「インテリジェンス・アンプリファイア」と同じ思想です。

需要センシング(demand sensing)はサプライチェーン計画の用語で、過去実績の外挿ではなく、POS・受注・天候・価格といった実時間に近いシグナルから短期需要を推定する手法を指します。データカタログは、社内に散在するデータ資産のメタデータ(所在・意味・品質・所有者・利用条件)を一元管理する仕組みで、データガバナンスの基盤設備にあたります。CXOは Chief X Officer の総称で、Xに入るものによってCIO(情報)、CTO(技術)、CDO(データまたはデジタル)などになります。マイキー氏がロードマップ上で責任者を明確化したのは、データガバナンスにおいて所有者不在がプロジェクトを止める最大要因のひとつであることを踏まえた設計だと読めます。

PART 4

AIファーストBPRとHITL――ガバナンスの結び目

ロードマップの途中に置かれた重要概念について、マイキー氏が改めて説明した。AIファーストBPRである。BPRはビジネス・プロセス・リエンジニアリングの略で、最初からAIが業務を行うことを前提として、ビジネスプロセスの全体を根本から作り直しましょうという考え方だと説明された。既存の業務にAIを後付けするのではなく、AIが実行することを前提に業務そのものを設計し直す、という順序の逆転である。

そしてこれをしっかり作ったうえで、どういうガバナンスを取るのかという問題が立つ。ここでマイキー氏が挙げたのがHITL(ヒューマン・イン・ザ・ループ)で、中川氏がこれについて論文を書かれていたと言及している。ガバナンスの部分でHITLが機能し、そこにデータオプスが出てきて、データフライホイールが絡んできて、GRAIモデルを組み合わせた上のものが、この日の資料である――というのが構造の総括だった。「これ全部組み込んでるんで、全部連動性を作った図を作ったって感じです。これ頭の中で描いて、パパっと作っていった感じです」

📌 Claude補足:BPRの正確な定義と、その歴史的評価

BPR(Business Process Reengineering、ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)は、マイケル・ハマーが1990年の『ハーバード・ビジネス・レビュー』論文「Reengineering Work: Don't Automate, Obliterate」で提示し、ハマーとジェイムズ・チャンピーの共著『リエンジニアリング革命』(1993年)で世界的に広まった経営手法です。既存業務の部分的な改善ではなく、業務プロセスを白紙から抜本的に再設計することを主張しました。講義中の「ビジネス・プロセス・エンジニアリングの略」という説明は「リエンジニアリング(Reengineering)」の言い落としと考えられますが、内容の説明――全体を根本から作り直す――はBPRの定義そのものと一致します。

付け加えておくと、ハマーの元論文のサブタイトルが「自動化するな、抹消せよ」であった点は、AIファーストBPRという言葉遣いと響き合います。ハマーの主張は、既存の非効率なプロセスにコンピュータを載せても非効率が高速化するだけだ、というものでした。同じ論理をAIに置き換えたのがAIファーストBPRであり、この系譜は正確です。ただし1990年代のBPRブームは、実行段階で人員削減の口実として使われた事例が多く、後年批判も受けています。ハマー自身も後に「人的要素を軽視していた」と認めたことが知られています。この日の議論でも「コストカットの域を出ていない」という指摘が小賀氏から出ており、30年前と同じ落とし穴が指摘されている点は注目に値します。

HITL(Human-in-the-loop)は、機械学習システムの学習・推論・意思決定の輪の中に人間の判断を組み込む設計思想で、AIガバナンスの文脈では、自動化された判断に対する人間の監督(human oversight)を担保する仕組みとして扱われます。EU AI Actをはじめとする規制枠組みでも、高リスクAIシステムに対する人間による監督は中核要件のひとつです。前パートで扱ったGRAIフレームワークの原典も、human-in-the-loop と machine-in-the-loop を明示的に区別しており、この日の資料はGRAIとHITLを同じ土俵で扱っている点で理論的に一貫しています。

PART 5

連結化の値崩れ――中間管理職が消えると説明できる理由

この日の議論のなかで、もっとも切れ味のある一節がここにある。マイキー氏は「情報書類から意味づけの設計へ」という本質の変化を挙げたうえで、AIが出てきたことで最も価値が下がるのはどこかを名指しした。連結化(Combination)の部分である

SECIモデルの4工程のうち、従来の価値を落とすのが連結化であり、GRAIモデルが指し示すのはまさにそこの価値低下だという。そしてマイキー氏はここから一気に組織論へ飛んだ。「だからここがまさに中間管理職のところになってくるので、中間管理職はなくなるよ、という説明もそれでつくんですよ」。よく中間管理職がどんどん消えていくと経済学者が言っているが、それがGRAIモデルで一応説明がつく、という論法である。

長谷川氏が「そうすると、この中間管理職の人たちはAIを入れたくなくなってしまいますね。自分たちの首が」と応じ、マイキー氏は「それも分かっていてもそうですよ」と答えた。導入の抵抗勢力が誰になるかまで、同じモデルで予測できてしまうという指摘である。

具体例として挙げられたのが投資銀行だった。インベストメント・バンキングのアナリストは、昔は3年ぐらいずっとExcelを叩き続ける人たちがみんないたが、今やそれがいらなくなった。会社はそこに2〜3000万円を払っていたのだから、影響は非常に大きい、と。ただし小賀氏はここに冷静な留保を挟んでいる。「残念ながら、そこはまだまだコストカットの域を出ないので」

図3:SECIモデルの4工程それぞれについて、生成AIによる代替可能性の相対的な高さを概念的に示したもの。講義では連結化(Combination)が最も価値を落とすと説明された。GRAI原典でも、連結化は生成AIの登場でもっとも注目を集めたフィールドだと記述されている。出典:講義内容とGRAI論文の記述をもとにClaude作図・概念値(実測データではない)。
📌 Claude補足:GRAI原典も連結化に注目しているが、「価値が落ちる」とは書いていない

この論点は、原典と講義の対応を丁寧に見ておく価値があります。WebSearchで確認したGRAI論文(Böhm & Durst, 2025)は、連結化(Combination)の相互作用フィールドについて「生成AIシステムの登場でおそらく最も注目を集めた」と記述しています。理由は、LLMが大量のデータから内容を結合して生成するやり方がChatGPTの登場によって初めて実現したこと、そして専門知識がなくても自然言語でその機能にアクセスできるようになったことです。具体例として、主題や提供された情報源に関する複雑な要約の生成、オンライン会議のトランスクリプトからの議事録生成などが挙げられています。

ただし原典は「連結化の価値が落ちる」とは書いていません。原典が述べているのは、そのフィールドで生成AIの能力が突出しているという事実です。そこから「したがって連結化を担ってきた人間の職務――すなわち中間管理職――の価値が落ちる」という含意を引き出したのは、マイキー氏の解釈です。論理としては自然な推論ですが、原典の記述と講義者の推論を区別しておかないと、クライアントに説明する際に「論文にそう書いてある」と誤って伝えることになります。

なお中間管理職の縮小そのものは、複数の実証的な報告があります。米国では2023年以降、いわゆる「グレート・フラットニング(great flattening)」として、管理職層を薄くする動きが大手企業で相次いだと報じられました。ただしこれをAIだけに帰属させるのは早計で、金利上昇局面でのコスト圧力、パンデミック期の過剰採用の巻き戻しといった要因も同時に働いています。連結化の値崩れという説明は「なぜ他の層ではなく中間層なのか」を説明する枠組みとしては強力ですが、単一原因の説明としては扱わないほうが安全です。

PART 6

それでも日本企業は動かない――フリーズ、奥の院、そして外圧

この日の議論の最終局面は、提案の中身ではなく提案が通らない理由に費やされた。ここが本レポートで最も生々しい部分である。

発端は小賀氏の報告だった。頂いた資料を元に、その日プライム上場の会社と話をした。しかし経営企画からは「まともにここでご紹介できるようなフィードバックはなかった」。自分自身の説明がまだ不足しているところがあるかもしれない、と付け加えつつも、事実として反応がなかったことを報告している。

長谷川氏はこれを構造の問題として分析した。「資料を見せた瞬間にフリーズが起こる」。だからあれを日本企業の現場にどう優しく落とし込んでいくかという作業をやっていかないと、日本企業には入っていかない。あれを楽しんで理解してやってやろうという人たちは、日本企業の特に大手の中には多分いない、と。

別の参加者はさらに厳しかった。「プライム上場の社長とか経営企画が分からなかったら、もっと分かる人はいない。これが分かるんだったら、多分日本はもうDXがうまくいっていたと思うんですよね」。会話が単語ひとつひとつを見ても分からないレベルの人が日本の社長には多く、コンサルに丸投げした結果として新規事業が成功して社長になったり偉くなった人が非常に多い。意思決定をしただけ、その場にいただけで偉くなった人が多い、という指摘である。

「これはCIOが読めばいいでしょう」

もう一人の参加者は、自分が知っているプライム上場企業の社長たちの反応を具体的に予想してみせた。「字が小さくてやめません」「ゴシゴシしすぎじゃないか」「カタカナが多い」といった難癖をつけて、自分ではない人が読みなさいと言うだろう、と。そして最も痛烈な一言が続く。「これはCIOが読めばいいでしょうとか。自分は奥の院にいますので」。何かあったときのための奥の院で、ミスがあってもその奥にいる。CIO、あるいは技術のときはCTO。自分はミスの後ろに隠れる、と。銀行にはさらに多くの「院」があり、どの院のお付きにどうお土産を持っていくかが大変だ、という補足まで加えられた。

中川氏はここに、大学人としての具体的な評価を置いた。学部生には分からないかもしれないが、大学院生には分かりやすいので、大学の資料で使うという。マイキー氏は「僕、嬉しかった。やった、来たぞ、と思って」と反応している。

社長AIと、レピュテーションリスク

金融機関の実態についても具体的な話が出た。ある大手銀行グループが「社長AI」や「役員AI」を作り始めていて、「この人に聞いてみよう」と言うと、その顔をした人形のようなものがパクパクと喋るらしい、という話である。参加者の一人は友人がその金融グループの社会投資部門にいるといい、株価はもちろん上がっているし、JPモルガンのジェイミー・ダイモン氏の話もしている、と。しかし作ったものは社長AIだった。参加者からは「クレジットのスコアリングでもまだちゃんとAIでできていないですよね」という指摘が出た。

中川氏は銀行業務の性質から説明した。銀行業務は誰でもできるから転勤が可能になる。「与信は経験と勘」と言っているが、そんなものに頼っていたら危ないだろう、という話でもある。だからAIが入り込みやすいのは、どう考えてもそこである、と。ではなぜ入らないのか。彼らが一番恐れているのはレピュテーションリスクだからである。世の中の人からどう思われるかをすごく怖がっている。市場が偶然に儲かっているのに、これでリストラかと言われるのは嫌だ、と。それは究極のB2Cである、という言い方がされた。お客様から色々言われるのが嫌だということを、ベンチマークにしてしまっている社長もいる。「あなたがそれを考えることじゃないんじゃないの、とは私も思ったりする」という感想が添えられた。

もうひとつ、勘定系システムの話も出た。ある参加者は勘定系を止めた金融機関にいたと明かし、全部丸投げで、しかも古いアーキテクチャをそのまま上に積み上げていったため、その古いアーキテクチャ自体を知っている人が社内に誰もいなくなったと述べた。ベンダーには3000億円以上を払っているという。

コンサルティング業界そのものの転換点

マイキー氏は自身の観測も述べた。先週金曜日にボストン・コンサルティングの人と話したが、ボスコンでさえ、そこの感度は低かった。逆にボスコンでどうやって使っているのかを聞いてみようと思ったが、軽く拒否されてしまった、と。そのうえで彼は言った。「本当にコンサルの仕事はなくなっていくんだろうな。大手の総合コンサルの人たちはなくなっていくんだろうなと思っている」。日本企業も含めて転換点である。大手企業が特にコンサルを使いまくってきたが、そこがまるっきり変わる。しかもコンサルに頼んできた人たちが上を占めてしまっている――だからそこをどう変えていくかが、小賀氏や長谷川氏が勝負しなければならない場所だ、という結論だった。

正面突破ではなく、開示基準をテコにする

では打つ手はあるのか。マイキー氏の答えは正面突破の放棄だった。「開示基準が変わるので、それを僕はテコにしようと思っています。強制的にやらされるので」。段階的とはいえ来年からは3兆円企業が対象で、そこから徐々に降りてくる。それを使ってやっていくしかない。普通に攻めても動かないから、というのが理由である。

小賀氏の戦略もこれと重なっていた。自分が今やろうとしている戦略はサステナビリティ開示の強制的なものが出てくるので、それをつなぎながら両面で攻めていこうと思っている、と。小賀氏が今携わろうとしている会社は英国の会社で、すでにそうしたアプリケーションをやっており、社長はレバノン系、南米出身者も混じった多国籍のチームだという。

図4:SSBJ基準の適用スケジュール(最短案)。時価総額3兆円以上のプライム企業が2027年3月期から義務化され、以降段階的に対象が拡大していく。マイキー氏の「来年からは3兆円企業、そこから徐々に降りていく」という発言の裏づけとなる制度スケジュール。出典:WebSearchによる公開情報にもとづきClaude作図。
📌 Claude補足:開示基準の正式名はSSBJ基準。時期と対象は発言とほぼ一致する

WebSearchで確認しました。マイキー氏と小賀氏が言及した「開示基準」は、SSBJ(サステナビリティ基準委員会)が策定した日本のサステナビリティ開示基準です。SSBJは2025年3月5日に日本初のサステナビリティ開示基準3本(ユニバーサル基準・一般開示基準・気候関連開示基準)を公表し、2026年2月の内閣府令改正により、時価総額3兆円以上のプライム上場企業を対象として2027年3月期から義務化されることが確定しました。

その後のスケジュールは、2028年3月期に時価総額1兆円以上、2029年3月期に平均時価総額5,000億円以上1兆円未満の企業へと拡大し、最終的には2030年代を目途に全プライム市場上場企業への適用が提案されています。マイキー氏の「段階的とはいえ、来年からは3兆円企業なので、そこから徐々に降りていく」という発言は、この制度設計と一致します。この勉強会が2025年12月であることを踏まえると、「来年から」は2026年4月開始の事業年度(=2027年3月期)を指すものと読むのが自然です。

なお小賀氏が「スコープ3」に言及していますが、これは温室効果ガス排出量の算定区分で、自社の直接排出(スコープ1)、購入した電力等による間接排出(スコープ2)に対して、スコープ3はサプライチェーン全体の間接排出を指します。原材料調達から製品の使用・廃棄までを含むため、算定には取引先を含む膨大なデータ収集が必要で、ここがAI活用の余地として大きいという文脈でした。小賀氏が「上場でない会社のところはそういったデータが全くないところもあるので、そもそも変えていかなきゃいけない」と述べたのは、まさにスコープ3の算定がサプライチェーン下流の非上場企業のデータ整備に依存するためです。

📌 Claude補足:勘定系システムの件は、金融機関名が明示されていない 要確認

「勘定系を止めた金融機関」「ベンダーに3000億円以上を払っている」という発言について、参加者は金融機関名を明示していません。日本の勘定系システムの全面再構築で公開情報上もっとも規模が大きいのは、みずほフィナンシャルグループの「MINORI」で、開発期間8年、投資額4000億円台半ば、35万人月という規模が報じられています。2019年7月に完成しましたが、2021年に大規模なシステム障害が相次いだことも広く知られています。ベンダー体制は日本IBM・富士通・日立製作所・NTTデータの4社が中心でした。

したがって発言の「3000億円以上」という金額は、MINORIの公開値(4000億円台半ば)とはやや異なります。ただし発言者が特定の企業名を出していない以上、これがMINORIを指しているという断定はできません。本レポートでは金融機関を特定せず、発言をそのまま記録します。なお「古いアーキテクチャをそのまま上に積み上げ、それを知っている人が社内に誰もいなくなった」という構造は、レガシーシステムのブラックボックス化として一般に指摘されている問題であり、経済産業省の「DXレポート」(2018年)が「2025年の崖」として警告した内容と重なります。

Q&A

質疑応答(AI導入・ロードマップ・日本企業に関する全記録)

(参加者)サピエント・インテリジェンスが伸びてきたら、中国はNVIDIAのGPUではなく独自タイプのチップを開発する方向に進むのではないですか。
マイキー氏:そうすると今度は、カンブリコン・テクノロジーズとファーウェイが伸びてきます。この2社が半導体チップで伸びてきて、NVIDIAとAMDに対抗する形になるのではないでしょうか。
(参加者)中川先生、中国のロボットのセンサーは誰が作っているのですか。
中川氏:ソフトのVLAモデルは深センにあるマインドロボティクスです。要確認(企業名の裏取りができなかった点はPART 0のClaude補足を参照)
参加者:この中国のロボットは1台いくらぐらいですか。結構安いんですか。
中川氏:安いですね。犬型だと80万円で、人間型でも300万円ぐらいです。売り出しているみたいです。工場は全部政府が1000億円かけて建てるので。
(参加者)なぜここまでやるんでしょうね。
中川氏:今でも軍事以外ないですよ。人の命が大切だということが分かってきたので、さすがに人の命を使わない。ドローン、または人間型と犬型ですね。マラソンのロボットもボクシングのロボットも作っていますが、最終目標はとにかく足が動くことです。以前はすぐひっくり返っていたのが、最近は立ち上がるようになってきた。もがいていたのが、ヒュッと立ち上がるようになったので、そこの改善もされています。
(前田氏)KPIを作るということはKGIを作らなければいけないし、ゴールも作らなければいけない。これをまず適正に作れるのかというところにすごく疑問があります。会社が決めることですし、業界も時代も不確実性が強いので、この作り方が会社によって全く作れないというところがあるのではないでしょうか。
マイキー氏:作れないので、一緒に作ってあげなければいけないんですよ。作れないところの方が多いと思います。ただ、これは知っておく必要だけでもあると思うんです、経営者たちは。このロスをしっかり見てほしいんですね。オポチュニティロスに関しても、目に見えない人件費とか、このカテゴリー1で絶対つまずいているんですよ、みんな。なぜあえてロスにしたかというと、これがAI導入の目的なんですよね。今の現代の風潮は、売上を上げることのメリットよりも、コスト削減できていることが評価される主流になっているんです。世界中のGAFAやマグニフィセント・セブンの決算発表を見れば分かりますが、どれだけ削減できているか、どれだけ効率性・生産性が上がっているかがアピールポイントになっています。コストを削減したら1人あたりの生産性が上がるわけです。この究極体が何かというと、これを全部説明できるようになると、なぜアメリカの若年層の失業率が上がっているのかも全部説明できるんですよね。だから、あくまで市場との連動性ということで、プロフィタブルではなくオポチュニティロスを押したほうが市場に合っているのではないかと思って、あえて切り替えました。
前田氏:確かに機会損失のほうが引っかかりますし、今アメリカがそうなっているから、いずれ日本だってそうなるでしょうという話もできますからね。しかも人口が減っているし、若い人がいない。
マイキー氏:KFSなどもね、決めていかなければいけないんですが、そもそもKGIとゴールとKFSの違いが分からない人たちもいるんですよ。KPIという言葉が先走ってしまっているというのもあります。ただKGIを決めるとき、まずやらなければいけないのはコスト削減になってきます、確実に。会社はまず止血を止めるところが重要なので、経営のなかでは止血しなければいけないところから始めるんです。だから止血の部分がロスで、それに対するKPIがこれです、と。ゴールは止血です。
前田氏:僕の印象では、上場企業の決算を見ていて思うのは、ほとんどの企業は売上を下げたほうがいい企業が多いですよね。僕はいつも売上を止めろというタイプなので。売上を下げたほうがフリーキャッシュフローが増えると言っても、全く理解されないので。
(小賀氏への振り)小賀さん的に何かありますか。
小賀氏:まさにおっしゃる通りで、現在AIエージェンティックを使っているところのほとんどが「コストカットはどれだけありましたか」というものです。米系の企業も、スノーフレークで皆さんにもシェアしましたが、そういったものはあります。ただ一方で、いわゆる全社戦略的に落とし込んだところはまだなくて、結局フラグメントにあちこち繋いでいます。それからサプライチェーンの中でも、お客さんが上場会社ならまだしも、上場でない会社のところはそういったデータが全くないというところもあるので、それをそもそも変えていかなければいけないというところがあると思います。
マイキー氏:この場合、アプローチするのに一番いいのは、経営戦略の中の戦略プランニングのところにこれをどうやって導入させるかという切り口が、一番はまるんですよね。ただ、まずトップマネジメントに理解して、そこに落とさなければいけないので。
小賀氏:その中で、私が今やろうとしている戦略はサステナビリティ開示の強制的なものが出てくるので、それをつなぎながらやっていこうと思っていて、その両面で攻めていこうと思っています。
(小沢氏)バリューチェーンのさっきのロードマップのところで、フェーズの一番初めの1・2のところでは削減時間や金額がすごく評価として分かりやすいですよね。でも進んだ後の5とか6の辺りは、新商品とか新しく何かを作っていくというのは、数字としてそこに出ていないじゃないですか。特に日本だとPLの人が多いので、成果が出ていないように見えるとそこが一番突っ込まれやすくて、動かなくなりそうな気がしたのですが。
マイキー氏:あれは何かを作るのが目的ではなくて、機会損失を抑える資料なんですよ。なのでR&Dが遅れてしまうとか、そういうのを防ぐという資料です。ポイントになるのは、最初のプレゼンテーションの提案のところで、さっき前田さんが言ったKGIのところです。「これは売上を上げるものではなくて、コストを下げるものです」と。だから機会損失というところに当てるわけです。
小沢氏:ああ、分かりました。ありがとうございます。でもなんかすごく、アメリカンっぽいですね。
(参加者)小賀さんがイギリスの企業と一緒にAIの導入を進めようとしているというのは、要は3兆円企業がサステナビリティの情報開示をしなければいけないという話ですか。それでAIを一番使う部分はどこにあるんですか。スコープ3ですか。
小賀氏:スコープもそうだと思いますし、まだですが明日ちょっと話をするので。
マイキー氏:また1月にイベントをやるので、青山で。誰にスピーチしてもらうかを、投資家と政府の方とも話をしているところです。政府関係が来るか分かりませんが、式の見越しも稼がないと日本の経営者は動いてくれないので。キーノートスピーカーはどうなったか、金融か誰かにということで今人選をやっている最中です。1月22日、3時会場・3時半開始、無料です。
(小沢氏)やっぱり世界トップ層のコンサルをやられているような人たちの会話は面白いなと思って。前も話しましたが、私は上流層ではなく現場寄りで今戦っていて。なぜそっちに行ったかというのも、今日のマイキーさんの話を聞いていて思ったんです。アメリカに行っていたとき、マイキーさんのような人に一度出会ったことがあって、その人がまさにコンサルのような人で、「私はこの水準に立つのは厳しいな」と思ったので戦い方を変えたんです。
マイキー氏:でも今日のやつ、アメリカっぽくないですか?
小沢氏:めっちゃアメリカっぽかったので、すごくワクワクして聞いていました。ただ今日聞いていて一番思ったのは、さっき小賀さんもおっしゃっていましたが、プライムの方に説明したけど何の反応も得られていないということで。日本企業の一番の問題だと思うのが、資料を見せた瞬間にフリーズが起こるということです。(※この発言は長谷川氏の指摘と重なる。文字起こし上、発言者の切り分けが困難な箇所がある)
(参加者)皆さん、長谷川さんとかがすごく分かりやすいと言っていましたが、多分プライム上場の社長とか経営企画が分からなかったら、プライム上場の社長でもっと分かる人はいないと思うし、これが分かるんだったら多分日本はもうDXがうまくいっていたと思うんですよね。
別の参加者:間違いないですね。本当にその通りだと思います。会話がもう単語ひとつひとつを見ても分からないと思うんですよね。そういうレベルじゃない人が多分日本の社長には多くて。さっき言った通り、本当にコンサルに丸投げで、結果的に色々な新規事業とかで成功して社長になったり偉くなった人がめちゃくちゃ多いので。多分その意思決定をしただけとか、その場にいただけで偉くなった人がめちゃくちゃ多いんです。
マイキー氏:本当におっしゃる通りで、これが分かってくれる経営者には期待はしていないんですけども、政党の方とか、オーナー経営者でプライムに上場している方は危機感を感じているので、分からないながらもなんとなく、ぼんやりと入っていくと、ちょっと時間をかけて影響を与えてくれるだけでもいいかなと思うんです。そうじゃないと、AIを入れてどういう形になって自分の会社が将来的にどう変わっていくのか、あるいは波に乗り遅れていくのか、AI投資で失敗していくのかを、すごく不安に思っている経営者が多いので。失敗しないためのマイルストーンとして、フェーズごとの資料やフレームワークは、知っているか知っていないかだけで舵取りが違ってくると思います。その通りにやれる人はまずいないと思うので、ただヒントになってくれれば十分かなと思っているんですよね。
(中川氏)大学院生には分かりやすいです。学部生はちょっと分かりませんが、大学の資料で使います。
マイキー氏:僕、嬉しかったです。中川先生自体が「大学の資料で使います」と言ってくれた。やった、来たぞ、と思って。採用してくださるんだと思ってやっていました。
中川氏:ただ、プライム市場の上場級の社長は私も何人か思い浮かべましたけど、こんなのは「日本語の5・7・5で説明してくれ」とか言いそうな感じだなと。字が小さくてやめません、とか、ゴシゴシしすぎじゃないか、とか、カタカナが多いとか、そういうなんとなく癖をつけて、自分じゃない人が読みなさいということを言いそうな感じがします。「これはCIOが読めばいいでしょう」とか。自分は奥の院にいますので、と。何かあったときの奥の院なので、ミスがあってもその奥にいるんです。CIO、または技術のときはCTOという。自分はミスの後ろに隠れると思います。
(参加者)銀行が社長AIを作っているというのは、影響を与えないですよね、多分。
参加者:私の友人がその金融グループの社会投資部門にいるんですが、彼女に聞いたら、株価はもちろんすごく上がっていますよと。JPモルガンのダイモンの話もしていますよと。ああ、じゃあそれはしているんだと。それで「社長AIを作りました」と。なんか人形みたいになっていて、パクパク喋るらしいですよ。役員AIも作り始めていて、「この人に聞いてみよう」と言うと、その顔をした人が色々喋るらしいんですけど、まあその程度のことをやっている感じですね。
別の参加者:だってクレジットのスコアリングでも、まだちゃんとAIでできていないですよね。
中川氏:与信体制だって、あんなに人はいらないですからね。本当に銀行業務というのは、誰でもできるから転勤が可能になるわけですよ。それを「与信は経験と勘」とか言っていますけど、そんなものに頼っていたら危ないでしょって感じなんですけど。だから非常にAIが入り込みやすいですよ、どう考えても。だけど彼らが一番恐れているのはレピュテーションリスクで、世の中の人からどう思われるかをすごく怖がっていますので。市場が偶然に儲かっているのに、これでリストラかと言われるのは、結局B2Bじゃなくて究極のB2Cですからね。お客様から色々言われるのは嫌だというのを、すごくベンチマークにしてしまっている社長もいる。悲しいかな。あなたがそれを考えることじゃないんじゃないの、とはちょっと私も思ったりもするんですけど。
(参加者)私は勘定系を止めた金融機関にいたんですけども。
参加者:まさにそれですよ。全部丸投げで、しかも古いアーキテクチャをそのまま上に積み上げていったので、その古いアーキテクチャ自体を知っている人が社内に誰もいなかったという。ベンダーには3000億円以上を払っているんですけど。要確認(金融機関名は明示されていない。PART 6のClaude補足を参照)
(参加者)この資料がいろんな日本の企業にじわじわ浸透していってAI化が進んでいったら、本当にコンサルタント料に突き切るし……。
マイキー氏:先週金曜日はボスコン(ボストン・コンサルティング)の人と話したんですけど、ボスコンでさえあまりそこの感度は低かったですね。逆にボスコンでどうやって使っているのか聞いてみようと思ったんですけど、そこは軽く拒否られてしまいました。本当にコンサルの仕事はなくなっていくんだろうな、大手の総合コンサルの人たちはなくなっていくんだろうなと思っているんで。だから本当に転換点で、日本企業も含めてコンサルを使いまくっていたじゃないですか、大手企業が特に。だからそこがまるっきり変わると思っているんですけど、コンサルに頼んできた人たちが上を占めてしまっているんで。そういうのを含めてどう変えていくかというところが、多分小賀さんとか長谷川さんたちが勝負していかなければいけないところなんだろうなと。
マイキー氏:開示基準が変わるので、それを僕はテコにしようと思っています。強制的にやらされるので。段階的とはいえ、来年からは3兆円企業なので、そこから徐々に降りていきます。それを使ってやっていくしかないかなと思っています。普通に攻めても動かないので。
(参加者)現在AIを導入している企業の実態が見える化できていないのは、なぜですか。
マイキー氏:まさにこれをやっていないんですよね。ほとんどのコンサルティング会社もAI企業自体も。だから僕がこれをデモ的に作ったんです。もうちょっと細かく作れるんですけど、これは2〜3時間ぐらいでパパっと。こうなると提案に変わってくるので、実際に見える化できるしロードマップも見えるという状況を作る。日本の企業って、理解しても実際にアクションに起こしてくれるかどうかは全く別問題なんですけれども、そのロスがはっきり明確に、しかも結構上の方に書かれているというのは、日本企業がそこを嫌なところなので、それをどんどん潰していくという方向でこの提案をしています。
小賀氏:すごく説明しやすいフォーマットになっているんですよね。しかも責任の度合いもはっきりしているから。これを全部自分で説明できるかどうかが、これからの私の課題だと思うんですけれども。
(小賀氏)コストカットの先には何があるのですか。
小賀氏:残念ながらそこはまだまだコストカットの域を出ないので、結局そのコストカット、さらにサプライチェーンやバリューチェーンをリバンプして、例えばそのデータをどう取るかとか、チップにどう埋め込んでそれを連結させてデータを取るかとか、そういうところまではまだ行っていないので、そこが一番のやるべきところじゃないかなと思います。コストカットというのはどんな形にしてもAIを導入すればできているので、それが8割カットなのか2割カットなのかの違いだけだとは思うんですけれども、新たなバリュークリエーションというところはまだまだだということで、我々そこがチャレンジすべきポイントだと思います。
(小沢氏)ループするところ、立方体が大きくなって巨大化していかなければいけないというところの繋がりが、まだちょっと落とし込めていないんですけれども。
小沢氏:僕はまだ自分が思っていたのと全然、深さが違ったので今びっくりしています。もう一回読み込み直さないといけないなと思いながら見ていました。僕の理解度が非常に浅かったなというのが分かったので。自分の業界にも入れてみて、どう活用できるかやってみたいと思っています。
HOMEWORK

宿題・アクションアイテム

  1. 自社の機会損失を3レイヤーで棚卸しする。オポチュニティロス(やれば取れたはずのもの)、ストラテジックロス(戦略の遅れ)、コンペティティブロス(相対的な地位低下)の3つに分けて書き出す。マイキー氏は「目に見えない人件費」を含むカテゴリー1の段階でほとんどの企業がつまずいていると指摘した。まずそこから着手する。
  2. 提案書のKGIを「売上」から「止血」に置き換えて書き直してみる。AI導入の提案が通らない原因が、成果指標の置き方にないかを検証する。PLで評価される文化のなかで売上を約束すると、フェーズ5・6以降で必ず突っ込まれる。小沢氏の質問とマイキー氏の回答は、この論点をそのまま扱っている。
  3. SSBJ基準の適用スケジュールを自社の時価総額に照らして確認する。2027年3月期=時価総額3兆円以上、2028年3月期=1兆円以上、2029年3月期=5,000億円以上1兆円未満、2030年代を目途に全プライム市場へ拡大、という段階がある。自社がいつ対象になるかを確認し、スコープ3の算定に必要なサプライチェーンのデータ整備状況を点検する。
  4. AIファーストBPRとして、業務をひとつ白紙から書き直してみる。既存業務にAIを後付けするのではなく、AIが実行することを前提に業務全体を設計し直すとどうなるかを、範囲を絞って試す。そのうえでHITL(ヒューマン・イン・ザ・ループ)を、どの判断点に置くかを決める。
  5. 自社の中間管理職が担っている業務を、SECIの4工程で分類する。連結化(既存の形式知を組み合わせて新しい形式知にする作業)に該当する割合がどれだけあるかを見る。そこが大きいほど、AI導入に対する抵抗が組織のどこから出てくるかが予測できる。マイキー氏の指摘のとおり、抵抗する側は自分の首がかかっていることを分かっていて抵抗する。
  6. 1月22日(木)青山でのイベント。3時会場・3時半開始、参加無料。キーノートスピーカーは投資家または政府関係者を軸に人選中とのこと。マイキー氏から「開けておいてください」と案内があった。
  7. マイキー氏が10年前にアメリカで作った広告マーケティングのシステム。「何百社も入ってきたやつ」として言及され、参加者全員から「見たい」の声が上がったが、この日は公開されなかった。次回以降の宿題として残っている。
GLOSSARY

用語集

KGI/KPI/KFS
KGIは最終目標指標、KPIは中間の重要業績評価指標、KFSは重要成功要因。マイキー氏は「そもそもこの3つの違いが分からない人がいる」「KPIという言葉だけ先走っている」と指摘した。
オポチュニティロス(機会損失)
やれば取れたはずのものを取れていない損失。この提案書ではAI導入の目的そのものとして据えられている。利益ではなく損失で語るほうが市場と連動する、というのが選択の理由。
ストラテジックロス/コンペティティブロス
戦略の選択や遅れによる損失、および競合との相対的地位の低下による損失。機会損失の3レイヤーのうち後半2つ。ロードマップの中盤以降で回収される。
生産性のパラドックス(ソロー・パラドックス)
ロバート・ソローが1987年に述べた「至るところでコンピューターの時代を目にするが、生産性の統計ではお目にかかれない」に由来。IT投資の効果がPLに現れるまでのタイムラグを指す。
AIファーストBPR
BPRはビジネス・プロセス・リエンジニアリング。マイケル・ハマー(1990年)に由来。AIが業務を行うことを最初から前提として、ビジネスプロセス全体を根本から作り直す考え方。
HITL(ヒューマン・イン・ザ・ループ)
機械学習システムの判断の輪の中に人間の判断を組み込む設計思想。AIガバナンスでは人間による監督を担保する仕組みとして扱われる。中川氏が論文を執筆しているとマイキー氏が言及。
DataOps/データフライホイール
DataOpsはDevOpsの思想をデータ領域に適用した方法論(Plan・Code・Build・Test・Release・Deploy・Operate・Monitorのループ)。それを回し続けることで自己強化する累積効果がデータフライホイール。
需要センシング(demand sensing)
過去実績の外挿ではなく、実時間に近いシグナル(POS・受注・天候・価格など)から短期需要を推定するサプライチェーン計画の手法。ロードマップの中盤要素として挙げられた。
データカタログ
社内に散在するデータ資産のメタデータ(所在・意味・品質・所有者・利用条件)を一元管理する仕組み。「整備と品質管理の自動化」がソリューション例として挙げられた。
CXO
Chief X Officer の総称。CIO(情報)、CTO(技術)、CDO(データ/デジタル)など。ロードマップでは各フェーズの責任者を明確化する枠として使われた。
スコープ1・2・3
温室効果ガス排出量の算定区分。1は自社の直接排出、2は購入電力等の間接排出、3はサプライチェーン全体の間接排出。スコープ3の算定には取引先を含む膨大なデータ収集が必要になる。
SSBJ基準
サステナビリティ基準委員会が2025年3月に公表した日本初のサステナビリティ開示基準。時価総額3兆円以上のプライム企業から2027年3月期に義務化され、段階的に対象が拡大する。
中国製造2025
2015年5月に中国政府が発表した産業政策。重点10分野・23品目を設定。半導体・AI、ロボット、航空宇宙、新エネ車、バイオ医療などが含まれ、国家集成電路産業投資基金などを通じた巨額の補助金が投じられている。
VLAモデル
Vision-Language-Action。視覚入力・言語指示・ロボットの行動出力を統合的に扱う制御モデル。ロボットに自然言語で指示を出して物理的な作業を実行させる基盤技術。
レピュテーションリスク
評判の毀損による損失リスク。金融機関がAI導入を進めない理由として中川氏が挙げたもの。「市場が偶然に儲かっているのにリストラかと言われるのは嫌だ」という判断が導入を止めている、という指摘。
エッジコンピューティング
クラウドではなく端末側(エッジ)で処理を行う方式。マイキー氏はサピエント・インテリジェンスの台頭により、来年の中国のスマホ・PCは「AIスマホ」ではなく「エッジコンピューティング機」として盛り上がると予測した。